有栖川有栖のレビュー一覧
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「─殺人事件」「建物」「夜」を共通のテーマとした短編6編。
全体に暗鬱とした空気が漂う一冊。
すべて違うタイプの作品になっている。
『黒鳥亭殺人事件』
あとがきに「ショパンを流しながら書いた」とあったけど、その言葉通り演出がとても美しくて、静かな余韻が残る作品。
すべての短編の中でもかなり好きな作品。
火村とアリスの同級生・天農が住む、外壁がすべて黒一色に塗られた館で起こる不可解な事件。
なかなか寝付けない天農の5歳の娘・真樹ちゃんの相手をするアリスが優しく、2人のやりとりがなんとも微笑ましい。
天農が火村に語る事件の概要と、絵本やゲームを楽しむ真樹ちゃんとアリスのシーンとが交互に繰り返さ -
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〈宿〉をテーマにした短編4作品。
旅行に行ったような気分になれるミステリ。
古い民宿から豪華ホテルまで舞台は様々で、作品ごとに雰囲気も読み心地も違うので、最後まで楽しかった。
自分がこれまで泊まった宿を思い出しながら想像して読むのもまた楽しい。
短すぎないちょうどいい長さで、予想外の捻りや、火村ファンにはたまらない一編もあり、今まで読んだ〈国名シリーズ〉以外の短編の中では一番好きかもしれない。
『暗い宿』
廃業した民宿に泊めてもらうアリス。
「それにしても──この宿は暗い。」
暗くて古い民宿はもうそれだけで怖いのよ。
『ホテル・ラフレシア』
石垣島の高級リゾートホテルで行われた〈犯人当て -
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「この島は、どこか変だ」
大好きな孤島のクローズドサークル!
この島に集まっている人達は何かを隠している…
2章の最後の1行を見た時、思わず目を閉じて喜びを噛みしめた。
「これは来たな」と思った。
クローズドだけでも大好物なのに、さらに嬉しいことにテーマまで大好物だったから。
W大好物で、面白くないわけがない。
この作品は「クローズドサークル」で検索ししていた時によく見かけていて、ずっと読みたいと思っていた。
でも、クリスティの『そして誰もいなくなった』のような王道クローズドサークルを想像していると、印象はかなり違う。そして、ロジック重視という作品でもない。
この物語のメインは、犯人探し -
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「皆さんに、娘を連れ戻してほしいのです」
外部の人間が入ることを許されない、芸術家の村へ行ったまま戻らないマリア。
交通手段が途絶された大好物のクローズドサークルに、さらに鍾乳洞まで登場する。
閉所恐怖症なので、ひとつ道を間違えたら戻れなくなりそうな空間のドキドキと、ミステリが重なって楽しさが倍増した。
探偵不在の中で織田・望月・アリスの3人が手探りで必死に頑張る姿が微笑ましい。
読んでいる途中で、何だか既視感があると思ったら、過去に読んだあの作品はこの『双頭の悪魔』がモチーフだったんだと気づいた。
古典的な雰囲気と、最後まで犯人が誰なのかわからないという、王道の本格ミステリをしっかり味 -
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ネタバレこれぞ本格ミステリーと思う作品だった。
有栖川先生の作品を読むのは初めてだったが、今となっては古典的のように感じるトリックも当時は画期的だったことが伺えるし、それでも時代を感じさせない文章力、構成力は圧倒的と言わざるを得ない。
気になる点は2点。
一つは、交換殺人に仲介人を設けるという素晴らしいアイデアだが、これは実行犯二人とも始末しないと成り立たないのではと思うところ。室木も殺すつもりだったのだろうか。それとも絶対露見しないと考えていたのか。この手のトリックにおいて一番の肝となる信頼関係が薄い、また仲介人が非力過ぎて私ならこの人が実行犯になれると信じられない。
二つは、犯人に慈悲という名目で -
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「若さ」をテーマにした短編4篇。
『探偵、青の時代』
アリスも知らない、火村の大学時代のエピソード。
勉強会と称して集まった社会学部の8人。
みんなが火村に何かを隠している…。
自分も人の表情や感情には敏感で「この人、嘘をついてるな」までは読み取れる。
けれど火村は、そのわずかな違和感を論理的に組み立て、彼らが嘘をつく理由まで鮮やかに解き明かしていく。
まさに、名探偵誕生の瞬間。
ラストのアリスの推察にも「うわーっ、そうか!」と思わず声が出た。
火村のことをよく知っているアリスだからこそ辿り着ける推理で、思わず微笑んでしまう。
初めて語られる火村のエピソードだけでも楽しいのに、さらに自分 -
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絶海の孤島に取り残されたクローズドサークル!
クローズド好きとしては、外部との連絡ができなくなる定番をきっちり押さえた展開はたまらない。やっぱりスマホもパソコンもない時代のクローズドサークルが好きだ。
特殊な島の地形図を見ただけでも、あれこれ想像させてくれてワクワクする。
〈推理小説研究会〉に、紅一点のマリアが登場する。男子校のようなノリも好きだったけど、マリアが加わったことで前作以上に登場人物たちが生き生きしている。
アリス、マリア、江神の関係性と、甘酸っぱい青春も良い。
『月光ゲーム』の女性陣はあまり好きになれなかったけど、マリアは魅力的。
そして、前作よりもアリスがワトソン役に徹して -
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約1ヶ月、毎日楽しんできた「国名シリーズ」も、とうとう現在最後の作品。
記憶喪失の青年が、唯一持っていたのは一本の扇。彼はどこの誰で、なぜ記憶を失ったのか。事件とどんな関わりがあるのか…。
登場人物それぞれの内面を、火村とアリスが丁寧に読み取っていく。
逃げ場のない密度の濃い人間模様は大好物。
今回は物語の対比で、火村の下宿先のおばあちゃんの優しさが際立った。一家に一人おばあちゃんのような温かい人がいてくれたら…としみじみ思う。
おばあちゃんの心尽くしの手料理も食べてみたい。3匹の猫たちの存在もほっこりする。
こういう細部が積み重なって、この作品の空気ができているんだと思う。
犯人がわ -
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米澤穂信の供米のために読んだ文庫本。
米澤穂信以外の作家の著作は読んだことがなく、それもまた新鮮で面白く読むことができた。
新川帆立 ヤツデの一家
これを女性作家が書いているのが見事と言うかなんというか。私には理解できない世界だが、短編として素晴らしいドンデン返し。
大代行時代 結城真一郎
短い中にも貼られた伏線は丁寧だが、先の展開が簡単に読めるところが残念。
人には得意不得意があるのは仕方ないが、注意されたら片付けよう。
妻貝朋希を誰も知らない 斜線堂有紀
この短編は少し不快だったので長いです。
治安の悪い、物事を知らない人達ばかりの地域は確実に存在するし、地方で新しい人が入ってこない -
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ネタバレ読者の興味が、記憶喪失の男の正体、女性の恋愛の行方、有栖川の新作の構想、事件の調査と一気に増える関係者、と変わっていき、ちょっと読みづらいところがあった。プロローグが魅力的すぎたからだ。中盤からは一気に読めた。
犯人の動機が見当たらないことが事件の謎である。被害者が殺される理由が分からない。必然的に、記憶喪失の男、記憶のない過去の出来事、が怪しいのだが、行方不明になっている。
この男、事件には部外者なのか、中心人物なのか、よく分からず、事件の全貌がつかめない。家族に馴染めず、行方不明になっていても、またふらっとどこかに行ってしまったのだろう、と思わせてしまうのが本作の特徴である。そこから関係者 -
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前作が番外編的だったのに対して、今作はバッチリ本格ミステリが楽しめる。
中でも表題作は抜群に面白かった。
『スイス時計の謎』
論理的に犯人を特定していく。
一つずつ可能性を消していく論理の組み立ては、ゴチャゴチャしていた頭の中が、火村の言葉によってどんどん軽く、きれいになっていくようでとても気持ちがいい。
火村が論理を積み上げ、NOとは言えない状況を作り出していく過程に痺れる。
このメンバーだったからこそ成立する設定も本当によく考えられている。
精密なスイス時計のようにすべてがカッチリとはまっていくような、完成度の高い大満足の作品。こういうのが読みたかった!
アリスの高校時代の切ない思い出も -
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番外編のような特別感があって、ファンはより一層ファンになるのでは、という一冊。
私ももれなく大ファンになりました。
『わらう月』
「子供の頃、月がこわかった」から始まるのが印象的。月が怖い、という感覚がどこかわかる気がする。
『完璧な遺書』と同じく、語り手の彼女を通して火村・アリスの姿を体験できるのが面白い。
そして最後の一言。思わず「上手い…」と声が出た。
『暗号を撒く男』
解決編は、アリスがクイズのようにヒントを出しながら進んでいくのが楽しい。
読者を飽きさせないために、毎回違う楽しみ方を用意してくれるのが嬉しい。
『赤い帽子』
火村・アリスは登場せず、いつもは脇役のジャニーズ系イケ -
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『完璧な遺書』
「殺すつもりなんかなかった…」という犯人の語りから始まる。
大好きな倒叙がついに来た!(゚∀゚)
犯人は周りの気持ちも状況も、勝手に自分に都合よく解釈してしまうタイプ。
その勘違いぶりが気持ち悪くて、正気を疑うような言動が出てくる。
倒叙なので、犯人の独りよがりな頭の中の自問自答が面白い。
語り手である犯人の目を通して、火村の鋭さを体験できるのが最高に面白い。
火村が核心に触れるような質問をするたびに、思わず心の中で「火村先生さすが!」とガッツポーズ。
こんな嫌な奴が相手だからこそ、スカッとした。
でも正直言うと、犯人にはもっと白を切って粘ってほしかった!倒叙好きとしては、