森見登美彦のレビュー一覧
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眠くなってきたので手短に。
去年、池澤夏樹さん個人編集の「日本文学全集08」を読みました。
ほかでもない、十数年追いかけている作家、町田康さんの「宇治拾遺物語」が読みたかったから。
いや、爆笑しました。
古典を読んでこんなに笑ったのは初めて。
中学、高校時代に出合っていたら、古典が好きになっていたに違いありません。
本当は古典って面白いものだと思うんです。
それを恐らく研究者や学者たちが、無用に格調高いものにしてきたんでしょうなぁ(恨み節)。
あ、で、本書はその日本文学全集で各作品の新訳を手がけた作家たちによる講義集。
もちろん、町田康さんの「宇治拾遺物語」の講義も含まれています。
私は、町田さんが、どんな手法でこの新訳に取り組んだのかに興味を持って読みました。
「破格な翻訳です。でも、ただ形を壊そうとか、元の話を裏切ってやろうとか、とにかくむちゃくちゃやればいいとかいうわけではないんです。原文を読んで、おもしろい、楽しい、なんでこうなるの? と思った気持ちがやっぱり大事です。そして自分で訳してみて、この訳文ええやんけ、とおもしろがれる気持ちが大事です。単なる破壊じゃあ、なかなか楽しくできませんから。」
誠実だなぁ、町田さん。
そこに惹かれます。
あ、他の作家の講義は斜め読み(すみません)。
古典に興味のある方もない方もどうぞ。 -
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太宰治の短編をまとめた『傑作選』。まとめたのは走れメロスを聞いて「恥ずかしくて耳をふさ」いだ、という森見登美彦氏。
最初に収められた「失敗園」を読んで思い出したのは「宮沢賢治」で、最後に収められた「走れメロス」を読んで思い出したのは「雨ニモマケズ」だった、というのが個人的な感想。
「失敗園」は【農作物の擬人化】作品。田舎に住んでいる人間の「あるあるネタ」を読ませるものにした一作。田舎の津軽出身であることをコンプレックスにしている作品が多い太宰治が、こうも生き生きした農作物を書けるのか、と驚きを感じる一作。
「走れメロス」は教科書に載せたくなる【己の弱みに打ち勝った美談】。しかし、この『傑作選』を読んだ上で走れメロスを読むと、太宰治自身が【己の弱みに打ち勝ってこうなりたかった理想像】をこの話に委ねたのかな、という気がしてくる。それは、大吐血をして死を覚悟したとき、来世では「サウイフモノニワタシハナリタイ」と詠んだ宮沢賢治に似ている。
この『傑作選』を通して思うのは、太宰治が己の「よく見られたいという弱さ」を、いかに”嗤い”ではなく”笑い”にできるか、と試行錯誤していた、ということ。主人公はたいていどこか情けないんだけど、そんな話がどこか”笑える”。
もう一つ思うのは、多くの作家が「小説を読むことで『作者の想い』をも読み取ろうとしてきた」こと。太宰治にとって、井伏鱒二は太宰治が『想いを読み取りたい』と願った人で、本著の編者である森見登美彦にとっては太宰治が『想いを読み取りたい』と願った人なんだろう。
「人が小説などの創作物を人に勧めるとき、勧めた人はその作品に自分自身の何かを投影している」というのが持論なんですが、作家自身が多くの作家の読者でありファンだった、ということをこの『傑作選』で強く感じさせられた。小説の読み方が、ちょっと変わった一冊。 -
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池澤夏樹編集の日本文学全集を何冊か読んだので、気になって買いました。
『古事記』『日本霊異記』辺りは、男女の……とレビューでは言えないようなワード満載で、初っ端からこの勢いか!とビックリする。
でも、そんな赤裸々な『古事記』が日本のどこか源に流れているような気がして、ちょっと好き。
森見登美彦『竹取物語』も、読んだけれど、後から考えるとまだ大人しい。
かぐや姫の「地球に対するツン」発言は笑った。
どんな業を背負っているかは、地球人ごときが知る由もないこと、という解釈の仕方(ごめん、ごときとは仰ってませんが)は割とマトモで好き。
輪廻転生、盲点でした。
からの、町田康『宇治拾遺物語』!
そりゃ、なんや真面目に訳してもたわ、と嫉妬もされるくらい、色んな意味でヤバい。
自分でコメディー担当と言うくらいに面白い。
何よ、「これも、ルルル、昔のこと」とは。
質疑応答の巧妙なズレ感に、なぜか爆笑してしまった自分が少し恥ずかしい。
とりあえず、ここでクライマックスを迎える。
からの、『百人一首』。
はい、落ち着きましたー。良かった。
「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の」
の静けさに、とっぷり戻ってくることが出来ました。ありがとうございます。
和歌を現代詩にどう訳すかって面白い。
あくまで解釈を基にして。
でもこういう試みが出来たらいいなあー。
あっという間に読めてしまって、笑った。
今は『平家物語』をこのまま読み進めるか、町田康『宇治拾遺物語』をフライングして読んじゃうか、悩み中。
いやー。卑怯やわ。 -
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竹取物語・伊勢物語・堤中納言物語・土佐日記・更科日記
どれも学校で古典や歴史で学んだ物語ですが、一度も
読んだことがありませんでした。(絵本とかあらすじみたい
なものを除いて)
初めて読みましたが、現代と異なって違和感のある部分
もありますし、想いのほか現代でも共感できる部分も
多く面白く読めました。現代訳が秀逸であったことも
要因だろうと思います。
中でも、伊勢物語の和歌と話しの内容の奥深さ。単なる
恋愛だけではなく人とのつながりを大事にしてきた文化
が垣間見える部分。
堤中納言物語の短編小説のような、また現代でも共感できる
家族や仲間での何気ないやり取りの記載。
土佐日記の紀行文としての情景の描き方や、昔の船旅の
リアルな様子。
更級日記の現代でも十分に共感できる日記文学と、主人公の
リアルな感情。至極日常的な感情。ドライな感情が
垣間見える部分。
など、面白かったと思います。 -
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森見さんの話が聞きたくて講演会に行って、欲しくなって買った本。森見登美彦さんの「竹取物語」は、確かに森見さんらしい。ファンタジーで、竹林が出てきて、美女も出てきて、そして男たちが片想いをする。川上弘美さんの「伊勢物語」は、授業でやった文章が出てきて懐かしい。在原業平すごい笑 中島京子さんの「堤中納言物語」は、歌の訳も三十一文字にしているのがすごい。こんなに楽しい物語だったんだと驚き。堀江敏幸さんの「土左日記」は、ひらがなで訳して貫之の考えを示すという独特の訳。江國香織さんの「更級日記」は、これも授業でやった文章が懐かしい。歌の訳など工夫されているのが伝わってきました。
古典文学のエキスパートでもない現代の作家たちが訳すというのはどうなんだろうと思ったりもしたけれど、豪華な作家たちの名前から読んでみようと思う人もいるはずだし、その点では素晴らしいこと。平安文学を読むことがないので新鮮な気持ちで読みきりました。思った以上に面白い作品たちでした。 -
購入済み
森見さん凄いわ
過去の人気作品がこれ程までに残心にかわるとわ、まぁ走れメロスしか読んだ事は無いけども。
めちゃくちゃ面白い改良、他の四編は少し物悲しい感じでありそこも良かった。
一話のオモロイ話と、他四編の虚しい様な話とバランス取れているのが凄い。 -
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国語教科書で『走れメロス』を読み,自宅の書庫にあった『人間失格』の冒頭で読むことを諦め,太宰を読むことはそれから数年無かったのだが,森見登美彦氏が好き勝手に書いた『新訳走れメロス』を読み,京都を走る桃色ブリーフに腹を抱えていたのは既に二年ほど前のことである。
文庫の森見作品もほとんど読んでしまっていた頃,書店でふと目についたのがこれであり,当初はまだ見ぬ森見作品かと思い色めき立ったのだが,読んでみると何かおかしい,いや何もおかしくない。これは森見登美彦の文章ではないのだから当然で,では誰の小説かとよくよく題を見てみれば太宰傑作集としかと書かれていた。
なんという思い違い,しかし面白い。太宰作品とはこんなにも面白いものだったのか,などと思ってしまったからには「ヘンテコ」で「愉快である」ものとして選んだ森見氏の策にまんまと嵌ったこととなる。くやしい。
太宰は小難しい,分からない,暗い,などと思っている人にこそ勧めたい一冊であると同時に,太宰入門書としても推したい一冊である。 -
購入済み
摩訶不思議な恋物語?
古めかしい語り口で語られる、卑猥なる四畳半パラレル恋物語。
主人公は孤高なる生き様を貫く?自堕落な大学三回生。
それに付け入るは、パラレルワールドを行き来し悪事の限りを尽くす妖怪小津。
無茶な要求ばかりする、仙人のように達観した小津の師匠、樋口。
樋口師匠と激しい悪戯合戦を繰り広げる城ヶ崎先輩。
そんな人々 (主に小津) の巻き起こす騒動に巻き込まれながらも、怠惰さを以て抵抗する主人公の前に現れた一輪の華、黒髪の乙女、明石さんとの四畳半での目眩く恋の物語。
なのでしょうか。
独特の語り口が印象的な作品です。
表紙は可憐で古風な乙女が幻想的なタッチで描かれていますが、内容は大正ロマンな乙女の恋愛ものではなく、孤独で卑猥な大学生(男性21歳)の、特に努力や甘酸っぱい思いをするわけでもなく、最後に何故か成就してしまう摩訶不思議な恋物語です。
非常に不思議な作品です。
他の作家には無い感性で描かれています。癖になるかも。 -
Posted by ブクログ
高校生のときに読んだときは、義務的だったのだが、最近読み直してみたらとても面白く感激した。太宰治は人間の厭らしさを書かせたらまさに天才である。自分の体験談を元に書いた小説が多いため、半分ほど私小説を読んでいるような気になるのだが、そのためか、太宰の描くダメ人間の述懐はとてもリアルで身近に感じられる。
しかし、この作品集は森見登美彦が撰集したものである。ダメ人間の述懐にもどことなく愛嬌とユーモアがあるものが多く、読んでいて思わず笑みがこぼれる。そして、太宰治という人間に会ってみたくなる。愛嬌のあるダメ人間…森見登美彦が最も得意とする人物である。そんな人物が大好きな人は、きっとこの作品も楽しめるだろう。