あらすじ
自殺を決意した女が偶然、学生時代の友人と再会する。
そんな場面から始まる小説の原稿が、編集者の葛城梨帆宛てに届く。
以前新人賞で落選した志村多恵からだった。
立場の違う女たちの会話はすれ違い、次第に募る殺意。そして女はある選択をする――
「私をあなたの、共犯者にしてください」
虚実の境が揺らぐ、迫真のミステリー。
〈解説〉大久保洋子
感情タグBEST3
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『犬を飼う』が衝撃的に面白い。誰かに勧めたいと強く思ったが、人を選ぶ…この小説は。途中の展開も何度もギリギリわかりそうでわからなかったり、そうならないでと思ったところでそうなったり。わたしが一番刺さったのは牧島晴佳の存在。終わり方もとても好き。
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ミステリに入れたが、犯人捜しのお話ではなく、作中作と現実が徐々にリンクしていって、作中作ではこうなっているけど現実はどうなってるの~!? 系のミステリ。なんだそれ。
情報を開示する順番を工夫するだけで(それだけではないけど)こんなエキサイティングなお話になるんだなあ。
女性の心理描写がとてもリアルだったので、作者「アキラ」さんだからもしかして女性? と思っていたけど検索したら目黒世田谷あたりにいそうなオシャレ知的男性だった。でも山形が拠点なのですね。
解説の方も同じことをなさったようで笑ってしまった。中国では「葉間中顕女史」というレビューがついたそうだ。笑
作中作で行われる犯罪は生存のための犯罪であり、善し悪しを考えるのはナンセンスなのかなと思った。ていうかまあ犯罪は悪いと思うけど、そういう次元で考えるものではないよなーみたいな。
面白い、面白すぎる、十万石まんじゅう
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この作者の作品を読むのは、本書が初めて。
なので、ほかの作品がどうかはわからないけど、いい意味で「思ってたんと違う!」。
カバー裏表紙のあらすじを読んで、買ってみることにしたけど、大体どの本も「王道ミステリー」「人間関係ドロドロ」「女性の感情を切り取る」など、意識的にではないにしても、どんな作品か、予想をたてる。それで言うと、本作品は現実世界と小説世界がリンクしたミステリー、だと思って読んだが、違った。
予想よりも、感情の描写が繊細で、展開には容赦がなく、現実よりも現実的だった。自分の隣で、家の中で起こることではないか、という、そら恐ろしさがある。
作中の小説もうまく生かされ、あれがここに効いてくるのか!?という、構成の緻密さにも驚かされた。
本作を通して、語り手は編集者の梨帆であり、作中の小説の作者・志村多恵は、登場シーンが限られ、セリフも少ない。それなのに、圧倒的に気になる存在だ。多恵のことが知りたくて、多恵に起こることが知りたくて、作中の小説に引き込まれ、本作にも引き込まれる。
『ロング・アフタヌーン』というタイトルもいい。長い午後を過ごす女。これほど多恵にぴったりくる表現はない。
終わり方も多恵の小説風で、心をつかまれた。
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「犬を飼う」のインパクトが強烈で、一気に引き込まれました。
その後は、物語が入れ子構造になって進んでいき、現実と物語の境界がいよいよ曖昧に…といったところで、最後の「あなた、ユニークね」でやられた!
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誰でもこの先は絶対に幸せな気分にはなれないよなぁと思いながら、iPhoneの画面をタップしてインターネットの沼に沈むときがあるのだろうか。
結末は解説を読んで腑に落ちた感じがする。
彼女は誰かにとってのアリサの役割も引き継いでいたのか。
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葉真中顕『ロング・アフタヌーン』中公文庫。
変わった構成のイヤミスであった。作家を目指す主婦が執筆した『犬を飼う』という小説とタイトルの『ロング・アフタヌーン』を日本語にした『長い午後』という2つの小説を軸にストーリーが展開していくのだ。
男女平等社会、ジェンダーギャップなどという言葉が世に出て久しいが、まだまだ女性の扱いは男性に比べると低いように思う。しかし、企業などでは上に立とうとする女性が少ないことも事実であるし、専業主婦という生き方を選択した女性はなおさら男性よりも上に立つ機会など皆無に等しいだろう。
個人的には男性には男性の役割や得意分野があり、女性には女性の役割や得意分野があるのだから、それぞれが不足を補ってこそ、男女平等社会と言えるのではないかと思う。
志村多恵という作家を目指す50歳の主婦による『犬を飼う』というフェミニズムを全面に押し出した近未来ディストピアSF小説で幕開けする。
その『犬を飼う』という小説は公募型の新人賞に送られた小説で最終選考の6作まで残ったのだが、惜しくも落選してしまった。
7年前、『犬を飼う』を強く推していた書籍編集者の葛城梨帆には志村多恵は記憶に残る女性であった。『犬を飼う』から7年後、梨帆の元に再び志村多恵から『長い午後』というタイトルの小説が送られてくる。
『長い午後』は、志村多恵自身をモデルにしたと思われる自殺を決意した女性が偶然、学生時代の友人の女性と再会する場面から始まり、男性に対する不満や軽蔑のエネルギーが『犬を飼う』を執筆させたことが描かれていた。やがて、主人公の女性と学生時代の友人との会話はすれ違い、それは殺意へと変貌する。
そして、主人公の心で渦巻く男性に対する不満や軽蔑の念は……
本体価格860円
★★★★
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冒頭の作中作「犬を飼う」のインパクトが強すぎて、正直そのあとは期待していたミステリというほどの内容には感じなかったです。
でも、女性作家が書いたのではないかと思うほどに女性心理をこんなに細かく描いているのはすごいと思いました。
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多少思想に偏りがありそうだなと感じ、従軍慰安婦については朝日新聞が広めたデマだということはちゃんと書いてほしかった。
でも、お話自体は面白かった。
構成が素晴らしく、引き込まれる作品。
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「犬を飼う」という作中作から始まる『ロング・アフタヌーン』。
そのSFチックで衝撃的な短編の秀逸さにまず掴まれます。わずか40ページほどの物語ですが、全編にシスターフッドの気配を孕み、“もっと読ませてほしい”と思わせる魅力がありました。
そして、次の作中作「長い午後」は、数十年後、同じ作者により再び立ち上がる物語。
作中作を組み込みという事は、現実と虚構の境目をわざと曖昧にし、気を抜くと、自分がどちらの世界にいるのか分からなくさせるということ。
曖昧な登場人物、曖昧な記憶、曖昧なミステリー。その“揺らぎ”こそが本作の魅力であり、不穏な読後感をもたらすもの。