平野啓一郎のレビュー一覧

  • 決壊(下)
    再読。

    私が平野啓一郎先生の本に嵌る切っ掛けとなった本。

    2011年12月、これまで痛快娯楽小説しか読んでこなかった私が、単なる推理小説だと思い購入。

    読み終わると共に放心状態に陥った。
    感想は特に記録していなかったのだが、今でも覚えているのが、「この作者、天才!?」ということだけ。

    それか...続きを読む
  • ドーン
    すごい。こういうのが読みたかった。

    今の10代が30代、40代として活躍しているような近未来。
    大震災後、有人火星探査、可塑整形、散影(divisual/監視カメラのオープンなネットワーク)、AR(死んだ人間のその後の人生をプログラムし、立体映像化する)、分人主義(dividualism)、生物兵...続きを読む
  • かたちだけの愛
    平野先生の作品の中では、「決壊」が一番好きだったが、今日から「かたちだけの愛」が一番好きな作品になった。

    「決壊」や「葬送」に比べると話のテンポが早く、物語にどんどん引き込まれ1日で読み終えてしまった。

    こんなに美しい小説を読んだことが無い と感じる程、文章が美しい。

    「あわや だいさんじ」登...続きを読む
  • 葬送 第二部(下)
    月並みだが、死と生を対照的に描ききった佳作であった。ショパンの死。一気に死ぬのではない。死んだ後も緩慢に過酷は続く。この感覚はかつてトルストイの作品だったか、感じたことがある。対して、ドラクロワの生。他の人物もそうだが、俗物性がこの物語の主題であったように思う。ショパンが姉に会えた感動を私も分かち合...続きを読む
  • 葬送 第二部(上)
    ショパンのピアノ観、演奏。夫の凡人性を自覚したヴィヨ夫人とその後のヴィヨ。ミツキェヴィチのイデオロギー、宗教にとらわれていくさま。スターリング嬢の愛によって正当化した暴走ぶり。サンドのショパンを忘れた日常。ショパンを通して語られた母語が人生に持つ意味。ドラクロワとヴィヨ夫人による天才論も白眉。
  • 葬送 第一部(下)
    第1部の締めは見事に芸術の本質をえぐっている。

    ドラクロワの使用人ジェニーがことのほか好ましい。そして、ドラクロワの人間味も。

    精神的なひ弱さ(ショパン)、傲慢さ(サンド)が恋愛の末期を通して、描かれている。いつの間にか感情移入している。そして、何かの教訓を引き出そうとしている。

    中年のビルド...続きを読む
  • 葬送 第一部(下)
    読み終わって放心状態・・・。

    何と言う世界観・・・。

    文章で、これだけの世界を伝えられるのは凄い!
    圧倒的な文章力、表現力。

    一部の上巻から、随分主人公たちに動きがあり、お話としても面白いのに、とにかく文章が凄い。

    一行読む度に溜息が出る。

    気に入った場所に付箋を付けながら読んでいったら、...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    読書感想文は苦手なのだが、この小説に感想を書こうなんて百万年くらい早い気がしてきた・・・。

    再読しなければ、感想など書けないような、
    そんな壮大な作品だった。

    読み始めて挫折されている人が多いようだが、私も実にその一人である・・・。

    読書にじっくり時間を割けないのであれば、
    この作品は読まない...続きを読む
  • 決壊(下)
    『だから、こんな世の中イヤだと思ったらさ、やっぱり、とうてい社会が受け止めきれないような過剰な方法を選ばないと。そうなると、もう無差別殺人しかないわけ。別に大袈裟なことやる必要はないんですよ。でっかい建物壊すとかさ、大義名分を掲げてエライ人暗殺するとか、そんなの要らないって。フツーの人が、意味なく隣...続きを読む
  • 決壊(上)
    『その苦しみを優しい寛大さと喜びもを以て耐えている姿にはね、生まれてくるこの子にとってだけじゃなくて、僕らすべての生を生きられるに値すると感じさせるような慰めがあると僕は思う。』

    『この世界に3キロほどの重みを持って、最早、否定出来ないような事実として放り出される前にはね、やっぱり、母親という一個...続きを読む
  • 決壊(下)
    頑丈と思われていたものや、長い間なんとか持ちこたえていたものが、ある日突然崩れ去り、それまで内側に押しとどめられていたものが止め処なく外側に溢れ出す――決壊。
    我々が当たり前のように感じている道徳や、世界の秩序がよって立つ「社会契約」も、ひょっとするとものすごく脆弱なシステムであって、いつ決壊すると...続きを読む
  • 決壊(上)
    ネット社会の到来以前には感じることはなかったであろう違和感。よく知っているはずの人物が、自分以外の人と接するときに見せる意外な一面。他人の日記を盗み見るのとはまた違った感覚。
    我々は身近な人のことをどこまで知っているのか。あるいは本当に知っていると言えるのか。
    地の文の視点は目まぐるしく変わり、すべ...続きを読む
  • 決壊(上)
    「決壊(上巻)」
    きっかけは、日常にあり。


    ある日に見つかるバラバラの遺体が発見された。被害者は沢野良介。平凡な家庭を営む会社員だ。事件当夜、彼は兄・崇と大阪で会っていたはずだった。


    と言う文言が表紙に載ってしまっている。おかげで被害者は分かってしまうし、犯人も何と無く兄じゃないかと推測して...続きを読む
  • ウェブ人間論
    これは間違いなく「トンデモ本」だ。その爆笑性ゆえに5点満点である。2006年刊行であるため8年たって「トンデモ本」になってしまったともいえるが、何せ梅田何がしという「はしゃぐ猿」のはしゃぎっぷりがそもそもトンデモない。まず言っている事すべてが猿でもできる後知恵でしかない。刊行当時はそれこそ未知なもの...続きを読む
  • 賢人の読書術
    読書において重要なのは、本を全部読んで内容を頭に詰め込むことではなく、読むことで衝撃を受け、自分の内部に精神的な組み替えを発生させることである。

    これだね!
  • かたちだけの愛
     約1年前に、新書「私とは何か」を手にとって以来、ようやく分人小説4部作を読み切った。文庫化を心待ちにしていたこの作品のテーマは、ずばり分人と愛。事故で足を切断した女優と、義肢のデザイナーによる恋愛っていうと、ちょっとアルモドバルのトークトゥハーを連想して「献身」がテーマなのかと先入観を持ったのだが...続きを読む
  • かたちだけの愛
    芥川賞作家・平野啓一郎氏による初めての恋愛小説です。『日蝕』や『葬送』などの重厚な作品を書くというイメージが強い方だったので、最初は正直面食らいました。

    この記事を書く際にはじめて知ったのですが、この本は平野啓一郎氏にとって初めての恋愛小説だったのですね。物語は交通事故によって左足を切断するという...続きを読む
  • 決壊(上)
    「利己的な欲望の中で、人間は他者と交わりながら生きている。それはどうやったって否定出来ないよ。『自然は人類を苦痛と快楽という、二人の主権者のもとに置いてきた。』ー吐き気のするようなベンサムの宣言だが、これは俺にとって頭痛の種だよ。一人の人間と向かい合うことを考える時にはね、何を言って否定してみても、...続きを読む
  • モノローグ
    平野啓一郎氏の最初のエッセイ集です。三島作品を論じた「『金閣寺』論」「『英霊の声』論」を中心に、文学、音楽、美術、建築、そして自らの作品について論じたもので、平野文学を理解する『鍵』であると思います。

    本書は作家、平野啓一郎氏の最初のエッセイ集です。対談集である『ディアローグ』とこの『モノローグ』...続きを読む
  • ディアローグ
    作家、平野啓一郎氏の対談集です。ここで語られているのは本当に膨大な情報で、正直な話、ついていくのが本当に大変で、半分も理解できたかどうかは怪しいものですが、『現在』に至る様々な道筋が示されております。

    作家、平野啓一郎氏の対談集です。20代の作家としてデビューした手の頃から31歳当時の時までのもの...続きを読む