森見登美彦のレビュー一覧
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東山にある男子たちが住まう一部屋四畳半の「法然院ハイツ」では、夏でも汗だくでキムチ鍋をつつく貧乏男子学生が住んでいた。ある人物は向かいのマンションに住む三浦さんと浅からぬ仲となり、女性と縁のないものは山を縦走し、実体を生み出す空想数学の式に熱中する。そんな魑魅魍魎の集まった四畳半の部屋とその周辺で生まれる短編集。
前作なのか全前作なのか、名作『四畳半神話大系』の続編だろうと読みかけたが、のっけから過去の文学のパロディらしきひとり語り、2本目でひとり語りのひねりが来るのかと思いきや全く別のスタイルで、登場人物の名前が出てこない。次には奥歯のギザギザが連なる山になりその山での出来事という、音楽ビ -
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ネタバレ湯浅正明監督「夜は短し歩けよ乙女」で触れたり、アンソロジーで数作読んだだけの森見作品を、初めて一冊通して読んだ。
(「水神」は東雅夫・編「平成怪奇小説傑作集2」で既読。)
で、どれもよかった。
おそらく森見作品群の中では傍流なのではないかと思われる、怪奇幻想もの。
凄惨な奇妙ともいうべき「きつねのはなし」、茫洋な語りそのものがうら恐ろしくなる「魔」。
個人的に好みなのは創作の魔ともいえる「果実の中の龍」は、読んでいるこちらの腹がぎりぎりするようだった。
全作、解かれる謎があるわけではない、謎放置の味わい。
得体の知れなさこそが一番の恐怖だ。 -
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祇園祭・宵山の京都で、オモチロイ不思議な旅を。
森見登美彦ワールド全開の奇妙な冒険。
森見登美彦氏の作品と言えば、私の中で「京都の大学生を主人公にした話」というイメージ。
今回は登場人物ほぼ社会人。
「ぽんぽこ仮面」を巡って、祇園祭・宵山の京都を舞台に森見ファンタジーが大暴れ!
ちなみに『宵山万華鏡』や『有頂天家族』とも関連しそうな小ネタが仕込まれていますが、未読でも問題ないようです。
忙しい現代にピッタリな怠け者と反怠け者たちの冒険。
皆さん、たまには内なる怠け者の声にも従いましょう。
さすればオモチロク素敵な一日が過ごせるやもしれません。 -
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ネタバレ一章一章が40ページほどの短話集であり、集中力のない自分でもとても読みやすかった。全体の構成は桐島部活やめるってよのような一つの出来事について多面的な視点から眺める感じ。
四畳半が大好きなので、無限ループネタがあったり小津のような乙川が出てきたりと既視感を感じつつも楽しめた。
最後の宵山万華鏡はフィクション色が強くて上手く話についていけなかった感がある。大坊主とか舞妓とかは乙川たちの演出じゃなかったの?あれ?
全体として宵山に関する知識、京都の地名に関する知識があればもう少しリアリティを持って読むことができたかもしれないと思った。 -
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太宰治を少し違った角度から焦点を合わせた作品。
「黄村先生言行録」「満願」「女の決闘」「走れメロス」など
30年ぶりに読んだ走れメロスは突っ込みどころが多かった。メロスは自分勝手極まりない、勝手に妹の結婚式の日取りを決めるし、走って帰る時もわざわざバーベキューかなんかしてるところを横切るし、王様はいい王様になった感じやけどそれま惨たらしいことしているのにとも思う。
ただこの短さと時代設定になんとなくうやむやにされてしまう。
つまり、恥ずかしいけど感動する。
この作品はまたタイトル勝ちなところがある。
倒置法的に動詞を前に持ってきて主人公の名前を持ってくるのは「桐島部活やめるってよ」くらいま