あらすじ
どうしても「読み終えられない本」がある。結末を求めて悶えるメンバーは東奔西走。世紀の謎はついに…。第6回高校生直木賞受賞作。
【電子書籍特典付き】電子書籍特典として森見さんの書き下ろしエッセイ「私の熱帯」をPDFでダウンロードして読むことができます。
※この電子書籍は2018年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
「本というものが俺たちの人生の外側、一段高いところにあって、本が俺たちに意味を与えてくれるというパターンだよ。でもその場合、俺たちがその本が謎に見えるはずだ。だってもしその本が解釈できると思ったなら、その時点で俺たちの方がその本に対して意味を与えることになってしまう。」
「いろいろな本が含んでいる謎を解釈せず、謎のままに集めていけばどうなるだろうかということなのよ。謎を謎のままに語らしめる。そうすると、世界の中心にある謎のカタマリ、真っ黒な月みたいなものが浮かんでくる気がしない?」
沈黙読書会の店主が物語冒頭で語ったこの言葉。
まさに『熱帯』を表す言葉であった。
正直読んでいて謎が多いし、理解しにくい部分も多分にある。けれどもその謎が「世界の中心にある謎のカタマリ、真っ黒な月みたいなもの」を生むのであろう。
この本が私の人生にどのような意味を与えてくれているのか、今一度再読しよくよく味わってみたい。
Posted by ブクログ
千夜一夜物語になぞらえて、誰かの物語の物語の物語…が無限に続く構造になっていて、脳がバグっちゃいそうでした。自分がどこにいるかわからなくなるような夢の中にいるような感覚に襲われます。
1〜3章の熱帯に現実が侵食されていく狂気も好きだったし、4章以降がシンプルにファンタジー冒険活劇もので、自分が度々ありえないことが起こる世界を探索してるようで、ワクワクして一気読みしてしまいました。
読んでて「君たちはどう生きるか」を初めてみたときのあの意味分かんなさすぎて圧倒される感じが思い出されました。また読んだら、1〜3章とそれ以降のつながりがもっとみつけられるのかも。失踪した読書会メンバーはそれぞれの物語の世界に入っちゃったってことでしょうか?誰か教えてください… あーでもこうでもって、誰かと考察し合いたい本です。
Posted by ブクログ
不思議な夢を見た後のように、この本を介して見た景色や感覚がぼんやりとずっと記憶に残っていて、読んだのは何年も前なのに、時たま思い出す。〈熱帯〉で過ごした日々と、私の実生活における過去の日々は、同様に記憶の中でしか存在しない確かな人生の一部となっていき、作者の空想でしか無いはずのその記憶は、時が経つほど朧げな現実味を増してゆく。
読んでいる時はとにかく没入して、訳もわからず〈熱帯〉の中を彷徨った。実地踏査の様な読書体験だった。
「熱帯」について
現代日本版の「千夜一夜物語」は、古川日出男の「アラビアの夜の種族」や星野智幸の「夜は終わらない」などの名作がありますが、森見登美彦の「熱帯」もその系譜に繋がる作品だと思う。
語り手は作者の分身である「モリミン」。小説が書けず、スランプ気味のある日、謎の本をめぐる物語を思いつく。
「汝にかかわりなきことを語るなかれ」という警句から始まる、「熱帯」という本の記憶が甦ったからだ。
見るからに、虚実の境があやしくなりそうな危ない設定だ。この本を最後まで読んだ者は一人もいない。
語り手は奇妙な「沈黙読書会」で本に再会し、「学団」がその内容の全貌をつかもうと研究を重ねている事を知るが、「熱帯」にはどうしても切り抜けられない「無風帯」がある。
謎の追求は、アラビアンナイト風の入れ子構造をもって、とんでもない展開になっていく。
因みに、作中に出てくる「虎」は作者に言わせると、自分が頭でコントロールできない何かだとか。
本は幾多の本を呼び込む。書物とは一体、誰が書くものなのか? 作者ではないかもしれません。
このモリミーの「熱帯」は、壮大な本の冒険であり、創作論でもあり、時を超える蠱惑の語りにゆったりと身を任せられるのです。
Posted by ブクログ
「熱帯」という本を巡って、話が入れ子のように次々と展開していきます。
途中からはこんがらがってくるので、あまり考えず流れに乗って読み進めました。
謎解きあり冒険あり、気づいたらこんな所に来てる…みたいな。煙に巻かれてるような不思議な読書体験。コレ好きかも!
Posted by ブクログ
「あらゆることが『熱帯』に関係している。この世界のすべてが伏線なんです」
一冊の本、『熱帯』を巡る物語。
その本は誰も、結末まで読み終えることが出来ない不思議な本だった。
『四畳半神話大系』『有頂天家族』など、コミカルな作風でお馴染みの森見登美彦先生の作品からは少し離れた様な、不思議な読み味のする本でした。目まぐるしく変わる情景、予想外の物語と物語の繋がりへの驚きなど、「読書めちゃくちゃ楽しい!」と強く思わされる素敵な作品でした。この世界の何処かには、そういう不思議な事ももしかしたら本当にあるのかもしれない。子供の頃に児童書を読んで、日常の中に潜む非日常を相手に活躍する主人公たちの物語にワクワクしていた頃の気持ちがありありと蘇る、そんな作品です。情景を想像するのがこんなに楽しい本があるなんて。
本当に面白い物語でした。読んで良かった。またこの作品のキャラクター達に会いたいです。
Posted by ブクログ
こんな本は初めて読んだ。
読むのに時間がかかるけど、おもしろい。
森見登美彦さん曰く、『熱帯』は『ペンギン・ハイウェイ』の遠い続編であり、『夜行』と対になる小説であるらしい。確かにそんな感じがした、かも。
ぐるぐる回って、目が回ったような感覚になる。
Posted by ブクログ
不思議な物語にどっぷり浸りたい時、夜なかなか眠れない時、現実逃避したい時にぴったりの本。
ページ数は多いけど、いつまでも続いて欲しくて、1ページ1ページが愛おしかった。やっと読み終えた!という達成感と終わってしまった…という切なさが同時に押し寄せてきた。読み終わってもまた最初から読み直したい衝動に駆られている。でも、他にも積読がたくさんあるから、今は我慢。また内容を忘れ始めた時にでも…。
表紙の伏線回収が好き。
森見さんの作品は初めて読んだけど、世界観がとっても好きだなと思った。好きな作家さんに仲間入りする可能性大。他の作品もこれから読んでいきたい。
Posted by ブクログ
海を切り裂いていくようにずんずん読み進めてしまった…。どうなっていくんだろうってのめり込んでしまう。不思議な冒険譚だった。
「森見節」というとあの慇懃な文語調の語り口を思い浮かべるけど、その文体でなくとも「へっぽこ」「風邪のときに葛根湯」「なーる」等々散りばめられた言葉たちから森見さんの作品っぽさを感じる
Posted by ブクログ
様々な世界線が入れ子になって交わっている不思議な感覚。途中までなかなか話に入り込めなかったのに、ラストの50ページくらいから一気に引き込まれた。読み終わって、え?どういうこと?となって、すぐにもう一度読みたくなる作品だった。
Posted by ブクログ
「千一夜物語」をモチーフにして、決して読み終えることが出来ないという幻の本「熱帯」を追い求める物語。
素晴らしく魅力的な設定だが、この作者のことなので当然ひとすじ縄には行かない。
入れ子構造の複雑な構成で、今、誰が語っている話を読んでいるのか、だんだん分からなくなっていく。そして、熱帯の島々で繰り広げられるめくるめく冒険からやがて戻って来た場所は...という不可思議なお話。
相変わらずの惚れ惚れとするような文章力、小説力に浸って読書する楽しみは筆舌に尽くし難い。
ただしなかなか疲れるのも確か。
Posted by ブクログ
物語の展開が複雑怪奇だった+読んでて楽しそうでやってみたくなった。って感じで、登場人物の行動になぞって自分なりの相関図やメモなども書き留めながら読みました!
これからどうなるんだろう…!っていう先が読めない展開にワクワクしながら、気になった事を都度書き留めていく。その習慣がなかった自分からすると「こんな読書の形もあるのか!」と、とても楽しみながら読み進めていく新鮮な読書体験になりました!
これからも時々、メモや相関図、印象に残った文言などを書き留めながら読書する機会を作りたいなと思いました。
面白かったぁ〜
Posted by ブクログ
誰も結末まで読み終えられない本、「熱帯」。
そんな摩訶不思議な本に魅了された人々は、結末を知るために記憶を擦り合わせる。いつの間にか、小説であったはずの「熱帯」は、現実世界にまで入り込んでくる。ふと気がつくと、我々読者も、熱帯の無人島を彷徨い歩いているようだ。
物語の中の登場人物がまた新たな物語を紡ぎ、それが繰り返される。だんだんと、どちらが現実でどちらが幻想の物語かの境界線が曖昧になってくる。「千夜一夜物語」を元に、現実と幻想を丸ごと取っ替えるかのようなよい読書体験だった。
Posted by ブクログ
物語の中に物語があり、それを語っていくことで続いていくというのがこの本の一貫したテーマだったのだろう。徐々にファンタジー的な要素が強くなっていきどんな結末を迎えるのだろうとワクワクして読み進めた。しかし残り少ないページ数になっても謎は解かれそうにない。結局、1番最後になってもよく分からなかった。その謎に放り込むのがこの本の目的だったのかもしれないが、私としてはモヤモヤした気持ちにもなってしまった。誰かと語り合うことでまた変わるのかもしれない。
Posted by ブクログ
ファンタジー。すごく不思議な物語だった。
物語の中で物語が始まるという構成が至るところで観られて読み進めることが楽しかった。
前半は「熱帯」と、その作者である佐山尚一の謎を追っていく話。後半は佐山尚一の物語。
個人的には前半のような謎を追っていく中で不思議な現象に巻き込まれたり、個性強めなキャラクターに振り回されたり、と言った展開が好き。池内氏と白石さんのやりとりがもっと読みたかったが、後半も南の島の描写が美しくて良かった。暑いシーンは暑いし、雨が降ると寒かった。熱帯、南の島の空気感や色がありありと感じられて気持ちよかった。
物語を創作することについても触れている。何もないからこそ何でもある。魔術はそこから始まる。だからこそネモは記憶をなくした何もない状態から、思い出すことで創造の魔術を使い「熱帯」を創っていったんだと思った。
森見さんのセンスは相変わらず光っており、「沈黙読書会」や「暴夜書店」など私の癖に刺さるワードが出てきて嬉しかった。お気に入りのフレーズは「乙女危うきに近寄らず」。
Posted by ブクログ
『アラビアン・ナイト』や『ロビンソン・クルーソー』、『海底二万里』を読んできた私にとっては類似点を見つけるのがすごく楽しかった。ファンタジー要素強めだったのと、キャラクターを一致させるのが大変だった。あと、池内さんはどうなったのか分からなかった。けど、これも千年一夜のように、誰かの語りをが誰かの語りとなって、、って繋がって行く、ということなのかと思った。
Posted by ブクログ
森見登美彦ワールドすぎて途中何回も置いてかれたし、ちゃんと読めているのかすらも怪しいけど面白かった!
最終的に誰が主人公なんだかどの世界線の話なのかもよくわからなかったけど爽快で大好き!
Posted by ブクログ
不思議な読書体験だった… 表面的なことを言うと、この本の構成自体『千一夜物語』のオマージュで頭がこんがらがってくるし、始まりがどこか分からない でもそれだけじゃなくて、自分でこの『熱帯』を完成させることが大事なんだと思った
Posted by ブクログ
面白かった!けど難しかった…!!
物語の中で物語が展開していって(入れ子構造と言うらしい)、語り手もいつのまにか変わっていたりするので人物図を把握していないと読み解けない
さらさら〜っとも読めないね、ちゃんと読まないと理解できない
ラストの解釈も「多分こういうことだよね…?」といった具合で自分の解釈にそこまで自信がない…笑
読み進めれば進めるほど「熱帯ってなんだ…?」となり作中の台詞のように自分自身が熱帯に取り込まれているような感覚になった
Posted by ブクログ
良書。
小説が読みたくなる。小説を読み始めるだけで周りから遮断された世界に入り込むことができるのは分かる気がする。
最後まで読んだ人がいない熱帯という小説をめぐるユニークな設定。
展開が分かりにくい。今どういう状態の話なのか混乱する。だけど、それを気にせず世界観を楽しめばいいのかと思う。
Posted by ブクログ
わかったようで何もわからない、難しい話だった。言葉にできるほど自分の中に確かな考えがあるわけでもなく、ただただ降ってくる不思議な物語を浴び続けたような感じだった。
このお話の中でもいろんな人がいろんなことを語るので、自分が今どこにいるのか度々迷子になった。でもそれがつまらないとかそういうわけではなく、こんなにも難しい構造なのに、最後まで飽きることなく読ませてくれる森見登美彦はすごいなぁと思った。
Posted by ブクログ
再読。
初読の時に比べれば、まだ話に筋を追えた分マシ。
何が言いたいのかもなんとな〜くわかった気がするけど、やっぱりよく分からんところは分からん。
ただそのよく分からんってのはつまんないと同義ではないので悪しからず。
Posted by ブクログ
友達からお薦めしてもらって読み始めました。
中盤までは、色々繋がっているんだなぁと思ったのですが終盤は何が何だかぐらい迷走でした。最後まで読んで、さまざまな解釈ができる物語だと感じました。
Posted by ブクログ
どうしても読み終わることの出来ない「熱帯」という不思議な本を巡る物語。
確かに面白くて最初は引き込まれたけどやっぱり途中で訳がわからなくなった。
何度も読み直してみたくなる物語だった。
森見さんらしさもあって訳がわからないながらも読んでいて楽しかった。
Posted by ブクログ
森見登美彦さんらしい、SF作品でした。一つの本から始まり、そこから自然とつながる新しい物語にのめり込んでいきました。時間軸、登場人物など複数の事象がより複雑に絡み合って不思議な世界観です。
Posted by ブクログ
去年とあるチャットアプリにて紹介?された本。
読み終えるまでにかなり時間を費やした。
つまらなかったわけではない。ゆっくりなのだ。
途中から現実と空想の区別がつかなくなり振り回される感覚が楽しかった。時代も変わるし。
結局何だったんだろ熱帯。
思い出せない本、最後まで読めない本。
本についての本っておもしろい設定だよね。
Posted by ブクログ
読みたくてずっと積ん読にしていた本。
やっとこ読みました。
森見作品は結構読んでて、やっぱりあの少しふざけた森見節が大きな魅力のひとつだと思う。
ところがどっこい、この『熱帯』はその森見節が鳴りを潜めている。
『夜行』とかもそうだったなぁと思いつつ、それはそれで期待。
内容は詳しく書かないけど、というか簡潔に書くのが難しい笑
一言で言うなら不思議。
初めて知ったけど、「入れ子構造」という書き方がされていて誰かの語りの中でまた違う誰かが語り始め、さらにその中でまた誰かが…というマトリョーシカ形式。
少し混乱するところもあったけど面白い形式だなぁと。
ただいろんな世界線が混じり合っていて謎や不思議に包まれていて、私としてはもう少しスッキリしたかった。
3章までは結構好きだなあ。
それにしても森見登美彦はいろんな雰囲気の物語を書くんだなー。
他の本もどんどん読んでいこう。
Posted by ブクログ
いわゆる森見さんの大学生小説の軽やかで笑える話ではない。
たくさんの世界線をあっちこっち行き交うので、頭が混乱してしまった。
奇を衒いすぎ、狙いすぎで空回り感がありました。
理解したい、けど難しい……。
Posted by ブクログ
物語の仕組みがおもしろい!
作者が出会った熱帯という妙な本をきっかけにミステリーから冒険へといざなう痛快小説。
本を開けば意識をその世界に無理やりもっていける感覚を物語の中で再現している。
現実世界からいなくなったような感覚。
まさに熱帯は現実離れした世界に後半は持っていかれる。
まさにマトリョーシカのように物語から別の物語へと続き語り手も変わり、最後まで読み切ってもまだ物語は続いているんだろうなって感じる小説だった。
謎は解いてはいけない。謎は謎のままの方が都合がいい。