葉真中顕のレビュー一覧
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葉真中顕『コクーン』光文社文庫。
平成という時代に起きた大事件と関係者の人生とをコラージュしたような幻想的な小説。金色の翅を持つ蝶が時代を超えてもたらす『バタフライ・エフェクト』。何が正解で何が間違いだったのか今となっては誰にも解らないが、少なくとも善と悪だけは明確である。
東京丸の内で無差別銃乱射事件を引き起こしたカルト教団『シンラ知慧の会』の教祖・天堂光翅と彼に関わった人たちの因果応報の人生を描く。カルト教団『シンラ知慧の会』は『オウム真理教』がモデルであろう。
タイトルの『コクーン』……繭は、物語全体を象徴する存在であり、金色の翅の蝶が引き起こすバタフライ・エフェクトの根源は繭なの -
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ネタバレこの作品は、実際にあった「尼崎連続変死事件」をモチーフにしていて、囚われ餌食にされていく側の視点で描かれていることもあって、まさに自分自身がその立場に追い込まれているようで恐ろしかった。
が、目を背けたくなる気持ちと裏腹にページを捲る手は止まらない。
途中で何度も「そんな馬鹿な…」と呟いていた。
助けを求めているのに、まるで冒頭に出てくる沼の描写、粘土の高い流砂に引きずり込まれるように。
この小説が突きつける本質的な問題は、安全なはずの「家族」という名の密室で行われる虐待や監禁、そしてそれを許容する「民事不介入」の司法・社会制度の欠陥だけにとどまらない。
むしろ、「巻き込まれた男」が自ら疑 -
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ネタバレこの物語はある男の人生の独白と、女刑事がある事件の真相を突き止めるまでの過程が交互に展開する構成となっている。
公園の身元不明のホームレスの焼死体、その側に犯人がおり、犯行を認めている。父親も身勝手な理由で自分が殺したと自白していた。
刑事たちが被害者の身元を突き止めるまでの過程の中で、実は心の中に絶望を抱える刑事たちと、犯人・被害者の心理が重なりあい、やがて女刑事は犯人の本当の動機と、もう一人の犯人にたどり着く。
一つ目のどんでん返しが、被害者のホームレスの女にもう一人娘がおり、その娘はネグレクトを受けていたという事実。そこで初めて女刑事との境遇がここでも重なりあっていたのかという衝撃を受 -
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2011年11月、裸の女性が交番に助けを求めて駆け込んだことから事件は発覚した。足掛け25年にわたって複数の家族が監禁、虐待され、死者、行方不明者は10人以上に及ぶという実際にあった事件「尼崎連続変死事件」をモチーフにしたフィクション。
事件そのものは本当に陰惨。ターゲットの家族に入り込み罵声と暴力で脅迫、恐怖による支配で思考停止に追い込み、家族を分断し、家族間で“躾”という名の虐待を促す。恐るべきマインドコントロールに身が竦む。
命からがら駆け込んだ警察には「民事不介入」を理由に介入を断られ、連れ戻された先ではさらに過酷な拷問が待ち受ける。この世の地獄だ。
複数のノンフィクション作品が出 -
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尼崎連続変○事件を元に描いた小説ということで、読んでみました。
当時はかなりニュースになっていましたよね。この地名が一気に知られた事件、と言ってもいいのではないでしょうか。残虐だった記憶はあるものの細部までは覚えていなかったので、その確認も兼ねて読み進めました。
実際に読んでみると、北九州連続○人事件と手口が非常に似ていると感じました。
まったく関係のない第三者が一つの家族に入り込み、暴力で洗脳し、家族同士を殴る・蹴るといった折檻へと追い込み、ついには身内を○害させる――。しかも被害は一つの家族にとどまらず、何家族も犠牲になっていく恐ろしさ。
こういううさん臭い集団にはどう巻き込まれるのか -
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ネタバレ綾崎隼さんが将棋のアンソロジーに寄稿してると聞いては読まないわけにはいかない!
今回の綾崎さんの作品は、「僕らに嘘が一つだけ」の2人と同世代の朱莉さんが主人公。もう一度僕らに〜も読み返した上で、こちらも読み返したいな。
一話目は青山さんのお話らしく、前向きな気持ちになる門出の話。
葉真中さんは初読み。ただただ少年の手腕に鳥肌。
弟子にしたかった少年を冤罪から救うという白井さんの話にはびっくり。そういう将棋との絡め方もあるのか。
橋本さんも初読み。この一戦を勝てば夢が叶うという相手への対応って悩ましい。そこで手を抜かれて夢を叶えること、本気で相手してもらって破れること。
芦沢さんは気になってい