あらすじ
旧友・大龍の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた火村と有栖川。二人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。ドアや窓に内側から目張りをされた密室での犯行の嫌疑は大龍に。帰国までの数日で、火村は友人を救えるか。第56回日本推理作家協会賞に輝く、〈国名シリーズ〉第6弾。
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バチバチに面白かった。というのも、やはりトリックがバチバチに奇抜だったからだ。さすが有栖川有栖。
人生何が起こるか分からなく、自分も今年マレーシアに行くことになった。その事前学習として本書を選んだわけだが、、、異国情緒たっぷりだった。
キャメロンハイランドを舞台にしているのでジム・トンプソンの事件は外せない。それあってこの結末かとため息が漏れる。絶妙だった。
松本清張の『熱い絹』も外せない本になりそうだ。
ちなみにマレー鉄道に乗る前にはあまりおすすめはできる本ではない。でもきっとマレー鉄道には乗る。そして色々この本のことを思い出すだろう。
Posted by ブクログ
いつもの2人が日本を飛び出して海外で事件に遭遇。日本なら簡単に行ったことが異国ではそうもいくまい。聞き取れない英語に苛立つアリスや、日本での通りにいかない歯痒さ。さらには友人にかけられた嫌疑と帰国までのタイムリミット。微笑ましい旅路からジリジリと迫るリミットにハラハラ。そして登場警察官へのイライラ笑
鉄道ミステリーではないけど、鉄道で繋がるミステリー。
Posted by ブクログ
長編ということで、最初の事件発覚までがやや長く、楽しみながらも読み掛けで放置してしまってた。ところが再開していざ殺人事件が起こると、あれよあれよという間に完読。おもしろかった!!
個人的にはトレーラーハウスを傾けるトリックは「そんなうまくいくか?」「手で貼ったところよりは接着が甘いから鑑識の時に分かるのでは?」とか思いはしたが、全体的に納得度が高かったのと、すべての謎のヒントが作中にうまーーいこと散りばめてあったのが「さすが」の一言。事件には直接関係しないシーンでも、謎解きの理解が進みやすいように先出しで道具を使っていたり(序盤のジャッキのシーンなど)。
密室トリックは全く看破できなかったけど、犯人の動機、動機に至る背景、真犯人が誰か、というあたりの推理は当たってたのでそれも嬉しく。ただ細かい部分は粗だらけだったので、終盤の畳み掛けでどんどん謎がほどかれていくのが気持ち良いこと!
*
序盤の蛍の対話が、物語全体にとてもよく効いていて、それが本当に良かった。
火村はあらゆる殺人者を赦さず、裁きの場へ送り込んできたけれど、その火村が唯一、狩ることができなかったのが大井なんだろうなと。
大井自身は手を下しておらず、殺人の意志があったかも分からない。ただ、確実に引き金を引いた。故意に、意識的に。
作中には気弱な人から力強くタフな人までいろんな個性を持つ人物が登場するが、自分の裡に潜む暗い意図を遂げ、誰にも捕まらず生き延びることができた(火村さえも追い詰めることができない)のは、唯一大井だけだった。
「永く種を存続させるために個々人は多種多様な個性を持ち、失敗と死を経験するようになった。どの状況でどんな個体が生き残るかは分からない」という序盤の談義を踏まえて、作中で生き残った者は、火村でさえ狩ることができない者……という構造が、今までの作家シリーズでは初なのでは(刊行順に読んでるつもりだが抜け漏れはあるかも)と思い、これまでとは違う読後感だった。
火村でさえ、生態系の個体の一つでしかない。このシリーズにおいて、探偵は特権的/超越的な存在ではない。
ということかなーと、個人的解釈でした。
*
最後に一点だけ!
終盤のあの名シーン。淳子さんが夫の罪を知り、罪の上に生きてきた自分自身にも罪を認識しながら、愛する夫を生かすために銃を取り、庇うシーン(まじで名場面)。
火村は銃がモデルガンだと知りながら、淳子さんが夫に代わって銃を向けると、取り押さえるのをやめ30分も待った。その間に夫の虎雄は逃走した。
「気が変わった」と火村は発言したけど、夫婦の切ない愛情の場面を目にしたくらいで火村は犯人を見逃すのか?というのが引っ掛かった。
半島中の警備が強化され、ジャングルは危険であり、逃げたところで捕まるか死ぬか。その可能性は高いとしても、何かの拍子に逃げ延びることができるかもしれない。
絶対にないとは言い切れないはずなのに、逃げる虎雄をそのままにしていたのが、殺人者を絶対に赦さないスタンスの火村に対して「なんで?」となる。
殺人や殺人者に対する価値観は、火村の人となりの根幹を形成するはずなので、これは単なるキャラ設定ミスではないと思うんだよな。
罪の上に生きた罪を自覚した淳子さんとその行動に対して、火村が何を思ったのか。
これが私には全く解釈できなかった。この先のシリーズを読み進める中で、また解釈を構築できたらいいなと思う。
Posted by ブクログ
『絶叫城』以来の有栖川作品。作家アリスの長編。ひさしぶりに先生の作品を読んで、終始ワクワク感が半端なかった!好きすぎてなんて感想を書いていいかわからん…。あっ!犯人との対峙シーンは見所です(笑)。特にラスト、彼女の行動には終始ハラハラでした。いつ自分の頭の向けた引き金を引いてしまうのか、と——彼の代わりに。犯人の逃走後の意外な真犯人(?)の発覚にはワンフーへの同情が沸き起こりました…なんて可哀想な、ってね。その直後、火村の新たな事件への関与が語られるが、それはどの作品で読めるのだろうか……とにかくパーフェクトな作品でした!!星五つ。
Posted by ブクログ
「有栖川有栖」の長篇ミステリ小説『マレー鉄道の謎』を読みました。
気にはなっていたけど、読んだことのない「有栖川有栖」作品… 期待して読みました。
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マレー半島を訪れた推理作家「有栖川有栖」と臨床犯罪学者「火村英生」を待ち受ける「目張り密室」殺人事件!
旧友「大龍」の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた「火村」と「有栖川」。
二人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。
ドアや窓に内側から目張りをされた密室での犯行の嫌疑は「大龍」に。
帰国までの数日で、「火村」は友人を救えるか。
第56回日本推理作家協会賞に輝く、国名シリーズ第6弾。
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探偵役である臨床犯罪学者「火村英生」と、ワトソン役の推理作家「有栖川有栖(アリス)」のコンビが活躍する作家「アリス」シリーズの作品… その中でもタイトルに国名を冠した作品は特に国名シリーズと呼ばれており、本作品は国名シリーズの第6弾となる作品、、、
旧友「衛大龍(ウィ・タイロン)」の招きによりプライベートでマレー半島を訪れた二人が密室殺人に出くわし、犯行の容疑をかけられた「大龍」を救うために活躍する物語です。
■フラッシュ・バック
■第一章 キャメロン・ハイランドへ
■第二章 雲の影
■第三章 封印された死
■第四章 フィールド・ワーキング・ホリデー
■第五章 増殖する謎
■第六章 蓮の庭で
■第七章 赦されざる者
■終章 夜間飛行
■あとがき
■文庫版あとがき
■解説 鷹城宏
■有栖川有栖 著作リスト
実業家でキャメロン・ハイランドに豪邸を構える「百瀬虎雄」の敷地内にある使われていないトレーラーハウスで、「百瀬」家のメイドとして働いている「シャリファ」の兄「ワンフー」の死体が発見される… トレーラーハウスには鍵はないものの、ドアや窓は全て内側から粘着テープで密閉してあり密室状態となっており、遺体は車内のキャビネットに押し込まれ胸にナイフが刺さった状態で発見された、、、
他殺であれば脱出経路が不明であるが、自殺にしては不自然であることから、現地警察は数日前に「シャリファ」のことで「ワンフー」とトラブルのあったバックパッカー「津久井航」に容疑を向ける… しかし、事件後に行方不明となっていた「津久井」は、「百瀬」家の近所の廃屋で絞殺死体として発見され、廃屋に残された手袋にはトレーラーハウスの密閉に使用した粘着テープの跡と、「津久井」を絞殺した紐の跡があり、二人の殺人は同一人物の犯行と思われた。
さらに、密室トリックを暴いたと吹聴しており、本事件の真相について「火村」、「有栖川」との意見交換を予定していたイギリス人作家「アラン・グラッドストーン」が撲殺され、遺体の近くには"100"か”OOI”と読み取れるダイイングメッセージが遺されていた… 「大龍」の苗字「衛(ウィ)」は「OOI」という綴りだったことから、警察は「大龍」に疑いの目を向ける、、、
「火村」と「有栖川」は、親友を窮地から救うために帰国までの残された限られた時間で真相を究明するために奔走する… 民間人である素人探偵に警察が安易に情報共有や協力をしてくれたり、トレーラーハウスで凝った密室トリックを行ったり等、リアリティの薄い設定でしたが、本格ミステリでは定番の二人のコンビが、丁寧に事件を解決してくれるので、わかりやすくて愉しめる新本格ミステリに仕上がっていましたね。
それにしても… 自らの成功のために、一緒に事業を推進していた二人を殺害していた過去を持ち、今回の三人の殺害に手を下した男は赦せませんが、、、
親の仇とはいえ、遠まわしに事件が起きるように誘導し、自分は安全な場所にいて、自らの手は汚さずに復讐を果たした男の方が赦せませんね… でも、倫理的には赦せないですが、法的には罰することができないんですよね、悔しいなあ。
本シリーズ、初めて読みましたが、面白くて愉しめました… 他の作品も読んでみたいですね。
Posted by ブクログ
時刻表トリックではありません。
大学時代の友人・衛大龍(ウイ タイロン)に招かれて、火村とアリスはマレーシアの高級リゾート地、キャメロン・ハイランドを訪れた。
今回も、彼らの旅の描写は、なんとも旅情を誘う。
マレーシアに行きたくなってしまった。
さて、彼らの訪れる1週間ほど前に、マレー鉄道で、二重追突事故の悲劇があった。
火村とアリスは、その関係者たちと知り合うことになる。
一つ嘘をつくと、その辻褄を合わせるために、どんどんと嘘をつく事になる。
殺人もそれに似ている。
このお話は、料理は完成したのだが、さらに魔法のスパイスをかけて味変したところに意表をつかれた。
火村たちには、後味が良くなかった(というか、胸クソ?)かも知れないが。
鉄道事故が呼び起こす、過去の因縁。
この事故がなければ、真実は眠ったままだったのか?
いや、神様は見ていたのだろうなあ〜
神様も赦さなかったのだろう。
そのために、余計な犠牲も出てしまったが・・・
声なく身を焦がす蛍たちには、ぜひとも幸せになってほしいものです。
Posted by ブクログ
国名シリーズで短編が続いていたので、長編嬉しい!
今回は海外旅行先での事件。
帰国のタイムリミットが迫る中で、殺人事件が次々と起こる。
海外と言うことで言葉の壁(アリスの英語力)がちゃんと表現出来てるのも面白かった。
旅行目的の友人である大龍もすごく良い人で好感が持てる。
火村&アリスの掛け合いも多いし、アリスの内心の突っ込みなど笑えるところがする多かった。
トリックは最初の密室くらいだったけれど、これがまた難しい。
真相が明らかになる最後の最後もまた驚く事実が残っていたし。
複雑…
でも楽しそうな3人で締めくくられていて良かった!
Posted by ブクログ
作家アリス、国名シリーズの第六弾。初の海外が舞台の長編ミステリィでした。
『』は英語のターン「」は日本語のターンと分かれていて、ややこしくはなかったです。
今回のトリックは好みでした。動機の移ろいも楽しめました。
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未読の長篇を堪能!まさか本当に国外が舞台とは、新鮮だった。フィールドワーキングホリデーとなった休暇。日頃と違った環境ともあってかいつも以上に火村の鋭い視点や切り込んで行く感じは頼もしかった。登場する人物が感情的な人間や情がある人、嫌われ者などキャラクターも面白かった。
旧友が登場するのも学生時代が垣間見えて、今のタイミングで読むのも感慨深い感じがする。
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作中の有栖川先生があまり英語を得意としていないという設定の使い方がとても好き
アラン殺害時の、電話でのジョン・ジャック・ジャッキの勘違いネタだけでなく、作中で聞き取れない英語は『××××』で表してその後の(括弧書き)でいろいろと遊んでいるところとか
第四章のラストの『××××(聴き取り不能)』という使い方、ホント好きです
トレーラーハウスの密室は、「傾ける」という発想よりも作中でさらっと流されていた「ショーケース内のコップの水は凍らせておく」という部分に感心してしまいました
本当にシンプルだし、先述したように作中ではさらっと描かれていたのだけど、自分的にはそこが思考の外側の部分だったので思わずハッとさせられました
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トリック等に目新しさはないものの、久々の長編である。このシリーズのいつもの短編に比べ、人物等がより細かく描写され、伏線になっていたりもするので短編では味わえない面白さがある。
Posted by ブクログ
海外旅行なので、有栖の英語力で、聞き取れない相手の会話などがリアルで良かった。トリック自体は他の作品と比べてそうでもなかったが、様々な登場人物の思惑が絶妙に絡み合っていて、最後まで驚きがあった。
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第6弾
アリスと火村が友人の大龍に会うためにマレーシアへ。 数週間前に起こった鉄道事故。その事故で仲間を亡くした会社社長の関係者がことされる事件。2人が絡むことになるが、そうでなくても大龍と接点があり、ゆくゆく絡んでいただろう事件。厄介者が死んだだけではなく、自殺か他殺か?思いの外どんどん殺人が起こるし、途中本当に大龍が犯人なのではと不安になる。 謎解きは、不意に始まり、どきどきしたまま最後まで駆け抜ける。密室のトリックはまさか過ぎるし、終わったと思ってからの引き返しがすごくて飽きずに読みきった。
Posted by ブクログ
国名シリーズはロシア紅茶の謎から始まり、これが6作目。長編でマレー鉄道の事故から始まる。
舞台はキャメロンハイランドへ。私が訪れた時も長閑な紅茶畑のある避暑地のイメージだった。確かジムシンプトンが行方不明になった場所だったような記憶がある。(この作品にも少し触れていた)
そのキャメロンハイランドで連続いや連鎖殺人が起こる。連鎖のため複雑な構成になっていてそれが良い。火村と有栖川が謎を解いていく。密室トリックは楽しめる。マレーシア の滞在期間という締切もあり、制限が加わる事も作品を引き締めている。長編で読みやすい作品だった。
Posted by ブクログ
分厚さに少し慄きはしたものの、中だるみすることなく読んだ。寝落ちしまくって十日間くらいかかったけど。
アリスと火村の掛け合いのファンとしては、最初から最後まで余すことなくたっぷりと見れてうれしかった。あと、アリス視点だからこそできる斬新な表現には笑っちゃった。
ここまで聞き取れるなら相当英語は話せると思うけど。
時刻表トリックものだったら無理だと思ってたので、関係なくて安心した。すごく丁寧に伏線を描き鮮やかに回収してくれるので、物語に没頭できる。あと、描写がとても美しい。蛍のシーンはうっとりとしてしまった。
余韻が残る話が大好きなので、有栖川有栖の話はどんぴしゃ。ハウダニットより、ホワイ・フーダニットが好きなので犯人と対峙し謎を解き明かすシーンはいつもぞくぞくする。
たしか有栖川有栖自身も、余韻が残る話が書きたいって言ってなかったっけ? どこでそのエピソード聞いたんだっけな……。
Posted by ブクログ
異国の地で起きる殺人。ミステリの王道密室殺人。カーの鮮やかな密室とエラリーの鮮やかな推理を混ぜ合わせたような作品だった。火村・アリスコンビはやはり面白い。
Posted by ブクログ
ドアと窓が粘着テープで目張りされたトレーラーハウス。その中に置かれたキャビネットの中に押し込まれた死体。
500頁超えの読み応えのある作品だが、肩肘張らずにスラスラと読める。やはり火村、有栖川のコンビは好きだな。
で、肝心の内容はというと、密室トリック自体は面白いは面白いが、長編一個を支えるには少し心許ない。だが次第に明らかになる、犯罪の思いもよらない全貌に驚愕。
解説にあるようにまさに”玉突き”のように犯罪が起こっていく――けれども、そこには法では裁けない”悪”もある。和やかな雰囲気の物語だが、しっかりと強弱があり、考えさせられることもある。
少し影は薄いが、「ジャック(jack,ジョンの愛称)」と「ジョッキ(jack)」の聞き間違いも面白かった。
Posted by ブクログ
久々の火村シリーズの長編
読み応えあっておもしろかったー!!!
短編集もおもしろいけどいつも物足りなかったんだなあ…。
東南アジアの雰囲気を感じられた。
昔行ったバリを想像しながら読んだ。
有栖川先生の作品はものすごく場所の雰囲気が描写で感じ取れる気がする。
けど、時間感覚が掴めないような気もする…
密室トリックが事件の肝なのかな?
トレーラーハウスなのもちゃんと理由があったんだね。
犯人や動機は結構こじつけというか、火村先生と有栖に都合いいというか、読者にはわからないんじゃないかなこれは…
でも特に犯人当てをしたいわけじゃないので、ものすごく楽しめた。
最後淳子さん登場で、色々切なくなったなあ。
たくさんのひとを殺めてきて、結局なにも残らずひとりになってしまった犯人は、最後どうなったんだろう。
Posted by ブクログ
火村&アリスシリーズ、やはり長篇が面白い!
学生時代の友人・大龍も登場し、本篇とは別の3人の思い出話も楽しい。
3分の2を過ぎた位から、物語が加速していき最後まで気を抜けない展開に…‼︎旅行に行けない今、秘境のリゾートを味わえたのも良かった。
Posted by ブクログ
久々、アリスと火村先生の長編!
なぜかマレー鉄道、タイが舞台で、
アリスが英語があまりできない設定なので、
翻訳されていない部分があり、
さらに事件が起きるまではダラダラと旅行記が続くで、
最初はイライラするかも。
最終的には、英語が堪能でないアリスが
重要な役割を果たす場面があって、
このためだったのか!と膝を打ちました。
いやー、面白かったです。
メインのトリックも好きでした。
Posted by ブクログ
面白かった!
これまで読んできた作家アリスシリーズの中でもトップレベルだと素直に思う。
夢中で読んだし、二回読んだ。
賞獲ったのも納得。
アリスと火村が大学時代に交友した留学生の経営するマレーシアのホテルに遊びに行く話。
最初っからマレーシアで観光していて、作品を通して旅特有の夢心地な雰囲気が漂う。
珍しく火村のもとに殺人がもたらされるまでが長い。でも最初から火村とアリスは蛍見ながらイチャイチャしているので、退屈しない。アリスがずっと訊けずにいた「お前は、何と戦ってるんや」なんてシリアスな質問を初っ端から発しちゃうあたりにも、旅行中の開放感を感じる。
旅先での事件ゆえ警察に顔が利かないはずが、親日家の警察にあり得ないくらい良くして貰ってて「お話」っぽい(けど許す)。
英語のヒヤリングに苦労しているアリスに、すごくシンパシーを感じる(それでも自分よりは全然出来る)。(聞き取り不能)のバリエーションが笑える。「拙者の英吉利語は、本日は店じまいにて候」(笑)。疲れると外国語が雑音にしか聞こえないの、分かるわー。
作家アリスシリーズには珍しく連続殺人事件に発展する。それも残り頁が少なくなってきてからも人が死ぬ。なのに全く解決する気配がないので、おいおいホントに終わるのかよ、と突っ込みを入れたくなった。誰もが怪しく見えて、誰が犯人なのか最後まで全く見当が付かなかったのもお見事。
残りわずかで一気に解決する怒濤の展開は引き込まれたし、百瀬が犯人だと分かった後も二転三転して(夫人が乱入して夫を逃がしたり、事件が解決してクアラルンプールに向かったのに引き返したり)、最後までハラハラできるストーリーだった。
第三の殺人が、犯人のネイティブスピーカーじゃないからこその解釈ミスで引き起こされたってのが、すごく面白かった。特に、アリスの理解がちゃんと合ってたのが良かった。もし逆にアリスのリスニング能力が遠因だったら、アリスは一生立ち直れなかっただろう。有栖川さん、アリスに優しくしてくれてありがとう。
毎度思うけど、火村の推理は、徹底的に状況を洗って状況証拠で理詰めにする手法で、物証がない。
その代わり、まるで重箱の隅をつつくように凄く凄く些細なことまで合理性を重視する。
で、解決編を読むとちゃんと伏線が張られていたことに気づくんだけど、その伏線の目立たせすぎず且つ何となく印象に残す匙加減が、非常に非常に巧い。ジョンをジャックと呼ぶのは親しみの表れだとか、トレーラーハウスのショーケースには水の入ったコップが置いてあるとか、トレーラーハウスはブロックの上に設置されているとか。
ただ、いくらコップが小さくても一時間程度凍らせたくらいじゃジャッキ作業しているうちに溶けはじめちゃうよ…とは思った。
あと、密室のトリックが分かったあとでトレーラーハウスの平面図見ると、あのバスルームの作りで便座だけ北向きなのは無理がありすぎる(笑)。
あと、ワンフーの通話履歴を調べていなかったマレー警察は怠慢。
「忍ぶ恋」が作品の重要なモティーフになってるけど、日置敏郎が死の間際に百瀬淳子に想いを告白したのはちょっと許せない。言った方は伝えられて気が晴れるかもしれないけど、言われた方のことを全く考えていない自分本位の行動でしかない。忍んでたんなら文字通り墓場に持って行くべきだった。
過去に犯した罪を遺族に打ち明けるのはアリだとしても、百瀬に頼まれて…なんてことまで喋っちゃうのは、自分の手は汚していない百瀬への恨みでない限り、全く浅はかとしか言いようがない。
今回も火村はクールでカッコ良かったけど、「俺みたいな奴ばかりだったら、地獄のままだ」とか闇が吹き出しそうなシーンや、冷徹に過ぎる場面があってヤバかった。火村が犯罪を憎むのは同族嫌悪なんだということが、今回すごく実感できた。
一方のアリスは、自分でも「人がいい」と評しているけど、今回は火村や大龍や、事件関係者に対するふとした思いやりや気遣いが普段増しで感じられた。推理はポンコツだけど、添い遂げるならストイックな火村よりアリスの方が幸せになれるかも(妄想です)。魂がピュアというか、こっちにまで良い影響を与えてくれそうで、火村が一緒に居ようとするのが分かる気がする。
本作品で(やっと)得た、アリス、火村の人間像を踏まえて、また第一作目から再読したくなった。
Posted by ブクログ
有栖川作品を読むのはこれで2作目。
こんなに面白かったんだと、読みながら何度も思った。
以前にAudibleで聴いた『月光ゲーム』があまりハマらなかったので、有栖作品はその後読んでいなかった。(ナレーションの過剰な演技でどうにも集中できなかったのも大きい)
魅力的なキャラクターに、王道の謎解き、グロさや嫌な気分になることもなく、安心して楽しめる本格ミステリー。
久しぶりにこの感じを思い出して、そうそう!こういうのが読みたかったんだと嬉しくなった。(今回の音声はとても聴きやすかった)
『マレー鉄道の謎』は、タイトルから『オリエント急行の殺人』のようなクローズドサークルを勝手に期待していたけど、全く違った。
マレーシアの異国情緒が漂ってきて、旅行に行ったような非日常感を味わえる。
ワトソン役の作家・アリスの自虐っぽい語りはとても親しみやすくて、『ホーソーン&ホロヴィッツ』シリーズのホロヴィッツを思い出す。(アリスの方が全然元祖だけど、私が読んだ順が逆なので)
まっすぐで人間味あふれるアリスもすぐに好きになったし、探偵役の火村は知的で落ち着いていてかっこいい。
ゆっくり進んでいた物語が、終盤で一気にスピードを上げる。
内側から目張りされた密室での犯行はどうやって行われたのか?
私は心理トリックが好きで、物理トリックには全く興味がないので、仕掛けの細かい説明は右から左にスルスル流れて「大体わかればいいか…」という状態に。
トリックよりも火村とアリスの掛け合いや、アリスの一人語りツッコミが楽しかった。
次に『スウェーデン館の謎』を聴き始めている。
雪深いログハウスでの事件で、もう冒頭からすでにこっちの方が好み。
Audibleは海外ミステリーが少なくて、次に何を読もうか…といつも悩むけど、アリス国名シリーズは充実しているので、これからしばらく、このシリーズに浸れそうでうれしい。
Audibleにて。
Posted by ブクログ
国名シリーズ六作目
序盤は旅行記、事件発生はやや中盤付近からと事が起きるのが遅めの印象
もちろん事件真相からのひっくり返しもあり無難に面白い作品
Posted by ブクログ
マレー半島を訪れた有栖川と火村先生が遭遇する。2人の操作方法に慣れていない現地の警察とやりとりをしながら操作をしていく過程が新鮮だった。事件の真相は少し気が重くなるものだったが、ラストの2人のやり取りに和む。
Posted by ブクログ
2002年。国名シリーズ第6弾。長編。
マレー半島はキャメロン・ハイランド。マレー半島の鉄道事故がプロローグ。旧友大龍の招きで、キャメロン・ハイランドを訪れた火村&アリス。蝶好きの日本人観光客などと出会ったりしているうちに、トレーラーハウス内での殺人事件が。後半から物語は加速し、ほーとなるトリック。連鎖、玉突き。アリスは英語堪能ではないので、「聞き取り不能」が多くて笑える。人物一覧がほしい。マレーシア行ってみたくなる~
Posted by ブクログ
海外での話。
登場人物の名前だけが最初にどんどん出てきて何者なのかを把握するのが難しかった。
でも読み終わる頃には旅行の終わりみたいな寂しさがあった。
密室の謎はこうやったんだろうなと予測はついたけどまさかの真相で驚いた。
Posted by ブクログ
火村と有栖の楽しい海外旅行記!
長編は良いですね。
私の空間認知能力が低くてトレーラーハウスを脳内再生できなかった。
あと横文字の名前覚えるの苦手すぎて……。
火村先生の帰国を延期できない『大事な用』が、火村先生らしくて可愛いです。
Posted by ブクログ
(長編)国名シリーズ6火村&有栖シリーズ12
目次
フラッシュ・バック
第一章 キャメロン・ハイランドへ
1
2
3
4
第二章 雲の影
1
2
3
4
5
6
第三章 封印された死
1
2
3
4
5
第四章 フィールドワーキング・ホリデー
1
2
3
4
5
第五章 増殖する謎
1
2
3
4
5
6
第六章 蓮の庭で
1
2
3
4
5
第七章 赦されざる者
1
2
3
4
5
6
終章 夜間飛行
1
2
3
あとがき
文庫版あとがき
解説 鷹城 宏
1
2
有栖川有栖 著作リスト