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Posted by ブクログ
ロジックも良かったし、アリスの推理小説論も面白かった。朱色とは夕日のことなのですが、冒頭の夕日の描写も印象的でした。
でも、それをすべて持って行ってしまったのが犯人の動機。人ってそんな感情になることがあるのか…
順を追って感想書いていきます。まずロジックについて。
この話は前半、後半に分けられそうですね。
准教授の火村が自身のゼミの学生から、過去の未解決事件の捜査を依頼されますが、その事件を本格的に追い始めるのは後半から。
前半は火村とアリスが謎の電話に呼び出され、マンションの一室を訪れると、そこに他殺体があります。そして、その部屋に直前までいた容疑者が現れるのですが、その容疑者の話では部屋に死体は無かったらしく…。この謎が主題です。
個人的には、過去の事件だけでがっつり長編にしてほしかった思いもあるのですが、この前半部もきちんと意味があり、それはそれでやっぱりよかったのかな、と思ったり。
トリックについては、ちょっと悔しかった…。もうちょっとじっくり考えたら分かりそうだったんだけどなあ…。
そして、後半部。いよいよ過去の事件へ。こちらはロジックがしっかりしてました。たった一つ条件が変わるだけで、ここまで推理が展開されるとは!
続いてアリスの推理小説論について。アリスたちが火村のゼミの学生と過去の事件現場へ向かう電車内で、アリスは質問されます。
「なぜ推理小説は殺人事件を描くことが多いのか?」
それに対しアリスはこう答えます。
『死者は、こちらがいくら問いかけても絶対に答えることがない。その不可能性が鍵のような気がします』
『問いかけても答えないと確信しているものに、答えてくれないと確信しながらなお問いかけるというのは、切ない行為だと思いませんか?』
推理小説とは、世界や運命、過去になぜ? と問わずにはいられない人間の思いを引き受けたものなのかもしれない、と。
推理小説をここまで昇華してみることができる作家さんって、有栖川さんをおいて他にいないような気がします。
有栖川さんの描く推理小説やその探偵たちの魅力の秘密は、こうした有栖川さんの思いなんでしょうね。
夕日の描写に限らずなのですが、有栖川さんの描写って何だか好きです。どこか推理小説ぽくないセンチな感じや、繊細な印象を受けるときがあります。この作品の夕日の描写もそうでした。
きっと有栖川さんのどこかロマンチストなところが反映されているからだも思うのですが、これ本人に言ったらどう思われるでしょうか(笑)
そして犯人の動機。個人的にはなかなか理解の難しいものだったのですが、犯人の最後の告白はなんだか身につまされる、切ないものでした。
きちんとロジックや物的証拠を検証したわけではないのですが、個人的な意見だと、まだ犯人は言い逃れできそうな感じではあったんですよね。
ではなぜ犯人は、罪を語ったのか。それは今まで決して表に出すことの無かった感情を告白できる、最初で最後の機会だったからだと思うのです。
共感しがたいのに、なぜか犯人の切ない思いを想像してしまう、そんな不思議な結末でした。
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