平野啓一郎のレビュー一覧
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平野啓一郎さんがこれまで講演で話されたことや、文芸誌などに寄稿された文学・文豪・文学作品への批評やエッセイなどを収録したものとなっています。その冒頭に収録されている或る研究集会の基調講演のテーマが「文学は何の役に立つのか?」ということで、これがそのままこの本のタイトルになっています。
このタイトルを少し噛み砕くと、「文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな価値があるのだろうか」ということになるのかと思いますが、この本を読んで私なりに思ったのは、以下のことでした。
文学は、①社会の不条理に気づかせ考えさせてくれること、②人間関係の機微を巧みな表現で心を動かされること、③現実社会からの解放す -
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アラフォーになって運命の人に出会うという大人の恋愛小説。
40代目前とは、一般的に社会的な地位をある程度確立し、人生設計を考える時期なのかなあと思う。
そんな中で人生のパートナーを決めるというのは、愛以上に安定を求めるものなのかなと私は考えている。
そんな中で、まるで学生の恋愛のように、燃えるような愛に突き動かされて惹かれ合う2人が印象的だった。
こんな運命の人って素敵だなあ。
安定や好条件を投げ打ってでも、愛に従う2人がかっこいいなあと思った。人を愛している自分が好きってめちゃめちゃ素敵だと思う。
2人の大人な価値観とその葛藤もとても丁寧に描写されていて引き込まれた。文章表現がとても繊細で -
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とても良かった、読後感がすごい。。。
平野さんの「私とは何か 個人から分人へ」を読んだ後に読むと、より分人が実感として得られる。
2人の関係は綺麗な愛とは正直言い切れないとは思う。世に言う”不倫”の正当化にも感じ取れる。
ただ、心で惹かれあっただけの2人はどうしたらいいのだろうか。出会うタイミングが異なっただけの2人はどうしたら良いのだろうか。
好きな小説の一節に、「映画も小説も人も、出会うタイミングってもんがあるんだ」という一節がある。
ふむ、難しい問題だ。。。。と思う。
このタイミングは自分で決められるものなのだろうか?
そこで出てくるのは、自由意志・運命論だ。こうなる定めだっ -
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475ページ。長い。
足ることを知る、森鴎外、高瀬船。最愛の人の他者性と向き合う人間性としての誠実さ。
AIアバターという未来風の書き方だが、取り上げている議題は、死生観、格差社会といった、従来からある話。自由死を選ぼうとした母の本当の声を聞きたくてアバターを作るが、それは本当に母親か。いや、本当の母親とはそもそも何か。自分たちは普段、人の一面を見ているに過ぎない。加えて、それは変化していくものでもある。一面、一時それを切りとって、それは本当にそうなのだろうか?
格差社会においては、いろんな意味でもう十分という人々も出てくる。自由死を選ぶことは本当に良くないことなのだろうか。
人間とし -
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善とか悪とか、そういう平面的な判断基準を超越したところにある、二人の関係。
会っている時間の長さや回数、結婚とか付き合うとか明確な言葉で定義された明確な関係でいること、そういう社会的な俗的な一般的な交わりを超えた先にある、二人の深い交わり、心の結び付き、魂の深いところの共有。
その様がありありと、没入できるほどに事細かに描かれていて、ずっとずっと引き込まれた。
現実を生きることで変えていけるのは未来だけではなく、過去までをも変えられるというのは個人的には新しい視点だった。
展開がどうとかではなくて、情念の共有ができた感じ。
これから先も心に残り続ける小説だと思う。
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人にはいくつかの分人が存在する。
家族や友達、同僚、上司と。
それぞれと接する時の自分はテンションや気の使い方も異なっていていろんな自分がそのにいる。
どれが本当の自分なのか。
幸せであっても疲労は溜まるし嫌いな自分は消したくなる。
この装丁はなぜゴッホなんだろうという謎も納得。
ゴッホのいろんな顔と自殺の真実が物語と結びついて後半はかなり面白くなってきました。
そして、終わり方に鳥肌、、。
りっくんを抱きしめる直前に消えちゃったってこと、、?
彼の悔いが残った空白が満たされたから消滅したのかな。
2回も大切な人がいなくなるなんて耐えられないけど、これを読みきって生の尊さが身に染みました。
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「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。」
このパッセージがメインテーマだと思うが、蒔野と洋子の、未来だけでなく大切な過去を変えうる現在を繊細に扱うような生き方をすごく素敵に感じた。
また僕が一番心を惹かれたのは洋子の生き方だった。
世間では彼女のことを「冷たい」「選民思想的」と評する声もある。でも僕にはそうは映らなかった。
洋子はただ、自分に誇りを持って生きることを何よりも大事にしていた。それは他人を見下すためのものじゃない。人に真に優しくするためには、まず自分の自己愛を満たし、自分 -
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「大切な人へ贈る本」という帯が付いていました。
まさにその通りでした。
人を愛するということ…優しさと誇りと悲しみと切なさと、全てが詰まっていて、感動し涙が止まりませんでした。
読み終えた時、序盤の頃に出てきた「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」という言葉の真意に触れた気がしました。
今を生きる私やこれからの私(未来)の考え方捉え方が、過去の出来事に違った意味を持ちうるという。私自身も過去の悲しみを優しく包み込む事ができた気がしました。この本との出逢いに感謝しています。
実話に基づく小説と、冒頭で述べられています。
あまりに -
Posted by ブクログ
現代社会では、私たちの意志と関係なく膨大な情報に晒されている。だからこそ、自分が選び、情報を得たり、楽しむことができる「本」は、私にとって貴重なツールである。
これまで色々な本を読む中で、読みやすい本とそうでない本があり、それを理由に普段から複数の本を同時進行で読んでいた。積読を減らすために急いで本を読んだり、この読み方で本当に良いのだろうかと、どこかモヤモヤしていた。
そんな時にこの本を出会って衝撃を受けた。本を読むスピードが遅いことは、決して改善すべきことではない。筆者の伝えたいことをじっくりと読み解き、深く楽しむためには必要なことなのだと、考えを改めさせてくれた。
本書には、実際の書籍を