平野啓一郎のレビュー一覧
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すごく面白い小説でした。
前半と後半が別の話のような展開ですが、最初から最後まで展開が多くて一気に読み進められました。
「死」とは何か?
「肉体的に無くなること」「人の記憶や様々な記録から無くなること」など、色々と定義されますが本の中でも登場人物が様々な解釈をしています。解釈は人それぞれで答えなんて無いのかもしれないですね。
主人公ほど若い頃ではないものの、私も父親を亡くしています。大切な人が死ぬことで悲しみ苦しみますが、それを最初に癒して慰めてくれるのは作品でも言及がある通り「ある程度の時間」でした。そして、いつまでも悲しんでいられずに、大切な人の死を受け入れて普段通りに仕事をしなければならない。強引に戻した日常に揉まれて、少しずつ大切な存在が薄れていく。
残酷な現実の中で働いて生活していかなければならならい、感情のコップに水が溢れそうなときに大切な人の死を思い出すと水が溢れてしまいます。
上手く言えないけれど、思い出すタイミングは残された人が決めて良いのだと思います。何かに迷ったときは「あの人ならどうするか?」、少し心細いときは「あの人なら何て言葉をかけてくれるか?」、生きている日常で感情がいっぱいいっぱいのときは思い出すトリガーとなりそうなものから少し距離をおいておく事も大事なのかもしれないです。
そうやって死者との距離感が上手くなっていくことで、人はやっと大切な人の悲しみや苦しみを乗り越えられるのだと思います。 -
Posted by ブクログ
「生き返る」という皆が喜ぶであろう架空の現象に対して、それが本当に起こった場合「本人や周りの環境が果たして受け入れてくれるのか?誰しもが喜ぶのだろうか?」など、主人公と家族、周囲の人々のリアルな感情の中で展開されていく上巻の話は、ハラハラして引き込まれるように一気に読んでしまった…!
登場する佐伯という人物は胸糞悪いが、もしかしたら佐伯のような人物は物言わぬだけで周りに居て、知らない間に私の生活を侵食して壊しているのかもしれないと感じるような、首にまとわりつくような気持ち悪さだった。
謎が謎を呼んだ上巻。
下巻をこれからすぐに読み始めます!笑 -
Posted by ブクログ
自分の価値観が変わった本を読んだ時は星を5つ付けることにしている。この本もまさにその対象だった。
文量は多くなく、1時間もかからず読める。その中で、いかに今まで私が犯罪をした人、その被害にあった人、もっといえば「人間」と分類される生物そのものに対する解像度が低かったのだと気付かされる記述が多かった。まさに私は人権教育の失敗の成果物だったのだと思う。
一朝一夕で真逆に考えを変えることは難しいが、どんなに理解できない存在であっても、人間である限り人権があるという感覚は育てていきたい。本当に助けが必要な人は助けたいと思う姿をしていないと、誰かが言っていた言葉を心に停めておきたい。 -
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私の中で『サロメ』といえば、ビアズリーの悪魔的で蠱惑的なあの絵、あるいはモローのあの幻想的でアイコニックなあの絵。どちらもインパクト抜群でつい見入ってしまう歴史に残る絵ですが、当の文学作品は読んだことがなく、結局このワイルドの『サロメ』に私を導いたのはやはりビアズリーでした。ビアズリーの生涯を知るにつけて、ワイルドのサロメを読まずにはいられないわけだったのですが、もうひとつ、オスカー・ワイルドという人間への興味も、そこにはありました。
本書はオスカー・ワイルドのサロメを平野啓一郎版新訳として、現代に生きる私たちに馴染みやすい文体で読める、という楽しみ方だけでなく、平野氏によるサロメの解釈、さらには本作にまつわるさまざまなことがらについてのとても充実した解説がついてあって、実際、本編よりこちらのほうに多くの紙面があり、大変読み応えがあります。なんというか、ワイルドもすごいけど、平野氏もすごいというか、さすが一流の文学者だなと。私なんかは、聖書のことなどまったくの無知ですから、ただ本編をはじめから終わりまで読むだけでは、わかったようでほとんどわかっていなかったのだなと解説を読むと感じます。また、平野氏も述べていますが、私のようなビアズリーの絵から入った人間にとっては、ここに描かれるサロメの人物像はビアズリーの絵から連想されるそれとは違った印象を受けます。そこにあるのは、少女の幼気な悪の囁き。たぶん私はまだ本作の半分も理解できていないのだと思います。いろいろ知って、読めば読むほど、景色が広がる作品なのだと思います。 -
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平野啓一郎さんがこれまで講演で話されたことや、文芸誌などに寄稿された文学・文豪・文学作品への批評やエッセイなどを収録したものとなっています。その冒頭に収録されている或る研究集会の基調講演のテーマが「文学は何の役に立つのか?」ということで、これがそのままこの本のタイトルになっています。
このタイトルを少し噛み砕くと、「文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな価値があるのだろうか」ということになるのかと思いますが、この本を読んで私なりに思ったのは、以下のことでした。
文学は、①社会の不条理に気づかせ考えさせてくれること、②人間関係の機微を巧みな表現で心を動かされること、③現実社会からの解放すなわち現実逃避することで心を癒してくれること、④新しい価値観を知って多様性のある生き方やコミュニケーションを学ぶこと、
このように、文学(小説)の中の人物を通じて、読者の認識や感情に変化を起こさせる、あるいは経験させてくれる、ということです。
そういう意味では、文学は、世の中を真っ当に生きていくために役に立っている、お金を払って読むだけの十分な価値がある、と言えるのだと私は思います。
また、私が文学に求めるものという観点からの思いですが、世の中にはたくさんの文学作品があって、中には摩訶不思議な世界へ引きずり込んでいくようなものもありますが、それぞれに作者の想いが込められているので、その中には、きっと自分の悩みや苦しみの理解者になってくれたり、自分の想いとシンクロして強く共感できる作品があるはずです。そんな文学作品に出会えることを楽しみに、これからも読書を続けていきたいと思いました。
巻末には、生前親交のあったドナルド・キーン、瀬戸内寂聴、大江健三郎の葬儀で読まれた弔辞が特別収録されており、そこには大先輩作家への敬愛の念を強く感じました。 -
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475ページ。長い。
足ることを知る、森鴎外、高瀬船。最愛の人の他者性と向き合う人間性としての誠実さ。
AIアバターという未来風の書き方だが、取り上げている議題は、死生観、格差社会といった、従来からある話。自由死を選ぼうとした母の本当の声を聞きたくてアバターを作るが、それは本当に母親か。いや、本当の母親とはそもそも何か。自分たちは普段、人の一面を見ているに過ぎない。加えて、それは変化していくものでもある。一面、一時それを切りとって、それは本当にそうなのだろうか?
格差社会においては、いろんな意味でもう十分という人々も出てくる。自由死を選ぶことは本当に良くないことなのだろうか。
人間としての成長、変化だけが、社会を乗り越えるための駆動力なのか。 -
Posted by ブクログ
人にはいくつかの分人が存在する。
家族や友達、同僚、上司と。
それぞれと接する時の自分はテンションや気の使い方も異なっていていろんな自分がそのにいる。
どれが本当の自分なのか。
幸せであっても疲労は溜まるし嫌いな自分は消したくなる。
この装丁はなぜゴッホなんだろうという謎も納得。
ゴッホのいろんな顔と自殺の真実が物語と結びついて後半はかなり面白くなってきました。
そして、終わり方に鳥肌、、。
りっくんを抱きしめる直前に消えちゃったってこと、、?
彼の悔いが残った空白が満たされたから消滅したのかな。
2回も大切な人がいなくなるなんて耐えられないけど、これを読みきって生の尊さが身に染みました。
死んだものは蘇らないから生は尊い。
今を大事に噛み締めた生きなければ。
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Posted by ブクログ
「大切な人へ贈る本」という帯が付いていました。
まさにその通りでした。感動し涙が止まりませんでした。
読み終えた時、序盤の頃に出てきた「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」という言葉の真意に触れた気がしました。
今を生きる私やこれからの私(未来)の考え方捉え方が、過去の出来事に違った意味を持ちうるという。私自身も過去の悲しみを優しく包み込む事ができた気がしました。この本との出逢いに感謝しています。
実話に基づく小説と、冒頭で述べられています。
忘れられない人がいる方、ぜひ読んで欲しい。人を愛する心がとても美しいです。 -
Posted by ブクログ
現代社会では、私たちの意志と関係なく膨大な情報に晒されている。だからこそ、自分が選び、情報を得たり、楽しむことができる「本」は、私にとって貴重なツールである。
これまで色々な本を読む中で、読みやすい本とそうでない本があり、それを理由に普段から複数の本を同時進行で読んでいた。積読を減らすために急いで本を読んだり、この読み方で本当に良いのだろうかと、どこかモヤモヤしていた。
そんな時にこの本を出会って衝撃を受けた。本を読むスピードが遅いことは、決して改善すべきことではない。筆者の伝えたいことをじっくりと読み解き、深く楽しむためには必要なことなのだと、考えを改めさせてくれた。
本書には、実際の書籍を引用した具体的な毒手術が提示されており、今後の読書生活に新たな視点を与えてくれた。読書の奥深さを再認識させてくれる、思索を深めるための良書と感じた。 -
Posted by ブクログ
死刑制度については勉強不足で存置派とも廃止派とも言えない状態だったが、本書を読んでこれまでにない死刑制度に対する捉え方を知ることができた。テーマの割に薄いこの1冊で、世界の死刑制度の現状、事例、著者の考えが分かりやすくまとめられていること自体も凄い。
特に日本ではなぜ死刑が支持され続けるのかについて著者が考える要因が、どれも思いつかなかったもので印象的。
著者の実体験に基づく考えや、小説家としての発信について触れられていたのもよい。
本書ももう一度読み直しつつ死刑制度に関する他の書籍も読んで理解を深めたいし、著者の作品ももっと読みたい。