葉真中顕のレビュー一覧
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介護と正義をめぐる重たいテーマを扱いながら、一人称の切り替えで迷わず読める構成が印象的で、深く考えさせられる一冊でした。
職場の読書友達から紹介してもらった一冊。扱っているテーマの重さを思うと「面白い」と言うのはためらわれるのですが、読み進めるほどに考えることが増えていく作品でした。映画化のダブルカバーを眺めながら読み始めたものの、長澤まさみさんがどの役なのか気になってキャストを検索してしまい、うっかりネタバレを踏んだのは完全に自分のミス。ただ、結果的には謎解きよりも作品が扱うテーマにしっかり向き合うことができて、ある意味では怪我の功名だったのかもしれません。
物語は複数の一人称が明確に切り替わりながら進むので、内容の重さに対して構成がとても読みやすい。むしろこの分かりやすさが、じっくり向き合うために必要だったのではないかと感じました。
検察官と“彼”が対峙する場面で語られる「それを犯罪と言えるのは安全地帯にいるからだ」という言葉は、読んでいて胸に刺さるものがありました。安楽死や尊厳死を扱った作品は他にも読んだことがありますが、超高齢社会・人口減少社会の今の日本では、介護と尊厳の問題は何より優先して向き合うべき課題なのだと改めて実感。
ちょうど先日、日本の人口が40数年ぶりに1億2千万人を下回ったというニュースを聞いたばかりで、読後の余韻がより深く残りました。 -
Posted by ブクログ
分厚いページ数に読み切れるのか不安があったけど、すらすら読めてしまった。
生活保護制度をはじめ、日本のリアルな現状をぎゅっと凝縮させたような世界に、負の感情が湧き上がった。
そして、勉強になった。
感想は、、主人公の人生を思うといたたまれない気持ちにはなるけれど、純の言うとおり、人生は自然現象という言葉は前向きにもさせてくれる物語であると思った。
選べない人生だからこそ、言い換えれば、いくらでも自分で選んでいっていい世界なのだと。人はみな自由なんだと。
ただ、自由になるのには、必要なものが必ずある。
その1つが、お金。多すぎる必要はないけれど、生活できるだけのお金は必ず必要。
生活保護制度がそれを保障してくれるといったらそうかもしれないけど、貧困は孤独に繋がりやすく、孤独からくる弊害は生きていく上であまりにも大きい。そして、そうした人たちから搾取していく悪い人たちが、この世界には存在している。
そうした闇の社会構造がありありと描かれていて、なんとも胸が苦しくなるような作品ではありました。
だけど社会派ミステリー好きとしてはかなり面白かった!
代表作なのかな?ロストケアも気になる…。 -
Posted by ブクログ
読み終えた後に心に残ったのは、犯人への怒りよりも「この社会の中で、自分に何ができるのだろう」というやるせなさだった。
序盤は介護問題を題材にした社会派ミステリーという印象だが、読み進めるうちに「人を救うとは何か」「善意はどこまで許されるのか」といった、簡単には答えの出ない問いを突きつけられる。
介護疲れや老老介護の末に起きる痛ましい事件やニュースを見るたびに、「他に選択肢はなかったのだろうか」と感じることがある。しかし本作を読んで、それをどこか他人事として捉えていた自分にも気づかされた。
正しさだけでは救えない現実と、社会が抱える深い問題を描いた重厚な作品。読後もさまざまなことを考えさせられる一冊だった。 -
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陽子が最期の最期まで求め続けたものは承認欲求を満たしてくれる存在と無償の愛ではなかったか。
本来はどちらも幼児期に親から与えられ、満たされた状態で人は大人になっていくものだが、機能不全めいた家庭で育った陽子は、人としての根幹を固められぬまま成長してしまった。
自分に欠けている何かを得て埋め合わせようと必死に生きる彼女の心身を社会やまわりの人々は都合よく扱い蹂躙した。
ラストは完全なバッドエンドではなかったけれど、ハッピーエンドとも言い難い。だがそこに人生のリアルさが詰まっているような気がして、悲しいけれど妙に納得してしまった。
陽子にはあの最期が合っている。あの安らげる場所が永遠に在り続けるといい。 -
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最後まで読んだけど、何が言いたかったかよくわからなかった。鈴木を殺した犯人とかはわかったけど。
宇佐原陽菜は宗教2世だが、一緒に逃げた男の人にDVされて反撃して殺してしまった。刑務所にいる。
植芝甚平は朝比奈ハルと同郷、アメリカに負けて、アメリカ人が来る前の晩、ハルの父は母親と子供を縛って家に火をつけて一家心中しようとした。ハルだけが助け出された。
宇佐原陽菜はハルと刑務所の同室。ハルは父からの暴力を受け入れていた。でも日本は戦争に負けた。ハルは父から性暴力に晒されていた。ある時お坊さんからぶよぶよした「神の肉」をもらって食べ、そして生き残った。
高田峰子はハルが生き残って引き取られた家の子。よく働いたが、母からの当たりがキツかった。男の人によくモテて、父も兄もゾッコンだった。庄屋の息子と結婚。赤ちゃんができる前に夫死去。一緒に大阪に出る。水商売で生活して、愛人稼業をする。「春川」を構えて独立。
宇佐原陽菜によれば、ハルはお金は全員に平等だけど、お金は男に占拠されているので、男から巻き上げねばと思っていたと。そして瀬川の愛人になり、その子供を産む。
瀬川益臣は瀬川の息子で非嫡出子。「春川」の開業資金はほぼ父が持った。万博に3人でいった。万博の翌年瀬川は死んだ。その後アメリカに留学、瀬川グループに入る。バブルがあり、ハルが投資で取り沙汰されていた。多分父のお金だと思う。
宇佐原陽菜。「春川」は大阪のど真ん中だった。避妊していたが子供ができてしまった。ただそのかわり「春川」を手に入れた。瀬川は万博に子供を連れてきたが、ハルは母としての愛情は抱けなかった。瀬川は妻と別れてハルを妻にしたがった。瀬川は死ぬ。その後真壁三千雄と仲良くなる。
新藤紫はハルに板前見習いとして雇ってもらう。真壁さんがビルの融資をしたって聞いている。預金証書の偽造をしてたらしい。バブルが弾けて真壁さんは自殺。そのあと店を閉めると言われた。でもハルさんが人を殺したって話で逮捕された。
宇佐原陽菜。オイルショックの不景気を乗り越えた。真壁さんはハルを崇めてくれたので良かった。ハルはお金を増やすことがこの世界への復讐だと思うようになった。
河内靖、いなほ銀行元銀行員。顧客としてのハルに真壁から紹介される。バブルの頃はどんどんお金が増えた。でもそれは続かなかった。
宇佐原陽菜。うまくいってからハルはウミウシ様を信じたふりを始めた。バブルの崩壊は2度目の敗戦だとハルは言った。真壁はいつのまにか自分もウミウシ様のお告げが聞こえると思い始めていた。ハルさんが殺したという鈴木の話は出なかった。 -
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ネタバレ陽子の変死体が発見されるプロローグに始まり、幼少期からプロローグの場面に至る40歳までの陽子の壮絶な人生が600ページ以上に渡って丁寧に描かれる物語。
ここまで試練がやってくるかというくらい怒涛の転落シーンが続くが、幼少期に自分は平凡だと思っていたことや親から愛されなかったことが後の人生で誉められたり認めてもらうことで様々な転落のトリガーとなってしまう展開はとても印象的だった。
陽子にとっては母親の存在含めて生まれ変わることで「自由に」自分の人生を生きることを選べた結末だったのかなと解釈したが、最後の鈴木陽子の結末はお見事だった。
描かれている陽子の特徴に対して様々な男性との色恋沙汰や搾取される女性としての描写の多さに「そんなに陽子って魅力的な女性なのか?」という違和感は読み進めていく中で常に感じてしまった。
触れ込みにあるどんでん返しはインパクトには欠けるものの振り返ると丁寧な伏線になっていることに気づくとじわじわと凄さが実感できる良い作品だった。 -
Posted by ブクログ
犯人斯波は、介護していた父親からの嘱託殺人で父親を救済したと考え、介護職員になり、介護者と被介護者を介護·救済すると次々に43人もの殺人を犯す。
題名「ロストケア」は犯人が「喪失の介護」と語る通り、介護者を喪失することでケアを行い得ると考える。
一方、独自捜査で犯人を捕えた検事大友は聖書の1節「人にしてもらいたいと思うことを人にもしなさい」と犯人の行為をなぞらえ、また、斯波から「(死刑の求刑を求める)あなたも人殺しで罪悪感に蓋をしている。蓋をしてでも殺人をすべき時があるのは同じだと」指摘され、心が粟立つ。
人の本質は善であり、検察の役目はその善に訴え、罪の重さを認識させ、悔い改めさせることであると考える検事大友にとって罪の意識も全く感じない犯人に死刑求刑をただ求めることに戸惑いを感じる。
安楽死は認められず、尊厳死は黙認される現実、介護地獄にもがく介護者と被介護者、法律では裁けるも解決しない社会問題にどんな解決策があり得るのか、それが見えない現実を認めることしか想いが浮かびません。