森見登美彦のレビュー一覧
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2025年最初の一冊。京都はやっぱり「怪異」が似合う街だと思う。それは多分、京都という土地が人の思いとともに積み上げてきた歴史がそうさせているのだと思う。その歴史は良いことばかりではなく、歴史の闇に消えていった人々の怨嗟も含んでいる気がする。言霊、ではないけれど、京都の地名に感じる魅力はそういった歴史の積み重ねがあるからだとも思う。だから京都は「ホラー」でも「怪談」でもなく「怪異」が似合う。この作品はそんな怪異を扱った作品だ。
森見登美彦氏は文体がどこかユーモラスで、正直個人的にはそんなに怖さを感じなかった。ホラー小説と思って読むと拍子抜けするかもしれない。しかし前述の通り、私はこれを「怪異小 -
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ネタバレ「夜行」と「曙光」という絵のもとに二つの世界が存在するっていう世界観が、不思議な出来事に絡めて少しずつ種明かしされていく感じが面白かったです。
岸田さんと長谷川さんが再会したことで二つの世界が分離したということは、長谷川さんと両思いだった(?)大橋くんは岸田さんにとっては邪魔者だから、長谷川さんと結婚するための「曙光」の世界から大橋くんを追い出したのかな、とか思いました。
ただラストの種明かし後、それまでの各話の答え合わせがなかったので、ちょっとモヤモヤした終わり方でした(自分で想像してねってこと?)。
一番答え合わせが気になった「津軽」の話は、藤村さんは「曙光」の世界では佳奈ちゃんみたいな -
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こんな時に読むものではない。
こんな時だからこそ読むのか。
森見登美彦は、
童貞作「太陽の塔」を書いたのは必然だった
彼は万博公園のそばで幼少期を過ごした
万博自体は彼にとってカンブリア紀であり
公園は安上がりに済ませる遊具場だった
1998年森見は京大農学部に入学した
父親は迷うことなく
四畳半の下宿を見つけた
学業も小説書きも入社も恋も腐れてゆき
彼は逃げるように大学院へ
そして四畳半小説を書くのである。
おゝまるでわたしの四畳半の大学生活
そのパラレルワールドを延々と繰り返す
何処かの男の青春のようではないか
森見登美彦とわたしを別つのは
第一作をものした
それに尽きる
そこには偶 -
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日本の名作をオマージュした短編集。
原著を読んだことあるのは「山月記」と「走れメロス」の二作のみだったが、森見さんのエッセンスは全開ながら、原作の芯の部分の世界観を再構築している感覚で、作品へのリスペクトも感じられたところが良かった。
あとがきの中で、この本を通して原作にも興味を持ってもらえたら嬉しいという事が書かれていたが、読み終わってみればその言葉の通り興味が湧いている自分がいる。
原作と本作両方読んでさらに楽しめると思うと2倍お得な作品かもしれません。
オマージュ作品でいうと先に「シャーロックホームズの凱旋」を読んでいたのでこちらの方が好みかな。
「桜の森の満開の下」は後の「夜行」に通じ -
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偶然手に入れたタイムマシンを使って、クーラーのリモコンを復活させるために奮闘する大学生たちのドタバタを描く、SFコメディ。
初のオーディブルで味わいました。
映画「サマータイムマシン・ブルース」(以下STB)が大好きで、本作をいつか読みたいと思っていたところだったので、オーディブルを試してみた次第です。
コラボ作品の「四畳半神話大系」は未読ですが、「STB」の世界観を聴覚で十分に味わうことができました。
「STB」の随所に散りばめられた伏線の回収を始め、くすっと笑ってしまうギャグシーンも見事に再現されていて、「STB」がさらに好きになった感じがしました。
当然、映画とは違