森見登美彦のレビュー一覧
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ネタバレ近代文学の傑作である「山月記」、「藪の中」、「走れメロス」、「桜の森の満開の下」、「百物語」を森見先生ワールド全開な感じの大学生たちに置き換えて新しい解釈のもと新しい物語として生まれさせた作品集。
どの話の主人公もみんなちゃんと腐っており、読んでいて阿呆と言いたくなるような人たち。
また、この短編だけでなく、過去作である「夜は短し歩けよ乙女」や、「四畳半神話体系」などの話・人物などが少しずつ登場しており、より楽しめる作品になっているところが良かった。
「山月記」は、斎藤秀太郎という天才文学者崩れの青年の物語。「藪の中」は、映画サークルみそぎの恋愛模様?がいろんな人の視点から描かれる物語。「走れメロス」は、拗らせ過ぎた大学生の最低な友情物語。「桜の森の満開の下」は、文学で成功した青年の物語。だか、なんとなく妄想なかんじがする。「百物語」は、怪談、と思いきや、コミュ障な主人公の物語。 -
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過去に学校の授業で学んだ作家の作品が、現代の腐れ大学生に置き換えられ、森見登美彦流に再編されている。
登場人物の性格や物語の舞台などすべてが現代に置き換えられて元々の作品とは大きく異なっている。
しかし、元々の作品の芯の部分、作者が訴えたいであろう本質にブレがなく物語が進んでいく。そのことに驚き、強く感銘を受けた。
タイトルにもある走れメロスは、気高く純粋なメロスが詭弁ばかりの大学生になっているのに、読み終わった時には登場人物の誠実さや人間同士の信頼の美しさが伝わってきた。
山月記の主人公は誰が見ても奇人で、大学を留年や休学を繰り返しながら、卒業して行く人たちを嘲笑いひと蹴りする。
それなのに、読後には李朝のような人間味のある繊細さや、それ故に生まれる葛藤を感じられた。
五篇全てにおいて、原作を読んだ時に感じるメッセージが伝わってくる。
文学の表現方法はこんなにも無限の可能性があるのかと感動した。
時代、環境、背景、登場人物、性格、何もかもが異なっていても、作品の芯をブレずに表現することができる。
そのことに感銘を受けた。
この作品が私の中でいちばん大好きな作品。 -
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ネタバレ「きつねのはなし」京都の古道具を舞台に不思議な雰囲気の短編。『xxx HOLiC』の世界観のようだった。願いを叶えるためには対価が必要なことだったり、その対価のための対価が膨れ上がって行ったりと。狐に摘まれているような話だった。
「果実の中の龍」物語の中の物語に沈んでいく先輩の話。他人の物語のはずなのにさも自分の体験であったかのように語っていたことにより、自分の体験であると言う錯覚に陥ってしまった話。想像や妄想と現実の区別がつかなくなってしまうのは苦しいことだろう。その区切りの意味で、先輩は別れを受け入れたのかもしれない。
「魔」魔が刺すとはこのことなのか、と。この人さっきまで相談にも乗ってくれる良い人だったのに。
「水神」水にまつわる不思議な話。水に守られ、水に呪われたようにも読める家族の作品な気がした。古道具屋が持ってきた家宝も不思議を呼び面白かった。 -
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中学の国語の授業で「今は昔、竹取の翁といふものありけり。またの名を讃岐の造となむいひける。…」とか覚えさせられたなぁ、というのが「竹取物語」の印象である。
以前から古典作品全般に苦手意識があり、現代語訳版があったとしてもなんだか読む気になれずにいたのだが、森見登美彦が訳しているとなると話は全然変わって来る。
森見作品のクセの強い独特な世界観が好きで、古典オブ古典の「竹取物語」とどんな化学反応を示すのか、ワクワクしながらページをめくった。あっと言う間に引き込まれた。
作者のあとがきにも記されていた通り、本当に森見登美彦が「竹取物語」の作者ではないのかと錯覚するくらい、森見作品の世界観と「竹取物語」の世界観はマッチするにも程があるというくらいに合っていて驚いた。
絶世の美女、美女に恋焦がれる阿呆な男たち、そして竹林。森見登美彦ワールドそのものな作品であることに気づかされたし、古典の世界観を壊さない程度に現代的な言葉遣いを入れる絶妙な塩梅の文章が面白おかしく、時に切なく、「竹取物語」に没入出来た。
いつの時代も恋に右往左往する男心は変わらないものなんだなと思った。かぐや姫の時に非情ともとれる態度が次第に軟化して、帝と互いに慰め合うプラトニックな関係性を気づいていくのもなんだか今風であった。
古典作品が今も読み継がれているのは、古来より変わらぬ人間の営み、心の機微を描いて共感を呼び続けているからかもしれない。
河出文庫の「古典新訳コレクション」の他の作品も読んでみたくなった。いずれは「源氏物語」にも挑戦したいと思う。 -
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ネタバレぶっ飛んでいる。京都でぶっ飛んだ大学生たちが真面目に不真面目な取り組みを広げ、四畳半の下宿先で王国を開いているというぶっ飛んだ発想が繰り広げられている。案の定森見登美彦氏は京都大学の出身者であった。だからぶっ飛んでいるのか。
どうやったら数学的を好きすぎて証明した事物を具現化することができるだろうか。どうしたら阿呆神を讃える学生像が作れるだろうか。どうしたら黄色地に紫色のブリーフ、太った男で何の利益も生み出さないのに信仰される妙な神が生まれるだろうか。文学的な天才が京都大学という真剣に才能を無駄のベクトルに向けるフィールドでこのアイデンティティを得てしまったことを考えると、やはり京都大学の友だちを1人は作っておくべきだな、と思う。森見登美彦は京都大学産の文学的変態である。他の作品も読んで、彼の世界観を愉しんでみたい。 -
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太宰治は代表作の人間失格と、ほかちょっとした短編しか知らなかったので、ページを開いてびっくり!
文体がどことなく森見登美彦に似ている! もしかして、太宰の短編を流用して森見オリジナルにしたのかな? と調べてみたけれど、ちゃんと太宰治作でした。
暗い作品ばかりのイメージだっただけに、ちょっと笑える、愛嬌のある話もあったのか、と新たな太宰治を発見! なんだ、自虐もほどほどにすれば笑えるじゃない、なんて。
一番好きな話は「黄村先生言行録」
先生と太宰のやりとりが微笑ましい。
モデルが井伏鱒二ということで、井伏鱒二が書いた「太宰治」も読んでみたい。
こちらは、太宰治が亡くなったあとに、太宰を偲んで書かれたものだから、ちょっと湿っぽいかもしれないけれど。
巻末の森見登美彦編集後記での、太宰治に対する世間の印象について「太宰治なんて「走れメロス」と「生まれてきてすいません」の人でしょ?」には笑った。 -
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これは大恋愛(失恋)小説ってことでいいんですよね?森見作品に登場する乙女的存在は奔放で可愛らしくていつも誰かを虜にしてしまいますが、今作の水尾さんも間違いない!後半の怒涛の盛り上がりは胸熱で、粋で、少し泣きたくなる笑
太陽の塔について書かれた所が本当に好きで、一言一句読み飛ばさないよう、毎度噛み締めるように読んでしまう。その一部↓
"世人はすべからく偉大なる太陽の塔の前に膝を屈し「なんじゃこりゃあ!」と何度でも何度でも心おきなく叫ぶべし。"
2026/5/11再再読
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この語感の良さと馬鹿馬鹿しさが堪らない。やたら早口で読みたくなるそんな遊び心がウズウズするのは今のところ唯一無二森見作品だけw
愛すべき痛々しい学生達の痛々しい日々。走馬灯のような彼女との思い出の描写は大恋愛映画のようで泣ける!
〈心に残った言葉〉
”だが、それにしても、この壮大な無駄は何なのだろうな。何かこう、罪深いよな”
”いかなる人間に対しても譲歩するつもりは更々ない私だが、地球環境と父と母だけには頭が上がらない。”
2026/1/12再読
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森見先生デビュー作。地味でもなんだか楽しそうな日常。圧巻の「ええじゃないか騒動」。最後の数ページのほろ苦い恋の思い出と締め括りは最高でした。
高い志と旺盛な妄想力とガラスのハートを併せ持つちょい残念な京都の学生達。すべてはここから始まったんですね。
〈心に残った言葉〉
"幸福が有限の資源だとすれば、君の不幸は余剰を一つ産み出した。その分は勿論、俺が頂く。"
2025/2/23登録
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Posted by ブクログ
森見さんの作品も、収録されているほとんどの作品も、山月記と走れメロス以外読んだことの無い、本読みの端くれともいえる私なのだが、ちゃぁーんとそれでも楽しめる。
文庫を開くと最初に入ってくる「走れメロス 逃走図」。走れメロスで逃走…?読めばなるほど、そういうことか。
藪の中、百物語、桜の森の満開の下の3作は、前述の通り原作を読めていないのだ、それでも楽しめるのは森見登美彦の文才なのだろう。もっとも原作を読んだらまた違う楽しみがありそうだ。
短編で割とサクサク読めるので森見さんの作品を読み始めるならこの本でもいいのかもね。特に原作たちを知っている人ならば、「あー森見さんてこういう面白い文体で書く人なのね」とわかりそうなものである。もっとも、私は原作を読んでない罪深さで積読化しかけていたのだが、そんな遠慮は結果要らなかった。
いい本に出会えた。解説で神山監督が話している通り、こういうアイデアというか試みは既に試されているもので、、もっとこういう類の本は出てもいいかもね(などと、人の苦労を知らない顔で、それでも一抹の期待を胸に、私の願いをこのように、書き留めておく)。