【感想・ネタバレ】きつねのはなしのレビュー

あらすじ

「知り合いから妙なケモノをもらってね」籠の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか(表題作)。通夜の後、男たちの酒宴が始まった。やがて先代より預かったという“家宝”を持った女が現れて(「水神」)。闇に蟠るもの、おまえの名は? 底知れぬ謎を秘めた古都を舞台に描く、漆黒の作品集。

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ネタバレ

「水神」に最も惹かれる。高祖父から続く疏水脇の家の秘密。再読時にこの屋敷の年代記と間取りを書き留めながら読んでみた。この作業も面白かった。建物の間取り(構造)が物語に重要な役割を果たしている作品が、筒井康隆にもあったような記憶があるが、タイトルを失念してしまった。

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2025年10月23日

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森見登美彦作品の中では「夜行」と同じジャンルになると思うが、よりじとっとした雰囲気がある。

短編をまとめた様な話だが、それぞれの話の繋がりを匂わせる場面も多くて面白い。こういうのに弱い。

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2025年10月10日

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毎年、暑くなり始める初夏のタイミングに読みたくなる、そして実際に毎年読んでいる作品です。
実際に四条通りや河原町通りの喧騒から一本裏通りに入っただけで、急に誰もいない、どこかに迷い込んだような錯覚に陥ることがあり、営業しているのかどうか一見して分からないような古い店を見つけると、いつも本作品を思い出します。
京都を舞台にした学生街ならではの青春小説などもたくさんありますが、こっち寄り(どっち?)の話が実は京都の本質なのではないかと思います。

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2025年05月31日

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ネタバレ

「きつねのはなし」京都の古道具を舞台に不思議な雰囲気の短編。『xxx HOLiC』の世界観のようだった。願いを叶えるためには対価が必要なことだったり、その対価のための対価が膨れ上がって行ったりと。狐に摘まれているような話だった。

「果実の中の龍」物語の中の物語に沈んでいく先輩の話。他人の物語のはずなのにさも自分の体験であったかのように語っていたことにより、自分の体験であると言う錯覚に陥ってしまった話。想像や妄想と現実の区別がつかなくなってしまうのは苦しいことだろう。その区切りの意味で、先輩は別れを受け入れたのかもしれない。

「魔」魔が刺すとはこのことなのか、と。この人さっきまで相談にも乗ってくれる良い人だったのに。

「水神」水にまつわる不思議な話。水に守られ、水に呪われたようにも読める家族の作品な気がした。古道具屋が持ってきた家宝も不思議を呼び面白かった。

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2025年05月25日

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読むのは、たぶん3回目。
単行本が出た時、「これは読みたい!」と、すぐ読んで。
文庫になった時、表紙を見て、「あー、この感じ、この感じ」と、なんだかミョーに嬉しくて、表紙目当てに買って読んだ。
中身は同じなのに2冊も買ってしまって、なんだか狐に化かされたようだw
ていうか、新潮社ぎつねに見事たぶらかされたってことなんだろう(爆)

そんな『きつねのはなし』を久しぶりに読んだのは、『怪談のテープおこし』を読んだからだ。
『怪談のテープおこし』は、いわゆる“すんごい怖い怪談”wなのだが、自分は“すんごい怖い怪談”って、すんごい怖いからこそ、逆に怖さを感じない。←なに言ってんだかわかんんねーよ(^^ゞ

だって、オバケの怖さって、それが存在するってわかった瞬間がマックスなわけじゃない?w
つまり、いるの?、いないの?、あるいは、存在するの?、しないの?と不安がどんどんつのっていって。
どうする?、どうする?、どうする?……と、嵐の前の静けさを経て、バーン!とお出ましになったソレに「バカヤロ。やっぱ、いるじゃねーか!」と、心臓が頭のてっぺんに飛び上がっちゃった時の怖さこそが最大なわけじゃん。
その後、いくらオバケがあーでもない、こーでもないしたところで、出た瞬間の怖さは絶対越えられない。
まー、三津田信三は数多の実話怪談の“作り手”と違って、その辺りは心得ているようで。
ソレがいるからいないに変わる前のグレーの段階をちゃんと引っ張ってくれるから、怪談の醍醐味であるゾクゾク感をちゃんと味わえるんだけど。
バーン!の後も引っ張る悪いクセがあるんだよね(^^ゞ
ま、ホラー・怪談業界的には、バーン!の後こそ読みたい/聞きたいとする人の方が多いから。
読者サービスという面もあるのかもしれないけどねぇーw

つまり、この『きつねのはなし』というのは、バーン!以降がない。
ちゃんとゾクゾクのニーズを満たせて、話がスパッと終わる。
個人的に、怪異な出来事というのはそういうものなんじゃないか?って思うこともあって、
そこがいいわけ。


そんなこの『きつねのはなし』には、4つのお話が入っている。
最初の「きつねのはなし」は、一番ゾクゾクくるお話。
主人公は大学生で、ナツメさんという女性が店主の古道具屋でバイトをしている。
そのお客に天城さんという、長い坂の上にある屋敷に住んでいる人がいて。
主人公は、店主に言付かって、届け物をするところから話が始まる。

店に戻った主人公は、店主のナツメさんに「天城さんはちょっと怖い感じの人ですね」と言う。
すると、ナツメさんは「そうですね」と頷いて。「本当は私が行かなければならなかった。でも、私はあの人のところに行くのが嫌なのです」と言う。
そんなナツメさんを見て、天城さんのところにはなるべく自分が行くようにしようとする主人公はある時、彼女である奈緒子の写真を天城さんに取られてしまう。
すると、奈緒子は……
みたいなお話。


2話目の「果実の中の龍」は、主人公(一話目の主人公とは別の人)と先輩、そしてその彼女をめぐる、ちょっと寂しい、でもどこか素っ惚けている青春譚。
といっても三角関係の話ではないんだけど、最近、村上春樹ばかり読んでいたせいかな?
村上春樹の小説によくある関係のようで、イメージがダブってしまう。
ていうかー、3人の関係って、『ノルウェイの森』のワタナベと永沢、ハツミの関係とほぼ同じだよね。
まぁ、永沢とくらべるとこっちの先輩は虚構を現実として生きている、かなりの変人なんだけどさw
ただ、永沢は永沢で、現実を虚構(ゲーム)としてしか生きられない人だからなぁー。

先輩の彼女である瑞穂さんと主人公の会話が意味深で面白い。
「先輩はつまらない人ではないですよ」「僕こそつまらん男ですよ」
「みんな、なぜそんなことにこだわるの。その方がよっぽどつまらない」
また、お話の最後、京都を離れることになった瑞穂さんをおくる京都駅では、タイトルになっている龍の根付けについて、瑞穂さんが、
「彼は本当に忘れてたと思う?(ネタバレになるので以下略)」と言うと。
主人公は「あり得ることです」と。
「ひどいこと、あっさり言うね」
「僕は嘘をつけない男です」
「嘘つき」
それらのシーンの、暖かみがあるユーモアの裏に隠れている寂しさがすごくいいんだよね。
なんだか「なごり雪」を思い出すんだけど、あんがい著者もそれを意識していたのかな?

てことで、3話目と4話目はハードカバー版につづく(^^ゞ

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2024年07月02日

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森見登美彦さんらしい、ちょっとざわざわするようなヒヤッとするような怪しい短編集です
芳蓮堂やナツメさん、道場や、お寺など、共通の場所や人たちが出てきます
そして、いやに胴が長いケモノ、狐面。
最初の きつねのはなし がとても怪しくどきどきしながら読みました。
渡してはいけないもの
取引してはいけないこと
が出てくるのはまさに 京都奇譚集ですね

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2025年11月30日

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どこかふざけておちゃらけている森見節が鳴りを潜めている作品。
不気味で不思議な、ホラーとも言える物語。
正直あまり期待してなかったのだけど、思ったよりも面白かった。

全4篇の作品集で、それぞれ語り手は違うのだけど、どこか繋がっているようないないような不可思議さ。
最初の「きつねのはなし」が一番面白かったし怖かった。
どの話も読み終わってなんだかもやもや、疑問の残る感じ。でもそれが不快ではなくて、こういう読み心地は初めてかもしれない。
読み終わってすぐにまた最初のページに戻って読み返すと、また違ったものが見えてきそう。

森見さんはあのおふざけ節が面白いのだけど、たまにこういう雰囲気のものもあって予期せず驚かされる。
この本は「夜行」とか「宵山万華鏡」の部類かも。

読書って予想外に面白いとすごい嬉しいな。
まだまだ森見作品読みたくなった。

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2025年09月08日

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ネタバレ

森見さんの違う一面を見れた作品。
幻想怪奇譚ってやつ(?)。

狐の面
人間の歯を持った胴の長い獣
蓮宝堂の骨董屋
龍の根付

どこか繋がってるけどどこかずれてる。
連作短編集といえないこともないのかな。

個人的には『果実の中の龍』が一番好き。

最後の最後まで狐に騙されたみたい。
気になるけどそれがまたいい感じ。

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2025年09月01日

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森見初期の短編集。
「果実の中の龍」はデビュー作「太陽の塔」より前に書かれたものとのこと。

「夜は短し〜」から森見作品を読み始めたのですが、
森見らしい古風で軽快な文体やユーモアは少なく、じめっとした、少しホラーみのある短編集。
いつもの感じを期待して読み始めると、なんか違う!という気がしてくる。

京都の街で狐に化かされたような4つの物語。
共通して出てくる,胴の長い狐のような生き物。
久しぶりに京都に行きたくなりました。

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2025年08月30日

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結末はよく分からない(読み取る能力が足りない)ものの、最後まで楽しめました。四畳半神話大系などのバカ大学生のドタバタ劇も好きですが、不意打ちで来る『夜行』のようなひんやりとした夏の怪談話系もとっても好きです。
 どことなく作品を通して水や龍というものがキーワードな気がします。次読み返すときはそれがどういう意味を持つのか着目しながら読もうと思います。今回は雰囲気だけしか味わえていないのかもしれませんが、それだけでもとっても楽しめる読書体験でした。

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2025年07月01日

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有頂天家族は苦手だと話したらこちらをおすすめされた。
作者独特の表現が少なく、不思議で妖しい雰囲気が非常にはまり、ぞくぞくしながら読むことが出来た。

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2025年06月27日

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全編にわたり静かな不気味さが漂う短編集でした。
「夜は短し歩けよ乙女」から森見さんを知ったので、森見さんのB面を見たような気持ちになりました。
個人的には「魔」という話の後味の悪さが好きです。

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2025年06月22日

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森見登美彦の難解さとそれに伴う不気味さを煮詰めたような本作。短編であり四作入っているが、特徴的なのはそのどれもがホラーテイストであることだ。
森見登美彦の世界は繋がっている、しかし同じ京都ではない。それぞれが違う世界線の京都でただ筆者のファンである者からすればにくい繋がりが存在するのだ。今作で言えば、樋口直次郎と四畳半シリーズ、夜は短しに登場する樋口師匠の関係性がその代表である。
また四作を通じて登場するナツメさんと狐の面。これも四作それぞれで違う世界のナツメさんなのかなと思うこともあるし、はたまたやっぱり繋がってる?と思うこともある。そのこそばゆさが面白い。
表題作の「きつねのはなし」は、ホラー作品としてかなりの傑作であると思える。その一つだけでもいいからぜひ手に取って欲しい。

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2025年05月08日

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2025年最初の一冊。京都はやっぱり「怪異」が似合う街だと思う。それは多分、京都という土地が人の思いとともに積み上げてきた歴史がそうさせているのだと思う。その歴史は良いことばかりではなく、歴史の闇に消えていった人々の怨嗟も含んでいる気がする。言霊、ではないけれど、京都の地名に感じる魅力はそういった歴史の積み重ねがあるからだとも思う。だから京都は「ホラー」でも「怪談」でもなく「怪異」が似合う。この作品はそんな怪異を扱った作品だ。
森見登美彦氏は文体がどこかユーモラスで、正直個人的にはそんなに怖さを感じなかった。ホラー小説と思って読むと拍子抜けするかもしれない。しかし前述の通り、私はこれを「怪異小説」と捉えている。京都の街の怪異のお話、と思うと、なんだかゾワっとするのに京都に出かけたくなる、そんな話に感じるんじゃないかな、などと考えた。

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2025年01月02日

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謎の獣に遭遇する若者たちの話。森見さんの書かれる怪談は語り口がさっぱりしているからするする読めて読み心地がいいね。2番目の話が一番好き

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2024年12月14日

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デビュー当時の作品から読み始めて、これはまた、少し違った魅力ですね。
柳田國男、読み直したくなりました。

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2024年04月18日

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不気味だった。
特に最初のきつねのはなしは、うんと不気味だった。不思議なことも沢山ある。
4つの話全てに繋がりがあるので、そこから考察をすすめるのが良さそうだ。
にしても先輩は、どこまでが現実だったのだろうか。彼の話すことは出鱈目でも話の登場人物は確かに存在していた。
また話は変わるが、この小説の女性は個人的によく頭に残る。ナツメさんと夏尾はいつになったら私の頭から離れるのか。

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2024年03月29日

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モヤモヤっとして、なんだったんだ今のは?
きつねに化かされたのか?という気分にされる。
小説が現実に侵食していくような感覚になった

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2023年10月27日

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あの四畳半の森見登美彦氏の怪談なのです。
2004年が初出のようですので、初期の作品となると思います。
驚くべきは、その文章文脈がいつもの森見登美彦氏ではないのです。
こういうの書けるのになぜもっと書きませんですの?というところです。

「きつねのはなし」
一乗寺にある古道具屋「芳蓮堂」が登場
(これは度々登場ですね)
怪しげな骨董品が人から人へと何を伝える
吉田神社の節分祭がその怪異の入り口で出口
恒川さんの『夜市』を思い出すようなその
祭りの露天
祭礼の宵の京都はお気をつけやす。

「果実の中の龍」
どこまでが現実でどこまでが幻かを読者に問い続ける作品。序盤にさりげなく『果心居士』の名が出てくることで、小泉八雲の妖術譚と思い出す古典的な空気が漂う。タイトルの「果実」と「龍」が示すもの。結果として実るものと、内に秘められた畏怖すべき力――をどこまで作者が意図しているかで読み方は大きく変わる
私はひとまず「嘘をつく小さな男」を感じ取りつつも、それだけではないんだろうなとは思う。

「魔」
ストレートなタイトルで攻める。〈魔〉そのものの存在を描こうとする短編。
物語を追うほどに、誰が人で誰が魔なのか、境界はどんどん揺らいでいく。
漂うケモノの匂い。
人の顔をした魔など、結局見分けがつかない——そう思い知らされる。

「水神」
祖父の通夜の寝ずの番。
過去と現在、記憶と幻が入り混じる時間の中で、語り手は“水”の記憶に触れていく。
京都という土地には、琵琶湖に通じる水脈の伝承がいくつも残されているとのこと。
その“地下の流れ”を、人の心の流れと重ねたのではないのか?
現実の風景に紛れ込む、古い水神。
目に見えぬ水が動き、掴みきれぬまま流される。

「きつねのはなし」短編4編は、どれも古道具屋〈芳蓮堂〉が姿を見せるとはいえ、連作としての明確なつながりはない。
それでも、どの物語にも共通して、京都の神社や祭り、そして路地という“あわい”が息づいている。

『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』が、陽気でエネルギーに満ちた“あわい”を描いたとすれば、『きつねのはなし』はその影の京都——静謐で、どこか寂しげな異界が描かれる。

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2025年11月06日

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森見登美彦さんの京都を舞台にした怪談短編集。それぞれがどこかつながるような伏線も散りばめられている。余韻を残した独特の読後感になる佳作。

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2025年06月01日

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ホラーって想像力をとにかく掻き立てられる。
物語全体を通して、ずっと薄暗くて、どことなく気持ちが悪い。

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2025年05月10日

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 私の本棚より。


 ざっくりとしか読んでいないので、細かいことは書けないのだけれども、本書の場合は、それでちょうど良いのかもしれない。

 森見登美彦さんのシリアスなホラー寄りの作品という情報を聞いて、大分前に古書店で購入していたのだが、読んでみると、単純にホラーと位置付けていいのかどうか分からない曖昧さが強く、それが物語の展開の意味合い的にも同様であるところが、好みの分かれるところとは思われるけれども、それ故の面白さも感じられて、特に「果実の中の龍」の先輩の存在感には、物語の生み出される源が、あくまでも人間の心の中にあることを教えてくれながら、その手段が異なるだけで、こうも印象が変わってしまうのかという皮肉も露呈させている点に人間の哀愁も滲ませていることには、森見さんが単に怖いものを描きたいのではなく、人間味を描きたいのだということがよく分かる。

 また、その中でも、人間が生まれる前から存在し続けるものに対する(それを『もの』と言ってしまうのは畏れ多い気がするものの)、森見さんの敬意とも捉えられそうな「水神」も印象深く、更にそこに琵琶湖疏水の歴史のエピソードを絡めるのが何ともスリリングでありながら、やはり哀愁的なものも潜まれていて、論理的に説明するのが難しい事象から漂い出す恐怖が、怒りだけではなく悲しみの方がより大きいのは、和の怪談でもお馴染みの構成と感じながらも、そこに一捻りあるのが森見さんならではのホラーなのかもしれない。

 それから、上記の琵琶湖疏水からも分かるように、本書は京都が舞台となっていることで、より朧気な印象が強く、それは四つの短編に登場する様々な要素が緩やかに繋がっていることからも感じられたのだが、その中でも二度登場する吉田神社の節分祭は、雪の降る夜の描写とも相俟って何とも情緒豊かでありながら、物語の置き所としては、まるでカレイドスコープを覗いているようなクラクラとした、美とも悪夢ともつかない状況を追体験できたのは、その場から放たれる独特なエネルギーもあるようで、そうした現場ならではの感覚を実際に行って追体験できる、京都に住む人達が羨ましくてならない。

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2025年02月02日

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気持ち悪くてジメジメした話だった
うっすら話が繋がった怪談?の短篇集
まだ咀嚼できていないのかモヤモヤが残っているけど、咀嚼できたとしてもスッキリしない話のような気がする。
生臭い龍みたいな何かとかキツネみたいな細長い獣とかなんだったんだろ?

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2024年06月27日

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森見登美彦さんの小説で好きな一冊。
怖い話は得意ではないが、たまに無性に読みたくなるきつねのはなし。背筋がゾワっとする瞬間。ほっこりする瞬間。いやな冷や汗をかく瞬間。物語の緩急のつけ具合が絶妙で、心を虜にされる展開。吉田神社の節分の時、どこかできつねのお面を被った着物風情の人がひっそり紛れ込んでいるのかもしれない。対価交換で得る利と不利益。妙なことには口を挟まず、我存ぜぬのスタイルを貫けたらどんなに楽だろう。主人公である大学生の揺れ動く心情と物語の不気味な展開具合は最高に面白い。

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2024年05月07日

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京都と森見ワールドが溶けて一緒になっているみたいで、リアルじゃないのは分かってても妙にリアルに感じた。
最初の2つが特に、面白かった

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2024年04月27日

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京都を舞台にしたホラー短編集。森見登美彦氏としては珍しい一冊。ドタバタのコメディ感は全くなく、独特の空気感や湿度を感じる。ホラーといっても、パワー系のコワい!とかジワジワ系とかではなく、嫌な怖さですね。嫌らしさなホラー。

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2024年01月02日

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最上級のもやもや。おそらくこのふわふわした感覚が正しい受けとり方なんだろうけれど、メモをとりながら再読したい。そうしたとて、もっとわからなく気はする笑 そもそも解読できるものではないだろうな。
好き嫌いは分かれると思う。読書初心者にはまずオススメしない。私も得意なジャンルではないけれど、それにしても惹きつける力というのがすんごいな、森見さん。
繋がっているようで、繋がっていないような不思議な世界。
おかげさまでしばらく引きずったわ笑

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2024年01月02日

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オチがふんわりしてる
話リンクしてそうだけど矛盾するとこもある気がするので別の世界線なのかも
古道具屋っていいよね

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2023年11月23日

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ネタバレ

湯浅正明監督「夜は短し歩けよ乙女」で触れたり、アンソロジーで数作読んだだけの森見作品を、初めて一冊通して読んだ。
(「水神」は東雅夫・編「平成怪奇小説傑作集2」で既読。)
で、どれもよかった。
おそらく森見作品群の中では傍流なのではないかと思われる、怪奇幻想もの。
凄惨な奇妙ともいうべき「きつねのはなし」、茫洋な語りそのものがうら恐ろしくなる「魔」。
個人的に好みなのは創作の魔ともいえる「果実の中の龍」は、読んでいるこちらの腹がぎりぎりするようだった。
全作、解かれる謎があるわけではない、謎放置の味わい。
得体の知れなさこそが一番の恐怖だ。

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2023年11月22日

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いつもの森見登美彦とは別人のような作風の、京都を舞台にしたホラー短編集
ゾワゾワとした得体の知れない怖さがある。特に表題作に登場する旧家の男は夢に出てきそう
だが一番怖いのは、前その表題作を読んだ時に僕が酷く熱を出したこと以外、作品の記憶がすっぽりなくなっていることだろう。

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2023年10月05日

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