有栖川有栖のレビュー一覧
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まさかコロナ禍のアリスとセンセのフィールドワークが見れるとは。まだ記憶に新しいあのソーシャルディスタンスの寂しさと足踏みするようなもどかしさも思い出した。それだからかな、今回は常よりふたり一緒に行動する事が多かった感じがする。ふたりでGo toトラベルするとか最高だわよ〜
後書きに、読者から「同じ世界にふたりがいるみたいだ」という感想があったというけど、ほんとそう。連載を追っていた人はさぞ楽しみにしていたのでは…
ネコをひざに乗せる火村先生のパラダイスが見られたり、聞き込みでアリスをフォローする先生や、火村の過去を思いつつ黙っているアリスとか、ふたりのファンとしても嬉しい読みどころが満載だった。
事件自体は割と地味な感じなのに、なかなか決めてが無い。前半の地道な捜査や裏付けを進めながら犯人に迫っていく刑事さんたちのパートも好きだ。ほんと、靴底をすり減らすような丁寧な聞き込みをするんだなぁ… 船曳さんの厳しくビシっとした部分が見られたのも良かった。
後半はGo toトラベルでガラリと雰囲気が変わる。うん。刑事ドラマと紀行ドキュメンタリの二本分。その分のボリュームがあるけど、ぐいぐい読めた。
いつも思うけど、有栖川先生の文章てミステリだけど柔らかいんだ。優しいっていうのかな。人間に対する愛情があって。殺人事件なのに…ん?殺人事件だからより感じるのかな。
隙間時間を使った読書だったので、読んでいた期間は長いけど本を開くとスッと中に入れる楽しい読書だった。
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ホテルで自殺した男の死に疑問を持った先輩作家からの依頼で死んだ男を調査することになったアリスと火村。
アリスが単独で調査する前半では語り手ではない主人公としてのアリスが見られて長いシリーズの中でも珍しい。
後半、火村が合流してからあっさり解決したらかわいそうだなと思いつつ読んでたけどそうでもなく、火村、アリスそれぞれの視点やスタンスが改めて対比されて、シリーズの円熟を感じる。
最近『ホットスポット』見てたから、ホテル銀星はあのイメージだし、死んだ長期滞在の男のビジュは小日向文世になってた。銀星はもっといいホテルなんだけどどうしても。
ミステリで自殺か他殺かで自殺でしたのパターンはあんまりないのだけど、その辺は有栖川先生自身が一番よくわかってることで、それを核にしてこの長編書き上げたのはさすがの技量。
有栖川有栖作品の中でも上位だと思う。
後半で火村が合流したときに素直にアリスの成果が褒められててよかったね、と思う。
アリスの中之島散歩紀行文読みたい。
それにしてもこの渋い円熟味のある小説を学生アリスが書いたと思うと今すぐデビューしなさいと言いたくなる。 -
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何も考えず見ていた表紙が、半分ほど読み終えた後に意味に気付く。
これは彼の幸せな記憶そのものだ。
国名シリーズのスウェーデン館に似た儚く繊細なミステリ。最後にどんでん返しとかはなく、論理的に可能性を組み立ていく構成は安定的でミステリを読んでいる満足感がある。
作者が意図したように、まるで砂粒の様にさらさらと読み手の中に哀愁を降り積もらせるような結末は美しかった。
個人的にアリスがちゃんと助手として火村をアシストしてるのも、長年探偵コンビをしている二人の年月を感じられていいし、冒頭火村とアリスがこれまであった事件を思い出して話をしているのも、読者と二人の世界線がつながったような気になって楽しい。
エピローグを読んだ後、これは実際の事件は小説にしないと決めている作家アリスが、颯一に向けて捧げた手紙のようにも感じられた。
作家アリスシリーズを読み続けている人と初めて読む人では楽しめ方が異なりそう。
読み続けている人には重なったものが感じられて刺さるけど、この長編から読み始めた人には物足りなさがあると思った。
私個人としてはとても楽しめた国名シリーズだった。 -
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ネタバレ国名シリーズは読んだり忘れたりしてます。久々の作家アリスシリーズ、とても面白かった!
一言で言うと「きれい」。
表紙裏をめくった時、「開けば美しく、きれいに畳める。まるで扇のように」という前書きにまんまと引っ張られたのかもしれないけれど、先が気になり読みやすく、言いようのない感傷、寂しさもある。
養子にされたかった犯人と養子の話が進んでいたのに家を出た青年、青年が逃げた先の東京で出会った亡き妹と似た名前の同い年の父娘、という対比もいくつもあって、対照的な扇のよう。
冒頭の中学教師と記憶喪失の青年のロマンスも短いながら切なかったのだけど、最後の最後にそれすら事件の概要を聞いたアリスの創作…というか感傷、だと明かされるところで一つの物語が畳まれたなと感じた。読後感が良い。
物語は至っていつも通りの推理もので、事件が起こり、関係者に一人一人話を聞いて輪郭を掴んでいく。ほぼそれ。でも今作は姿を消した(後に被害者として見つかる)記憶喪失の青年という存在があるので、いつもより先が気になった。
途中で二人目の被害者が見つかったことで事件の姿が変わり、見つかったことで全国ニュースになり空白を埋めるための証言が出てくる。読んでると全然分かんなかったけど、火村先生が整理していくとなるほどと思ってしまう。
「殺意の根元がどこにあったのか。空白の中でないのなら外だ」「どちらが計画されたものなのか(紐とナイフ、凶器のどちらが予め準備されたものか)」「計画を実行できた時間があるのは誰か」「なぜこんな人が集まる日に犯行に及んだのか。何がしたかったからこの日にしたのか。住人が不在になる日を狙ったなら、その中で自由に予定がキャンセルできる人は?」
そこから一人ずつ消していって、残った人が犯人。鮮やか。最終的に犯人が警察のマークに耐えきれずに後日自首したという静かな結末も雰囲気に合ってる。
今回、出だしで日本扇の謎というタイトルを片桐さんから出されて、うーーーんうーーーんこんなのはどうだ?いやだから何になるんだ…とたくさん悩む下りがとっても面白かったな〜と思ったら、後書きで先生自身の体験だと出てきて笑ってしまった。良い後書きです。 -
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季節は冬。磐梯山の麓のペンションに取材旅行中の有栖川有栖は、ペンションの隣に建つスウェーデン館で起こる事件に巻き込まれる。物語は3年前の悲しい事故から始まったのだった。
いやもう、今まで読んだ有栖川有栖の本(と言っても6冊しかないが)で一番好きかも!頭に描かれる景色が美しくて、事件が悲しくて。有栖がヴェロニカに想いを寄せてしまっていたのも切ない・・・。
火村のミステリアスな雰囲気も、いつもより素敵!
「来てくれ」電話で即日来てくれるのも、愛想のない素っ気なさでどんどん事件を解明していくのもすごい。
読者に提供される情報と同じものを提供される火村が、それを違う視点から見て考察展開していく流れは、読んでいて「あ!」と思わされてしまう。
「そうか、そういうふうに考えたら、そう展開されていくな?」という感じ。
おもしろかったー! -
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最近勢いのあるミステリー作家6人の競演。オール讀物か別冊文藝春秋などが初出の読み応え抜群の一冊でした。もし気になる作家さんが入っていたら試し読みに最適です。タイトル的にスカッと爽やかとはいかない内容が多いので、読み心地良いもの求めている人には向きません。
「ヤツデの一家」新川帆立
三代目を継いだ女性政治家の語り。暴君だった父の後妻の連れ子、渉は美しく世渡りがうまく、面倒なことは嫌い。でも私にアプローチしてきて、私も渉なしではいられない。そして私は醜いが、美しく身体の弱い妹がいる。
女の国会みたいな話かと思ったら全く違いました!珍しくドロドロっとしたお話です。
「大代行時代」結城真一郎
世の中流行りの退職代行を使って、銀行の当たり新人がやめていった。残ったのは私についた総合職の使えない猪俣君。一年もしたらすぐ異動してどんどん出世するんだろうけど、とにかく私に声をかけられないでずーっと後ろでもじもじしてるようなダメっぷり。私は時々友人の香奈子に会って愚痴るのだ。
なるほどっていうオチ。捻りが効いた話の多い著者っぽいと思いました。
「妻貝朋希を誰も知らない」斜線堂有紀
ファミレスのスプーンを舐めて元に戻す画像で炎上し、訴訟に発展しそうな妻貝朋希。その彼を追う記者2人が周りの友人知人にインタビューしていく記事やメールだけで構成されている。タイトル通り少しずつ妻貝朋希のことが分かっていくのだが、大題の“罠”も絡んできて更に話が深くなります。
斜線堂有紀の本領発揮!っていう一作。構成やプロットだけでなく、妻貝のような性質のこと、SNSへの過激な投稿など、幾重にも感情が深まるネタが仕掛けられていて深み(あく)が凄い。
「供米」米澤穂信
私は詩の道を志したが諦め銀行員となった。しかし親友春雪はその才を発揮し研ぎ澄まされたその詩集は詩人文人に評価高かったのだが、夭折。遺稿集がでたのだが、その推敲具合から、本人には人に見せる意思がなかったのかと思い…。
紡がれた文章や語彙が設定年代や詩人の考察というのに合致していて美しかった。それに反しでオチが…。不協和音な印象。それが良いのかも。
「ハングマン ―雛鵜—」中山七里
単行本の続編。今回の主人公は裏の機械操作で情報収集役の比米倉。大学生活が少しだけ語られ、少ない友人の一人だった久水が闇バイトのニュースで映像写っており、やがて死体となり発見された。比米倉は真実を追及していく。
「ミステリ作家とその弟子」有栖川有栖
刑部はミステリー重鎮作家。最近弟子を取ったらしく、逗子の自宅へ訪問した編集者の西川は2人のミステリー会話(指導)を興味深く隣室で聞く。ミステリー談義は幾話も続き…しかし、事件が起こる。 -
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ネタバレ『学生アリスシリーズ』初の短編集。
『月光ゲーム』から『孤島パズル』までの間で、麻里亜がサークルに入部するまでのエピソードを集めたもの。わずか数ページで終わる日常の謎や、川に上がった遺体の謎、麻里亜の入部するきっかけとなったエピソードなど、多種多様なエピソードが書かれていてとても面白かったです。
望月と織田の軽妙なやりとりや江神のミステリーに対する価値観、そして『月光ゲーム』後の有栖の心情など細部が補完されていて、読んできたファンである私も嬉しかったです。また孤島パズルで登場し、レギュラーとして活躍する有栖がどうしてサークルに入ったのかのエピソードと先ほどの有栖の心情のエピソードが上手く絡み合っていて、二人の関係性がこれから深くなっていくことへのエピソードとしてとても素晴らしかったです。
これで『学生アリスシリーズ』は今のところここまでしか出されていないのでこれから出るであろう物語がとても楽しみです。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
江神二郎:宮野真守
有栖川有栖:岡本信彦
望月周平:八代拓
織田光二郞:古川慎
有馬麻里亜:釘宮理恵 -
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バチバチに面白かった。というのも、やはりトリックがバチバチに奇抜だったからだ。さすが有栖川有栖。
人生何が起こるか分からなく、自分も今年マレーシアに行くことになった。その事前学習として本書を選んだわけだが、、、異国情緒たっぷりだった。
キャメロンハイランドを舞台にしているのでジム・トンプソンの事件は外せない。それあってこの結末かとため息が漏れる。絶妙だった。
松本清張の『熱い絹』も外せない本になりそうだ。
ちなみにマレー鉄道に乗る前にはあまりおすすめはできる本ではない。でもきっとマレー鉄道には乗る。そして色々この本のことを思い出すだろう。 -
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ネタバレパズル好きの大富豪が残した謎を解き明かすために、その孫に誘われた江神と有栖が孤島の6日間の滞在に誘われる。
そこで、謎の連続殺人が発生しその謎を解き明かすことになり・・・という物語。
無線機が壊され連絡が取れない中でのクローズドサークルものでとても魅力的で面白かったです。
一族の複雑な絡み合いや、ダイヤモンドの在処を示す暗号解読などミステリー好きにはたまらない作品となっていてとても面白かったです。
江神二郎の推理が今回も冴え渡っていてきっちり疑問点を解決していてくれてとても良かったです。そして明らかになった真相とそれによって引き起こされた新たな悲劇...。そして最後にそれによって麻里亜が負った心の傷が次回にどのように繋がっていくのかとても楽しみです。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
江神二郎:宮野真守
有栖川有栖:岡本信彦
有馬麻里亜:釘宮理恵
有馬竜一:中尾隆聖
有馬礼子:早見沙織
有馬和人:福山潤
牧原完吾:大塚明夫
牧原須磨子:日笠陽子
牧原純二:興津和幸
犬飼敏之:諏訪部順一
犬飼里美:名塚佳織
園部祐作:稲田徹
平川至:鳥海浩輔