森見登美彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
寺町通221B、京都警視庁と書いてスコットランドヤードとルビを振る、意気投合するホームズとモリアーティ、ライバル探偵アイリーン、何も裏がなかった赤毛連盟、森見先生の書くほのぼのした京都の町のロンドン……いわば出オチ的なのだが気が抜ける面白さがあり、読み始めた最初はそういう趣向の小説かと思った。世の中にはホームズのパロディやフォロワー作、二次創作はごまんとあることだし。
途中から、ホームズの活躍を書くワトソン↔︎ドイル↔︎森見登美彦がリンクして入れ子構造やメタや暗喩が複雑になって「創作の人生」「創作と現実の関係」みたいな話になる。
ミステリってどんなに精巧にリアリティを極めているようでも結局創 -
「熱帯」について
現代日本版の「千夜一夜物語」は、古川日出男の「アラビアの夜の種族」や星野智幸の「夜は終わらない」などの名作がありますが、森見登美彦の「熱帯」もその系譜に繋がる作品だと思う。
語り手は作者の分身である「モリミン」。小説が書けず、スランプ気味のある日、謎の本をめぐる物語を思いつく。
「汝にかかわりなきことを語るなかれ」という警句から始まる、「熱帯」という本の記憶が甦ったからだ。
見るからに、虚実の境があやしくなりそうな危ない設定だ。この本を最後まで読んだ者は一人もいない。
語り手は奇妙な「沈黙読書会」で本に再会し、「学団」がその内容の全貌をつかもうと研究を重ねている事を知るが、「熱帯」にはどう -
Posted by ブクログ
舞台はビクトリア朝京都。
スランプに陥って謎を解決できないシャーロック・ホームズと研究に行き詰まったモリアーティ教授。
ホームズ譚を書く主人公のワトソンはどうにかホームズをスランプから脱出させたかった。
スランプの謎、リッチボロウ夫人の降霊、マスグレーヴ家の謎、東の東の間の謎。
街中の事件は出てこないが謎に満ち溢れていて物語にずっと引き込まれていた。
京都は裏側?ロンドンが表?と思いきややはり京都が表?
東の東の間を通じて京都とロンドンが表裏一体。
その辺は理解できたのかわからないが最後まで面白かった。
私には舞台の京都が登場人物とどうにもミスマッチでそこだけが読みにくかったが、ロンドンと -
Posted by ブクログ
おっぱい。
初めて読みました。ペンギン達の可愛さ、夏の切なさ、そしてお姉さんと僕の読んでいて心地良い距離感。一行一行が愛おしく、もっと読んでいたいなと感じます。随所に含蓄のある言葉がありふれつつも、「僕」の子供ながらの視点の気づきにも自分がいつの間にか忘れていた大切なことが含まれており、ハッ…と色々な事に気づかされながら読み進めていきました。
「世界の果てに行けばそこは元の場所」
ここまで突飛な出来事は自分の子供時代にはありませんでしたが、それでもそうだよなと思わされます。
読みやすくそして面白かったです。夏の季節にぴったり。お勧めです。
おっぱい。 -
Posted by ブクログ
森見先生だなぁっていうのが第一声です。
森見登美彦作品は「四畳半神話大系」と「夜は短し、歩けよ乙女」だけしか読んだことないのだけど…。
四畳半のアニメから入ったので、その印象が強くて、あの制作陣でこの「新釈走れメロス」もアニメ化してほしいなと思った。
と思いながら読み進めてたら「藪の中」がめちゃくちゃ面白かった。
すごく「わかる」っていうか。一つの出来事でも、見る人が違うとまったく別のものになる。
それは現実でも往々にしてあることで、しかも、男性の捉え方と女性の捉え方の違いも「あ~~、あるある」ってなった。
これは原作の「藪の中」がそうなのか、森見先生の解釈から生まれた差異なのか。とても興味 -
Posted by ブクログ
本当に素晴らしい読書時間だった!
男子校の学生時代を呼び起こすような、頭のいいバカたちの雰囲気と言葉使い。前半は電車で声が出そうなほどおもしろい。
あのツンデレ感は王道だが、知性と表現力で飽きがこない。
そして、9割がたのらりくらりと進んでいた文章が「ええじゃないか騒動」でとたんに熱を帯びる。あそこの表現から、そしてラストまでほんとうに素晴らしい文章だった。
最初の文と、ラストの文の接続も、腑に落ちる。
はじめにみてしまったら、なんだそんなことかと言いそうな別に特別な言葉ではないのに、一連の物語を経て、それでしか得られない理解と感情が芽生える。