森見登美彦のレビュー一覧
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書簡体小説ですが、各キャラクターの個性が強く表現されていてすごいです。
主人公の守田が研究室の友人や先輩、妹などにひたすら手紙を書き続けています。
本来、物語は主人公と主人公以外の人物や環境による影響によって成り立つと思うのですが、この物語はただひたすら守田からの手紙だけで展開されます。彼の書く手紙の内容から友人たちからの返信があったと推測されるのですが、それを踏まえてさらにまた守田が手紙を書くことで彼らの関係性や人間性がどんどん浮き彫りになります。
物語の最後にしてようやく守田が恋する相手への手紙が出てきますが、結果がどうなったのかを想像できるのもまた楽しみのひとつです。
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Posted by ブクログ
かの有名なシャーロック・ホームズの舞台が、森見登美彦の手にかかれば京都の街へと早変わりしてしまう。京都が舞台になるとなれば森見登美彦の右に出る者は誰一人いない。そんな一冊だ。面白くないわけがない。
一世を風靡した名探偵・シャーロック=ホームズはスランプに陥り、相棒のジョン=ワトソンはどうにかこうにかホームズを立ち直らせようと奮起する。そんなところから物語は始まる。この時点で面白くないわけがないのだが、進むにつれて登場人物たちが化学反応を起こして(アドラーとの対決やメアリの思い、モリアーティ教授の行動も必見、絡まり合う心霊主義など)超新星爆発的な面白さを生み出していた。それでいて原作を踏襲して -
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古典文学の腐れ大学生バージョン。
面白かった。
原作で既読なのが山月記と走れメロスのみなので、他の作品も読んでみようと思います。
特に印象に残ったのは山月記。元の現作より主人公が身近に感じて、その分心も痛みました。自分の語る夢に自分で苦しめられる経験は誰にでもある。諦めきれず、才能がない自分を認めたくなくて、人知れず消えたくなる。私もそんな思いになることがあります。でも袁傪(今作では夏目)目線で見ると「夢なんて生活の片手間で見たらいいのに、わざわざ人間を辞めることない」って言いたくなる。他人からしたら良くも悪くも人の夢なんてそんな物だなーと再認識しました。
千野帽子さんの解説で語られていた