平野啓一郎のレビュー一覧
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分人と個人について
空白を埋めなさいのドラマを観て興味を持ち読みました。統一されない人格として人を考えると破綻してしまいますが、分人としてレイヤーする状態で存在する人と捉える考え方で少し気持ちが楽になりました。また分人の好き嫌い相手にも半分責任があるという言葉で何処で誰といる時の自分の状態を分析して考えられました。
自分という言葉も自らが分かる なのか 自ら分るなのか語源を調べて考えてみようと思いました。文明開花がもたらした意識改革は東洋的な自己理解とは異なりつつ整理できないままでしたが本書で整理できました。 -
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平野啓一郎によるサロメ。解説でご本人が述べられていたが非常に少女性があるサロメになっている。好きな男を振り向かせようとして一生懸命なサロメ。だけど振り向いてくれず最後は殺してしまう。ヘロデも娘を振り向かせようと領土の半分を与えようとする。耽美的になりすぎず一方でサロメ独特の魅力も残したままうまく訳されていると思う。
平野さんの解説も出色で世紀末の京都の雰囲気が懐かしかった。田中さんのワイルドに関する解説もワイルド、サロメ理解を深めてくれるもので、田中さんのアドバイスがあっての平野訳ということでもあるのだろう。リヒャルト・シュトラウスのサロメとは違うということも解説を通じて知ることができた。
宮本亜門による舞台は見てみたかった。舞台は終わってしまうともう見れないから残念だ。当たり前なのだけれど。 -
購入済み
『とある魔術』世界の根源の考察
〇聖トマスとはトマス・アクィナスですね。
宗教と科学、神中心と人中心の両立を
考えた?
〇もちろん現代人にとっては
科学的に人造人間を作るとしたら今後かな?
でも、世界のことわりを知ったら、
錬金術的に実現していたかもしれない。
〇両性具有者は単に両性を備えるだけでなく、
善悪とか全てにわたって統合されているようだ。
世界とか存在そのものか?
〇堕落司祭がもっと大きな堕落から
堕落的に弱まっていて
むしろ敬虔な修道僧にも見えるというくだり。
(カラマーゾフ家の父親?水商売を振興する?)
托鉢僧が、知的に低俗でも労働している者へ
引け目を持っていること。
一般的な宗教的高みに対して
観察者である語り手は
堕落や労働ともある意味同列に考え、
また、錬金術、異教にも
公平な目を持っている。(混乱かも?)
〇エンターテインメント方面で、
アニメ『とある魔術の禁書目録』というのが
あるが、そのエピソードとして、素人が
魔術を使うことになって
部屋全体のものの配置に合わせて
机上に小物を並べるところがある。
小物と部屋全体が同調する。(風水か?)
『日蝕』でも村の地図的配置が魔術に
関係しているようだ。
司祭が堕落したり、観察者が来ることなど
起こること全てが真摯な錬金術者の作業
によって、そうなるようにされたのかもしれない。
〇両性具有者の登場やその後について
迫真の描写だと思う。引き込まれる。 -
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ネタバレ表題作を含む、6編の短編が収められています。
どれもちょっと不思議で、背中をぞわぞわ感が這いあがってくる平野氏らしい物語。「火色の琥珀」は、火に性的興奮を覚える(?)いわゆる火フェチな男性の話。リアルで怖い。本当に変態的な(失礼)フェチの人とかに取材して書くのかなぁこういうの。想像力のたまものかなぁ。
「透明な迷宮」は海外で変な集団につかまってしまった男女のその後…。これも最後が怖い。AをBと思って行動していたら実はBはAだった、それで今度こそ本当にBをAと思って行動しようと思ったら今度はAがBだった、みたいな。結局どこからどこまでが自分の真実の感情なのかわからない、どうすりゃよかったのかもわからない~。こわーい!
「Re:依田氏からの手紙」は時間感覚に異常をきたした男性の物語。1時間が1分に感じられたり、逆に1分が1時間に感じられたりする。退屈な授業が長く感じられて、楽しいことをしていると時が経つのがあっという間に感じられる…という経験は誰でもある。それがすごぉく極端になって、日常生活に支障が出てくる。これも描写がリアルでぞぞぞぞっとする。小説の構造も、本人になりかわって、その体験を小説風に仕立てた人物が、最後に本人に「ところで、いまの一、二分のやりとりはどれくらいに感じられるのか?」と聞くと、さらりと恐ろしい答えが返ってくる、という展開でスゴイ。 -
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ネタバレ平野啓一郎くんの壮大な長編。
壮大すぎてレビューが長くなりそうだけど書いてみる。
舞台は21世紀半ばの近未来。
私たちは、いろいろなものが進化しすぎて複雑化し、世の中がこの先どこへ進んでいくか想像もつかないけど、小説の中ではやはりまだまだ世界は複雑に進化している。
整理すると…
○人類は火星に降り立つ
○アメリカはアフガン戦争に続き、「東アフリカ戦争」なるものに介入している
○東京大震災がおこり、甚大な被害が出た
○テレビ電話的なものが更に進化し、通話相手がホログラムで目の前に登場
○車は「自動運転レーン」を走ったりする(しかしウィルスによって事故ることも)
○「無領土国家」なるものが登場し、人々はアメリカ国籍や日本国籍を持ちながらもその国家“プラネット”の国民にもなれる。国連にも認められている
○コンタクトやサングラスで映像が観られる
○「散影」と言って、街中の防犯カメラの映像を誰でも検索して、顔認識機能などを使って人の足取りを追うことができる
○「AR」と言って、死んだ子どもの遺伝子情報をプログラムし、まるで本当に生きているかのように成長させることができる。ただし光でできているので触れない
などなど…
もっと面白い設定があって全部書きたいけどやめとく。
まぁこのような世界で、医師だった主人公の明日人は、まず東京大震災で息子をなくし、その後心の傷をいやすため(?)宇宙飛行士を目指すことに没頭し、2年半かけて火星への往復を果たしたのだが、その過程で様々なトラブルに見舞われる。
読み終わってみればやはり、これは壮大なようでシンプルな明日人個人の物語なのだと思うが、同時にアメリカの大統領選挙の駆け引きと宇宙開発事業との関係、それに巻き込まれる宇宙飛行士たちがドラマティックに描かれているし、大統領選で共和党が勝つのか民主党が勝のかによってこれからの世界の在り方が大きく左右されるため、個人の物語でありながら世界がどこへ向かうのか、善悪とは何かという物語でもある。
私たちはいかにして、「正しいこと」を選びとれば良いのか。
世界ははたして、「正しいこと(もの)」と「凶悪なこと(もの)」にはっきりと分けられるものなのか。
アメリカ的民主主義は本当に善なるものなのか。
また、この物語の中でもっとも大きなテーマだと思ったのは、私たちは、個人「individual」の中にいくつもの分人「dividual」を持っている、とされていること。
現代を生きる我々も、個人の中に多面性があることは認めているが、近未来はもっとはっきりと、相手やシーンによって「分人」を使い分けている。
職場にいるときの自分と、家族と一緒にいるときの自分は全く別物である、という認識だ。それに合わせて、特殊な整形技術で顔を変える人さえいる。
これは一見、荒唐無稽な設定のような気もするが、現代の私たちは、ネット上では本当の自分とはまったく違うキャラを演じていたりするので、それがますます進んでいくとこういうことにもなり得るのかも…と思った。
とにかく色々な面で興味深い。
明日人の陥る状況がひど過ぎて、もしかして最後には以前読んだ「決壊」のような結末になるのか!?と不安になったけど…最後はシンプルだけれども納得の結末でした。
最終章のタイトルが「永い瞬きの終わりに」だったので、こんなにも壮大な物語でありながら、ここまでの章は「永い瞬き」か!?深い!と思った。
やっぱりレビューが長くなりすぎた。
ちゃんと読んで下さった方、ありがとう。 -
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ネタバレありきたりな言い方しかできないけど、ほんとに本当に、読み応えのあるすごい小説です。
「ドーン」も、宇宙開発から米大統領選まで、すごい壮大な話でありながら、最終的には「愛」のストーリーだったことに驚かされたけど、これはタイトルからしてもちろん「愛」の話です。
「愛とは何か」っていう究極の問いから書かれた小説なのか、分からないけど、お腹に「ずん」と来る読み応えのある場面が随所に出てくる。
事故の場面、事故にあった女優をたすけた主人公の“相良”が、彼女に会いに行く場面、彼女と体を重ねる場面、「魔性の女」と言われた彼女が縁を切れなかったヤクザな男との対決場面・・・。
あと、いい小説は、脇役のキャラが良い。興奮して自分の言うことに「ええ!ええ!」と相槌を打ちながらしゃべる「曾我」、小さなことでも大きなことでも驚きを「マジっすか」で表現する「緒方くん」。義足を作る装具師の「淡谷大三治(あやわだいさんじ)」。
「かたちのない愛」「かたちだけの愛」「愛のかたち」。
相良を導いた女性が言う、「愛にはかたちも大事ですよ。単なる恋とは違うんですから」。
うーん、深い!!!
平野くんは、たまたま小説家になったけど、もしかしたら宇宙飛行士になっても医者になってもデザイナーになっても一流なんじゃないかな、と思った。 -
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ネタバレ短編「清水」
中編くらいの表題作「高瀬川」
詩「追憶」
2つの小説が並行して進む実験的な「氷塊」
の4つが入っています。
「高瀬川」と「氷塊」はすごく良かった。
「高瀬川」は、最終的にパンティがペットボトルに入って流れて行っちゃう話。
その情景がすごく印象的なのと、コトに及ぶ男女の会話のぎこちなさが良い。
村上春樹の小説で男女の会話がウィットに富んでいてリズミカルな感じなのと真逆で、すごくぎこちなく恰好悪く描いているのが妙に魅力的。
「氷塊」はページの上半分が少年目線、下半分が30代の女性目線で進んで行って、ときどき真ん中に共通目線の文章が差し込まれる。
どう読むかは読者次第だと思うが、読み進め方によって印象も変わるだろうし、とても面白い。
共通の文章の差し込まれる感覚が、最初は長く、後の方は短くなっていくので、小説にスピード感が出てきてドキドキする。
おもしろかった。 -
購入済み
非常にリアリティと親近感を覚えます。
しかも、その前後の2人の心理、回想、受能動的な先への向かい、
身に覚えすら感じ、震えと奇妙な安堵すらもたらしてくれました。