森見登美彦のレビュー一覧
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ネタバレ山月記
かた焼き煎餅のような中島敦の文体が、森見登美彦作品と非常に親和性が高いなと感じる。「その行方については、なんの手がかりもなかった。誰一人、彼を探そうとしなかったからである。」という山月記ではありえない阿呆らしくも悲しい一文に笑ってしまったり、「下宿を灰燼に帰せしめる」という森見登美彦作品でしか見られないザ京大生ワールドをしみじみ味わったりしていたが、
「今の俺は、万人を軽蔑する中身のない傲慢が、ただ人の形を成しているだけのものだ。だからこそ天狗なのだ」
という一文に、ただの天狗じゃなく「天狗になる」という意味もかけられているのか、と気づいてなるほどなと思わせられた。元ネタの山月記も「臆 -
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ネタバレ今作も終わりに近づくにつれてまた大きなドタバタが待っているんだろうなぁってページをめくるのが楽しかった。毛玉が転がってるかと思うと想像してにこにこしちゃう。矢一郎と玉蘭が矢三郎と海星を助けに行く兄弟愛とか、銀閣に優しい子だっていうお母さんとか、まだ未熟な二代目と弁天、結局天狗の威厳見せちゃったり矢一郎・玉蘭に幸せになれっていう赤玉先生、、なんかもうみんな愛すべきキャラクターで、思い出せば出すほど可愛いなぁが溢れてきてしまう…。
矢三郎は言わずもがな、機転が効いて肝が据わっててとにかく阿呆である。いつも心に矢三郎、住まわせたい。
ますますこの家族めっちゃ好き、続編が待たれる。
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Posted by ブクログ
舞台は京都、人物は学生。
一種のパロディーではあるが、実に巧妙に細工している。
短編五作品で、主だったところで言えば、斎藤秀太郎が、幾つかの作品に顔を出す。作者、森見も登場する。
『山月記』と『藪の中』と『走れメロス』以外は元ネタを読んだことがないので、比較しようもないが、比較できる上記の三作品でいうと、『山月記』は中島敦のわざとらしい口調が少ない分、評価できる。『藪の中』は多視点からの形式を受け継いでいるところは評価できる。ただ、屈折した鵜山の感性は理解しづらかった。残る『走れメロス』は原作の友情が見事にぶち破られていて、新時代の友情が描かれている。もはや、何も言えない。
未読の原作 -
Posted by ブクログ
友人のおすすめで森見登美彦さんの作品をまとめ買い。もともと本作の映画が気になっていたため、購入した中からまず初めに本作を鑑賞。
《良かった点》
▼ ドタバタの中に一本の筋が
個性豊かなキャラクターたちのドタバタが、時間旅行の中で辻褄が合い、一つの作品として首尾一貫しているのが素晴らしい。
張り巡らされた伏線がどんどん回収され辻褄があっていく瞬間は爽快だった。
そしてその中に、主人公の黒髪の女子に対する「恋」が主旋律を奏でており、ドキドキしながらも心高鳴る作品になっている。
《気持ちの変化》
▼ 映像が浮かんでくる
読む前は、映像は自分で意図的に創り上げて読まなければ思い浮かばないと思ってい