あらすじ
「お前は鳩に選ばれたのだ」
小森椿27歳、会社員。
鳩に謎の使命を背負わされる!
文学界を席巻する新星が放つ、
摩訶不思議な鳩をめぐる物語。
一人暮らしのベランダに突然、真っ白な鳩がきた。
怪我をしているらしく、飛び立つ気配もない。
小森椿は仕方なく面倒をみることにする。
白鳩に愛着がわいてきた数日後――。
帰宅途中、謎の男に奇妙な宣告を受けた。
「お前は俺の次の『鳩護』になるんだ」
鳩を護ることを宿命づけられた者。
それが鳩護だという。
なにその宿命? どうして私が?
混乱する椿をよそに、
白鳩は椿の日常を否応なく浸食していく!
スピンオフ小説『福田さんの白い羽根』収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
単行本で読んで、文庫本で2度目です。
見た目は表紙のようにかわいい白い鳩。しかしその鳩には・・・という、河崎さんならではの動物感のある物語。
それだけでなく、日常の女子のリアルな、甘すぎない生活も描かれていて、これまでの作者の小説とは別の分野を切り拓いたエンターティメント小説になっている。ゾワっとさせるところは変わらないのでご安心を。
中身のことは単行本で書いたので、なぜ川上和人さんが解説をしているのかを書いておきたい。
川上さんは鳥類学者で、フィールドワークに重きを置いている、つまり実際に海鳥の調査のために孤島に赴く。ハエが大量に口に入ってきても、ネズミが海鳥を全滅させる様子を目の当たりにしても、過酷に鳥を追い続けており、机上の学者ではない、つまりは身体を張って学問する学者さんなのだ。
その川上先生が、この小説の解説を書いたのは、河崎秋子という作家が「動物との距離を見誤らない」作家と見抜いたからだ。
それもそのはず、もとは羊飼いで、身体を張って動物と向き合ってきたし、ニュージーランドや、師匠のところで勉強を重ねてきた。去勢も出産も生死にも携わってきた。一歩外に出ればヒグマもでる、エゾシカもいる、キタキツネもいる。動物の現場を知る人だからだ。
川上先生は小説の中身についてはほとんど語っていないが、作者の動物を見る目と観察眼、甘すぎない距離感を絶賛している。
Posted by ブクログ
河崎秋子『鳩護』徳間文庫。
『鳩護』に選ばれた者の数奇な運命を描く不思議な小説。これまでの河崎秋子の小説とはテイストが異なり、中村文則の『掏摸』に雰囲気が似ている。
主人公の小森椿という女性会社員の漏らす仕事の不満がどこか滑稽で、やや深刻なテーマの中で一服の清涼剤になっている。
ある日、マンションに独り暮らすアラサー会社員の小森椿が外の物音にベランダを見ると、真っ白な鳩が蹲っていた。鳩は怪我をしているらしく、飛び立つ様子もなく、仕方なく暫くの間、面倒を見ることにした。白鳩は椿に懐き、椿もハト子と名付け、可愛がる。
そんな中、椿は会社の帰りに幣巻と名乗る怪しい男に「お前は俺の次の『鳩護』になるんだ」と奇妙なことを告げられる。鳩を護ることを宿命づけられた者。それが鳩護だというのだ。
『鳩護』に選ばれた者に訪れる幸運とその幸運に支配され、道を踏み外す歴代の『鳩護』たち。白鳩とかつての『鳩護』たちの見せる夢に翻弄される椿の運命は……
本体価格810円
★★★★★
Posted by ブクログ
出版社に勤務し一人暮らしをしている椿のアパートのベランダに、ある日白い鳩が飛び込んできた。怪我をしているのか飛び立たない白鳩に椿ははと子と名付け、世話をしていた。そんな折、公園で鳩に餌をまく謎の男に「お前、白い鳩を飼っているな?」と声をかけられる。男の話によると「鳩がお前を選んだ」「お前は次の鳩護になる」という。いきなり訳の分からないことを言われ思考が追いつかない椿だったが、その日から不思議な夢を見るようになって…。
とても不思議な世界観だった。戦場や報道で活躍した伝書鳩のこと、競走馬のことも興味深かった。表紙絵からは一見ほのぼの系に見えるけど、実際はダークでホラー味も感じた。でもだからこそ、椿が真っ白なはと子に癒される気持ちがよく分かった。胸糞悪い内容も多かったけど、最終的には癒された。何より主人公の椿が鳩護の恩恵によって得をしようと思わない無欲な所に好感が持てた。唯一のあったらいいなと思う幸運がベネディクト・カンバーバッチに街で遭遇すること、とか。そんな幸運あったらいいなと私も思いますよ。(笑)
河﨑秋子さん、こういうカジュアルなのも書くんだ〜、と思いながら読みました。
舞台が東京で、出版社勤めの女性小森椿が主人公。
部屋のベランダに白鳩が迷い込んできて、好きでもないのに面倒をみていたら、「お前は次の鳩護だ」と先代の鳩護の幣巻という男に言われ。その後、初代や何代かの鳩護の夢を見て、最後、「ヤバい男」の鳩護をぶん殴って終わる…。
と、書き出すとよくわからない話になってしまったけど、なかなか爽快だった。
スピンオフの短編もついていて、ちょっとオトク感もあったり。
Posted by ブクログ
河﨑秋子さん初読み『鳩護』の感想と概要になります。
概要です。
パッとしない日常を過ごす小森椿は、今日も通勤を邪魔する鳩の糞に苛立ちながら出社する。まともに仕事をしない先輩の不満を胸に抱きながら帰宅したある日。ベランダに白い鳩が落ちていた。奇妙な白い鳩との出会いから椿は鳩護の存在を知っていく。
感想です。
初読み作家さんですが読みやすくて、椿の心の中での愚痴や白鳩と次第に仲睦まじい関係に変わっていく様を読んでいると、何度か笑みが零れてしまう癒しの作品でした。起承転結という面では物足りなさがあったものの、クスッと笑いたい方にオススメです♪
Posted by ブクログ
本屋さんで予約して、発売日に購入。もうちょっとほんわかした話かと思ったけど、意外と歴史的なシーンも入っていたりして、大変楽しく読みました。期間限定で読めるスピンオフ「福田さんの白い羽根」、本編の福田さんはもうちょっとまともな印象でしたが、こちらでは傍若無人っぷりがハンパなくて、面白かったです。
Posted by ブクログ
会社での同僚とのやりとりや口に出さない本音の部分がリアル。それとは対照的にハトや競馬のパートはファンタジーもありつつ、生き物と人間の欲のようなものを感じるある意味においてのリアル。
Posted by ブクログ
文庫版を手に取り。表紙の鳩がかわいいなと思いましたがストーリーはなかなかハードと言うか想像していたような明るめの話ではありませんでした。読後思えば河﨑先生が書くならさもありなん、なんですが。
なんだか不思議な話でしたね。非現実的という意味ではファンタジーなんでしょうけれど少しホラー要素やお仕事小説の趣もあり独特の世界観です。
主人公が若い女性なのに疲れ果てていておじさんのような愚痴や行動を取るのが独特の味わい(?)で親近感が湧きました。でも本作の好き嫌いは結構分かれそうな気がします。
ともぐいを最近読んでしまったせいか、やはり迫力や訴えるものについては比べてしまいました。
話の内容的にはおそらく、本作の方が好きだという人が多いように思いますが、自分はともぐいの方が作品としては好きでしたね。
競走馬についての描写が良かったですね。馬の繁殖については世間では知らない人の方が多いと思うので。