葉真中顕のレビュー一覧

  • ロスト・ケア

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    ロスト・ケア(喪失の介護)だと その殺人犯は言う。42人もの身体が不自由で、生活に助けを必要とするお年寄りを殺した男は。

    物語は 
    「彼」ー殺人犯
    “シングルマザー”ー認知症の母を自宅で介護
    “介護施設で働く若者”ーかって父を介護
    “検察官”ー父を高級介護施設に入居させている
    “介護企業の営業部長”ー検察官の古くからの友人
    の 五人の立場から 終始語られていく。

    これからの日本 多くの高齢者が社会にあふれ出す日本。子供は少なく 介護する者は限られてくる。考えなくても 介護の現場は疲弊必至だ。
    綺麗事では すまない 介護の実態。
    しかし その当事者にならなければ その大変さ!は 先ず理解出来ないと思う。

    そんなこれからの介護社会を あらためて考えさせられる一冊だと思う。

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    2026年03月25日
  • 絶叫

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    別の作品でシリーズものだと知ったので奥貫シリーズに手を出しました。
    他の媒体で見ましたが、葉真中先生は男性でありながら女性の描写が上手いと。確かにそう思う。解像度が高い。
    しばらく葉真中先生にハマりそうです。

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    2026年03月24日
  • Jミステリー2025~FALL~

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    短編集なので、少し前からチマチマ隙間時間に読んでた。
    短編のミステリーで読み応えがすごいです!作家さんの書き方文体を少し味わうのにピッタリです。好きな作家さんが見つけられそうな本です。

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    2026年03月22日
  • Blue(ブルー)

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    おすすめに出てきたため、読んでみた作品だったが、面白くて一気に読んでしまった。
    懐かしい平成の空気を感じられる一冊。
    読み進める毎にキャラクターへの愛着が湧き、エピローグの彼女の様に、「彼」の幸せを願わずにはいられなかった。
    様々な社会問題についても書かれており、物語に出てくる子供たちや大人達はすぐそばにいる他人かも知れないと考えさせられた。何かしてあげたいけど、現実は簡単ではないということ、最悪な結末が毎日どこかで起こっていることを忘れてはいけないと思った。

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    2026年03月21日
  • 政治的に正しい警察小説

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    世にも奇妙な物語みたいな感じです。
    短編だけれどもどれもクオリティが高くて考えさせられるものが多いです。
    これから読む方は表題作以外も期待して良いと思います。

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    2026年03月20日
  • コクーン

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    ネタバレ

    さすが葉真中顕さん作品という感じでした。

    バタフライエフェクト。
    どこかのだれかの小さな行動が、遠いどこかのだれかの大きな影響になる。
    この世の森羅万象、全てが繋がっているんだな。

    自分の意思というのは、結局はどこかのだれかとつながってつながって、自分になっているんだなと。

    堕ちてくのも、昇っていくのも、結局は人が人をつくっているんだなと。

    面白かったけど、後半になるにつれて登場人物が頭の中でごちゃごちゃしてしまった。

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    2026年03月17日
  • 警官の標 警察小説アンソロジー

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    7人の作家さんによる警察短編集。
    それぞれの作家さんが趣向を凝らした個性を感じさせる作品。
    初読みの作家さんが5人もいたのでどんなテイストなのかなと楽しく読めた。
    実務修習生の視点と指導係の視点を描いた吉川氏の作品と、初めて上司となった警部補の視点で描いた松嶋氏の作品が特に印象に残った。

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    2026年03月10日
  • 作家 超サバイバル術!

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    出版界の現状や、新人作家が生き残るための術を、3人の著名な作家陣がそれぞれの視点で描いた内容。
    作家としてのスタイルや、デビューからの経緯がバラバラな3人なので、独りよがりにならず、より立体的に作家論が組み上げられている。
    中山さんを筆頭に、ユーモアたっぷりに語られていくので読みものとしても秀逸だったと思う。

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    2026年03月08日
  • ロング・アフタヌーン

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    面白かった!葉真中顕は本当に裏切らない…!

    冒頭、作中の多恵が執筆した『犬を飼う』という短編小説からスタート。村田沙耶香でも読んでるのかと錯覚した、ほんとに葉真中顕????

    作家としては全くの無名素人で主婦である多恵の人生に連動した二つの作品と、編集者である梨帆の人生を交互に描く形で物語は展開する。

    どこまでが妄想で、どこまでが真実か分からない。そんなフィクションである物語に支えられて今日まで生きてきたんだなと思った。ただ想像するだけ、それは自由だから。

    どちらかといえば人の絆とか愛とか、ゆえに生まれる呪縛だったり、そういったことを社会問題と共に提起するような作品が多くて、人物描写が緻密だから読後感が悪くないというイメージだったんだけど、今回もそうだったな。

    愛なんかに負けないで!の一言が、とても好きだった。

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    2026年03月02日
  • コクーン

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    ⭐︎3.8
    宗教ものは好きで何冊か読んできたけど、カルト教団の内部をメインで描かず、教団の周りの人の境遇を描いているのが新鮮だった。
    時系列の違う複数の章で構成されていて、どの章も単体で読み応えがあるのに、読み進めていくなかでどんどん人物が繋がっていくのが面白かった。蝶を用いたファンタジー描写もあって、多少読みにくさを感じる部分もあるけど、それでもあっという間に読ませるのがさすが葉真中さんという感じ。
    じっくり読むほど楽しめる、緻密で完成度の高い作品だと思う。

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    2026年02月27日
  • Blue(ブルー)

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    2/25
    懐かしい平成をリアルに綴っており、平成生まれの自分には刺さる本。
    子供は親を選べないし親も子を選べないけど、お互いが不幸になる存在であってはいけないよなあと思う。
    ブルーにとって平成の30年は長すぎたのか、短すぎたのか、、。

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    2026年02月26日
  • ロスト・ケア

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    介護する人の大変さがよくわかるので、殺してしまいたくなる気持ちもわかるだけに、小説で描かれたそれぞれの気持ちが痛いほどわかる。そして勝手にこの人が犯人だろう~って読んでいたら、え?と思わせる展開で驚かされた。
    やはり安楽死をやるべきでは・・と思ってしまうね。

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    2026年02月25日
  • 絶叫

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    タイトル【絶叫】から想像していた内容ではない
    おそらく心のなかでの絶叫

    プロローグからもう掴まれる。
    それはただの孤独死ではなかった。死因が特定できないレベルの腐食。
    これを捜査する警察
    浮上する女性の生い立ちからの壮絶な人生

    交差しながら進んでいくので読みやすい。内容はエグい。

    貧困からの典型的な悪へのループ
    小説で良かった…

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    2026年02月19日
  • 絶叫

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    こんなものだろうと思って生きてきたが、平成は他と比べても健全ではない時代のように思えてきた。
    ま、全ては自然現象だ。そして、解釈の仕方によってなんとでも捉えられる。

    としても、そう割り切るには、少なくとも彼女には気の毒な環境ではあった。

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    2026年02月11日
  • 絶叫

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    ネタバレ

    逃げ切った犯罪者の話。

    陽子が死んだものだとばかり思っていたから、陽子→すみれは結構驚いた!

    ページを捲る手が止まらない感じは久々かも。文体が合っているのは、やはり良い。この作者の方ではないが、前に読んだ本はちょい合わない文だったので。
    何というか、たくましいなぁ人間は。あ、自然現象というべきかw 自然はやはりたくましい。
    犯罪手口が詳細過ぎて真似する人出てくるのでは?みたいな心配も出てくるw

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    2026年02月08日
  • ロスト・ケア

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    読みたい作品ではあったけど今の自分にはリアルすぎて敬遠してました。

    ロスト・ケア…喪失の介護
    たぶんもう内容はみなさんご存知ですね。


    まずは介護に携わっているみなさんに
    「ありがとうございます」と伝えたいm(_ _)m

    私ごとですが
    義母が認知症になったのが約10年前
    義父との二人で暮らすいわゆる老々介護でした
    義父から血便で救急車を呼ぶから至急家に来て欲しいと連絡が…この怒涛の1日から生活が一変。
    義父は入院し義母はケアマネージャーの勧めで診療内科に入院。旦那52歳仕事もバリバリ忙しい。
    両方の病院をハシゴしながら今後を考える。
    猶予はない!義父は退院したら同居が暗黙の了解です。その上認知症の義母…診療内科の先生ははっきり言いました。「退院したらどうします?介護は無理だと思いますよ」
    わたしが走り回り手続きもしていたら結婚して初めてと言っていいくらいに旦那さんからありがとうと言われました笑
    特別養護老人ホーム…特養になら年金で入れるけど気の遠くなるような順番待ち。そして認知症を受け入れてくれる所はさらに少ない。
    複数申し込んだうちの特養に入れたことは本当に運が良かったと思うしこの10年という長い時間を考えると感謝しかないm(_ _)m
    高額な施設にしか入れなかったらどうなっていた?
    今10年だけど後何年?


    さぁ次は自分の両親です……

    あ…義父との5年?の同居の話もいつか聞いてくださいね_(┐「ε:)_



    この作品はみなさんどう受け止めるのかなぁ
    置かれた立場で色々考える作品です。
    でもリアルな感情に圧倒されたし読んでよかった。


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    2026年02月03日
  • ロスト・ケア

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     久々にしっかりとした社会派ミステリー堪能した
    。勢いで鑑賞した映画もまた違った切り口で楽しめたのだが。主役の有名俳優2人ありきな映画になってしまっていて、原作にある物語の吸引力がぶち壊し。原作をもっと大切にして欲しい。

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    2026年01月30日
  • ロスト・ケア

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    ネタバレ

    一気読みしました。
    後半の犯人がどんでん返し。


    ↓あらすじ
    その日、地方裁判所ではひとりの連続殺人犯に死刑判決が下されようとしていました。彼は、のべ43人もの人間を殺害し、そのうち十分に裏が取れた32件の殺害と1件の傷害致死の容疑で起訴されています。

    彼は、死刑執行で自分の存在が消え去ったあとを想像し、微笑みを浮かべていました。「後悔はない、すべて予定通りだ」。

    傍聴席から彼の姿を見ていた羽田洋子は、母を殺された被害者です。しかし、これまで洋子は彼に対して怒りも憎しみも湧くことはありませんでした。

    検察官と一緒に作った調書には、理不尽に家族の命を奪われた遺族として怒りを表明したものの、本心ではないと気付いていました。

    こっそり他の被害者遺族の様子を伺います。「ねぇ、あなたたちは彼に救われたと思ったことはない?」。

    まるで地獄。優しかった母が、髪を振り乱し、洋子のことを洋子と分からぬ様子で、ケダモノのように吼えています。

    何事かとやってきた孫の颯太にも罵声を吐き、抑えようにも暴れる母は脱糞。足を滑らせまみれて泣きじゃくる颯太に、洋子は思わず声を荒げ、手をあげます。この地獄はいつまで続くの?

    連続殺人犯の死刑判決を検事の大友秀樹は、遠く離れた東京で耳にします。彼の逮捕に至った経緯には、大友の父の介護問題がありました。

    昨年母に先立たれ、持病の腰が悪化した父は、足腰が立たなくなり、介助が必要な車イスの生活になっていました。

    大友は、老人ホームの経営母体である総合介護企業「フォレスト」で営業部長を務める同級生の佐久間巧一朗に相談します。

    貿易商として財をなした父に、佐久間は裕福層向けの介護付き有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」を勧めます。一流ホテルのような行き届いた部屋とサービス、ひとりひとりに合わせた食事管理に看護師の常勤と、まさに天国です。

    佐久間は、高齢化社会の対策として設けられた介護保険により、介護はビジネス、資本の上に乗せられ、つまりは助かるために金が必要な世の中になったと言います。

    「老人格差」。介護とビジネス、相容れようのないものを掛け合わせたキメラのようなグロテスクさに、大友は耳鳴りが止まりませんでした。

    地方にある訪問介護センター「フォレスト八賀ケアセンター」に勤める斯波宗典は、今日も無事、訪問介護を終えセンターに戻る途中です。

    車内では看護師の猪口真理子が、亡くなった羽田のおばあちゃんの噂をしています。「ポックリ逝ってくれて娘さん助かったよね」。「そういう言い方はないと思います」と、反論するのはパートヘルパー窪田由紀です。

    斯波はそんな窪田に危うさを感じていました。介護の仕事は真面目な人ほどつまずいて辞めてしまうのを知っていたからです。

    介護保険法の改正で、訪問系のサービスに対する報酬は引き下げられ、「フォレスト」本社が各事業所での受注ノルマを増やしたことで、現場は給料が増えることもなく、労働だけが増していました。

    フォレスト八賀ケアセンター長の団啓司は、管理職ながらも自ら現場に出なければ運営も回らなくなっていました。

    心配していた窪田もみるみる意欲を失い、いつもなら上手くかわしていたセクハラに耐えられず爆発。「燃え尽き」と呼ばれる現象です。次の日からセンターに来ることはありませんでした。

    そんなギリギリの環境で、介護保険法違反があったとして「フォレスト」本社が改善勧告を受ける事態が勃発。

    大友は、父の「フォレスト・ガーデン」の入居も済ませた矢先のこともあり、佐久間に連絡を取りますが、「大丈夫、高級有料老人ホームは安全地帯だ」と歯切れの悪い反応でした。その後、佐久間との連絡は途切れます。

    佐久間は、大友と友達のフリをしていますが、学生時代から性善説を解く大友のことを嫌っていました。本当の所、全国の事業所へ監査が入るほど不正発覚は免れない事態です。

    過度なストレスで薬に手を出していた佐久間はフォレストを辞めたあと、金の工面のため、年寄りをだまし金を巻き上げる裏社会へと身を投じていきます。

    佐久間はフォレストに登録されている老人の個人情報を売り、犯罪に加担していました。佐久間の最後は、仲間の裏切りにより命を落とします。

    佐久間の死と共に、フォレストの各事業所の個人情報がUSBで発見され、大友の元に届きました。

    大友は、その中にひと際、お年寄りの死亡率が高い事業所があることに気付きます。訪問介護センター「フォレスト八賀ケアセンター」、センター長は団啓司です。

    ※以下ネタバレ
    彼は、緒方カズの家に仕込んだ盗聴器に耳を澄ませていました。85歳になる緒方カズは寝たきりで、週末だけヘルパーによる訪問介護を受けていました。

    平日は息子の嫁が身の回りの世話に訪れていますが、イヤフォンから金切り声が聞こえてきます。「いたい、いたいよぉ」「どうして、うぅ」。どうやら食事中に失禁してしまったカズを、嫁が泣きながら叩いているようです。

    心のキャパシティは人それぞれですが、限界を超えた介護の悲惨さに、彼は耳を澄ませ「調査」し、殺すにふさわしいかを見極め、殺すタイミングを把握していきます。今夜「処置」に踏み込もう。

    フォレスト本部の不正発覚により、地方の介護センターへの風当たりは厳しくなる一方でした。「フォレスト八賀ケアセンター」では、石が投げ込まれガラスが割れていました。

    そんな厳しい状況の中、斯波は利用者から預かっている家の鍵のひとつがコピーしたものだと気付きます。半寝たきりで一人暮らしをしている梅田久治の家の鍵のようです。

    訪問介護の時間以外にセンターの誰かが梅田家に出入りしている。斯波は、夜間の張り込みを決行します。

    現れたのは、センター長の団でした。挙動不審気味に辺りを見回しながら、梅田家の鍵のコピーを使い家の中へ入っていきます。

    「団さん、梅田さんの家で何をしていたんですか?」。センター長の後を追いかけ声をかける斯波。能面のような顔をした団が、鉄の塊を斯波めがけて振り下ろします。

    その頃大友は、不自然に老人の死亡率が高い「フォレスト八賀ケアセンター」のシフトから、ある人物を割り出していました。正社員の斯波宗典です。

    斯波は、自ら父親の介護経験があり、その経験から介護士を目指したという心優しい青年であり、献身的な介護で介護家族からも信頼されていました。

    大友は斯波の元を訪ねます。老人殺害の件と聞いても落ち着き払った態度の斯波は、自らの犯行を自供。

    さらに、昨夜の犯行はイレギュラーであるとし、死体の隠し場所も明かします。証言通り、埋められていた死体は、フォレスト八賀ケアセンター長・団のものでした。

    「今までに、43人殺しています」こともなげに答える斯波に、大友は怒りをこみ上げます。「身体が不自由で生活に助けを必要とし、大した抵抗もできないお年寄りをお前は殺したんだ」。

    斯波はあくまでも涼し気に頷きます。「そうです。殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。僕がやったことは介護です。喪失の介護、ロスト・ケアです」。

    介護職より十分に睡眠時間が取れる留置室で斯波は、未来のことを考えます。ロストケアは続けることはできないが、ここからが重要だ。せめて一矢報いる。すべて予定通りだ。

    羽田洋子は、検事の大友から被害者遺族として調書を受けていました。「最愛のお母様が、献身的な介護に関わらず、卑怯な手段で殺されたんです。無念ですよね」。

    大友の言葉に頷きたい気持ちはあります。母を愛していたし、献身的に介護もした。でも、地獄のような介護の日々から解放された安堵、実際に生活も楽になりました。

    「私、救われたんです。たぶん、母も」。ぽつりとこぼされた本音に大友はつらそうな表情を浮かべ「この部分は調書に加えません」と言い伝えるのでした。

    介護の負担が重く本人も家族も苦しんでいる者を選んで殺したと主張する斯波。それは犯罪を犯したことは認めても、罪は背負わないという宣言とも取れます。

    大友は押収した斯波の犯罪ノートの1冊目の1ページ目を開いて問います。「実の父親を殺したことも正しいというのか?」。

    「はい」。斯波は父との壮絶な介護体験を語ります。たったひとりの身内、父が認知症を伴い脳梗塞で倒れ半身不随に。

    徘徊がひどい父のために定職には付けず、貯金も使い果たし、迷ったすえに生活保護申請に行くも、「働けるなら頑張りましょう」と窓口で返されてしまいます。

    これ以上何をどう頑張ればいいのか。斯波は、苛立ちを父に向けてしまうこともありました。後悔で泣き崩れる息子に、父は気が確かな時は「もう十分だ、殺してくれ」と頼むようになります。

    犯行には煙草から抽出したニコチンを使用しました。警察は父の死を自然死と断定。バレなかったことで、斯波は自分にはやるべきことがあると確信します。

    それは、「ロスト・ケア」。かつて自分が誰かにして欲しかったことをしよう。奇しくもフォレストの経営理念である聖書の一節が大友の頭をよぎります。「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」。

    それでも性善説を唱えたい大友に斯波は続けます。「僕を死刑にするためにあなたは取り調べをしている。あなたも一緒です。この世には罪悪感に蓋をしてでも人を殺すべきときがある」。

    この事件は「ロストケア事件」と呼ばれ、マスコミはセンセーショナルに取り上げました。識者の多くは、「彼が起こした殺人は許されることではないが、本当の問題は社会の側にある」とする意見が多数でした。

    世間では、事件の背景にある介護保険制度の不備、介護問題、安楽死・尊厳死の合法化など、リアリティを持って語られる機会が増えていきました。

    起訴から判決まで、およそ4年。大友は怒りにも似た罪悪感に苛まれていました。もう一度あの男と対峙しよう。大友は、東京拘置所でアクリル越しに斯波と対面します。

    「お前の本当の目的は、この事件が広く世に知られることだ。少しでも良い社会になることを望み、命を諦めなくてもいい世界を作ることなんだな。ならば、勝手に死ぬな。ここはお前だけの世界じゃない」。大友の声は熱く、そして濡れて震えていました。

    「あなたと話ができて良かった」。本心からそう思えた斯波は、その後口を紡ぐのでした。

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    2026年01月27日
  • もの語る一手

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    タイトルどおり将棋にまつわるお話たちです。「おまえレベルの話はしてない」は別で読んだことがあったので流し読みでした。「桂跳ね」は史書の解説みたいで、読むのが苦しかったです。将棋のルールをそもそも知らないので、そこが分かればもっと楽しめたのかもしれません。全体としては満足です。

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    2026年01月25日
  • ロング・アフタヌーン

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    ネタバレ

    ミステリに入れたが、犯人捜しのお話ではなく、作中作と現実が徐々にリンクしていって、作中作ではこうなっているけど現実はどうなってるの~!? 系のミステリ。なんだそれ。
    情報を開示する順番を工夫するだけで(それだけではないけど)こんなエキサイティングなお話になるんだなあ。

    女性の心理描写がとてもリアルだったので、作者「アキラ」さんだからもしかして女性? と思っていたけど検索したら目黒世田谷あたりにいそうなオシャレ知的男性だった。でも山形が拠点なのですね。
    解説の方も同じことをなさったようで笑ってしまった。中国では「葉間中顕女史」というレビューがついたそうだ。笑
    作中作で行われる犯罪は生存のための犯罪であり、善し悪しを考えるのはナンセンスなのかなと思った。ていうかまあ犯罪は悪いと思うけど、そういう次元で考えるものではないよなーみたいな。

    面白い、面白すぎる、十万石まんじゅう

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    2026年01月18日