葉真中顕のレビュー一覧

  • コクーン

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    1匹の黄金蝶が導く、数多の人たちの過去、そして現在。
    全ての人の運命は、1995年にカルト教団「シンラ智慧の会」が起こした銃乱射事件で繋がっている。
    それぞれの人が各々の考えで行動し、生きていると思うことは当然なのか、それともこの世界の全ては巨大な装置に牛耳られ決まったルートをあたかも運命かのように選ばされているだけなのか…。

    さすが葉真中顕さん、今回もめちゃくちゃ深かったです。
    本書のキーワードであるバタフライ効果の着地点、なるほど!面白い!
    「社会小説」「ミステリー」だけでは到底表現し尽くせない緻密さに酔いしれる作品でした。

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    2019年09月24日
  • コクーン

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    葉真中顕『コクーン』光文社文庫。

    平成という時代に起きた大事件と関係者の人生とをコラージュしたような幻想的な小説。金色の翅を持つ蝶が時代を超えてもたらす『バタフライ・エフェクト』。何が正解で何が間違いだったのか今となっては誰にも解らないが、少なくとも善と悪だけは明確である。

    東京丸の内で無差別銃乱射事件を引き起こしたカルト教団『シンラ知慧の会』の教祖・天堂光翅と彼に関わった人たちの因果応報の人生を描く。カルト教団『シンラ知慧の会』は『オウム真理教』がモデルであろう。

    タイトルの『コクーン』……繭は、物語全体を象徴する存在であり、金色の翅の蝶が引き起こすバタフライ・エフェクトの根源は繭なの

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    2019年04月14日
  • ブラック・ドッグ

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    葉真中顕『ブラック・ドッグ』講談社文庫。

    『ロスト・ケア』『絶叫』などの傑作とは全く違ったテイストの600ページを超えるパニック小説大作。凄いの一言に尽きる。過激な動物愛護団体DOGが仕掛けた予想外のテロ……スプラッター映画を観るかのような凄惨な描写の連続。教授の正体とは一体……

    人間のエゴにより売り買いされる動物。動物が苦手な人も居るのに辺り構わず、動物の気持ちなど永遠に解るはずかまないのにまるでモノのように連れ回す馬鹿者ども。もしも、犬と人間の立場が逆だったら……

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    2018年06月20日
  • 家族

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    ネタバレ

    この作品は、実際にあった「尼崎連続変死事件」をモチーフにしていて、囚われ餌食にされていく側の視点で描かれていることもあって、まさに自分自身がその立場に追い込まれているようで恐ろしかった。

    が、目を背けたくなる気持ちと裏腹にページを捲る手は止まらない。
    途中で何度も「そんな馬鹿な…」と呟いていた。
    助けを求めているのに、まるで冒頭に出てくる沼の描写、粘土の高い流砂に引きずり込まれるように。

    この小説が突きつける本質的な問題は、安全なはずの「家族」という名の密室で行われる虐待や監禁、そしてそれを許容する「民事不介入」の司法・社会制度の欠陥だけにとどまらない。
    むしろ、「巻き込まれた男」が自ら疑

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    2025年12月14日
  • 鼓動

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    ネタバレ

    この物語はある男の人生の独白と、女刑事がある事件の真相を突き止めるまでの過程が交互に展開する構成となっている。
    公園の身元不明のホームレスの焼死体、その側に犯人がおり、犯行を認めている。父親も身勝手な理由で自分が殺したと自白していた。
    刑事たちが被害者の身元を突き止めるまでの過程の中で、実は心の中に絶望を抱える刑事たちと、犯人・被害者の心理が重なりあい、やがて女刑事は犯人の本当の動機と、もう一人の犯人にたどり着く。

    一つ目のどんでん返しが、被害者のホームレスの女にもう一人娘がおり、その娘はネグレクトを受けていたという事実。そこで初めて女刑事との境遇がここでも重なりあっていたのかという衝撃を受

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    2025年12月14日
  • 鼓動

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    刑事側の登場人物が少なくて良かった。
    警察小説だと似たような人物がたくさん出てきて、誰が誰だかわからなくなってしまうことがよくあるので笑
    重くて辛い話だけど読みやすい。
    刑事側の推理描写と引きこもり側の半生の語り、短い章で交互に進むので飽きずにテンポよく読める。
    引きこもり側のストーリーはドキュメンタリーを見ているかのようでリアルで苦しくなった。

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    2025年12月13日
  • 家族

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    愛と恐怖で"家族"を懐柔させる夜戸瑠璃子という怪物。自身は一切手を加えず次々と躾と称して人を殺していく。その残忍で狡猾な手口は悪い意味で天性のものだと思う。
    仲の良かった家族が切り裂かれそこに侵食していく、家族同士による苛烈な暴力から目を背けたくなるが、これが現代日本で実際に起きた事件であることの意味を考えなければならない。これほどの犠牲者が出てしまった最悪の事件を、この小説を通して決して忘れてはならないと思った。

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    2025年12月12日
  • Blue(ブルー)

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    この作者、社会問題✖️サスペンスを書いててサスペンスとしても面白いし、社会問題も考えさせられる物語で面白かった
    ちょっと前にアマプラで見たロストケアもこの人が書いててこういう系好きかも!

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    2025年12月11日
  • 家族

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    ネタバレ

    尼崎で起きた衝撃的な事件がモチーフ。どういうやり口で洗脳したのか、なぜ被害者は洗脳されたのか…当時から疑問に思っていたことが少しわかったような。自分なら洗脳されないと思っていたが、家族を巻き込み、心身共にボロボロになって追い込まれたら自分もそうなるのかもと思ったり。瑠璃子が作る料理が甘いのはいったいなんだったのか…。
    澄と宗太はどうなったのか…。薬物は使われていたのか…。疑問は残るけど面白かった

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    2025年12月10日
  • 絶叫

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    主人公の人生が壮絶過ぎてちょっとやり過ぎ感はありましたが、結末に向かって畳み掛けていく後半は読ませました。結果は予想できましたが、細部は見事に外れてしまいました。そうきたのか!という感じです。エピローグを軽く読んだ為に、重大な仕掛けに気付かずに後から読み返しました。なるほどね。キチンと大切な言葉は語られてたんだ。

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    2025年12月06日
  • 家族

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    家族とは何かという感想は沢山あるので省きます。
    この作品で感じたのは、人というのは窮地に陥った時に何かに縋りたくなってしまうのだと。あるいは、自分の命が危ないと例え大切は人でも見ず知らぬの相手でも裏切りったり、傷つけたりできてしまう。自分ならどうだろうと考えさせられました。

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    2025年12月04日
  • 家族

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    2011年11月、裸の女性が交番に助けを求めて駆け込んだことから事件は発覚した。足掛け25年にわたって複数の家族が監禁、虐待され、死者、行方不明者は10人以上に及ぶという実際にあった事件「尼崎連続変死事件」をモチーフにしたフィクション。

    事件そのものは本当に陰惨。ターゲットの家族に入り込み罵声と暴力で脅迫、恐怖による支配で思考停止に追い込み、家族を分断し、家族間で“躾”という名の虐待を促す。恐るべきマインドコントロールに身が竦む。
    命からがら駆け込んだ警察には「民事不介入」を理由に介入を断られ、連れ戻された先ではさらに過酷な拷問が待ち受ける。この世の地獄だ。

    複数のノンフィクション作品が出

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    2025年12月04日
  • 家族

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    尼崎連続変○事件を元に描いた小説ということで、読んでみました。
    当時はかなりニュースになっていましたよね。この地名が一気に知られた事件、と言ってもいいのではないでしょうか。残虐だった記憶はあるものの細部までは覚えていなかったので、その確認も兼ねて読み進めました。

    実際に読んでみると、北九州連続○人事件と手口が非常に似ていると感じました。
    まったく関係のない第三者が一つの家族に入り込み、暴力で洗脳し、家族同士を殴る・蹴るといった折檻へと追い込み、ついには身内を○害させる――。しかも被害は一つの家族にとどまらず、何家族も犠牲になっていく恐ろしさ。

    こういううさん臭い集団にはどう巻き込まれるのか

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    2025年11月25日
  • もの語る一手

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    ネタバレ

    綾崎隼さんが将棋のアンソロジーに寄稿してると聞いては読まないわけにはいかない!
    今回の綾崎さんの作品は、「僕らに嘘が一つだけ」の2人と同世代の朱莉さんが主人公。もう一度僕らに〜も読み返した上で、こちらも読み返したいな。

    一話目は青山さんのお話らしく、前向きな気持ちになる門出の話。
    葉真中さんは初読み。ただただ少年の手腕に鳥肌。
    弟子にしたかった少年を冤罪から救うという白井さんの話にはびっくり。そういう将棋との絡め方もあるのか。
    橋本さんも初読み。この一戦を勝てば夢が叶うという相手への対応って悩ましい。そこで手を抜かれて夢を叶えること、本気で相手してもらって破れること。
    芦沢さんは気になってい

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    2025年11月24日
  • Jミステリー2025~FALL~

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    今年ももう1か月半足らずで終わってしまいます。
    1年間に読める冊数が少ないので色々な作家さんの作品に触れたい時にはいいですね。
    6人の作家の書き下ろしです。
    葉真中 顕さんの「21グラム」最後ちょっとぞっとする感じで面白かったです。
    五十嵐 律人さんの「万藤の灯火」も良かったです。

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    2025年11月19日
  • Blue(ブルー)

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    平成を舞台とした話なので、懐かしいワードがたくさん出てきた。いろいろ考えさせられるミステリーだった。

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    2025年11月19日
  • 凍てつく太陽

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    長編だが一気に読めるほど面白い。
    解説にあるようにエンターテイメントを詰め込んでいる。
    ただ作者の価値観の解説風が出てくるのはちょっと場違いな印象だ。
    特高と憲兵の実態が少しわかった。

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    2025年11月14日
  • 鼓動

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    ネタバレ

    この作品は社会問題として取り上げられることも多い"引きこもり"を軸にしている。現実に起きた事件や社会情勢も交えてストーリーが展開されていくので、凄くリアルに感じられた。

    どんな人も絶望しないで生きていける世の中になって欲しいと思った。

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    2025年11月13日
  • ロング・アフタヌーン

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    ネタバレ

    「犬を飼う」のインパクトが強烈で、一気に引き込まれました。
    その後は、物語が入れ子構造になって進んでいき、現実と物語の境界がいよいよ曖昧に…といったところで、最後の「あなた、ユニークね」でやられた!

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    2025年11月12日
  • 家族

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    尼崎事件をモチーフに聖域である家族の持つ負の一面を描いていて興味深く読みましたが、同時にしんどい小説でもありました。家族から正しく愛されなかった経験が胸に穴を開け、擬似家族という洗脳や暴力による支配の惨劇を生んだ、そしてそれは現在進行形でどこかに存在しているという提示はとても重くやり切れない。それでも物語の中に小説的なやり方で新しく芽生えた愛による救いの場面を描いたのは葉真中さんなりの願いの形なのだと感じました。

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    2025年11月09日