平野啓一郎のレビュー一覧
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20年ほど前に一度読んで、今回再読。難解な漢字、擬古的と言われる文章、歴史的にも知らないことが多い中世ヨーロッパ、そしてキリスト教。20年経っても、私の知識は然程の進歩はなく、やっぱり難しいわ〜と思いながら読んだ。
だが、両性具有者が登場してから物語にどんどん引き込まれて、日蝕の場面では自分もその場にいるような、そんな感覚に陥るほど物語にのめり込む。こうなってくると、難しい漢字も読みづらい文章もむしろリズムにのって読めてしまう。20年前も同じように日蝕の場面に衝撃を受け、その後なんとなく中世ヨーロッパが気になり出した。だが、衝撃は今回の方が上回った。少しは20年で場面を思い描けるだけの多少の知 -
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著書で語られる分人という考え方は、ずっと頭の片隅にモヤモヤしていた対人関係の悩みに気づきを与えてくれた。
個人は分けられない単位、しかしその個人には他者との関係で生まれる分人で構成されている。
中学、高校、大学の友人と関わる自分、職場の人と関わる自分、夫と関わる自分、家族と関わる自分、どれもなんだか少しずつ違う。
どれが本当の自分なのか?といった長年の疑問、とライフステージに変化するごとに心地よいと感じる交流関係が変わってきたことの違和感。
夫や現職の同僚と会話する時間が心地よい、古い友人とはあまり会いたいとは思わない。けど、友人にとっては寂しい人、釣れない人と思われてないかみたいな自意識 -
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交通事故により片足切断という悲劇に見舞われ、悲しみと不安に沈む女優・叶世久美子(本名中村久美)と、たまたま事故から救助し、何の因果か彼女の義足のデザインを任される事になった主人公・相良郁也が、徐々に彼女と心を通わせていくラブストーリー。
「焦らず少しずつ、未来のことを考えていきましょう。不安を感じる時には、どんなことでも相談してください。解決のための具体策を、一つ一つ考えていきましょう」
「思ってること、感じていることを一つ一つ話していけば、一緒に考えられるんだから。少しずつでも前進するよ」
「人のすべてなんて、見えるはずがない。だったら、自分の一番良いところが見えるようにすべきだよ。誰にだ -
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物語を
メカニズム、発達、機能、進化
の観点から考察してみる。
創造的な誤読を楽しむ。
ケータイ小説「恋空」について、文体の特徴として、形容詞、形容動詞、副詞といった修飾語が極端に少なく、まるでマンガの一コマを思わせるテンポ感、という平野さんの指摘に納得。
物語の中で、主人公がA君について語るとき、A君はそういう設定の人なんだろう、と思い込むことがあるけれど、それは主人公から見た視点のA君であり、そこに主人公という主語を補填する述語も含まれている、ということは新たな気づきであった。
言われてみれば、それは当たり前なんだけれど、創作物を読んでいる、という前提がその感性を鈍らせていたように思う -
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「人生は大きな不協和音だ」
これを20代で書ききった作者に感銘を覚えました。
こんな描き物をされている最中、作者はすごい濃密な空間にいたんだろうなと、想像すると畏怖を覚えました。
人は死ぬ、という事をこの2部ではずっと突き付けられた時間になりました。
死が身の回りから現代的に忌避されている中、こんな形でしか段々と人へ伝えられなくなってきている気もします。
天才ショパンを通して人生の歩み方を、凡人ショパンを通して死ぬ過程とは何かを問いかける。
読んでいる途中より、読み終えた後の今の方が、頭の中でメロディーを奏でているのがすごく不思議。
思考から他の事が消え去るくらい、いい時間になりま