あらすじ
宗教団体〈人類協会〉の総本部にいったんは温かく迎えられた英都大学推理小説研究会の一行だったが、殺人事件が突発するや問答無用の軟禁状態に。協会幹部は警察に通報せず自分たちで犯人を突き止めると宣言。自由を回復するため推理研のメンバーも助力を約すが、調査は思うように進まない。そして焦躁の一夜が明けた総本部に銃声が轟き、さらなる犠牲者の存在が明らかになった。抵抗運動も試みつつ真相究明に努める推理研会員。思いがけない人物の登場によって事態はまたも転回、謎は深まったかに思われたが。大いなる混沌に秩序をもたらす名推理、江神シリーズ第4作となる本格巨編。
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Posted by ブクログ
マリアがいいキャラクター。この辺りはシリーズものの良さだよねえ。
やはり宗教とミステリは親和性がある(というよりも、とても興味を惹かれる)なあ。宗教についての深掘りがもっとあっても、とは思ったが、世俗的になってしまうのも違う気もするし。
とにかく面白かった。
Posted by ブクログ
94点:「辛辣な奴やな。まぁ、図星か。ここだけの話やけど、つい最近、失恋してな。色んなことがどうでもようなってる」
一瞬、絶句した。
EMCの面々がわちゃわちゃ話しているのも面白いけど、誰かと誰かが2人だけになったときの会話も面白い。モチとアリスが2人で話している時にそれまでの会話の文脈と全く関係なくいきなりぶっこまれるモチの失恋話。アリスと同様にこっちも絶句して、少しして笑ってしまう。なんかふと喋ってしまうモチがなんだかいとおしくなって。
Posted by ブクログ
上巻ではわりと平和な感じだったけど下巻は凄い。
就職活動中なのに行動力がヤバい。普通なら躊躇ってしまうだろうに…
最後に全部謎が解けた時にはなるほどそういえば…みたいに思ったりして。
ただ犯人は全然的外れな予想だった
Posted by ブクログ
「丸ごと新興宗教の街」(バチカン市国みたいな?)にそびえ立つ城に江神を救い出すつもりで乗り込んだアリスたち英都大学推理小説研究会のメンバーは、ミイラ取りがミイラになった状態。
謎を解かないと解放してもらえないゲーム?
ミステリのネタバレほど語ってはいけないものは無いので、多くは語れませんが・・・
(上)のレビューで、次に殺される人が分かったとか書いたのがお恥ずかし過ぎでした。
時事問題的に、新興宗教についてはあまり触れたくないのですが、この「人類協会」は宇宙人ペリパリの再臨を待ち焦がれる、というある意味SFサークル活動的なノリであると、何度も強調されている。
物語の設定は1990年で、その後に起きるサリン事件を引き起こしたような危険な教団では無いということの説明なのだろう。
殺人事件を警察に通報しない、アリスたち「ゲスト」を監禁して外に出さないなど、非常識な手段を取ってくるが、協会上層部の者たちや会務員の会話や感情表現は普通に人間的であり、なかなか謎が解けなくて焦れてくるところを、彼らと江神、アリスたちの丁々発止のやりとりが飽きさせない。
マリアの大立ち回りや、織田との逃避行、アクションシーンもあってサービス満点!
なんだかジブリ的なチーちゃんの存在も物語に彩りを添え、かつ重要なカギを握っている。
そして、十一年前の不思議な事件ももちろん絡んでいて、江神が皆を集めての謎解きが始まるのですが、名探偵が全て物語って終わり、というのではなく、集められた容疑者たちがそれぞれ考察し、意見を述べ、まるで捜査会議のようになっているので、『読者への挑戦状』で玉砕した読者(私です)も、段々と考察が進んでいくのだ。
犯人が誰、というところより、別の件で「やられたー!」と思った。
警察への通報を頑なに拒む理由というのは、少し考えれば分かることなのに、胡散臭い、何か企んでいるのでは?国家に対するテロとか?・・・とついそちらに目が向いてしまったために、全然気づかなかった。
宗教に「立ち入ってはいけない聖域」が存在する事で事件は複雑になり、また逆にトリックが成立する。
そして・・・江神さんが人類教会を訪れたことにはやはり隠された理由があった・・・
アリスとマリアの会話に出てくる「さびしさ」についての考察。
ストレートにこういう談義ができるのが、この時代の若者らしいと思う。
彼らの語る「さびしさ」に耳を傾けながら、目の前に浮かんでくるのは江神の横顔だ。
これは、学生アリスシリーズの長編5作を予定しているうちの4作目ということ。
あと一作、書かれるんですね?
待ち遠しすぎます。
必ず書いて下さい!なむなむ。
Posted by ブクログ
下巻最高でした。バイクの驀進もマリアの消化器もユーモアがあって笑えたし、ミステリー要素もしっかり練られていて、面白かった。こんなに気持ちよく読めるミステリーもあるんだなと。
文章が読みやすいからしっかり掴めるのが切実にに有り難い。
長編はこれでおしまいかと思うと5人が見れなくて寂しい。今後5作目は出るのでしょうか。。?
Posted by ブクログ
江神シリーズの最高傑作では!? と感激した本作。
数々の名誉ある賞に選ばれるわけです。
宗教団体の総本山に囚われの身となったアリスたちの脱出劇は前作を凌ぐほどのダイナミックさで冒険小説さながら。そして同時に多発する殺人の謎、何かを隠している人類協会の謎、とにかく謎だらけ。ピースがバラバラすぎて、これは繋がるのか?と疑問だらけでしたが、江神さんがほつれた糸を紐解くように全てが一つづつ繋がっていくのが本当に気持ちが良い。偶然弾丸が樽にあたっていなければ、解決は困難を極めていたのではないでしょうか。
江神さん一人が淡々と真相を明かすのではなく、様々な議論が交わされるのが面白い。答えが提示され、そしてひっくり返されるのにも驚きました。
しかし、そうして二転三転させることで不明瞭なものが除かれて答えが顔を出すんだから江神さんの話術はすごい。
なかなか代表が顔を出さないので、何らかの不慮の事故で命を落としていて、それを隠蔽しようとしているのでは? とまで考えましたが、まさか誘拐とは。そして上巻の冒頭に戻るとは。感服しました。
アリスやマリア、モチ先輩信長先輩が大学生らしくパワフルで親しみ深くて、会話がとても楽しい。
松浦正人さんの解説で、江神さんと犯人を「ひょっとしたらなっていたかもしれない、もう一人の自分です」と述べられました。予言はただの呪いだと心の底から思います。人生を狂わせるものだと。江神さんが切ないほど大人すぎて、こちらが悲しくなってくる。第五作目で、呪縛から解放されてほしいです。
Posted by ブクログ
下巻に入った時から、いや、上巻が終わりに近づくにつれ「もうすぐアリスや江神さんたちの物語が終わってしまう、、、」と少し落ち込んだ。それでも面白くて、続きが気になって先へ先へ、読んでいる時は夢中で読んでいた。
人類協会で第二、第三の殺人が起こる最中、望月、マリア、アリス、織田の四人は脱出を試みる。
惜しくも捕まってしまったアリスは、江神とともにこの事件の真相を手繰り寄せるための推理を始める。
一方なんとか外との連絡をとろうと国道を走ったマリアと織田はしかし協会のバスに道をふさがれて道を引き返すことに。協会は街に連絡網を回して彼らを探し出そうと躍起になっていた。追われる二人は旅館のきのこ栽培のビニールハウスへと逃げ込むが、そこで思わぬ人に助けられる。11年前の殺人事件の聞き込みをしていた椿とともに出会っていた金石老人だ。彼は孫娘を探していたのだが、快く二人を家へと招いてくれる。その家で望月とも合流したが、協会の人間に感づかれてしまう。辛くもその場は逃げたが、周りを包囲されているために望月と織田は捕まってしまう。一足先にアリスたちとの再会を果たした二人もまた推理へと参加する。
アリスは二人がいない間に女の子が倉庫で見つかったことを説明する。一体彼女はどこから現れたのか。
その答えがしかし江神の推理を発展させる。
聖洞へ強引に足を踏み入れた江神とアリスは、そしてその感動の再会をし、そこで江神はすべての謎を解き終える。
このボリュームにこのトリックでは役不足だという人がちあほらいたが、私はこの手の謎が好きな私は双頭の悪魔のトリックより楽しめた。もともと冒険ものが好きだったことも関係してるんだろうな。洞窟の奥で繋がる外の描写がいい。
それにしても、アリスをはじめミステリ研の面々の中に育った江神さんへの信頼の厚さ,熱さに私まで胸が熱くなる。
これを書かれたのが三作目から十五年と七カ月だとして、最終巻はもうすぐなのかも、、、とか、ちょっとわくわくする。
Posted by ブクログ
学生探偵小説の大作
学生アリスシリーズ第4弾。行方不明の江神部長を探すため、一行が訪れたのは木曽山中にある神倉。そこは、女王が統べる国・人類協会の本部であった。
まず、EMCの面々が繰り広げるドタバタ劇が楽しい。若さと思い切りのいい行動にハラハラされっぱなしです。クローズドサークルからの決死の脱出劇には興奮しました。江神の冴え渡る推理も負けていません。一部の真相はかなり見えやすくなっているのは事実ですが、全編のなかに複数の謎が散らばっており、スケールに見合うだけの解決編が用意されています。そしてラストには、それまで釈然としなかった点が、これ以上ない演出とともに明らかにされています。
エンタメ本格ミステリの金字塔として、惜しみない拍手を贈りたいです。
Posted by ブクログ
下巻を読むまでに一年以上かかってしまった。
あとがきにも書かれているよう、上巻が〈静の巻〉、下巻が〈動の巻〉といった感じで下巻はぐいぐい読めた。
犯人のこと嫌いになれないけど、江神さんはどんな気持ちだったんだろう。
過去と現在のいろんな事件が絡み合って、それがスッと解かれていくのはとても気持ちが良かった。
Posted by ブクログ
事件や脱走劇やその果ての美しい再開やらとスピード感がたまらない展開。
しかし何と言っても最後の論理。犯人が絞り込まれていき、真相にたどり着く様は圧巻の一言です。
事件の背景までしっかり作り込まれており、鮮やかな伏線も見事。
Posted by ブクログ
最後の拳銃の謎は何となくわかったけど全然だめ〜。お手上げ。
学生アリスの「読者への挑戦」、大抵文面が冷たくて不気味な感じがしちゃうんだけど、これはあったかい感じがしてよかった。人肌の温もりっていうか…
織田の名古屋弁最高。惚れてまうわー
20200102再読
面白かった。江神さんのトラウマを抉るような結末。マリアの冒険ぶり。寂しがりのアリス。青春ミステリとしての煌めきが眩しいくらい。それでいてゴリゴリの本格で、本当に面白いな…
Posted by ブクログ
新興宗教団体からの脱出というアクションパートもあったり、意外な侵入者があったりとエンタメ性も高い下巻。
警察の捜査がない分、純粋な論理だけで謎解きしなければならないことが多いこのシリーズ。今回もロジカルな本格ミステリが楽しめました。
そもそもなんでここに江神さんがきたのか忘れかけてた。
学生アリスも次で完結しそうで寂しいような江神部長の卒業見送ってあげたいような。
Posted by ブクログ
上巻で張り巡らされた伏線を気にしながら取り掛かった下巻でしたが、殆ど何も気付かずに読者への挑戦状もさっぱりわからないまま、江神さんの天才っぷりに脱帽しました。
満足の作品でした。
Posted by ブクログ
女王国の城・下巻。
物語が怒濤の展開で進んで行ってとても面白かったです。城からの脱出、11年前の事件の謎、協会が秘匿にしようとする秘密、江神の家族などなど。濃密な展開と謎が襲いかかってきて、読む手が止まりませんでした。
館の構造を使ったトリックやどんでん返しとかが無い代わりに、情報統制の中でいつもより少ない情報で論理的に真相にたどり着いたのは本当に凄いの一言でした。動機や目的も盲点を突いたものばかりで目から鱗でした。
まさかの江神の家族の話まで登場し、江神の母親の予言はどうなっていくのか、次の長編が待ち遠しいです。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
江神二郎:宮野真守
有栖川有栖:岡本信彦
望月周平:八代拓
織田光二郞:古川慎
有馬麻里亜:釘宮理恵
由良比呂子:竹内順子
吹雪奈央:松本梨香
臼井勲:津田健次郎
丸尾拳:ボルケーノ太田
稲越草介:高橋広樹
青山好之:梅田修一郎
本庄伽耶:楠木ともり
パトリック芳賀:羽多野渉
佐々木昌晴:浪川大輔
天川富恵:井上喜久子
天川晃子:福圓美里
金石源三:千葉繁
金石千鶴:古賀葵
荒木宙児:斉藤壮馬
椿隼一:井上和彦
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長かったーーー。けど気になる伏線が多くて最後まで読み切った。ちょっと強引じゃないかと思うトリックも、まぁなるほどーと思わせられる。読み続けたいシリーズ。
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色んな意味でスケールが大きい話だった。真相の尻尾は掴んでいる気がするのに、やっぱり最後までは辿り着かなかった。このシリーズはずっと追っていたい。
Posted by ブクログ
第4弾 後編
久々にゾッとした。わかったことなんてないけど、本当に真相がわからなくて、もう望月を笑えない位わからなかった。またはぐれて、再会してはぐれて…教会の隠し事が見えないし、11年前の事件とか、絡みが多すぎて混乱しかけたけど、そこは名探偵江神。ちゃんとわかるように話してくれるのでじわじわ犯人が見えてきた時は自分が追い詰められているかのようにどきどきした。11年前の殺人、行方不明、小火に悲恋、そして今回の隠し事と殺人。 最後に全部スッキリするところはさすが。信じられる友だちがいいな。
Posted by ブクログ
まさかの脱出劇!(笑)
これが見事だよね。信長がかっこよすぎて、はわわってなった。
青春だ~。やっぱりこの関係性が好き。
見えているけど立ち入れない洞窟の奥に入るところでアドレナリン全開!
マリアとアリスが再会するシーンは、ぐっと来た。
これまで3作読んできたけど、初めて最後の追及シーンで泣けなかった。
江神さんの論理的推理は見事だけど、この宗教団体に不信感を抱いていたからなのか……。犯人が結構振り切ってて怖さのが勝った。
あと檀上に上がって張り詰めた空気の中頓珍漢なことを言うモチに、アリスがこの先輩をもっと好きになったって言ってるのにちょっと笑った。
あと、宗教団体の秘密も知ってなるほどなあと思った。
そこにつながる?(笑)
長編5作と短編2作で完結らしいけど、早く出てほしい気持ちと完結してほしくない気持ちが錯綜している。
でも絶対に生きているうちに完結してね、有栖川有栖。
本格派!
主要キャラがみんなキャラ立ちしているし、コミカルな語りなので読みやすい。この長さでもサクサク読める。
分かりやすくて現場も想像しやすい。
それにしても江神さんは会を追うごとに魅力的になっていくなぁ。。。
Posted by ブクログ
トリックは、全くさっぱり分からなかった。
最後まで隠されてるもうひとつの事件は、なくてもよかったような…
花火と銃声、過去の事件との関わり、城にいる人達の幼いときからのつながり。
犯人視点でその辺を掘り下げたら、もっとドロドロにも切ないかんじにもできそうだけど、あえてしないのだろうな、と思った。
モチさんと信長のもろもろとかもさらっと触れられる程度。もっと知りたい。
江神さんの呪いは解けたのか?それも深くは語られず。
そのかわり、唐突にアリスが性寂説を語る。
人はそもそも「寂しい」。
こういうのが青春っぽい。
アリスとマリアのバランスがいいな、と思う。
あとは、やっぱり作家シリーズではあまり見られないドタバタ、アクションがよかった。
Posted by ブクログ
途中中だるみした気がするけど、それでも面白かった。
協会がひた隠しにしていた事実はなるほどという気持ちもするし、物足りない気もする。
でも綺麗にまとまっていて良かった。
Posted by ブクログ
下巻はぐんぐん読めました。
モチさん信長さんの大立ち回り(特に信長のシャウト)、アリスがマリアを想う姿、江神さんは当たり前として、男性陣が各々かっこよかった。マリアも相変わらずチャーミングだし。
名探偵って論理もだけど、並外れた想像力がないとなれないんだな…。小説家に向いてる。
11年前の子供の幻が現在に現れ、事件に直接は関係ない過去が浮かび上がり、〈女王〉が帰還するラストは、唐突さを感じる以上に夢ようで美しかった。江神さんの謎解きも今までより芝居がかっていてカッケー。
完結編が楽しみです。
Posted by ブクログ
大学生の青春ドタバタミステリー。
この古い表現がちょうどいい感じの作品。
シリーズらしく、前回訪れた因習村の話もたまに出てくる。
今回は因習の代わりにUFOを信じる新興宗教を持ってきたようだ。
好きな人には一貫性があって良いシリーズなのだろうと思う。
Posted by ブクログ
人類協会の本部で起こる殺人事件の解決と解放をもとめる5名の奔走
クローズドサークルでのお話なので仕方ないですが、検死も推理もEMCが担当でどうにも「彼らの検視を ごまかしやミスリードがないのか」ってところが信用できないまま読み進めてしまった。一応お医者さんがいるんだから彼にテキパキと提示してほしかったけど、彼も一応容疑者なんですね。
仕方ないかー。
推理小説というよりも青春アクションものの印象が強くなりました。織田さんもモチさんもかっこよいです。
Posted by ブクログ
犯人の名前が出た瞬間
「…おま…誰?!」って一瞬なったくらい存在感がなかった…
宗教関係はなぁと尻込みしながら読んでたけど、クローズドミステリーは好きなのでさくっと上下巻読めました。
ただトリックについてはイマイチこうピンとこず。
過去の古屋での拳銃自殺ですが、いやいや子供見つかるんじゃねーのか?!陰で隠れれる?!
あまりその場の情景が浮かばずだったのと、イマイチこう動機がなぁ。
でもまさか最初のあわや事故か?!のニアミスに代表がのってるとは…
こうゆうとこさすがというか
ほつほー!って伏線回収楽しかったです。
今回はアリスの存在がちょい薄かったかなぁ。
モチさん、よかったよ!!!
やっぱ学生アリスはそれぞれの個性があり楽しい!!!!
Posted by ブクログ
信仰団体「人類協会」の敷地内で起きた3つの連続殺人事件。その11年前に同じ村で起きた密室殺人事件、容疑者失踪事件との関連性。協会が警察の介入を拒む理由、江神が協会を訪れた理由などの謎もあり、拘束された推理小説研究会メンバーの脱走劇もあって、なかなかの力作である。しかし、ミステリーの内容の割には、長すぎるというのが正直な感想。
ロジックを売り物にしている作者だが、本作品での江神の真相説明は仮説にすぎず、必然性がなくて説得力に乏しい。特に11年前の密室の真相は拍子抜けもいいところ。記述内容だけでは、真相通りにできたのかどうか、読者には判断できず、推理できない。
拳銃を協会敷地内に持ち込んだ方法も、あまりにも偶然的要素が強く、何だかなあと感じた。
動機も理解しがたく、こんなことをする必要があったのかと疑問に感じる。
(ネタバレ)
・犯人は花火の打ち上げ時刻に合わせて、拳銃を発射して、犯行時刻の偽装をしているが、花火の打ち上げに合わせて拳銃を発射することは極めて難しいと思う。
・拳銃を協会敷地内に持ち込んだ方法は、「聖洞」の特性をうまく使っていて面白いが、江神が指摘した以外の方法も考えられる。土肥の前に聖洞を監視していた丸尾であれば、聖洞の入口から投げ込んだ拳銃を取りに行く時間は十分にあるし、その様子を録画されたテープを除去するだけの十分な理由を持っている。
Posted by ブクログ
学生アリスシリーズ第4弾。第3弾から15年も空いているらしい。(第一弾の月光ゲームは28歳の時に書き上げたとのこと)今回は、人類協会なる宗教団体の敷地内で連続殺人が起こる。警察を呼ぼうとするも頑なに拒否され、ある理由から、江神、アリス達は信者達に捕らえられ、閉じ込められてしまう。
望月、織田、マリアたちの逃亡劇など、動きも多く見られたが、上下巻通して、もう少し抑揚は欲しかったな、と思う。
ただ、由良や吹雪など、ちょっとアニメに出てきそうな強目の勝気女性キャラは個人的に好きかな。有栖川さんが女性キャラを苗字呼び捨てするのも始めてだったのでは?と新鮮にも思った。
このシリーズ、あとは第5弾で完結とのこと。江神の、亡き母の予言はどうなるか、彼らの卒業後の進路は、マリアとアリスの恋の行方は?など、気になる諸々も答えが出てるかな。
Posted by ブクログ
上巻でだらだらと伏線を出し、下巻の前半で伏線を吟味し、後半で回収していく。
とにかく伏線はすべて回収しないといけないという強迫観念にとりつかれているがごとく。
しかし、「出してくれ」「だめです」「警察を呼んでください」「だめです」という何度も何度も何度も何度も繰り返されたやりとりそのものも伏線だったという……。
そのわりには真相の驚きが薄いか……。
しまそうのようなアクロバティックな事件を期待したのがだめだったのか。
また江神さんの暗号にしても、それだけぇ? と細く悲鳴を上げてしまいそうになった。
決してつまらないわけではないが、交通事故のような読書にはならなかった。