あらすじ
「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が――。暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壺中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。
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短編集。
どれが一番面白いか決めれないほど全部面白かった。
ただ建物の構造をイメージするのが難しい建物があってちょっと混乱した。
後味悪めの話ばかりだけど、そこがまたよかった。
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めちゃくちゃ好きです~~~!!
あまりにも好みの話ばっかりで、外出するときも片時も離したくなくて結果的にボロボロになってしまった。それもまた味。
特に一番最初の黒鳥亭殺人事件が好きすぎて好きすぎて…。
アリスってやっぱし推理小説書いてるんだからひらめき力はあるのね。トンチキ推理って言ってごめんね。
あとは表題作の絶叫城殺人事件は、アリスが最後に犯人に思う言葉がとても印象的。犯人はこの後どうなるんでしょうか。
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作家アリスシリーズの短編集。2016年1月から放映されていたドラマの第1話原作らしい(帯に書いていた)
あとがきによると、〇〇殺人事件×館×夜に起こる事件縛りの短編集。
個人的にはアリスと火村や森下刑事や片桐さんなど好きなキャラがたくさん出ていて良
好きなお話は「月宮殿殺人事件」で、好きなタイトルは「雪華楼殺人事件」
全体的にラストが悲しい感じになるのは現代国内ミステリならではかな。
「黒鳥亭」なんかはなんとも……つらいだろ……。
「絶叫城」はゲーム好きにはなかなか楽しめる感じ。ホラゲー好きなら一読の価値あり。ゲーム画面を→
文章化したらこんな感じになるのかーと面白く読んだ。
あと、建築コンサルタントの竹島清氏の解説が良い。これが読めるの、贅沢じゃない?(笑)
有栖川有栖氏はあとがきが豊富なのもいいよねー。著者のあとがき好きとしては嬉しい。
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有栖川有栖さん読むの2作品目です。
殺人事件を題材に6篇の短編集ですがどれも大変おもしろい作品でした。特に本のタイトルにもなっている「絶叫城殺人事件」は最後は虚しいですが非常に良かった。有栖川有栖さんに嵌ってしまいました3作目を読む気満々です。
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やるせない話が多かった。どれも事件そのものというよりも、結末が悲しすぎる。素直な子供が気がついたとき、どう思ってしまうのだろうか(黒鳥邸)。 壺中庵は犯人がバカすぎるし、月宮殿は、もういいじゃん、あいつらが罰せられればいいよって思った。雪花楼は、偶然の範囲について考えた。かわいそう、とは言えないかもしれないけども。紅雨荘は、とても悲しい。裏切ったことは悪いのかもしれないけども、それだけが縋るものだったっていうのが、少し同情。表題作はもう、事件がどうこうよりも、結末が悲しい。犯人も、最後の被害者も。
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6編の短編集。
黒鳥亭殺人事件では、二人の大学時代の友人とその子供が登場。
娘さんが可愛くて、アリスとの会話では癒された。
だけど事件の真相には何とも残酷な現実が…
彼らはあの後どうしたのか気になる。
表題の絶叫城殺人事件も面白かった。
ゲームをモチーフにした連続殺人事件はなかなか手がかりも少なくどうやって犯人を見つけ出すのかと思っていたら…
あんなヒントとも言えない事実から犯人を見つけ出したのは驚き。
ただ、あの結末には虚しい気持ちも。
世間の評論家への皮肉がきいた終わり方だった。
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(短編)火村&有栖シリーズ11
黒鳥亭(こくちょうてい)殺人事件
壺中庵(こちゅうあん)殺人事件
月宮殿(げつきゅうでん)殺人事件
雪華楼(せつかろう)殺人事件
紅雨荘(べにさめそう)殺人事件
絶叫城(ぜっきょうじょう)殺人事件
あとがき
〜殺人事件というタイトルをつけないようにしていた作者がなぜこのシリーズを書くことになったかについて。
建物の名前+殺人事件と殺人が行われるのは夜という縛りがあったという話など。
文庫版あとがき
「ゴールドベルグ変奏曲」で演奏者と楽器の違いが、アリスと火村のキャラクター対比になってるという話が、なかなかおもしろいなと思ったり。何気にシリーズで、アリスはよくクラシック聞いてたり、ヘビメタバンド詳しかったりするよなぁと。火村先生はよく運転しながらだとか、ご機嫌だと、鼻歌歌ってたりするなぁと。「46番目の密室」も同じクラシックきいてたよね。
絶叫城のタイトルは今はなき、スペースワールドで絶叫マシン全制覇したときに生まれたタイトルだとか。
解説 竹島 清(建築コンサルタント)
建物からの物語解説と、自身が手がけた建築物?に関する秘密のお話が面白かったです。病院長は隠し部屋をつくりたがる話とか、事実は小説より奇なりって感じで。建築の仕事をしていると秘密を知りやすいとうのも面白かったです。「紅雨荘殺人事件」実写の折には、竹島さんの引っ越し先のお宅を、事件現場の舞台にして、もらって欲しいかもしれない。(笑)
好み的には、月宮殿→絶叫城→黒鳥亭かな。
絶叫城は、東京のホテルに缶詰めのアリス先生と片桐さんのやり取りがみられて楽しかった。
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様々な建物やお城を舞台にした事件。題名からどんな事件が起こるのかを想像し、わくわくしながら読み進めました。
個人的には映像化された際の人物に当てはめてスラスラ読めました(ドラマの内容は知らずです)
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何度目かの再読。作家アリスシリーズ短編集。今作は陰惨というか憂鬱というかそういう負の感情に支配された話が多い。一番面白かったのはやはり表題作でもある「絶叫城殺人事件」。犯人の意外さもさることながら動機の点については作家アリスシリーズでは珍しい部類ではないだろうか。
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――
再読。
家にいる時間が長くなると、気付かなかったことにも気付くようになるもので。
多分近所から逃げ出したインコが家の裏で鳴いてたり、
いまとても綺麗にカッコウが鳴いてたり。
調布飛行場の空便は案外真上飛ぶんだなぁとか。
裏のお家は紫陽花育ててて、いい季節。紫陽花ってちゃんと育てると長生きするのねぇ。
そんなわけで短編集、『絶叫城』です。
有栖川作品の中でも結構好きで度々手に取るのだけれど、どれも非常にらしくて良いのです。
黒鳥邸は全体の、静かに謎に浸る感覚と真相のやりきれなさと。
壺中庵の密室トリックはいかにも有栖川、って感じ。
月宮殿はそのタイトルと、実際に登場してくる人物たちのギャップ。そこに有栖川さんの独特な視線を感じるところ。
雪華楼ではミステリの、有り得なさとの戦いが垣間見えるけれど、あとがきを読むとそれこそ事実は小説よりも奇なり。
紅雨荘は骨太な真相と、本筋とは関係ないところでアリスがロマンチストなのがにやり。
そして表題の絶叫城。これは実は短編集の筋からは外れているんだけれど、作家アリスの真髄なんじゃないかと思っている。導入から事件の様相、解決までの流れと、何より火村先生との関係性がよく出ている。その上で事件の真相を暴くときの、ひどくぞっとする闇の深さ。それに対面するアリスと火村先生の描かれかたは、他の作品すべてに通じている核みたいなものが明確で、とても読み応えがある。
レヴュ書いてなかったので改めて。
これもまた、気付かなかったことに気付いてる、ということなのかしら。
しかしいろいろ読むもの沢山あるんだけどなぁ…はふう。
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作家アリスシリーズ、短編集。基本的に短編は嫌いだが、これは全体的にどれも高評価で甲乙つけがたい…。良かった点は「黒鳥亭」のアリスと少女のやり取り。「月宮殿」のタイトルの意外性+幻想的な建築美。「雪華楼」の犯行?の意外性。表題作の「絶叫城」はドラマ化もされました。大分前に観ましたが犯人などの細かい点は忘れ、初読のように楽しめました!連続殺人のあの結末にはなんとも言えない悲しい気持ちになりました…。星四つ半。
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本当は、私は作家アリスシリーズの長編が読みたいのだ。
だけど、作家アリスシリーズの短編は本当にどれもレベルが高くて、長編と同じくらいの満足感が得られる。本作品もそういった短編集の一冊。
多分、キャラが良く書けてることが成功に繋がってる。
作家アリスの有栖川は学生アリスシリーズの作者で、学生アリスの有栖川は作家アリスシリーズを書いてる、という設定らしいが、作家としては学生アリスの有栖川の方が上な気がしてる。
どれも建物に関係する事件だけど、亭、庵、殿、荘、城、と建物を表す漢字をダブらせずにタイトルにしてる。(まだあるな、堂、家、邸、館、屋…有栖川さん続編行けるんと違いますか?)
本作品でも火村とアリスはイイ感じにいちゃいちゃしてる。
・黒鳥亭殺人事件…出だしが長編感満載。これだけの重厚感を短編に捧げるなんて贅沢だ。
殺人を憎んでる火村が、無垢な少女が結果的に起こしてしまった殺人に対した時の配慮に感銘を受けた。探偵にはどんな事件でも真実を暴かないと気が済まない人種がいるけど、火村には人情がある。まともだ。
「女嫌いだが、子供は嫌いではない火村が言う。」、って火村先生やっぱり女は嫌いなのねーそうなのねー、と腐女子的思考回路が刺激されました。本作品の個人的ポイント。
・壺中庵殺人事件…こういう場合最初に部屋に入った人がアヤシイから、犯人は分かってしまった。地下の書斎、なかなか使いにくそう。
・月宮殿殺人事件…『双頭の悪魔』を読んだばかりで、シュヴァルの理想宮ネタまた来た、って印象。しかし結末は建物関係なかった。こういう目眩ましの設定をとても詳細に詰めるところが有栖川さんらしい。見事につられた。
・雪華楼殺人事件…建物からたまたま外に投げた瓶が落下してきた人の頭に当たったとか、有栖川さんにしては珍しく「そんなバカな!」的趣向。たまにはイイ。
・紅雨荘殺人事件…二つの似通った建造物を利用して殺人現場を移動させるネタ。手の込んだ事件で面白かった。ただ、紅雨荘を舞台にした映画はあまり面白そうに思えなかった…。
・絶叫城殺人事件…中編と言っていいくらい長めの話。愉快犯(?)の犯行動機は現代にはびこる問題とリンクする。もし身内が連続殺人犯だと知ってしまったら、自分はどうするだろう。
火村の勧善懲悪を堪能できる話でした。
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火村とアリスの名コンビシリーズ!
六つの短編集!ミステリアスな難解に、名コンビが挑んでいく。犯人探しをしてしまう展開に、非常に読みごたえがあった!とくに、NIGHT PROWLERの連続殺人は、どんでん返しが待ち受けていて、印象に残った!
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受験無事に終わりました!
わーい!!!
というわけで、5ヶ月ぶりの読書。
まずは軽いの、と思って選びました。
有栖川有栖は、こっちじゃなくて学生アリスシリーズが好きなのですが、短編も面白かった(o^^o)
大学生になっても読書は続けようと思います!
Posted by ブクログ
短編集。作家アリスシリーズ12作目。
「絶叫城殺人事件」
女性ばかりが襲われ殺害される事件が続いた。
被害者は口の中に何かが記された紙片を押し込まれていた。
書かれていた文字は「NIGHT PROWLER」…夜、うろつく者。
ゲーム・ソフト「絶叫城」に登場する怪物の名称である。
「絶叫城」とは、昼間は絶叫城の秘密を探るために手がかりを求めて城内を調べ回る。
夜になると、ナイト・プローラーからただひたすら逃げ回るゲーム。
すべての手がかりを手に入れ絶叫城の謎を解くと、ナイト・プローラーは消滅する。
次の瞬間、謎を解きナイト・プローラーを倒したプレーヤー自身が妄想と狂気の城を引き継ぎ、自らがナイト・プローラーとなるのだ。
最後の犠牲者である大和田雪枝の部屋を警察とともに訪れる火村とアリス。
かすかに残っていた鳥の匂いに気がついたアリスは、雪枝が鳥を飼っていたのでは?と考える。
それをきっかけに、事件はまったく別の様相をみせ始める。
なぜ雪枝は死ななくてはならなかったのか。
そもそも、雪枝は殺されたのか。それとも…。
犯人の動機が理解できない。
アリスが言うように、空っぽの心には何でも入ってしまうのだろうか。
善悪の区別も、命の尊さも、罪の意識も、何もない。
何もわかっていない。わかろうともしない。
かつて火村は「人を殺したい」と渇望したことがある。
すべてをわかったうえで、それでも願望を抱いた火村。
何もわからずに次々と人を殺していった犯人。
火村と犯人の違いを考えると、尚いっそう火村の中が抱えている危うさに気持ちが向かってしまう。
犯人の動機や犯人を取り巻く状況を考えると、けっして良い後味は残さない。
それでも、読みごたえのある物語だった。
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どの作品も切ない余韻が残って何とも言えない読後感。
このシリーズはそこにこそ良さがあると思っているので世界観に酔いしれました。
それが一番顕著に現れてるのが「黒鳥亭殺人事件」。
「紅雨荘」と「絶叫城」も後半のカタルシスが堪らない。
Posted by ブクログ
全体的に他の作品に比べると微妙な気がする。物語としては『雪華楼殺人事件』が良かったけど(笑)火村からFAXへのアリスの反応が(笑)『絶叫城殺人事件』は展開としては良かったけど犯人が少し微妙かな。もう少し黒い感じの方が好みなので(笑)とりあえず火村とアリスの会話は楽しめたし、トリックとか良かったし、全体的には火村シリーズを楽しめたから良いかな(笑)
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作家アリスシリーズ。
・有栖と火村の同級生天農の家に死体が現れた話。天農の娘と20の扉をする有栖、その謎に思わずのめり込む実は私も分かったんよそっちは。この結末を彼らは伝えるのかどうするのか。
・壺のような部屋で壺を被って亡くなった事件の話。
・ホームレスが建てた月宮殿を有栖と火村が見に行く話。有栖のポテンシャルというか行動力強い。浜さんの気持ち分かってしまうのがしんどい。
・空きテナントで奇妙な同居生活をしていた3人のうち1人が死ぬ話。有栖の突飛な発想面白い。偶然、だから偶然なんだ。
・映画にも使われた屋敷を持つ主人が亡くなった話。虚しくなる。
・絶叫城というホラーゲームを準えたような事件が起こる話。ホテル缶詰で仕事をしていた有栖が事件を知ってゲームをプレイするの笑う。有栖がナイスアシストをしてて、そこから真相に辿り着くんやと舌を巻く。空っぽの心には何でも入ってしまう恐怖
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2001年。
館の名前と殺人事件。後味悪めシリーズ、かな。夜。
「黒鳥亭殺人事件」井戸の中で死んだ男は、昔死んでいたはずだった。
「壺中庵殺人事件」館をイメージするのが難しかった。
「月宮殿殺人事件」月夜の晩に銀閣寺に行きたくなった。
「雪華楼殺人事件」薬漬けの10代カップルの男が死んだ。寒そう。
「紅雨荘殺人事件」映画に出た館。
「絶叫城殺人事件」ゲームになぞらえた殺人。
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あくまで好みとしての話だけども、いいなと思えるものとちょっとなと思えるものがはっきりわかれた。
壺中庵とか紅雨亭とか絶叫城はトリックとかしっかり納得のいくものだったけども、その他の短編にはトリックのためのトリックという感じがして見世物感が強く出る気がした。
とはいえ、20Qなど随所にらしさもでていて、全体としては氏の作風はしっかり味わえると思う。
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この5つの短編推理小説は、ミステリー事件の捜査に犯罪社会学者と犯罪事件等の推理小説家が謎を解いていく。それぞれの観点が違い、そこからの推理はなかなか面白い。「絶叫城殺人事件」通り魔事件での証拠が少ない推察はかなり難しいが連続殺人の繋がり、想定など謎解きプロセスは面白い。
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爆発的面白さはなく、評価はいつも星3つ。
っていうのは読む前からわかってるんやけど、火村もアリスも相変わらずでよかったよかったと生存確認的な楽しみ方をしているシリーズ。
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作家アリスシリーズの6編からなる短編集。
テーマは「夜」と「建物」。
殺人事件じゃないのも多い。
1番のお気に入りは表題にもなっている絶叫城殺人事件ですかね。
ハラハラして楽しめました。
Posted by ブクログ
「黒鳥亭殺人事件」
画家の天農仁と娘ちゃん登場。お噂は以前に、の火村とアリスの同級生で共通の友達という人物。叔母?から譲りうけた家に住んでいたところ、庭の井戸から変死体が発見されて、一体どういうことなのか、その謎を解いてほしい、と言われ、件の家に赴く二人。
お客さんがいて眠くないと粘る娘の真樹ちゃんの相手をするアリスとか!かわいいかよ!っていう。その間に火村にことの起こりを話す天農。耳の聴こえない九官鳥、二十の質問、童話の読み聞かせ、などいろんなヒントが散りばめられていて、最後に綺麗に回収していくんですけど、結末がなんとも後味が悪くて、思わずこれ、そういうことであってる?と答え探しをしてしまいました。
真樹はどうなったんだろうな…。これは事実を知っていても、知らなくても、どうにもならないモヤモヤが残るんだろうな、と思ったのでした。
「壺中庵殺人事件」
資産家が地下に作った自分だけの空間の中で殺される密室殺人。当初は自殺かとも見られたけど、死体の具合もおかしいし、もしや関係者の中に犯人が、という展開。容疑者はお手伝いさん、資産家の囲碁?仲間、隣に住む実の息子の三人で、さあだれだ、というとても王道中な王道のお話。異様なのは死体が地下室への扉にぶら下げられた上で、頭の上からツボをかぶっていたというその姿で、火村先生が犯人に詰め寄る最後のところが割とこう…なんというか軽蔑している感じが満載でしたね。あれ?変な感想。
「月宮殿殺人事件」
アリスがたまたま通りがかった川原で見かけた、端材やガラクタで作られた立派な小屋(家?)に、火村と再び通りかかったら、どうも火事にあって宮殿は焼失してしまい、建設者兼住人が火事に巻き込まれてなくなってしまう。その住人のホームレス仲間がそこにはいて、以前もアリスは話をしたことがあったことから、何があったのか聞いてみると、その人は近所の悪ガキがいたずらで火をつけたところ、その火事に巻き込まれたというんだけど、警察の聞き込みとどうも話が食い違うようで…。
月宮殿というネーミングからのミスリードで謎が作られているのでした。
最後に火村センセが大量のファックスをアリスあてに送るところが、なかなか茶目っ気があっていいと思います。
それにしても二人はどこへ行った帰りだったんだろう…(多分フィールドワークですけど)。
「雪華楼殺人事件」
建設が中断された、六角形の雪の結晶を模したと思われる旅館で起こった事件の調査に向かう二人。柵も何もない屋上に残された一組だけの足跡と、転落してうつ伏せに倒れている男の後頭部の裂傷の謎を解く話。自殺なのか、事件なのか、事故なのかを検証していくんですけど、事件だとしたら容疑者は電気もガスも通っていないこの旅館で、男と同棲していた女の子と、たまたま先に住み着いていた無職のおじさんの二人。だけど事件にしては状況がおかしい、というところから検討を重ねた結果、すごい偶然の結果、おかしな状況になってしまった、という結論になるんですよね。
死んだ男と同棲していた女の子が、たまたま腹いせまぎれに投げたボトルが、自殺をしようと屋上から飛び降りた男の頭に当たって、後頭部に裂傷のある、死体が出来上がってしまった、と。
淡々とした火村せんせに対して、やけにセンチメンタル全開なアリスでしたね。いやもともとアリスは割とロマンチストでセンチメンタルなやつだとは思っていますけれども。
あとがきで、このトリックととても似通った偶然が現実に起きてたらしいことにも触れられてましたね。映画『マグノリア』の冒頭で紹介されてるらしんですけど、それも気になる。ご本人はその偶然は知らなかったようで、参考にしたんじゃないかと思われるかもしれないと、ちょっと悔しかったとありましたね。
「紅雨荘殺人事件」
これはまた美しい情景をテーマにした作品かなと。
映画にも使われた、紅葉をモチーフにしたお屋敷で、その女主人の死体が見つかって、容疑者として上がったのは、女主人の三人の子供と従妹の計四人。自殺かとも疑われたんだけれども、どうも状況がおかしくて…という話なんですけど、トリックが、ある意味大胆だなという。
女主人を殺したのは従妹だったんだけれども、家の資産価値を守ろうとした子供達が、見つけた自分の母親の死体を別の場所に移してしまったために、話が難しくなった、というのがオチで。子供達の自己中心的な考え方がなかなか狂気だな…などと思ったのでした。この死体移動のトリックを実現するために、死体発見場所のリビングの絨毯を全部取り替えるっていうところに大胆さがありますよね。
従妹はビスクドール作りの先生で、犯行動機は自分の糧となっている綺麗な思い出を穢されてついカッとなってしまった、というもの。その部分の話を見ると、女主人もなかなかの人物で、誰にも慕われなくても仕方ないよなあ、などと思ってしまうのでした。
「絶叫城殺人事件」
これはドラマでやってたのを見ましたね!ので、割と覚えてました。
人気のホラーゲームを模したかのような連続殺人事件が起こり、ただ、最後の犠牲者だけが他とちょっと様子が違うところから、犯人に行き着く話。
これはなんとも切ない結末なんですよね…。犯人は事故にあったことで、ゲームの模写としての事件は完成させられなかった。しかも事故自体は結構大きな事故だったから、これから先、体は思うように動かなくなるんじゃなかったかな。最後の事件の日、犯人はアリバイがないわけだけども、その犯人の実の姉が、この犯人に行き着いていて、弟の犯行を隠すために、猟奇殺人犯に殺されたかのように装って、一世一代の大芝居を打つんですよね。しかも命がけで。まあ、結果的にはその違和感から、火村せんせは犯人にたどり着くわけですけども。
アリスが最後に犯人に、なんでこんなことをしたんだ、と尋ねた時の犯人の答えが、「現実とヴァーチャルの境界が分からなくなるというのがどういう感じが知りたかった」という答えで、これはなかなか風刺がきいている…。と思ったのでした。
あとがきはこのシリーズが初めての「○○殺人事件」というタイトルをまとめたものであり、せっかくだからもう一捻りと「館」シリーズにしたそうで。言われてみると、作家アリスシリーズは国名シリーズの印象が強くて、それはどれも国名+○○の謎、タイトルになってるんですよね。そういうことも考えて創作できるのすごいな…と思うなど。
あと、火村とアリスの音楽の好みの話が出てくるんですけど、クラシックの『ゴールドベルク変奏曲』のグレン・グールドじゃなくて、スコット・ロスの方が私の好みで、などということをさらっと入れてくるあたりがとてもおしゃれであり、知識の幅の広さに感服させられます。。ちなみに、グレン・グールドはステージを拒絶して、スタジオ録音が残っているのに対して、スコット・ロスはライブ演奏を収録した盤があるそうで。それがそれぞれの好みに合っているというところに、人柄の違いを出してくるとかそういうのにくい演出ですよね。機会があったら聞いてみよう。
Posted by ブクログ
何となく物足りない感じ。面白かったし、決して中途半端な感じはしないんだけど、「面白くなってきたぞー」と感じ始めたところで結末が降ってきて、スパンっと打ち切られちゃう感じがして乗り切れなかったのが残念でした。
「月宮殿殺人事件」が好みだったかな。
浜さんの高さんへの思いや、サボテンを命の次に大切だと思うような高さんの亡くなった奥様への純粋な愛情とか、そーいうベタなものに感動してしまいました。
そして、やっぱり「絶叫城殺人事件」...ドラマの時も思ったけど、やっぱり、この結末はやりきれないなー。