有栖川有栖のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いつもの有栖川有栖作品とはすこし違った味わいが感じられる短編集。
黄色と黒の外壁を持つド派手な豪邸を建て、外装や室内も虎モチーフで埋め尽くしていた名物タイガースファンの男が自邸で死体となって発見される『猛虎館の惨劇』が特に気に入った。
設定がバカミス風で愉快なだけでなく、トリックも面白かった。
ラストの恋愛短編『恋人』は、成人男性が10歳の少女に性欲も含めた恋情を抱くストーリーのため、手を出すシーンはないとはいえ個人的には嫌悪感をいだいてしまった。
ただ、とある行為が性行為の代替として描かれているのは、いかにも文学的で興味深かった。
もう会うことのない彼女を想って主人公が見る夢の内容もふまえ -
Posted by ブクログ
今回も読みすすめる中で、自分の好みが分かって大変面白く読み進めた。
以下、面白かった順に番号を振っている。
⑤『ブラジル蝶の謎』
④『妄想日記』
③『彼女か彼か』
⑥『鍵』
①『人喰いの滝』
②『蝶々がはばたく』
やっぱり自分は島田荘司が好きなんだなと思いました。今回の短編集は「彼女か彼か」のような進め方も面白かったし、「蝶々がはばたく」のような消失トリックも面白かった。時代もあるのかもしれないが、当時読んでいたら面白さが違ったかも、と思う作品もちらほら。単純にいろんな作品に会えて読んでいて面白いので、国名シリーズは最後まで行こうと思います。 -
Posted by ブクログ
犯人の動機に納得できない部分があった。犯人はある女性をほとんど宗教的情熱を持って信仰し、その情熱のままに殺人を犯す。まるで宗教者が悪魔や鬼と対峙したかのように。そしてその信仰は夕日とも重なる。また作中ではその犯人が「若きウェルテルの悩み」のウェルテルに重ねられるなどいささか文学的すぎる。世の中のほとんどの人間はウェルテルに共感はできても本当に実行はしない。
また動機が情緒的なのに対して、犯行が用意周到すぎる気がした。
ただ狂信的とも言える犯人の信仰と犯罪が夕日の切なさとかかってくる展開は良い。容疑者Xの献身を思い出した。あと動機なんて後付けだと言った探偵もいたな。