有栖川有栖のレビュー一覧
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ネタバレ読者の興味が、記憶喪失の男の正体、女性の恋愛の行方、有栖川の新作の構想、事件の調査と一気に増える関係者、と変わっていき、ちょっと読みづらいところがあった。プロローグが魅力的すぎたからだ。中盤からは一気に読めた。
犯人の動機が見当たらないことが事件の謎である。被害者が殺される理由が分からない。必然的に、記憶喪失の男、記憶のない過去の出来事、が怪しいのだが、行方不明になっている。
この男、事件には部外者なのか、中心人物なのか、よく分からず、事件の全貌がつかめない。家族に馴染めず、行方不明になっていても、またふらっとどこかに行ってしまったのだろう、と思わせてしまうのが本作の特徴である。そこから関係者 -
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前作が番外編的だったのに対して、今作はバッチリ本格ミステリが楽しめる。
中でも表題作は抜群に面白かった。
『スイス時計の謎』
論理的に犯人を特定していく。
一つずつ可能性を消していく論理の組み立ては、ゴチャゴチャしていた頭の中が、火村の言葉によってどんどん軽く、きれいになっていくようでとても気持ちがいい。
火村が論理を積み上げ、NOとは言えない状況を作り出していく過程に痺れる。
このメンバーだったからこそ成立する設定も本当によく考えられている。
精密なスイス時計のようにすべてがカッチリとはまっていくような、完成度の高い大満足の作品。こういうのが読みたかった!
アリスの高校時代の切ない思い出も -
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番外編のような特別感があって、ファンはより一層ファンになるのでは、という一冊。
私ももれなく大ファンになりました。
『わらう月』
「子供の頃、月がこわかった」から始まるのが印象的。月が怖い、という感覚がどこかわかる気がする。
『完璧な遺書』と同じく、語り手の彼女を通して火村・アリスの姿を体験できるのが面白い。
そして最後の一言。思わず「上手い…」と声が出た。
『暗号を撒く男』
解決編は、アリスがクイズのようにヒントを出しながら進んでいくのが楽しい。
読者を飽きさせないために、毎回違う楽しみ方を用意してくれるのが嬉しい。
『赤い帽子』
火村・アリスは登場せず、いつもは脇役のジャニーズ系イケ -
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『完璧な遺書』
「殺すつもりなんかなかった…」という犯人の語りから始まる。
大好きな倒叙がついに来た!(゚∀゚)
犯人は周りの気持ちも状況も、勝手に自分に都合よく解釈してしまうタイプ。
その勘違いぶりが気持ち悪くて、正気を疑うような言動が出てくる。
倒叙なので、犯人の独りよがりな頭の中の自問自答が面白い。
語り手である犯人の目を通して、火村の鋭さを体験できるのが最高に面白い。
火村が核心に触れるような質問をするたびに、思わず心の中で「火村先生さすが!」とガッツポーズ。
こんな嫌な奴が相手だからこそ、スカッとした。
でも正直言うと、犯人にはもっと白を切って粘ってほしかった!倒叙好きとしては、 -
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火村とアリスが毎回違う切り口で事件に挑む。
ぶっ飛んだシュールなトリックもあれば、軽くてユーモアがあるものまで、作品ごとに味わいが変わるので全く飽きずに最後まで楽しかった。
『ブラジル蝶の謎』
大手サラ金社長の相続をめぐり、離島で暮らしていた弟が呼ばれ、会社役員たちと対立する。その構図だけで物語に引き込まれる。
博物館の蝶々オタク学芸員の話も興味深くて、思わず蝶々について調べてしまった。
火村の最後の一言が気になる。
『彼女か彼か』
「あらら〜ン、またいらしたの♡刑事さ〜ん」と、“Mr.マリリン”というバーの蘭ちゃんの語りで進んでいく構成が面白い。
Audibleのナレーターは、インパクト -
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学生アリスシリーズ三作目。
隔絶された二つの村で起こる複数の殺人事件。
分厚い本なので、これは時間かかるかなぁと思っていたけど、読み始めると止まらなかった。一つの小説だけど、二作読んでいるみたいなところもあって、なかなかの充足感。
EMCメンバーも分断され、それぞれが立ち向かう推理が面白い。江神さんの華麗な推理も、アリスたちのあーでもないこーでもないと話し合いながらの推理も、どちらも楽しめた。
傷心のマリアが、またEMCに戻ってきますように。
設定も絶妙だし、トリックもなるほどだし、個人的にはアリスたちの会話のノリがけっこう好き。
有栖川有栖、読み始めてよかったなぁ。読む作品がたくさんあ