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Posted by ブクログ
介護の末の殺人から始まったその連続殺人事件は、死刑になるとわかっていたが、それも予定できたことである。
それは介護の苦しさだけではなく、社会に穴が空いていることに気づいたから…
重い重い家族をひとりで支えていると、おかしくなる。
それでも明日はやってきて、ずっと続いていく…。
その殺人は、かつての自分が誰かにしてほしかったことをしたのだと。
正義を信じる検察官の大友は、たとえどれほど立派な信念に基づいていようとも、救いのための殺人など認めるわけにはいかない。
最後まで大友は、斯波の引き起こした要介護老人のロスト・ケア事件に対して敗北感を残したままだ。
それは社会システムに歪みをどうすることもできないからだろう。
Posted by ブクログ
いずれ来たる親の介護。
“家族”という名の絆で結ばれた宿命。
これまで育ててくれた恩返しとして、親が老いる時は子供が介護を行うことは自然の摂理とさえも感じる。しかし、子育て・仕事とライフステージが進む中で、認知症や寝たっきりの看病などで介護者も疲弊していく。そこには暴力や放棄などが伺え、資金力がない家庭は自分一人で全てをこなす必要がある。
介護での財力の差。社会サービスでは埋めきれない大きな溝を考えさせられた一冊。
犯罪を肯定するわけにはいかないが、犯罪に手を染めてしまう、背景や社会的障壁、葛藤など、自分に置き換えた時に、どうするかが問われる。
これまで育ててくれた分、親には親孝行したいし、手を上げることなんて一切考えてはいないものの、実際その立場にたったら自分の言動に保証ができるか?と問われる。
是非お勧めしたい一冊。
Posted by ブクログ
メチャクチャ考えさせられる一冊です。
43人の老人を殺した「彼」の正義と、法律と世間の倫理がぶつかる話です。
高齢者介護に苦しむ家族を解放するために、殺人を犯すわけですが、実際に家族は自分の親を殺せないし、かといって終わりがわからない介護を何年も続けないといけない絶望感が、とんでもなくリアルに感じました。
老人も、寝たきりや認知症で自分自身すら理解できない人が死なないだけで生き続けるのは辛いだろうという見解も、誘導されてる感はありますが納得させられてしまいました。
家族も本人も救うという意味で、その代行殺人を行う正義は、果たして悪なのかと問われたら、答えは出ないと思いました。
重たい内容ですが、かなりのめり込んで読むことができました。
Posted by ブクログ
こんなにも序章を読み返す本は初めてだった。
登場人物に動きがある度に戻り考察した。
介護企業・フォレストに務める佐久間、有料老人ホームへ入居した父をもつ検察官の大友、介護を職とする斬波、介護疲れに追い込まれた羽田、そして戦後史上最多の殺人を犯した〈彼〉。
〈彼〉はもう逮捕され起訴され、法廷で判決を言い渡されるところから始まる。犯行の描写も第一章にて早々にある。今作のゴールはどこにあるのか、果たしてこの〈彼〉は誰か。
しっかりミスリードされるので安心してください。
これはミステリとしてかなり楽しめた。
その一方で社会問題としても考えさせられる。
少子高齢化問題は今や日本にとって深刻な問題のひとつ。老老介護やヤングケアラー、事件も耳にする。
祖母の介護に疲れて帰ってくる母を見ると、自分は耐えられるだろうかと不安になる。誰もがする側、される側になるからこそ考えなければならない。
〈彼〉の言うとおり「救われた」、と思ってしまう環境があまりにも痛かった。
確かに人口推移と将来予測は大きな変動やズレはないはず。分かっていた、みんながこうなることを。なのに、、
読んだみなさんが置かれた立場それぞれのリアルな考えがあると思います。
ロスト・ケア、どう考えますか。
Posted by ブクログ
星★5!
フォーカスしたい部分がありすぎて。。。
・ミステリー本として
葉真中顕さんは一文一文が短くて読み易い。そして時々出てくる比喩や象徴的な表現が素晴らしい!今後の展開をそれとなく匂わせる使い方、ブラボー(*´꒳`*ノノ゙パチパチ
今回もしっかりミスリード
させられてました╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ!
・主たる題材の介護について
長らく介護現場の看護師をしております。在宅事業所における介護保険のグレーゾーンなんぞも中々にリアルを書かれていて見事です!どこまでどうやって調べて書くんだろうってくらい。
そして“彼”の信念は痛い程よくわかる。もうね、わかりすぎるくらい。あたしが“彼”の弁護士やりたいくらいよ。
・犯人の深淵
365~366ページ、“彼”の善性に触れる事ができて爆泣き。
他にも感想山ほどあるけど長くなりますのでこの辺で。。( ・ω・ )ノ
10年以上も前の作品なんですね〜もっと早く出会いたかった!!
これは広く人に知られてほしい作品でした。
Posted by ブクログ
専門職であるはずの私が、家族の前で無力だった〜『ロスト・ケア』を読む〜
介護保険制度が創設されてから、確かに改善されたことは多い。
「介護の社会化」は進み、家族だけで抱え込まなくてよい仕組みが整った。
少なくとも、そう教えられてきた。
ただ、私は介護保険制度が始まった後に社会福祉士になった世代。
制度ができる前と後の違いを、実感として知っているわけではない。
養成課程で「昔より良くなった」と学び、どこかで「そういうものなのだろう」と受け止めてきたに過ぎない。
では、今の日本は本当に安心して老後を迎えられる社会になっているのだろうか。
家族の負担は、軽くなっているのだろうか。
私と妻の祖母はいずれも介護状態にある。
それを支えている両親たちは、認知症が進み、身体が弱っていく祖母を前に、不安や悲しさ、時には怒りを抱えながら日々を過ごしている。
介護は制度で支えられているはずなのに、その感情の多くは、今も家族で引き受けられているように見えるし、実際のところ私自身も頼りにしてしまっている。
社会福祉士として、私はこれまで多くの高齢者と、その家族に向き合ってきた。
支援をしてきたつもりではある。
けれど、ふと立ち止まると、本当に力になれているのだろうかという問いが胸に浮かぶ。
ましてや自分たちの祖母のこととなると、なおさらだ。
専門職であるはずの自分が、十分に関われていない。力になれていない。
その事実が、無力感として残っている。
『ロスト・ケア』の中で描かれる介護現場の姿は、決して誇張ではなく、あまりにも現実に近い。
人手不足、余裕のなさ、理念と現実の乖離。
読んでいて胸をえぐられるような感覚があった。
社会福祉士として働いている私にとっては、痛いところを突かれているという表現が、しっくりくる。
同じ現場で働くソーシャルワーカーや介護職であれば、きっと似た感情を抱くのではないだろうか。
目を背けたくなる。
でも同時に、目を背けてはいけない問題だとも感じる。
この作品は、介護や支援の現場にある見ないふりをしてきた問いを、容赦なくこちらに差し出してくる。
だからこそ、読み終えたあとも考え続けてしまう。
そして、考え続けること自体が、私たち支援者に求められている姿勢なのかもしれない。
Posted by ブクログ
湊かなえさんの新刊を読む前に読みたいな、と読みたいリストから手に取った。
戦後最多の大量殺人事件を起こした犯人に死刑判決が下された。事件の被害者にはある共通点があった。犯人の真の目的とはー…?
物語の構成に序盤から引き込まれた。
誰しもが逃れられない、他人事ではいられない、「介護」。
認知症患者の介護の過酷さ、悲惨さ、介護業界に携わる人たちの苦悩…分かっているようで、分かっていなかった。
自分が当事者にならない限りは、本当の意味で分かることはできないのだろう。
10年以上前に執筆された作品だが、今の日本に重なる部分がたくさんあって興味深かったし、怖くも感じた。
超高齢化社会どころか、超超超!高齢化社会になっていく日本。
実際、私が住んでいる地域は周りが高齢者ばっかりで、私たち世代の人も少ないし、子どもが本当にいない…!
既にこういう状況なのに、私が高齢者になる頃には日本の人口の40%以上が高齢者という計算になる。
その頃の日本は一体どうなっているのだろう?
犯人の言葉の一つ一つがすごく胸に響いた。
「人殺しは決してしてはいけない」という自分の中の概念が揺らいでしまいそうになった。
「やるべきことをやる」、「分かっていたはずだった」という言葉が胸に重たくのしかかってくるようだった。
「分かっていたはずだった」と、将来絶望することにならないように、私たちが「やるべきこと」とは?
問いかけてくるような作品だった。
Posted by ブクログ
日本社会の闇に迫っている。
認知症が進んだ親や義理の親を介護せざるを得ない人たちが、人間の尊厳すら保つことができす、苦しみながら生きなければならない現実をつきつけられた。
私は姑に結婚以来10年以上いびられ、実家の家族までも蔑まれている。湧き上がる憎悪に蓋をして、自分を騙し騙し生きている。この上、認知症になり、介護が必要になり、私が面倒を見ることになったとき、持ち堪える自信がない。こうなるとロストケアが本当に罪なのか、わからなくなる。ロストケアなど不必要な社会をつくらねばならない。
政治家は、介護を必要とする人と介護する人を仲介するとき中抜きする事実を洗い出し、まずこの悪事を正すべき。そして、我々もこの社会の闇に関心をもつべき。
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