森見登美彦のレビュー一覧
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ペンギンが海から陸へ上がる時に決まって同じルートを辿ること=ペンギン・ハイウェイ
突然街にペンギンが現れて、研究熱心な主人公が謎に迫っていくが、大好きなお姉さんには不思議な力があり、それが事件とどう関わっていくのか…
世の中には解かなくても良い問題がある。主人公にとってこの研究がそうなのではないか、でも同時に解かなくてはならない問題でもあった。
研究が進むに連れてその可能性に薄々気づいていくけど、問題が一つに繋がっていく時その最後の数ページがあまりにも切なくて、終わって欲しくないと思った。
とても不思議な体験をした夏休みを、まるで一緒に過ごしていたかのような気持ちにさせてくれる作品でした。
結末を知った上でまた、何度もこの夏の思い出を辿りたいと思います。 -
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不屈の名作のパロディ版。
京都大学の、少し変わった学生たちが登場。
京都を舞台に名作の名残を引っ提げて駆け回る!
走れメロスや山月記は授業で習ったのでうっすらと覚えていた。
走れメロスの、冒頭とかの文章の感じや、
山月記の虎となった主人公との掛け合いのシーンなどは、見事に原作の影も残しつつ現代風にパロディにしてあり、原作も読み直してみたくなった。
全部の原作をしっかり知っていれば絶対もっと楽しく読める‼️
でも原作を知らなくても、京大生のドタバタ劇として面白くサクッと読めると思う。
そして、一つ一つ独立した短編だが、辻村深月さんやCLAMPさんみたいに、登場人物がリンクしているのがまた面白かった。
京都の地図がついていて京都に詳しくない人でも物語の動きがよく分かってイメージしやすくなっている。 -
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小学生の時に途中で読んだままだったのを、もう一度読み返しました。
小学生の時に読んだ印象は、この話が夢を見ているような曖昧さをもって感じられたのでした。しかし今となって読んでみるとこのお話の、少々逆説的かもしれませんが、そのはっきりとした夜の世界を感じ取りました。人を夜の世界へと運ぶ「夜行」と、鬼たちが列を連ねる「夜行」という二つの言葉が重なり合ったこの物語は、作者のユニークな発想を感じさせるには十分でした。
一つの意味を発展させることも面白いことですが、そこにまた別の意味を加え、組み合わせることで、発想に奥行きが生まれてさらに面白くなるということをこの本はよく示しているように感じました。物語の筋とは何ら関係ありませんが。
この物語には様々な人の、様々な空間が接しあい重なり合っています。それらの空間を行き来する時、最初にこの本に触れた時と同じように、やっぱり私はいつかの夢の世界に誘われているような気がするのでした。 -
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森見登美彦が書く少年、可愛すぎて悶えた!
かなり理論的で大人びた少年の背伸びした様子がとても愛らしく描かれていて微笑ましかった。
古風な森見登美彦らしい表現抑えめだったけど、比喩表現がいちいちすばらしくて、細部まで愛らしさたっぷり!一言一句まで堪能させてくれる森見登美彦作品はすばらしいです!
ファンタジーでありながら理論的に現象を紐解いていくアプローチがなかなか斬新で、理系のわたしは非常にワクワク!ファンタジーでここまで解を求めるの面白い。
前半はスロースタートでなかなか話に入り込めなかったけど、終わりがとっても好きだったので、評価をあげました。みんな愛らしくて、素敵な話だった。 -
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初森見登美彦。
文体は、「私」の語り口調がやや古風かつ知的。
「私」は理想とする「薔薇色のキャンパスライフ」とはかけ離れた大学生活を過ごしているものの、小津や明石さんなど、周りには個性的で魅力的な人間が溢れていて、傍から見ればかなり恵まれている。
実際の人間関係もそうなんだろうと思った。
現実の人間関係に悩み、理想と現実の狭間で揺れて、大きさに差はあれほとんどの人が持っているだろう自尊心を守ることに毎日必死。
「それでもいい。どっしり構えていろ」という樋口師匠の言葉に、読者の私も救われた。弟子入りしたい。
真の孤独を味わって、現実を受け入れるようになる主人公の成長物語でした。 -
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-「成就した恋ほど語るに値しないものはない。」-
以前テレビで、スターウォーズを制作順ではなくエピソード順に鑑賞したらどうなるのか、という企画を見ました。実験台となった芸人は「フォース」「ジェダイ」などの特殊な用語に疑問を抱いたり、エピソード4のルークをみて親心のようなものを抱いたりと、それはそれで面白そうでしたが、制作順に見ると得られる感動が損なわれてしまっている印象もありました。
先日投稿した森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』の書評では、同作者の『四畳半神話大系』を刊行順的に先に読むことを強くおすすめすること、そして今私自身がそのアニメを見ていることについて書きました。もはやこの記事が上がっているということは、そうです、アニメを見終わったのです。普段アニメをそこまで見るわけではない私がものの2,3日で全話見終わりました。独特の言葉遣いはこの作品にも共通していましたが、いい意味で聞き流しても問題ない言葉とそうではない言葉がアニメだとわかりやすくなっていたのです。そして、「あー、こっちを先に見てたら、夜は短しのあのシーンに繋がってくるわけだな!」という感情に何度も何度も駆られました。今回は小説を読んだわけではないので書評ではないですが、いわゆる「四畳半神話大系のススメ」をここに残したいと思います。
主人公はまたもや大学2回生の先輩。一応、『夜は短し〜』とは別人とのことです。主人公はバラ色の大学生活を夢見て入学するものの、現実は悪友に振り回され、黒髪の乙女 明石さんにはなかなかお近づきになれない不毛な毎日。「もしもあの時別の選択をしていたら」というifから生まれたパラレルワールドで繰り広げられる無数の大学生活を描いた作品です。
私はこの作品をみて、社会人6年生ではなく、高校3年生の時に見たかった!!と強く感じました。高校3年生って、大人の管理下だったフェーズに終わりが近づいて、「自分で自分の道を選択する」フェーズへと移り変わる時期だと思っています。自由には責任も伴うもので、その責任に押しつぶされそうな時、誰もが抱く妄想「あの時こうしていれば…」という現実逃避のアンサーをこの作品では見ることができるのです。作中で印象的なセリフがあります。
「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。」
この作品は人生を巻き戻すという行為が土台となっていますが、実際の現実は後戻りできない。「大人はああ言ってたのに!」なんて言い訳は通用しないし、他人はあなたの人生の責任をとってくれない。「あれがほしい」「こういうことしたい」と、人生は常にないものねだり。過去や未来にないものねだりをするのではなく、今あるものに目を向けようと背中を押してくれる言葉だと思いました。
最後に、冒頭にも書いた本作の私が一番好きな名言に触れて終わりにしようと思います。
「成就した恋ほど語るに値しないものはない。」
人生も叶わなかった恋も、答えがわからないから面白いのかもしれないですね。 -
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ネタバレ『四畳半神話大系』は、とても新鮮な読書体験だった。
まず印象に残ったのは、独特な言い回しと世界観である。現実と幻想の境界が曖昧で、どこか夢を見ているようだが、京都ならどこか納得できてしまうのは不思議だ。
四つの章は繰り返し構造になっている。
気付いた時は率直に面白い試みだと思った。同じような文章や出来事が何度も現れる一方で、そのたびに少しずつ違う部分が見えてくる。その差異を探しながら読む楽しさがあった。
一方で、四章目だけは異なった雰囲気を感じた。
これまでの章とは違い、主人公が世界の歪みに巻き込まれ、不安定で不穏な雰囲気が漂っていた。
しかし、繰り返し構造や過去を語るモノローグ、「八十日間」という題名などから作品全体の構造は維持されていると信じ、最後まで安心して読み進めることができた。
その安心感は、『夜行』や『熱帯』の読書体験から生まれたものだと思う。これらの作品では、登場人物や読者自身が不思議な世界に飲み込まれる不安感があった。
それはそれで非常に魅力的だったが、『四畳半神話大系』では最終的に主人公が現実へ戻り、明石さんとの関係も含めて着地点へ辿り着く。
そのため、世界の不思議さを残しながらもどこか安心できる読後感があった。
また、この作品には学生時代特有の卑屈さやこじらせた感情が描かれている。私自身の学生生活は森見作品に描かれる京都の学生文化とはかなり異なるのだが、大学という場所に漂うどこか退廃的な空気や、心から楽しんでいるように見える人たちを羨ましく思いながらも素直になれない感覚には共感する部分があった。
それは「みんなそんなものだよね」、と言える程度の感情なのだが、そう感じれば安心もできる。
京都という街に根差しつつも現実と幻想を行き来するような不思議な世界観、モノローグ、独特の語り口調、文章のリズム…『四畳半神話大系』は、それらの魅力がもっとも親しみやすい形で表れている作品だった。