【感想・ネタバレ】ロスト・ケアのレビュー

あらすじ

戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奧に響く痛ましい叫び――悔い改めろ! 介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味……。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

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Posted by ブクログ

専門職であるはずの私が、家族の前で無力だった〜『ロスト・ケア』を読む〜

介護保険制度が創設されてから、確かに改善されたことは多い。
「介護の社会化」は進み、家族だけで抱え込まなくてよい仕組みが整った。
少なくとも、そう教えられてきた。

ただ、私は介護保険制度が始まった後に社会福祉士になった世代。
制度ができる前と後の違いを、実感として知っているわけではない。
養成課程で「昔より良くなった」と学び、どこかで「そういうものなのだろう」と受け止めてきたに過ぎない。

では、今の日本は本当に安心して老後を迎えられる社会になっているのだろうか。
家族の負担は、軽くなっているのだろうか。

私と妻の祖母はいずれも介護状態にある。
それを支えている両親たちは、認知症が進み、身体が弱っていく祖母を前に、不安や悲しさ、時には怒りを抱えながら日々を過ごしている。
介護は制度で支えられているはずなのに、その感情の多くは、今も家族で引き受けられているように見えるし、実際のところ私自身も頼りにしてしまっている。

社会福祉士として、私はこれまで多くの高齢者と、その家族に向き合ってきた。
支援をしてきたつもりではある。
けれど、ふと立ち止まると、本当に力になれているのだろうかという問いが胸に浮かぶ。

ましてや自分たちの祖母のこととなると、なおさらだ。
専門職であるはずの自分が、十分に関われていない。力になれていない。
その事実が、無力感として残っている。



『ロスト・ケア』の中で描かれる介護現場の姿は、決して誇張ではなく、あまりにも現実に近い。

人手不足、余裕のなさ、理念と現実の乖離。
読んでいて胸をえぐられるような感覚があった。
社会福祉士として働いている私にとっては、痛いところを突かれているという表現が、しっくりくる。

同じ現場で働くソーシャルワーカーや介護職であれば、きっと似た感情を抱くのではないだろうか。
目を背けたくなる。
でも同時に、目を背けてはいけない問題だとも感じる。

この作品は、介護や支援の現場にある見ないふりをしてきた問いを、容赦なくこちらに差し出してくる。
だからこそ、読み終えたあとも考え続けてしまう。
そして、考え続けること自体が、私たち支援者に求められている姿勢なのかもしれない。

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2026年01月29日

Posted by ブクログ

介護問題を題材に、殺人と死による救済というところまで踏み込んだ小説。

ここ最近で最も衝撃を受けた作品の一つ、新人賞の作品とは思えない。

在宅介護で本人も家族も地獄のように苦しんでいる時、本人が死を望んでいて、その結果家族も救われたと感じたとき、それが本当に悪なのか考えさせられる。
おそらくこの話の先には安楽死の議論があると思う。正解が無い議題なので難しいが、避けては通れない問題なのが余計難しい。

介護という現実でも深刻な問題と、生死に関わるセンシティブな話題なので、万人におすすめできる小説ではないがもし興味があるなら絶対に損はしない。

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2025年10月28日

Posted by ブクログ

介護の闇を照らし、現代社会の問題に切り込む作品。人として正しい在り方とは何なのか。誰もが抱える可能性のあるテーマにどう向き合っていくとよいのか考えさせられる。

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

高齢化が進み、介護の人手不足や老老介護などが問題視される中、数年後には他人事のように考えていたことが自分の問題になるかもしれない。介護する側、介護される側にとって最良の選択はなんなのか。自分1人では生活できず、介護に苦しむ身内を見上げながら延命されることが当人にとって本当の幸せと呼べるのか。

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2025年09月24日

Posted by ブクログ

長澤まさみさんと松山ケンイチさん主演で映画化された作品。
介護の仕事をしているので、身近に感じた。
介護業界の闇みたいなのをリアルに感じました。

老老介護、ヤングケアラー、様々な問題点がある日本は、
これからどうやって介護業界を変えていくんだろうか…

是非読んでもらいたい。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

社会問題をテーマにした傑作。
犯人と検事のやり取りが圧巻。
検事の言ってることは正論だが、それが空虚に思え、犯人の言い分のほうが正論に思える。現実はそんな恐ろしい社会であることがわかる。

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2025年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この話に何度も何度も出てくる、「罪悪感」という言葉についてとても考えさせられる話だった。
介護なんて、どれだけしんどくて辛いかは実際やった人じゃないと分からないと思う。大友が何もしてないくせに綺麗事言い過ぎて斯波や佐久間に共感してしまった。羽田の気持ちもすごくわかる。
そしてそう思うことについて「罪悪感」を抱いてしまった。
救われたのは最後の羽田の「きっとこの世に誰にも迷惑をかけないで生きる人なんて一人もいない」という台詞。

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

介護の正解ってなんなんだろうとか思いながら読んでた
読み終わった後多分正解はないし、何を選んでもいいだけど、勝手にそれを人が決めて最後にするのは良くないと私も大友さんと同じように偽善的考えに至った。

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2025年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

介護業界が抱える闇を抉り出す社会派ミステリー。正義とは、救いとは、罪とは何かを否応なしに考えさせられる。
安全地帯にいる者ほど、介護をビジネスにするなんてと上っ面の綺麗事に囚われてしまう。主人公である大友自身が、安全地帯から空疎な正義を語る存在であるという点が皮肉である。
人の善性を信じて疑わない大友に読者が息苦しさを感じてしまうことこそが、この作品が投げかけている問いなのだと思う。

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

非常に興味深かった。
こちらの作者はこれで初めて出会ったのだけれど、面白くてこの後同作者の本をいくつか購入。
読後間は苦しかったけれども一瞬たりとも飽きることなく読める。
私は浅はかなため、後半にはおそらく作者の思惑通りびっくりしてしまった。
この後、映画もNetflixで観たが、本には及ばないと思い、本を再読した。

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

少子高齢化が進み、高齢者の介護にかかるコストやリソースがどんどん大きくなっている。だが、介護事業の賃金は上がらず、それどころか最低賃金ギリギリの賃金のみが与えられている。
この国の介護はもはや限界を迎えており、真の意味で「死が救済」となる未来はそう遠くないのかもしれない。

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2025年06月27日

Posted by ブクログ

「絶叫」「ブルー」に続いて葉真中氏のデビュー作「ロスト・ケア」を読んだ。社会問題である介護の地獄とミステリーを合わせて非常に読み応えがあった。

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2025年06月17日

Posted by ブクログ

殺人鬼、斯波。恐ろしいけれど全く理解できなくはない。今、少子化対策がいろいろと話題になっているが、介護の問題はどうするのか?家族では無理だと思う。専門家に委ねたい。そのための政策はどうするのか、私の行く先に自分ではどうしようもない切ない未来が待っているような気がする。

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2025年05月24日

Posted by ブクログ

読みたい作品ではあったけど今の自分にはリアルすぎて敬遠してました。

ロスト・ケア…喪失の介護
たぶんもう内容はみなさんご存知ですね。


まずは介護に携わっているみなさんに
「ありがとうございます」と伝えたいm(_ _)m

私ごとですが
義母が認知症になったのが約10年前
義父との二人で暮らすいわゆる老々介護でした
義父から血便で救急車を呼ぶから至急家に来て欲しいと連絡が…この怒涛の1日から生活が一変。
義父は入院し義母はケアマネージャーの勧めで診療内科に入院。旦那52歳仕事もバリバリ忙しい。
両方の病院をハシゴしながら今後を考える。
猶予はない!義父は退院したら同居が暗黙の了解です。その上認知症の義母…診療内科の先生ははっきり言いました。「退院したらどうします?介護は無理だと思いますよ」
わたしが走り回り手続きもしていたら結婚して初めてと言っていいくらいに旦那さんからありがとうと言われました笑
特別養護老人ホーム…特養になら年金で入れるけど気の遠くなるような順番待ち。そして認知症を受け入れてくれる所はさらに少ない。
複数申し込んだうちの特養に入れたことは本当に運が良かったと思うしこの10年という長い時間を考えると感謝しかないm(_ _)m
高額な施設にしか入れなかったらどうなっていた?
今10年だけど後何年?


さぁ次は自分の両親です……

あ…義父との5年?の同居の話もいつか聞いてくださいね_(┐「ε:)_



この作品はみなさんどう受け止めるのかなぁ
置かれた立場で色々考える作品です。
でもリアルな感情に圧倒されたし読んでよかった。


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2026年02月03日

Posted by ブクログ

 久々にしっかりとした社会派ミステリー堪能した
。勢いで鑑賞した映画もまた違った切り口で楽しめたのだが。主役の有名俳優2人ありきな映画になってしまっていて、原作にある物語の吸引力がぶち壊し。原作をもっと大切にして欲しい。

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2026年01月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一気読みしました。
後半の犯人がどんでん返し。


↓あらすじ
その日、地方裁判所ではひとりの連続殺人犯に死刑判決が下されようとしていました。彼は、のべ43人もの人間を殺害し、そのうち十分に裏が取れた32件の殺害と1件の傷害致死の容疑で起訴されています。

彼は、死刑執行で自分の存在が消え去ったあとを想像し、微笑みを浮かべていました。「後悔はない、すべて予定通りだ」。

傍聴席から彼の姿を見ていた羽田洋子は、母を殺された被害者です。しかし、これまで洋子は彼に対して怒りも憎しみも湧くことはありませんでした。

検察官と一緒に作った調書には、理不尽に家族の命を奪われた遺族として怒りを表明したものの、本心ではないと気付いていました。

こっそり他の被害者遺族の様子を伺います。「ねぇ、あなたたちは彼に救われたと思ったことはない?」。

まるで地獄。優しかった母が、髪を振り乱し、洋子のことを洋子と分からぬ様子で、ケダモノのように吼えています。

何事かとやってきた孫の颯太にも罵声を吐き、抑えようにも暴れる母は脱糞。足を滑らせまみれて泣きじゃくる颯太に、洋子は思わず声を荒げ、手をあげます。この地獄はいつまで続くの?

連続殺人犯の死刑判決を検事の大友秀樹は、遠く離れた東京で耳にします。彼の逮捕に至った経緯には、大友の父の介護問題がありました。

昨年母に先立たれ、持病の腰が悪化した父は、足腰が立たなくなり、介助が必要な車イスの生活になっていました。

大友は、老人ホームの経営母体である総合介護企業「フォレスト」で営業部長を務める同級生の佐久間巧一朗に相談します。

貿易商として財をなした父に、佐久間は裕福層向けの介護付き有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」を勧めます。一流ホテルのような行き届いた部屋とサービス、ひとりひとりに合わせた食事管理に看護師の常勤と、まさに天国です。

佐久間は、高齢化社会の対策として設けられた介護保険により、介護はビジネス、資本の上に乗せられ、つまりは助かるために金が必要な世の中になったと言います。

「老人格差」。介護とビジネス、相容れようのないものを掛け合わせたキメラのようなグロテスクさに、大友は耳鳴りが止まりませんでした。

地方にある訪問介護センター「フォレスト八賀ケアセンター」に勤める斯波宗典は、今日も無事、訪問介護を終えセンターに戻る途中です。

車内では看護師の猪口真理子が、亡くなった羽田のおばあちゃんの噂をしています。「ポックリ逝ってくれて娘さん助かったよね」。「そういう言い方はないと思います」と、反論するのはパートヘルパー窪田由紀です。

斯波はそんな窪田に危うさを感じていました。介護の仕事は真面目な人ほどつまずいて辞めてしまうのを知っていたからです。

介護保険法の改正で、訪問系のサービスに対する報酬は引き下げられ、「フォレスト」本社が各事業所での受注ノルマを増やしたことで、現場は給料が増えることもなく、労働だけが増していました。

フォレスト八賀ケアセンター長の団啓司は、管理職ながらも自ら現場に出なければ運営も回らなくなっていました。

心配していた窪田もみるみる意欲を失い、いつもなら上手くかわしていたセクハラに耐えられず爆発。「燃え尽き」と呼ばれる現象です。次の日からセンターに来ることはありませんでした。

そんなギリギリの環境で、介護保険法違反があったとして「フォレスト」本社が改善勧告を受ける事態が勃発。

大友は、父の「フォレスト・ガーデン」の入居も済ませた矢先のこともあり、佐久間に連絡を取りますが、「大丈夫、高級有料老人ホームは安全地帯だ」と歯切れの悪い反応でした。その後、佐久間との連絡は途切れます。

佐久間は、大友と友達のフリをしていますが、学生時代から性善説を解く大友のことを嫌っていました。本当の所、全国の事業所へ監査が入るほど不正発覚は免れない事態です。

過度なストレスで薬に手を出していた佐久間はフォレストを辞めたあと、金の工面のため、年寄りをだまし金を巻き上げる裏社会へと身を投じていきます。

佐久間はフォレストに登録されている老人の個人情報を売り、犯罪に加担していました。佐久間の最後は、仲間の裏切りにより命を落とします。

佐久間の死と共に、フォレストの各事業所の個人情報がUSBで発見され、大友の元に届きました。

大友は、その中にひと際、お年寄りの死亡率が高い事業所があることに気付きます。訪問介護センター「フォレスト八賀ケアセンター」、センター長は団啓司です。

※以下ネタバレ
彼は、緒方カズの家に仕込んだ盗聴器に耳を澄ませていました。85歳になる緒方カズは寝たきりで、週末だけヘルパーによる訪問介護を受けていました。

平日は息子の嫁が身の回りの世話に訪れていますが、イヤフォンから金切り声が聞こえてきます。「いたい、いたいよぉ」「どうして、うぅ」。どうやら食事中に失禁してしまったカズを、嫁が泣きながら叩いているようです。

心のキャパシティは人それぞれですが、限界を超えた介護の悲惨さに、彼は耳を澄ませ「調査」し、殺すにふさわしいかを見極め、殺すタイミングを把握していきます。今夜「処置」に踏み込もう。

フォレスト本部の不正発覚により、地方の介護センターへの風当たりは厳しくなる一方でした。「フォレスト八賀ケアセンター」では、石が投げ込まれガラスが割れていました。

そんな厳しい状況の中、斯波は利用者から預かっている家の鍵のひとつがコピーしたものだと気付きます。半寝たきりで一人暮らしをしている梅田久治の家の鍵のようです。

訪問介護の時間以外にセンターの誰かが梅田家に出入りしている。斯波は、夜間の張り込みを決行します。

現れたのは、センター長の団でした。挙動不審気味に辺りを見回しながら、梅田家の鍵のコピーを使い家の中へ入っていきます。

「団さん、梅田さんの家で何をしていたんですか?」。センター長の後を追いかけ声をかける斯波。能面のような顔をした団が、鉄の塊を斯波めがけて振り下ろします。

その頃大友は、不自然に老人の死亡率が高い「フォレスト八賀ケアセンター」のシフトから、ある人物を割り出していました。正社員の斯波宗典です。

斯波は、自ら父親の介護経験があり、その経験から介護士を目指したという心優しい青年であり、献身的な介護で介護家族からも信頼されていました。

大友は斯波の元を訪ねます。老人殺害の件と聞いても落ち着き払った態度の斯波は、自らの犯行を自供。

さらに、昨夜の犯行はイレギュラーであるとし、死体の隠し場所も明かします。証言通り、埋められていた死体は、フォレスト八賀ケアセンター長・団のものでした。

「今までに、43人殺しています」こともなげに答える斯波に、大友は怒りをこみ上げます。「身体が不自由で生活に助けを必要とし、大した抵抗もできないお年寄りをお前は殺したんだ」。

斯波はあくまでも涼し気に頷きます。「そうです。殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。僕がやったことは介護です。喪失の介護、ロスト・ケアです」。

介護職より十分に睡眠時間が取れる留置室で斯波は、未来のことを考えます。ロストケアは続けることはできないが、ここからが重要だ。せめて一矢報いる。すべて予定通りだ。

羽田洋子は、検事の大友から被害者遺族として調書を受けていました。「最愛のお母様が、献身的な介護に関わらず、卑怯な手段で殺されたんです。無念ですよね」。

大友の言葉に頷きたい気持ちはあります。母を愛していたし、献身的に介護もした。でも、地獄のような介護の日々から解放された安堵、実際に生活も楽になりました。

「私、救われたんです。たぶん、母も」。ぽつりとこぼされた本音に大友はつらそうな表情を浮かべ「この部分は調書に加えません」と言い伝えるのでした。

介護の負担が重く本人も家族も苦しんでいる者を選んで殺したと主張する斯波。それは犯罪を犯したことは認めても、罪は背負わないという宣言とも取れます。

大友は押収した斯波の犯罪ノートの1冊目の1ページ目を開いて問います。「実の父親を殺したことも正しいというのか?」。

「はい」。斯波は父との壮絶な介護体験を語ります。たったひとりの身内、父が認知症を伴い脳梗塞で倒れ半身不随に。

徘徊がひどい父のために定職には付けず、貯金も使い果たし、迷ったすえに生活保護申請に行くも、「働けるなら頑張りましょう」と窓口で返されてしまいます。

これ以上何をどう頑張ればいいのか。斯波は、苛立ちを父に向けてしまうこともありました。後悔で泣き崩れる息子に、父は気が確かな時は「もう十分だ、殺してくれ」と頼むようになります。

犯行には煙草から抽出したニコチンを使用しました。警察は父の死を自然死と断定。バレなかったことで、斯波は自分にはやるべきことがあると確信します。

それは、「ロスト・ケア」。かつて自分が誰かにして欲しかったことをしよう。奇しくもフォレストの経営理念である聖書の一節が大友の頭をよぎります。「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」。

それでも性善説を唱えたい大友に斯波は続けます。「僕を死刑にするためにあなたは取り調べをしている。あなたも一緒です。この世には罪悪感に蓋をしてでも人を殺すべきときがある」。

この事件は「ロストケア事件」と呼ばれ、マスコミはセンセーショナルに取り上げました。識者の多くは、「彼が起こした殺人は許されることではないが、本当の問題は社会の側にある」とする意見が多数でした。

世間では、事件の背景にある介護保険制度の不備、介護問題、安楽死・尊厳死の合法化など、リアリティを持って語られる機会が増えていきました。

起訴から判決まで、およそ4年。大友は怒りにも似た罪悪感に苛まれていました。もう一度あの男と対峙しよう。大友は、東京拘置所でアクリル越しに斯波と対面します。

「お前の本当の目的は、この事件が広く世に知られることだ。少しでも良い社会になることを望み、命を諦めなくてもいい世界を作ることなんだな。ならば、勝手に死ぬな。ここはお前だけの世界じゃない」。大友の声は熱く、そして濡れて震えていました。

「あなたと話ができて良かった」。本心からそう思えた斯波は、その後口を紡ぐのでした。

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2026年01月27日

Posted by ブクログ

愛してた両親を介護してるのに別人のように責められ怒られ周囲に迷惑もかけて、リアル過ぎて途中何度も目を背けたくなった。何年後かに自分が同じ立場になると考えたら、正面から責めれない。

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

この社会には穴があいている。

・他人事の話とは思えなかった。いつか自分も介護する側、される側になる日が絶対にくるから。その時がきたらどうすればいいんだろう。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

社会派な内容とどんでん返しのバランスが中山七里みたいだと思った。後者は邪魔者のようにも思えるが、ミステリー好きへのサービスでしょうね。
1番の衝撃は「相模原障害者施設殺傷事件」よりも前に発表された作品だということだ。現実の事件をモチーフにしたのだと思っていたが、フィクションが現実を先取りするなんて…

 私は性善説を信仰する大友検事があまり好きになれなかったのだが、そこすらも著者の狙いだったのだろう。
「殺すことは間違っている!救いも尊厳も、生きていてこそのものだ。死を望んだんじゃなく命を諦めたんだ!」 
だが、介護の世界は決して理想論では片付けられない。家が裕福でVIP待遇の老人ホームに父親を入居させた大友が言ってもただの綺麗事にしか映らない。
「あなたがそう言えるのは、絶対穴に落ちない安全地帯にいると思っているからですよ」 
ストンと腑に落ちた。まさにこれが日本がいつまで経っても変わらない原因の一つなのだろう。
この作品を読んで平然としていられるのも、どこか自分とは違う世界だと逃避しているのかもしれない。だが、いつか親を介護する日はやってくる。子の顔を忘れ、糞尿を撒き散らし、暴言を吐く親を私は献身的に介護できるだろうか?少子高齢化が加速するこの国で、介護の現場は崩壊を起こさないのだろうか?本書を読んで、将来に対するあらゆる懸念が浮かび上がったが、明るい見通しは立たないまま、ただ絶望の淵に沈んで物語は終了した。

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2025年11月05日

Posted by ブクログ

介護殺人をテーマにした社会派ミステリー。
生活保護をテーマにした護られなかった者たちへを彷彿とさせるテーマ。重い。
でも現代人は特に、本作の主人公や登場人物のような境遇は他人事ではなく、真剣に考えなければならないテーマなのだと思う。

「殺人はいけないこと」と、境遇も知らないような人が白と黒だけで決着をつけるべきでは無い。
殺したのではなく、救ったと主人公は口にしていて、実際にそれで救われた人がいるのも事実。
倫理と人情は一致しないから難しい。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

プロローグ

世の中は、加速度的な進歩を遂げている
あくまでもテクノロジーの分野ではだ!

富山行きのE7系新幹線かがやきに乗り込む
至ってスムーズに加速し静寂性を保ちつつ
最高速に達する

本書は、超高齢化社会に対するひとつの
アンチテーゼだ
この分野は、何故いつまで経っても進化度合いは
超低速なのか!?
流れ行くビル群を尻目に、青天の空を車窓から
仰ぎ見る

偏光ガラス越しに射し込む陽射しに
思わず目を細めた!!!


本章『ロスト・ケア』★4.5
葉真中顕氏の記念すべきデビュー作 
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品

42名の尊い命を奪った“彼”は、完全悪なのか!?
これは、本書を通して全読者に難題を問いている
この殺人の是非を、、、
“彼”の云う、安全地帯にいるものとそうでないもの!
“彼”は、本当に聖書の黄金律を実践したのか!!!
「自分にして欲しいことを、相手にもする」

検察官との最後の面会で言われた、あの“黄金律”に
よって果たして“彼”は本当に救われたのだろうか!?
それによって“彼”の流した涙は、
肯定の証だったのかもしれない

葉真中氏の後の作品群を鑑みれば、その片鱗が
垣間見れる素晴らしい本作であった


エピローグ

富山の地へ足を踏み入れた
眼前には神通川
頭を上げれば、パノラマ画のように迫力のある
立山連峰が望める素晴らしい立地だ

そして、神通川には“世界一美しいスタバ”が
あるようだ
明日、訪れてみよう

あっ、今日は仕事であった
早速レトロな街並みが特徴的な岩瀬に向かおう!

その後、岩瀬の街並みのあまりの素晴らしさに
“絶叫”してしまったことは、云うまでもない


そして、次は同氏の『絶叫』だ!!!



                     完

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2025年10月02日

Posted by ブクログ

介護の現場と家族の悲惨な現状を読んでいくにつれて気持ちが沈んでいく作品。
2000年に導入された介護保険制度、それ以来約3年に一度の間隔で介護保険法が改正されているのを果たして国民の何割が知っているのか。この作品が書かれた時点から数度の法改正を経た現在、本作で描かれているような問題点が解決されたかといえば残念ながら未だに問題は山積だ。
訪問介護サービスの報酬減や物価高騰により介護事業者の経営環境は悪化しており、2024年には過去最高の事業者倒産件数が記録された。現場の過酷な労働条件にも関わらず介護職員の平均収入は相変わらず他業態に比べて高くない。介護保険法によって介護報酬の上限額は決まっており、これを引き上げないことには介護職の給料は上がらない。しかし介護報酬の上限を上げるには私たちが払う介護保険料の増額や利用者の自己負担額の増加などが必要で、これまたハードルが高い。
それにも関わらず要介護対象者は2020年時点で2000年の3倍になっており今後更に増えるのは明らかで、今年は団塊の世代が75歳以上となる2025年問題がある。
介護の問題は多くの人がいずれ自分に降りかかってくる大問題だ。自分が介護を受ける年齢になった時にこの国がどうなっているか考えると背筋が寒くなる。

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前代未聞の大量殺人

幸い自分はまだ経験していませんが、現場は生き地獄なんだなぁ
殺人によって救われるなんて本当はあってはならないけど
今の状況だと免れないのでしょうね
改善されることはないのでしょうか

読んだ後に映画も見ました。
ちょっと違うけど映画は映画でお父さんに手をかけるところが壮絶でした

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2025年05月29日

Posted by ブクログ

第16回日本ミステリー文学大賞新人賞

高齢化社会の闇がテーマの社会派ミステリー。
他人事ではない重たさがあるからこそ話に没入してしまう。
初読みの作家さんでしたが、読者をミスリードしたり、気になる言葉の言い回しで引きつけるのがうまくとても面白かった。

今年の年始にあった有料老人ホームでの不正請求のニュースにはただ憤りを感じていたけど、この小説を読んでそうせざるを得ない社会のしくみにこそ問題があるのだと思い知った。

介護の大変さはその介護度、家庭環境、経済状況によりピンキリで、私は身近にまぁまぁ大変な状況があるのでこの小説に出てくる介護家庭の悲惨さは想像だけはできる。
だから正直気わかってしまう。
被害者家族が救われたと感じてしまうことが。
認知症になれば人格が変わり、理性で抑えてきた本人が知られたくないであろうあれこれが家族に晒され、尊厳を失って生きている姿を私は見ている。だから、もし私が殺される高齢者の立場だったとしても、安楽死させてもらえて良かったと思う。
その方がお互いにとって幸せだと正直思う。

高齢者社会でこれから状況はどんどん深刻になるのに、どうしたらいいんだろう。
介護職に従事してくださる人たちには本当に感謝しかないし、もっともっと優遇されていくべき。

小説では介護に苦しむ家庭を助けたつもりでいる犯人に対して、検察の大友が真面目で常に正しいことを主張するキリスト教徒なのがうまいなと思う。しかも大友の父親は限られた富裕層しか入れない老人ホームで暮らし、大友自信はギリギリの状態で介護をしている家の悲惨さを理解してないのだからモヤモヤする。
佐久間が嫌う気持ちわかる。
でも実際正しいのは大友なんだよな。
正しいことが正しいばかりではないのかもしれないけど、、、。

すごく面白かったけど、最後真相がわかったあとでもうひと盛り上がり欲しかったので星4.5

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2025年04月24日

Posted by ブクログ

評判通り高評価に値する作品でした。自分の母も現在認知症、幸い、介護施設に預ける事が出来てます。しかし、施設に預けるまでは身内との議論、葛藤の日々でした。自宅介護すべきの意見も出ました。父は既に他界しており、実家1人暮らしの母をどう面倒を見ていくべきか、現実的に可能なのかどうか。日に日に症状が進行していく中で最終的には、お金の問題はあるにせよ、施設に頼る形を取りました。特養に関しては入居待ちの数があまりにも多く半年とか待たないと入れません。地域にもよると思いますが。非常に問題だと感じています。
要するに、小説としてのフィクションのみの作品ということではなく、現実的背景が本作ではベースになっていることが怖いと感じるわけです。また、必ず人はこの作中のいずれかの立ち位置になるわけで、簡単に言ってしまえば、明日は我が身。介護する側からされる側にもなります。殺人者になるということはないですが。この作品は、現在日本が抱える介護保険制度、介護職、高齢化社会の問題に向けて一石を投じているわけですが、このような大量殺人までをもしなければ、国の制度改善は見込めないのか、皆に知ってもらえないのか、問題提起出来ないのか、と思うと切なく悲しい気持ちになります。
現実さらに高齢者の数はこの先増えていくわけで、今のままでは多分色々な事が立ち行かなくなりそうで、不安ではありますが、改善につき自分に何が出来るわけでも無いので、選挙に行くことくらいですかね。。。
映画版もそのうち見てみたいと思います。

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

連続殺人犯の死刑判決から始まる。
日本の介護問題のリアリティとマスコミの報道を上辺だけ鵜呑みにして批判する大衆などまさに現代社会の問題点を先取りしたような内容で進む。
謎解き自体に盛り上がりはあまりないが、楽しめた。
3.8

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2025年05月04日

Posted by ブクログ

これがデビュー作!?と思うほど文章が上手だと思った。
犯人も「あんたかい!」と驚いたし、そこへ向かう話の持っていき方も不自然な感じがしなく良かった。
以降の作品もぜひとも読みたいと思える作家だった。
介護という重くなりがちなテーマで、ロスト・ケアもそういう方向の話にはしたかったのかもしれないが、あまり自分の心には響いてこなかった。そこが残念とまではいかないが、次作の絶叫には期待するところではある。
なにはともあれ、良い作家だ。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ


生きるってなんだろう、死ぬってなんだろう。

どう生きて、どう死んでいくのか、
周囲はどうケアして、どう受け止めていくのか。

正義って、なんだろう。正しさは、正義?
綺麗事じゃ語れない、介護の現場。

すごく深くて、難しかったけど、
この答えは今出すべきじゃなくって、
生きていく中で探していくんだろうなと思った。


「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。
門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。
だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。
あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。
魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。
このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。
まして、あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない。
だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。
これこそ律法と預言者である。」 p356

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2025年10月07日

Posted by ブクログ

高齢化社会に生きる私達には、避けて通れない「介護」がテーマであり、自分がこの状況になったら…と考えながら読み進めた。
登場人物、佐久間のようにズルができる所ではズルして当たり前という考え方もどうかと思うが、大友のように杓子定規に正義を追求していく姿にも怖さを感じた。
以前、著者の「灼熱」を読んで面白かったので、こちらも読んでみた。他の作品も読んでみたいと思った。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

介護、考えさせられる
する側の年齢になり、される側の年齢にも
近づいている
迷惑はかけたく無いし、正直言ってかけられたくもない。迷惑と思ってしまう事もあるだろう
国のシステムか誰のせいか?格差はどの年齢にもあって、親も家も学校も生まれてから死ぬまで格差の中で生きている
最後は自分の意思で決めたい

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2025年05月13日

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