平野啓一郎のレビュー一覧
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今の時代の恋愛は、ネット上での出会いが当たり前のようになってきていて、
匿名で知り合ったり、自分とは異なるプロフィールを使って出会ったり、
お互いに、相手をそもそも信用できるのかという段階で、各々に相手のことを好きになろうとする。
彼女のように、自分の愛する人の過去が、全くの別の人間のものだとわかったとき、その愛は果たして本物と言えるのだろうか。
私はそもそも、そんなふうに考えることはおかしいと思う。
作中、美涼さんの言葉の
「わかったってところから、また愛し直す」のように
自分が好きになったのは、相手の過去ではなく、出会ってからずっと自分の隣にいてくれた相手自身だから、、
相手を好きになっ -
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普遍的なテーマを、想像できないストーリー展開、細部まで作り込まれた設定、丁寧かつ端正な美しい文章のお陰で、最後まで期待を裏切らなかった。
近未来という設定で、格差社会、仮想現実、AIなど、今もある舞台装置を拡張しているのが絶妙すぎる。
主題が、格差、死、分人、性、愛、外国人、など色々入り組んでいるが、やはりメインはタイトルの本心なのかな、という気がする。
「もう十分」と言って自由死を望んだ母の本心は?
「平気なの?」と三好に問われて抑制的な返答をした朔也の本心は?
その回答を聞いて“「そう‥」とだけ頷くと、自分の勘ぐりを、そっと僕の目には触れぬ場所に片付けた”三好の本心は?
何が本心なのか -
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僕は、死刑は廃止にすべきと思っている一方で、死刑存置派の人から遺族感情はどうするんだと問われると、いつもゴニョゴニョと誤魔化すことしかできていなかった。
この本は、この点についてもっと深く考えるきっかけを与えてくれた。
死刑の存否にかかわらず遺族のケアが十分に行われていないこと。
死刑と加害者を赦すことは不可分一体ではないこと。
罰ではなく赦しも尊重できる社会にすること。
いずれも僕が十分に持てていなかった視点であり、自分の高慢さを反省しながら読み進めた。
また、僕は、死刑囚の境遇を知り、自分も同じ立場であれば同じことをしてしまっていたかもしれないと共感することこそが、死刑廃止につながると考 -
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平野啓一郎の「文学は何の役にたつか」を読み終えた。エッセイや評論集の類いで、中には僕には難解のものがあったが、大半は興味が惹かれるものだった。
三島由紀夫、ドナルド・キーン、瀬戸内寂聴、大江健三郎、安部公房、古井由吉、ハン・ガン、ドストエフスキー、森鴎外などたくさんの文豪が登場する。
寂聴さんにはかなり可愛がって頂いたようで、お酒の席で寂聴さんからたとえば甘粕正彦のリアルな話を聞いていたなんてことが書かれていると僕までなんかワクワク楽しくなったのだ。
この本を通じて、まだまだ読みたい本、読まなければならない本がたくさんあると実感した。
ちなみに平野啓一郎は「正気を保つため」に文学は役に立ってい -
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すごく面白い小説でした。
前半と後半が別の話のような展開ですが、最初から最後まで展開が多くて一気に読み進められました。
「死」とは何か?
「肉体的に無くなること」「人の記憶や様々な記録から無くなること」など、色々と定義されますが本の中でも登場人物が様々な解釈をしています。解釈は人それぞれで答えなんて無いのかもしれないですね。
主人公ほど若い頃ではないものの、私も父親を亡くしています。大切な人が死ぬことで悲しみ苦しみますが、それを最初に癒して慰めてくれるのは作品でも言及がある通り「ある程度の時間」でした。そして、いつまでも悲しんでいられずに、大切な人の死を受け入れて普段通りに仕事をしなければ -
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「生き返る」という皆が喜ぶであろう架空の現象に対して、それが本当に起こった場合「本人や周りの環境が果たして受け入れてくれるのか?誰しもが喜ぶのだろうか?」など、主人公と家族、周囲の人々のリアルな感情の中で展開されていく上巻の話は、ハラハラして引き込まれるように一気に読んでしまった…!
登場する佐伯という人物は胸糞悪いが、もしかしたら佐伯のような人物は物言わぬだけで周りに居て、知らない間に私の生活を侵食して壊しているのかもしれないと感じるような、首にまとわりつくような気持ち悪さだった。
謎が謎を呼んだ上巻。
下巻をこれからすぐに読み始めます!笑 -
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自分の価値観が変わった本を読んだ時は星を5つ付けることにしている。この本もまさにその対象だった。
文量は多くなく、1時間もかからず読める。その中で、いかに今まで私が犯罪をした人、その被害にあった人、もっといえば「人間」と分類される生物そのものに対する解像度が低かったのだと気付かされる記述が多かった。まさに私は人権教育の失敗の成果物だったのだと思う。
一朝一夕で真逆に考えを変えることは難しいが、どんなに理解できない存在であっても、人間である限り人権があるという感覚は育てていきたい。本当に助けが必要な人は助けたいと思う姿をしていないと、誰かが言っていた言葉を心に停めておきたい。 -
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日記を書いたり写真を見返したりして思い出を振り返るばかりの私を掬ってくれるような一冊。明るい未来のために現在を生きるしい人よりも、過去の記憶を心に大切に携えながら生きるようなとても諦めの悪い人を中心に描いてくれて救われた。そういう意味でわたしにぴったりの本だったと思う未来のために今があると言うよりも、過去を変えてくれるいまの瞬間は多くあるのだから現在を過ごしてみようと思う方が私に合っている気がする。私はそういう後ろ向きな人間だとつくづく思う。
「年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、10代の頃ならば誰もが知っ -
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天才ギタリスト・蒔野聡史と、聡明なジャーナリスト・小峰洋子。細胞レベルで惹かれ合う二人の恋模様を描いた本作は、読み終えた後も、胸の奥で心地よい余韻が鳴り止まない一冊でした。
特に印象に残ったのは、「言葉の旋律」「現実と虚構の融合」「ラストシーンの希望」という三つの要素です。
1. 音楽のように響く、言葉の旋律
この作品に散りばめられた言葉の数々は、まるで蒔野が爪弾くギターの音色のように、美しく気高い旋律を奏でていました。中でも、私の心に深く刻まれた二つの言葉があります。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」
この本を貫く最 -
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映画→小説→舞台
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言葉にならない。
自分は何者なんだろう。
悠人が自分の苗字が何度も変わることに戸惑うシーン、心が痛かった。
「お父さんが好きだった」への帰着…苗字がどうとか過去がどうとか以前に、その人自身を見つめる大切さ。
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最後スーッと背筋が凍る感じは、星新一の読後感にも似ている。
ラストはルネ・マグリットの『不許複製』。
冒頭をもう一度確認してしまった。
「ある男」は誰だったのか。
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上記は映画を観た後のfilmarks感想だが、小説は映画では描ききれなかった部分を淡々と埋めてくれる感じがして、より一層心を掴まれた。