森見登美彦のレビュー一覧
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狐は化かすけれども正体は現さない。狸は化けるけれども化けの皮がすぐに剥がれる。京都の町には、阿呆の血のしからしむところ、毛玉かわいい狸がうごうごしているが、闇に紛れて、人に紛れて、気がつかない人には気がつかない。
さて、お立ち合い。
(作品上では)昨年、下鴨家狸四兄弟と夷川家狸との、大晦日狸宗家襲名儀式のはちゃめちゃは、夷川早雲の逃遁でケリが付き、弁天の外国留学、金曜倶楽部の狸汁断念、で今年前半は京都の町も押し並べてことも無し。‥‥ところが、100年前に親子喧嘩で別れたきりの天狗赤玉先生の息子(二代目)が帰朝する。そこから、またもや大晦日の偽右衛門襲名、弁天二代目赤玉先生三巴の確執、夷川呉一郎の帰還、下鴨矢一郎と南禅寺玉蘭の恋、下鴨矢三郎と夷川海星の恋、そして金曜倶楽部忘年会狸汁を巡るはちゃめちゃに移るのではありました。
実はこの間、宮島未奈女史の「成瀬は〜」の影響下、モリミー描く「京都」は俄かに耳目を集めているらしい。本書の何処を開いても京都の町は怪しげに舞台名を提供してるので、安心して要覧されるが宜しいかと思われる。例えば曰く。
「打ち揃って糺ノ森を出て出町橋にさしかかったとき、母は「本当に良いお天気ねえ」と溜息をついて欄干にもたれかかり、高い秋空を舞う機を見上げた。」「西国三十三所第十八番札所、紫雲山頂法寺。ビルの谷間に忽然と姿を現すその寺の境内、枝を垂らした柳の下に六角形の不思議な石がある。これぞ京都の要石、またの名を「へそ石」という由緒正しい石ころである。」
糺ノ森も出町橋も、頂法寺もへそ石も存在しているが、実存は不明だ。因みに、ここでチラリと出てきた倉敷小町温泉(379p)は存在していない。因みに、へそ石は長老狸の化けた姿とのこと。次回京都旅をした折には、阿闍梨餅を食すのと同等の最優先体験事項とすることを決めた。
阿呆の血の然らしむ処、今や狐は大都会の傍らには棲んではないが、いまだに狸は堂々と棲んでいるのである。果たして賢かったのは何方やら。天狗族でもなく、金曜倶楽部の悪食集団でもない凡庸たる不祥・某(それがし)などは、彼等の右往左往をニヤけて見るのみなのである♪ -
Posted by ブクログ
15年以上前の完全書簡体小説。
時代背景に違和感の不安は、すぐに取り除けた、というか忘れたぐらいどっぷり森さんワールドへ没入。
大学〜院生の時期を今しかできないことを、たっぷり時間をかけて楽しんでいる主人公守田一郎。なんて贅沢な。羨ましいぐらい。
人生の在り方に迷い、人の考えや行動に惑わされ、でも前向きな気持ちは本来持ち合わせているから今の自分しかできないことはなんだ?と考えた結果の文通。
嘘と本音を交えながら自分から親しい人達にどんどん書いて送る。すると、どんどん返ってくる、返ってくる前に書いて送る、相手もそうする‥ヤギさん状態である。
手紙を書くことは、頭の中を整理し理論立てて表現しなければならないし、何より受け手の気持ちを考慮しなければならない、とても難しいこと。
主人公は一番手紙を出したかった相手、想い人にやっと8ヶ月をかけてお誘いの大長編の手紙を送る(ここまでしても好きという気持ちは具体的に表現していない)で物語は終わる。「恋文の技術」のスキルアップの過程を往復書簡集として見れるのである。面白いしかでてこない。
香ばしい気持ちを真剣に表現し、ジタバタする様は他人のことであれば面白い。
もがいていた自分を思い出しながら是非読んでみてください。
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Posted by ブクログ
太宰治の作品の中から、「ヘンテコで愉快である」ことに主眼置いて、森見登美彦氏が19篇選んだ太宰治傑作選。
「カチカチ山」が痛烈すぎて面白かった。
『晩年』にも入っていた「ロマネスク」は、森見さんも評するように傑作だと感じた。
「令嬢アユ」は、令嬢について、田舎の緑の中を白いワンピースで麦わら帽子で、みたいなそんな清潔でジブリの『風立ちぬ』的なイメージを抱いて、最後にやりきれない思いになった。令嬢アユ、君は…。となる。
「畜犬談」も面白い。犬を恐れるが故に犬に好かれるが、断じて犬は嫌いであると強情を張る、が、である。
森見さんの編集後記が興味深い。「太宰治なんて、『走れメロス』と『生まれてきてすいません』の人でしょ?」という読者がこの本を手に取って、違う目で太宰を見るきっかけになればいい、と最後に書いていた。でも、この本からでも、太宰の「自意識」を見つめて表現にして差し出す、人間の体臭が感じられるから、太宰はハマる人ハマらない人がいるのだと思う。
私はハマっている。『人間失格』も読み直したいな。
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太宰を読んだ読者が「この作者のことを一番分かっているのは俺だ」と感じてしまうのは、太宰が「自意識」の一番みっともないところを痛々しいほどあからさまに書くからである。正直だからである。
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Posted by ブクログ
書簡体小説ですが、各キャラクターの個性が強く表現されていてすごいです。
主人公の守田は研究室の友人や先輩、妹などいろんな人たちにひたすら手紙を書き続けています。
本来、物語は主人公と主人公以外の人物や環境による影響によって成り立つと思うのですが、この物語はただひたすら守田からの手紙だけで展開されます。彼の書く手紙の内容から友人たちからの返信があったと推測されるのですが、それを踏まえてさらにまた守田が手紙を書くことで彼らの関係性や人間性がどんどん浮き彫りになります。
物語の最後にしてようやく守田が恋する相手への手紙が出てきますが、結果がどうなったのかを想像できるのもまた楽しみのひとつです。