森見登美彦のレビュー一覧
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辻褄という言葉が存在しない作品。
作中の熱帯は千一夜物語をモチーフにしているがこの作品自体も千一夜物語のオマージュとなっている。
作中の人物が語る話の中の人物がまた物語を語り始めるといった具合で元の物語の奥へどんどん引き込まれる。
池内さんが京都で千夜さんの後を追う所までは物語を追えていたが、アトリエの中に入ってからの第4章以降は物語を追うことを諦め、ただただ物語の波に身を委ねていた。
5章からは語り手が誰なのかもほぼほぼ分からなかった。
作中の不可視の群島は魔王によって創造されたものだと言う説明があり、そこに住む人達は群島の外には出られないことになっていたが、外の世界の人たちも熱帯という作品の中からは出られないというトリックになっていることに感心した。
マトリョーシカという比喩がピッタリの作品。
話の流れは理解し難がったが、ファンタジー要素が多く自分好みの作品だった。
作中には様々な場面が登場したが個人的には突如現れた何も無い不可視の群島でコーラを飲むというなんとも現実離れした場面が好きだった。
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森見登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」
バカバカしくも「どうなるんだ?」とワクワクする。あたかも多元宇宙のような2元ホームズ譚。
プチシャーロッキアン、さて、どんな話なんだろうと。古今東西、ホームズのパロディ、パスティーシュは手が尽くされている。京都でどんな展開をする?と興味。
ヴィクトリア朝京都、寺町通221Bのシャーロック・ホームズは赤毛連盟事件の大失敗以降、この1年、深刻なスランプに陥っていた。診療所を営んでいるワトスンはメアリに、ホームズをやたら気にかけるのはやめるよううるさく言われていた。そしてこの期間、多くの事件を解決し目覚ましい活躍を見せたのは、ホームズ宅の向かいに事務所を構えるアイリーン・アドラー。ホームズはやはりスランプに陥っていた、学究の徒・モリアーティ教授と意気投合し、互いの傷を舐め合う。
やがてホームズは引退するとして洛西、嵐山の旧家、マスグレーヴ家の竹林に庵を結ぶ。マスグレーヴ家では12年前、当時12歳のレイチェル嬢が失踪し、ホームズも捜査していたー。
日本人がホームズのパロディを書くと、特にシャーロッキン的なテイストの散らし方が丁寧かつ細かく、その点の満足感が高い、反面、ストーリーにダイナミックさが足りないことが多いという印象。かつて柄刀一が書いた傑作「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」はその点十分だった。作中、ホームズ&ワトスンを東京の二子玉川に住まわせ馬車サービスで移動させていた。
さて、今回森見登美彦は自分の特徴を活かしながら、シャーロッキアン的な要素を周到に撒きながら、大きなストーリー展開をしていると思った。途中でこれから、という時に大胆に位相が変わり、混迷、どゆこと?となる。そして絵に描いたようなピンチがあり、え、この関係性ってこのまま終わるのまさか、と思わせて最後の数十ページで決着をつけている。
ヴィクトリア朝京都、京都警視庁通称スコットランドヤード、御所が王宮、馬車が普通に走り鉄道もある。寺町通221B・・バカバカしくもおもしろい、いつもの感じの設定。いわゆるキャノン、聖典、つまり原作のホームズ譚の登場人物がたくさん出てくる。編集者ヴァイレット・スミス嬢(「美しき自転車乗り」のヒロイン)が当然のように愛用自転車でしょっちゅう移動してるのが印象的。
この作品におけるモリアーティ教授がワトスンが結婚、開業で出て行った後の部屋に住んでいて、最初ヴァイオリンの音をなんとかしろ、と怒鳴り込む時のやり取りは「最後の事件」のパロりで大変好みだ。そして物語の1つの中心となるマスグレーヴ家の謎。たまりませんね。
異世界もので京都だから不思議な現象ありあり、という理由は最近ちょっと飽き感が正直ある。あまり突飛な発想も好きじゃない。非常に細工の凝った、大掛かりな仕掛け。楽しかったけども、どこか納得できないとこもある。
まあただ、散々かき混ぜて落ち着く方向へ持っていく手腕、筆致の良さは認めるべきと思う。 -
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ネタバレ夜行と曙光が混じり合う独特な世界観にゾッとした。
物語のオチとしては、スッキリとした印象は得られず、あくまでも世界観に浸る作品なのではないだろうか。そのうえ読み始めから読み終わりまで惹き込まれる世界観はさすがのもので終始飽きることなく読み進められた。
また、ガガーリンの「地球は青かった」のセリフに対して本当は宇宙の暗さが地球の青さを際立たせていたと意訳する視点には圧倒された。同時に私は、このような一つ一つのセリフに対して、穿った見方を得られる思考が羨ましく思った笑
「世界はつねに夜なのよ」というフレーズが度々作中に出てくるほどに夜を感じる作品だが、最後は裏腹に「ただ一度きりの朝」を主人公は受容している。
本当に夜は明けたのだろうか?
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ビクトリア朝京都って何…?京都の町にホームズがいるってこと?いや、描写的に日本家屋って感じじゃない…でも神社が存在してる…なんか映像を想像出来ない舞台だな…。というのが第一印象だった。
シャーロック・ホームズシリーズは読んだ事はない。とは言え、オマージュや二次創作に触れる機会はあった為、登場人物や事件のタイトルくらいは知っているのだが、そんな浅薄な知識の自分にも、スランプという共通の悩みを持つホームズとモリアーティが一つ屋根の下で暮らしているという設定が如何に異様かは分かる。正規のシャーロック・ホームズからはあまりにもかけ離れた世界観の本作。実はこの舞台が影であるという話になった時には得心したものの、一周回って戻った時には借り物故にそう着地せざるを得ない、本物の世界に帰結は出来ないよなとメタ視点でまた納得した。と言うか本作も単なる二次創作の範疇だったなという印象を受けた。全編通してあまりピンと来なかったのだが、自分が原作未読故にメッセージを掴み損ねている可能性もある。 -
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ネタバレ普段、昔の小説は食わず嫌いでまったく読まないのだが、森見登美彦版のストーリーということでかなり面白く読むことができた。
森見登美彦の描く小説といえば阿呆な大学生がドタバタするストーリーという勝手なイメージがあるが、京都の美しい情景や美しい女性、ちょっとレトロな雰囲気、ともすると背筋がすうっと冷たくなるような不穏な感じなどなど、とにかく色々と素敵な要素が詰まった短編集である。
山月記
小説に魅入られて天狗になった男の話。
こちらの短編集には5つの小説が入っているが、どの小説にも本作の主人公・斎藤が登場するのがオマケ的要素な感じがして好き。
藪の中
いろんな人の視点で描かれた小説。
最後のキスシーン、人によって記憶が違うのが不思議で、情景の美しさの中にうっすらと怖さもある気がする。
走れメロス
これは面白すぎる。
走れメロスの原作とはいろいろズレてる気がする。が、最後のシーンとか本当に最高。
京都の大学の学園祭というシチュエーションがとても似合うストーリー。自分の大学時代を思い出して、なんだかエモくなってしまった。
桜の森の満開の下
森見登美彦は幻想的な風景を描くのが上手。
そして、その舞台として京都がとてもよく似合う。
まだ薄暗い朝、満開の桜とシンとした空気。雰囲気のある美しい女の人。そこに一欠片の恋愛の切なさがいいスパイスになっている。
百物語
百物語というとかなり怖い話のイメージがあったのでドキドキしながら読み進めたが、血みどろお化けというよりかは、すっと背筋が涼しくなるような感じのお話だった。