葉真中顕のレビュー一覧
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ネタバレ良い意味で期待を裏切られた作品です。
葉真中作品はデビュー作である「ロストケア」でドハマりし、続く「絶叫」、「Blue」と高評価をつけ読み終えました。
「ロストケア」は社会派の最高傑作だと思っていますが、だからこそ私が葉真中作品に求めるのも社会派作品。
手元で積読となっている著者の2作品「凍てつく太陽」、「灼熱」もブク友さんのレビューを読めばそっち側の作品。
でも、本作は違うんだよなぁー。
前面に出てくるのは所謂パニック小説。
わずか数時間の出来事を651Pの作品にすると、リアルに伝わってきますよね。
恐怖、パニック、悲鳴、絶望...
閉鎖された空間でまさに狩りが始まりますが、 -
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Posted by ブクログ
葉真中顕『W県警の悲劇』徳間文庫。
架空のW県警を舞台に描かれた連作短編警察小説。
今に始まったことではないが、正義の使徒であるべき警察の腐敗。テレビの『警察24時』などでは警察の手柄ばかりを取り上げているが、その裏ではかなり良からぬことを行っているのは間違いない。
連作短編の形式を取り、1つ1つの短編に様々な伏線や仕掛けを巧みに入れて、各々の短編が読み切りかと思いながら読み進んだのだが、実は1つの壮大な物語として構成されていたという驚きの作品。
県警初の女性警視昇進の野望を抱く監察官の松永菜穂子と父親の警部・熊倉哲を失った娘の熊倉清巡査の二人の女性警察官の物語なのだ。なかなか面白い。 -
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葉真中作品2作品目。前回の『ロスト・ケア』の本格長編とは異なるブラックユーモア短編集。
タイトルの「政治的に正しい警察小説」は内容がどうというよりも本作品のコンセプトにぴったりの社会への皮肉たっぷりの作品。少し星新一テイストも感じる。ポリティカルコネクティスを突き詰めていくと何も書けなくなるというのは非常に理解できる。直接的な批判ではなく、苛烈な価値観が破綻をもたらすことを、ユーモアに表せるのが小説の魅力だと改めて思った。
また4作目の『リヴィング・ウィル』は安楽死をテーマにしており、『ロスト・ケア』と同じく高齢化社会における社会問題に切り込む作者らしい作品だと思った。『ロスト・ケア』とは -
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ネタバレ評価は5.
内容(BOOKデーターベース)
殺人も辞さない世界的な過激動物愛護団体“DOG”。ペットの販売イベントに集まった隆平や栞、結愛、拓人たちは“DOG”によって会場に閉じ込められ、謎の黒い獣に襲われる。次々に食い殺される人間たち。彼らは生き延びることができるのか―。社会派ミステリの旗手が切り拓く、パニック小説の新境地!
狂っとる・・・ペットの無駄な繁殖や殺処分の問題にメスをいれたい作品だろうが・・・この人は主人公か?と思われる人も次々あっさりとしかも残酷に殺されちゃうし。
ここまでせんでも・・・。
最後ははぁ~んあんたが黒幕だったのね。で終了。 -
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葉真中顕『凍てつく太陽』幻冬舎文庫。
以前から気になっていて、文庫化されるのを待っていた作品。
アイヌという日本のマイノリティを一つのテーマに、アイヌの血を受け継ぎながら日本人よりも日本人らしく生きようとした主人公・日崎八尋の過酷な運命が描かれる。室蘭市に隠された3つ目の太陽の正体は何か、カンナカムイの秘密を握る陸軍関係者の連続殺人事件の犯人は誰か、といったミステリー要素もあり、非常に読み応えのある長編小説だった。
時代は終戦間際の昭和20年。序章に描かれたエピソードだけでも十分に読み応えがあった。アイヌ人の母親を持つ特高刑事の日崎八尋は室蘭市の飯場に人夫として潜入し、飯場からの脱走事件 -
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このサイトで著者を見ると勘違いする人もいると思うが、これは、おつまみについていろんな作家さんが書いたアンソロジーである。
どれも私にぴったりで、最後まで楽しく読めたし、つまみの参考にもなった。
あまり手の込んだものつまみは出てこず、なかにはコンビニつまみランキングなるものもあり、かなり参考になった。また、各作家さんの酒との距離感、そして、つまみのポジションが明確で、スッキリ読める。
人それぞれ、酒とつまみの位置付けは様々だが、押し付けがましくなく、自分の日常を赤裸々(?)に語っているのが最高。
さらに、一編ずつが短いのもポイント。
ネックは、つまみを食べたくなり、酒を飲みたくなることだけです〰 -
Posted by ブクログ
絶望の世界の物語なのに、なぜか神々しい世界へ連れて行かされる。今まで経験のしたことがない物語体験でした。
カルト教団、診療報酬、自殺サイト、震災、戦争、性的虐待……、
『ロストケア』『絶叫』と同様に今回も葉真中さんは社会の闇、人間の闇に容赦なく光を当てます。
各章に登場するそれぞれの登場人物たちが見る闇と地獄。そして幕間に登場するある女性の壮絶な人生。葉真中さんの筆力はますます乗ってきているというか、光無き世界とその運命に翻弄される人物たちを、容赦なく描きます。どれもシリアスで暗い話ばかりですが、ついつい引き込まれます。
そして、第4章を読み始めたとき「ん?」と思う人もいる