森見登美彦のレビュー一覧
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中学の国語の授業で「今は昔、竹取の翁といふものありけり。またの名を讃岐の造となむいひける。…」とか覚えさせられたなぁ、というのが「竹取物語」の印象である。
以前から古典作品全般に苦手意識があり、現代語訳版があったとしてもなんだか読む気になれずにいたのだが、森見登美彦が訳しているとなると話は全然変わって来る。
森見作品のクセの強い独特な世界観が好きで、古典オブ古典の「竹取物語」とどんな化学反応を示すのか、ワクワクしながらページをめくった。あっと言う間に引き込まれた。
作者のあとがきにも記されていた通り、本当に森見登美彦が「竹取物語」の作者ではないのかと錯覚するくらい、森見作品の世界観と -
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京都の大学院から研究のため遠く離れた実験所に飛ばされてしまった主人公、守田一郎。彼はそこでの寂しさをうめるため、京都に住む同級生の友人、先輩、妹、教え子の少年、彼らへ文通修行と称して手紙を書く。友人の恋の相談、先輩との因縁、妹への講釈、教え子の少年の近況、おっぱい事件など……
守田一郎、愛すべき阿保である。彼のへそ曲りで、言い訳がましく、どこか拗らせた手紙が私は大好きだ。
この本を読んでる間ずっと笑いっぱなしだった!!
この本を読み終わった後は、無性に手紙を書きたくなる。ただの手紙ではなくて、守田一郎の手紙のように読み手がクスッと笑える手紙を書きたい!
森見登美彦先生、どうやったら守田一郎 -
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ネタバレぶっ飛んでいる。京都でぶっ飛んだ大学生たちが真面目に不真面目な取り組みを広げ、四畳半の下宿先で王国を開いているというぶっ飛んだ発想が繰り広げられている。案の定森見登美彦氏は京都大学の出身者であった。だからぶっ飛んでいるのか。
どうやったら数学的を好きすぎて証明した事物を具現化することができるだろうか。どうしたら阿呆神を讃える学生像が作れるだろうか。どうしたら黄色地に紫色のブリーフ、太った男で何の利益も生み出さないのに信仰される妙な神が生まれるだろうか。文学的な天才が京都大学という真剣に才能を無駄のベクトルに向けるフィールドでこのアイデンティティを得てしまったことを考えると、やはり京都大学の友だ -
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太宰治は代表作の人間失格と、ほかちょっとした短編しか知らなかったので、ページを開いてびっくり!
文体がどことなく森見登美彦に似ている! もしかして、太宰の短編を流用して森見オリジナルにしたのかな? と調べてみたけれど、ちゃんと太宰治作でした。
暗い作品ばかりのイメージだっただけに、ちょっと笑える、愛嬌のある話もあったのか、と新たな太宰治を発見! なんだ、自虐もほどほどにすれば笑えるじゃない、なんて。
一番好きな話は「黄村先生言行録」
先生と太宰のやりとりが微笑ましい。
モデルが井伏鱒二ということで、井伏鱒二が書いた「太宰治」も読んでみたい。
こちらは、太宰治が亡くなったあとに、太宰を偲 -
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「ぼくは毎日、えらくなるために勉強しているのだ。」
これぞまさに森見登美彦さんワールド、で最高な本です!
小学四年生の「ぼく」が、ある日突然、街に現れたペンギンたちの謎を解き明かそうとする物語。
それはまるで、夏の日差しの下、氷がじわじわと溶けていくように、不思議で、美しく、少し切ない冒険の始まり。
科学的探究心にあふれる「ぼく」と、ミステリアスで魅力的な「お姉さん」。
現実とファンタジーがゆるやかに溶け合いながら、世界の秘密が少しずつ明かされていく展開は、まるで夏休みの自由研究のよう。
そして、読み終えたあとに残るのは、「世界にはまだまだ知らないことがたくさんある」というワクワク感と、 -
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森見さんの作品も、収録されているほとんどの作品も、山月記と走れメロス以外読んだことの無い、本読みの端くれともいえる私なのだが、ちゃぁーんとそれでも楽しめる。
文庫を開くと最初に入ってくる「走れメロス 逃走図」。走れメロスで逃走…?読めばなるほど、そういうことか。
藪の中、百物語、桜の森の満開の下の3作は、前述の通り原作を読めていないのだ、それでも楽しめるのは森見登美彦の文才なのだろう。もっとも原作を読んだらまた違う楽しみがありそうだ。
短編で割とサクサク読めるので森見さんの作品を読み始めるならこの本でもいいのかもね。特に原作たちを知っている人ならば、「あー森見さんてこういう面白い文体で書く人な -
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ネタバレ書簡体小説なるものをたぶん初めて読んだ。学校の教科書に出てきてなければ確実であると思ったが、夏目漱石のこころがそうらしい。こころは全部読んだけど、そうだっけ?
森見登美彦節全開の作品である。第一章の「外堀を埋める友へ。」というタイトルだけでもうやられたと思った。
そして、期待通りの拗らせ大学生主人公の守田。恋文で世の中のいかなる女性を籠絡させる技術を身につけることを目指すってなんやねん。最初から面白すぎる。谷口さんの紹介文も面白くて好きだった。精力ドリンクのところである。手紙の文章が憎たらしくもう愉快極まりないのだが、それぞれへの人物への手紙が重なることでさらに面白くなる。あと森見さんって、