葉真中顕のレビュー一覧
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保険営業時代、人に安心を与える仕事だと「魔法」をかけられ、人間関係を使い捨てていくシステムに飲み込まれていく、「あなた」。
「頑張れば頑張るほど他人の立場を想像できなくなる」という思考の麻痺が、静かに彼女の心を削っていく。
そして後年、神代と出会い足を踏み入れた闇の世界では、偽装結婚した相手がまるで心太のように押し出されて消されてゆく……。営業時代に培われてしまった歪んだ合理性が、冷酷な保険金詐欺のシステムへと地続きで繋がっていく展開に背筋が凍りつく。
陽子の人生は、私たちが歩んでいる道とそれほど変わりがないように思える。
一歩選択を間違えれば、頼れるクッションがなければ、誰もが陽子と同じ暗闇に落ちていたかもしれない。最初の夫、公平が見せた陽子の「思いっきりの笑顔」の写真が、その残酷さを物語っている。
作中、幽霊となった弟の純が言った「人間なんて、ただの自然現象だよ」という言葉。
生も死も、人の心も、髪の毛一本の行く末さえ自分で選ぶことなんてできない。人はいつだって裏切るし、自分すら自分を裏切る。すべては雨や風と同じ不可抗力なのかもしれない。
けれど、二人称の「あなた」で進む不穏な語り口の理由がラストで明かされたとき、全身の鳥肌が立った。
そして、あの一瞬響き渡った「絶叫」。
あれは綺麗な再生や希望の叫びなどではない。「こうするしか生きられない」「もうどうでもいい、でもまだ死ねない」という、泥水をすすってでも生き抜くための開き直りであり、狂気混じりの宣誓だ。
他者を犠牲にしてでも、罪を背負ってでも「わたし」は生き抜く。
どれだけ過去を振り払おうとしても、これからも「あなた」は「わたし」であり続けるのだから。
読み終えたあと、ただただ人間の底なしのエゴと執念の毒に当てられ、重い後味とともに本を閉じるしかなかった。 -
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狂気の疑似家族集団での凄惨な日々。小説ではあるが、これが実際の2011年に発覚した尼崎連続変死事件をそのままのように描いた作品であり、ほとんど事実の姿なのか?舞台は八王子市に変更されているが、64歳の夜戸瑠璃子(事実のモデルは角田千代子)が共同生活のなかで暴力と恐怖によるマインドコントロールにより10数人に及ぶ関係者を死に至らしめ、親族同士での暴力を強制していたという毎日。小説では時系列がバラバラにされているが、これがまた如何に長期にわたって続いていたかを暗に示している。警察の「親族間のトラブルには不介入」という方針が度々語られ、これは最近でもストーカー事件の頻発を想起させる。この中でも瑠璃子の息子と結婚したという有馬家の妹娘が両親・姉を追い込んでいった場面が詳細に説明されており、かなり重要な存在になっている。彼らのなぜ逃げ出せなかったのか、被害者が加害側になったのかなど、心理状態を読み解く大きな謎解き解釈を示している。
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これ、フィクション…だよね?怖すぎる。
人はこうやって洗脳されて、逃げ場がなくなっていくのか…と読みながらずっと胸糞悪かった。
『民事不介入』については、はじめて知った言葉かもしれない。警察を頼っても逃げられないなんて絶望しかない。
早く結末を知りたいと一気読みしたが、最後にいくつか謎が残ってしまったことと、登場人物が多くて複雑すぎたので⭐︎3に。
追記:尼崎連続変死殺人がモチーフになったんですね…。だからこんなに登場人物が多くて複雑なのか。
小説としては⭐︎3だけれど、モチーフになった事件があるのであれば一読に値する(自分が巻き込まれたりしないように。このようなことに巻き込まれてしまった人を理解するために)、素晴らしい作品。と言うわけで⭐︎4。 -
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読書備忘録1017号。
★★★★(物語としては精々★2つくらいか・・・)。
怒涛の8月でしたね~。みなさま。
ホンマに怒涛の。
読書は細々と続けてましたが、備忘録は無理!
8月初めての品川週末。しかも雨。備忘録開始です!
順番は蟲!美貌として肝胆な作品から怪死!
尼崎です。
尼崎の連続不審死事件をモチーフにした作品。
角田美代子が瑠璃子ですわ。
美代子は尼崎で8人。瑠璃子は八王子で13人。瑠璃子の勝ち。
怖いですわ。怖い。
備忘禄としてはそれだけで十分ですわ。
瑠璃子が怖いんじゃなくて、瑠璃子に狙われたら人生終わるってことが怖い。
巻末に人物相関図とかあるけど意味ないです。
ミステリーちゃうし。
家族と言いながら血縁関係なし。
「だって私ら家族やんかぁ」という言葉だけでハイ終了!ってことです。
瑠璃子に掛かったらどんだけ細い細い繋がりでも家族にされてしまう。
そうなったら、ちゅ~ちゅ~と体液を吸われて、カスカスになったら補充して、吸われて、補充できなくなったら保険金掛けてハイさよなら。
ミステリーっぽく、あばたのおっさんとか、耳元でささやくGHOST女子とか登場されてるけど、結局瑠璃子ですわ。
そして八王子。尼崎の事件を八王子にされたら堪らんね!
八王子市民は。
こわっ。以上。
PS.
なんで警察はこの事件を防げなかったのか?
基本、家族の問題には関わらない。民事不介入ですね。
そうするとですよ。阿部ちゃんが現行犯逮捕されたじゃないですか。
あとから娘の言葉とかいろいろやってるけど、殴る蹴るの次元を超えていたということが分かりますね。この本を読むと。
だって家族の間でビンタとか、殴るくらいでは警察は現行犯逮捕しない・・・。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ恐ろしい。実際に起こったことだと思うと本当に怖い。
もしこんな人に出会ってしまったら逃げられるだろうか、どうやって逃げようかと考えながら読んだ。
特に"あちら側"にいたはずの有間家と宗太の話は辛かった。
暴力は正義だと思い込むようになるまで追い詰められてしまう。
「追い詰められた人間に究極の選択なんてない。ただ状況に服従するだけ。きっとこれは人間の本性なんて上等なものではない。腐った木の実が地面に落ちる、そういう自然現象に近いなにかだ。」
ダーヤマさんはあんまり話に出てこなかったけどどうなったんだろう。
凸凹の男は?
一番怖いのは朱鷺子さんだったのだろうか。
蛇のペンダントが気になった。
瑠璃子たちが逮捕された後、洗脳は解けるのだろうか。
いろいろと謎が残った。 -
Posted by ブクログ
犯人が誰なのかと言うよりも、介護の実態がリアルに描かれていて恐ろしい気持ちが勝った。
日本人の総人口に対する65歳以上の割合は20パーセントと言う表記があったが、自分の中では案外少ないななんて思い、今の割合を調べて見たらほぼ30パーセントになっていた。
少子高齢化が騒がれてからもう何年も経つのに、作中にある「わかっていたのに」がその通りだと思えた。
こういう小説の犯人は大体が誰かから頼まれたりという形で罪を犯すような表記が多いが、犯人が独断で救ってあげようと勝手に考えて実行するというのは珍しいし、自分の思い込みだった場合はなかったのかなと思ったが、介護する側が「この人が限界だな」と思うくらいなんだから本当に限界なんだろうなとも思う。
20年経っても今は、介護の仕事は優遇されてると思えないし、もう少し国は介護を職としてる人の話を聞いた方がいいなと思ったし、実際いる訳では無いけど、こんな殺人鬼に「救われた」なんて思う人がいなくなるといいと思った。