nana8さんのレビュー一覧
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「隅々まで遍く幸ある世」を造ることを夢と掲げる木曾義仲。
まずはそのために平家を打倒すると。なぜならば平家は幸を独占しているから。
世話になった中原兼遠に甘いと言われながら、それが理解できないまま旗揚げすると、
平時はどちらかといえば穏やかな気性が一転、源氏の荒ぶる血の故か、バーサーカーと化してしまう。
特に倶利伽羅峠の戦で平家を壊滅させたその戦のさなかの高揚と後の落ち込みの落差が激しい。
京に上った後は、今度は公家や法皇との「付き合い」に翻弄され、人の欲を知り、苦悩する。
また叔父である新宮十郎行家や遠く鎌倉の源頼朝は、同族であっても心を一つにできないことがなかなか理解できない。
今まで -
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松永弾正久秀と三好勢の戦で東大寺の大仏殿が消失するところから物語はスタート。
その後織田信長が正倉院を強引に開けさせ、蘭奢待を切り取らせ、さらに分割してばらまいた。怒りを覚えた東大寺の実祐は、古来からひそかに正倉院を護ってきた遊部にその回収を命じる。
一方、信長とともに正倉院に押し入った商人で茶人でもある津田宗及は、その宝物にほれ込み、なんとか入手できないかと目論み、信長に反旗を翻して征伐された松永久秀の家人だった村上新佐に宝物の奪取を頼む。新佐は宗及の妾を寝取る。
前の関白行空は、信長に滅ぼされた美濃の斎藤氏の家臣の娘お通を預かっていて、東宮の妃の侍女にするが、お通は信長の嫡男信忠と恋に落ち -
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万葉集の中から2首の短歌をモチーフにした短編が7つ。
「紅はかくこそ」うかれ女(遊行女婦)に惑う下級官僚を、年下の上司である大伴家持が歌で諭すが効き目がない話。
「弟」家持が、体が弱く気も弱くて出仕も続かない弟・書持(ふみもち)の将来を心配するが、その書持の言で橘奈良麻呂の変に連在するのを躊躇する話。
「年下の男」年下の家持にかき口説かれる紀郎女が、久しぶりの恋に翻弄される話。
「おその風流男(みやびお)」大名児をめぐる草壁皇子と大津皇子の話を、大津の内舎人だった大伴田主から大名児の妹の沙羅女が聞かされる話。
「醜(しこ)の丈夫(ますらお)」田辺夏雄が主の藤原麻呂とともに陸奥へ蝦夷の征伐に行 -
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「個人individual」という単語は否定語inと「分ける」というdividualでできていて、「(もうこれ以上)分けられない」という意味なのだそう。ひと(人格)はこれ以上分けられないのかというと、そうではなくて、対応する相手や場面によりすこしずつ違った人格が生じていて、しかしそれは何も多重人格という意味ではない。それについて平野啓一郎さんは小説を書きながら気づき、「分人」と名付けて、「ドーン」と「空白を満たしなさい」という小説を書き、「私とは何か-「個人」から「分人」へ」という新書を書かれた。人に合わせて自分を変えるというと、マイナスの印象もあるが、「分人」という考え方を使うとそうわなくて