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Posted by ブクログ
作中作品の女性が、みんなから随分遅れて携帯を手に入れ、ネットサーフィンして世間に慣れていく姿が、驚くほどリアリティーがある。怖すぎる。
個人的に作中作品その1の段階で気持ち悪すぎて読書をやめてしまいそうになった。作中作品だと最初から言ってくれたら良かったのに。(幸い頑張れたけど!)
梨帆はPMSの頭痛に悩まされている。梨帆は以前第二編集部に所属していたが、再編されて消滅した。だから今更小説を送ってこられても困る。それは数年前に担当した犬を飼うという作品の作者からで、どうやら別の作品を完成させたようだ。
作品の内容は、電車に飛び込もうと最後のオシャレをして家を出たター坊(50歳女性)が、道で25年ぶりの女子校時代の同級生に会う。携帯を持ってないと言ったら、一緒に買いに行ってあげるとついてこられ、買う。まだ小説を書いているのか訊かれる。
なぜ今になって送ってきたのだろう。7年も経っている。年末休みに入っていた。苦手な作家からランチに呼び出される。断ろうとすると死んじゃおうかなと言われる。仕方ない。
ター坊の夫は定年後嘱託で働いている。高圧的で家事は何もやらず、ほとんど会話もない。亡くなった義母は脳梗塞になるまでは良かったが、介護していたらどんどん不満が出てきたようだ。唐突に誤嚥性肺炎で亡くなった。
ター坊は毎日ネットサーフィンして過ごすようになった。夫のような元偉かったタダの人が世の中でみっともないマネをしているのがアルアルだと知る。結婚が失敗だったと思うようになった。小説を書く。
梨帆は子供を妊娠しようとしないことで離婚になった。3年前。そしてその後パニック発作が出るようになった。童話作家と結婚して双子を授かったニュースを聞く。
ター坊の書いた小説は最終選考まで残ったらしい。おかげで夫が何を言ってきても心折れず過ごすことができた。そして自分が夫の怒気を挫くことができることを知る。だけど賞に落ちたら元の木阿弥だった。
梨帆は出版したいと上に掛け合ったら、拍子抜けするほどあっさり通った。
Posted by ブクログ
単行本で4年ぶりに再読。年齢と共に読み方が違うのかとてもいい時間を過ごせた。「犬を飼う」「長い午後」を書いた主婦多恵。出版社勤務の梨帆。犬とイヌ、違和感に気づいたとき作中の作品なのに圧倒される。もう一つの作品も、考えないように生活してるからこそ長く感じる午後をiPhoneや旧友亜里砂がキッカケで溢れ出る感情にフタをしなかったター坊の気持ちが伝わってくる。分岐点であっちを選んでいたら、同じように最近思う事が多いので、振り返るきっかけにもなる。多恵が自分より若くバリバリ働く梨帆の現実を知ったら、時が経っても男女の求められるものが変わらないことにため息がでるだろうな。そして自分自身は多恵と梨帆を足して2で割ったような人生だけど、うまくいかない人生に後悔しかない。若い人に読んでほしい作品。
Posted by ブクログ
面白かった!葉真中顕は本当に裏切らない…!
冒頭、作中の多恵が執筆した『犬を飼う』という短編小説からスタート。村田沙耶香でも読んでるのかと錯覚した、ほんとに葉真中顕????
作家としては全くの無名素人で主婦である多恵の人生に連動した二つの作品と、編集者である梨帆の人生を交互に描く形で物語は展開する。
どこまでが妄想で、どこまでが真実か分からない。そんなフィクションである物語に支えられて今日まで生きてきたんだなと思った。ただ想像するだけ、それは自由だから。
どちらかといえば人の絆とか愛とか、ゆえに生まれる呪縛だったり、そういったことを社会問題と共に提起するような作品が多くて、人物描写が緻密だから読後感が悪くないというイメージだったんだけど、今回もそうだったな。
愛なんかに負けないで!の一言が、とても好きだった。
Posted by ブクログ
この作者の作品を読むのは、本書が初めて。
なので、ほかの作品がどうかはわからないけど、いい意味で「思ってたんと違う!」。
カバー裏表紙のあらすじを読んで、買ってみることにしたけど、大体どの本も「王道ミステリー」「人間関係ドロドロ」「女性の感情を切り取る」など、意識的にではないにしても、どんな作品か、予想をたてる。それで言うと、本作品は現実世界と小説世界がリンクしたミステリー、だと思って読んだが、違った。
予想よりも、感情の描写が繊細で、展開には容赦がなく、現実よりも現実的だった。自分の隣で、家の中で起こることではないか、という、そら恐ろしさがある。
作中の小説もうまく生かされ、あれがここに効いてくるのか!?という、構成の緻密さにも驚かされた。
本作を通して、語り手は編集者の梨帆であり、作中の小説の作者・志村多恵は、登場シーンが限られ、セリフも少ない。それなのに、圧倒的に気になる存在だ。多恵のことが知りたくて、多恵に起こることが知りたくて、作中の小説に引き込まれ、本作にも引き込まれる。
『ロング・アフタヌーン』というタイトルもいい。長い午後を過ごす女。これほど多恵にぴったりくる表現はない。
終わり方も多恵の小説風で、心をつかまれた。
Posted by ブクログ
葉真中顕『ロング・アフタヌーン』中公文庫。
変わった構成のイヤミスであった。作家を目指す主婦が執筆した『犬を飼う』という小説とタイトルの『ロング・アフタヌーン』を日本語にした『長い午後』という2つの小説を軸にストーリーが展開していくのだ。
男女平等社会、ジェンダーギャップなどという言葉が世に出て久しいが、まだまだ女性の扱いは男性に比べると低いように思う。しかし、企業などでは上に立とうとする女性が少ないことも事実であるし、専業主婦という生き方を選択した女性はなおさら男性よりも上に立つ機会など皆無に等しいだろう。
個人的には男性には男性の役割や得意分野があり、女性には女性の役割や得意分野があるのだから、それぞれが不足を補ってこそ、男女平等社会と言えるのではないかと思う。
志村多恵という作家を目指す50歳の主婦による『犬を飼う』というフェミニズムを全面に押し出した近未来ディストピアSF小説で幕開けする。
その『犬を飼う』という小説は公募型の新人賞に送られた小説で最終選考の6作まで残ったのだが、惜しくも落選してしまった。
7年前、『犬を飼う』を強く推していた書籍編集者の葛城梨帆には志村多恵は記憶に残る女性であった。『犬を飼う』から7年後、梨帆の元に再び志村多恵から『長い午後』というタイトルの小説が送られてくる。
『長い午後』は、志村多恵自身をモデルにしたと思われる自殺を決意した女性が偶然、学生時代の友人の女性と再会する場面から始まり、男性に対する不満や軽蔑のエネルギーが『犬を飼う』を執筆させたことが描かれていた。やがて、主人公の女性と学生時代の友人との会話はすれ違い、それは殺意へと変貌する。
そして、主人公の心で渦巻く男性に対する不満や軽蔑の念は……
本体価格860円
★★★★
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