あらすじ
戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奧に響く痛ましい叫び――悔い改めろ! 介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味……。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
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Posted by ブクログ
『“殺してもいい命”なんてあるわけ無い、でも自分の命の価値を他人が推し量ることはできない』
この感想を読んだ人の中には、家族や親族などの介護を経験したことがある方もいらっしゃるだろう。
本作を読んだ私は、その方々に「本当にお疲れ様です」とただ声をかけたくなった。
(非常に上から目線になっていて申し訳ないが・・)
今、日本の高齢者は総人口の半数にも迫ると言われている。
日々のテレビ番組や動画サイトなどでも度々、この介護の現場を取り上げられるが、そこには映像の中で語られる綺麗事だけでは済まされない状態に既に陥ってしまっている家族がいることも忘れてはならない。
本作は、性善説を信じるクリスチャンの検察官・大友、介護の現場で働くヘルパー、両親の介護に疲れ切った家族、そして“事件の犯人”、4人の視点から描かれる。
本作で起こる事件、それは日常生活の殆どに介助が必要、いわば要介護状態の高齢者を殺害するというものだ。
最初読んだ時は「動けない高齢者を狙って殺害するなんて酷い事件だ!」なんて激昂してしまった。
ただ、読み進めていくとその裏にあったのは介護疲れで崩壊寸前の家族の姿だ。
例えば、自分の両親が認知症等を患い、要介護状態になったとしよう。
軽度な状態だと家族・親戚同士で介護をすることもあるだろうが、進行するにつれ、家族だけでは全ての介助が難しくなるケースが起こる。
自分に所帯を持っていれば、仕事や家事など介護以外でもやることは山積みで、時間の全てを介護に使う、なんてことは困難になるだろう。
生活の全てに介護が必要だとなった場合、訪問介護などの専門サービスを頼るか、老人ホーム等への入居を検討するが、直面するのはお金や施設等の利用までの順番待ち、場合によっては世間体もある。
(世の中には、「親を施設に入れる」ことへネガティブに感じ、家族介護がベストだという風潮・考えを持つところがあったりするのだ)
運良く訪問介護サービスを利用できるようになったとしても、家族介護には限界がある。
その限界の先に待っているが、介護疲れやストレスによる虐待や家族の鬱病などにより、元に戻すことが難しいほど壊れてしまった家族の姿なのだ。
本作にはそんな介護の限界を生々しく、そして赤裸々に描いている。
「殺してもいい命」、それはあってはならないものだ。
だが、自身の介護で「家族に殺して欲しい」とまで願ってしまう高齢者や、届くことのないSOSを出し続ける家族の姿を性善説を信じる検察官の視点から見ると、同情と憤慨、私はどちらもが湧いてきた。
ロストケアというタイトル、それがなぜ生まれたのかは本作を読んで確かめて欲しい。
Posted by ブクログ
葉真中顕、初読み。
殺してもいい命なんてあるわけがない。
そう思っているのに、介護に追い詰められた家族の苦しみや、死によって救われたと感じてしまう人の心情を前にすると、簡単には割り切れなくなる。
高齢化社会、介護の現実、制度の限界、命の尊厳。さらに安楽死や嘱託殺人についてまで考え始めると、何が正しいのか、答えはなかなか出てこない。
犯した罪は決して許されない。それでも、犯人をただの異常者として片づけることもできなかった。その背景や考え方を知るほどに、様々な感情が生まれてくる。
読み終えてから、もう一度読みたいと思った。
真相を知ったうえで、あの場面はどう描かれていたのか、あの言葉にはどんな意味があったのか、確かめてみたい。そして、今とは違う時期に読み返したら、この作品をどう受け止めるのだろう。
社会問題として忘れてはいけないことが描かれ、ミステリーとしても再読したくなる。簡単に感想をまとめられないほど、考えさせられた一冊だった。
Posted by ブクログ
介護の末の殺人から始まったその連続殺人事件は、死刑になるとわかっていたが、それも予定できたことである。
それは介護の苦しさだけではなく、社会に穴が空いていることに気づいたから…
重い重い家族をひとりで支えていると、おかしくなる。
それでも明日はやってきて、ずっと続いていく…。
その殺人は、かつての自分が誰かにしてほしかったことをしたのだと。
正義を信じる検察官の大友は、たとえどれほど立派な信念に基づいていようとも、救いのための殺人など認めるわけにはいかない。
最後まで大友は、斯波の引き起こした要介護老人のロスト・ケア事件に対して敗北感を残したままだ。
それは社会システムに歪みをどうすることもできないからだろう。
Posted by ブクログ
いずれ来たる親の介護。
“家族”という名の絆で結ばれた宿命。
これまで育ててくれた恩返しとして、親が老いる時は子供が介護を行うことは自然の摂理とさえも感じる。しかし、子育て・仕事とライフステージが進む中で、認知症や寝たっきりの看病などで介護者も疲弊していく。そこには暴力や放棄などが伺え、資金力がない家庭は自分一人で全てをこなす必要がある。
介護での財力の差。社会サービスでは埋めきれない大きな溝を考えさせられた一冊。
犯罪を肯定するわけにはいかないが、犯罪に手を染めてしまう、背景や社会的障壁、葛藤など、自分に置き換えた時に、どうするかが問われる。
これまで育ててくれた分、親には親孝行したいし、手を上げることなんて一切考えてはいないものの、実際その立場にたったら自分の言動に保証ができるか?と問われる。
是非お勧めしたい一冊。
Posted by ブクログ
メチャクチャ考えさせられる一冊です。
43人の老人を殺した「彼」の正義と、法律と世間の倫理がぶつかる話です。
高齢者介護に苦しむ家族を解放するために、殺人を犯すわけですが、実際に家族は自分の親を殺せないし、かといって終わりがわからない介護を何年も続けないといけない絶望感が、とんでもなくリアルに感じました。
老人も、寝たきりや認知症で自分自身すら理解できない人が死なないだけで生き続けるのは辛いだろうという見解も、誘導されてる感はありますが納得させられてしまいました。
家族も本人も救うという意味で、その代行殺人を行う正義は、果たして悪なのかと問われたら、答えは出ないと思いました。
重たい内容ですが、かなりのめり込んで読むことができました。
Posted by ブクログ
死生観について、新しい観念というか新たな捉え方を得ることが出来た崇高な作品
にしても、アルツハイマー抱えている方の在宅介護の厳しさ、マジで凄まじいわ
Posted by ブクログ
こんなにも序章を読み返す本は初めてだった。
登場人物に動きがある度に戻り考察した。
介護企業・フォレストに務める佐久間、有料老人ホームへ入居した父をもつ検察官の大友、介護を職とする斬波、介護疲れに追い込まれた羽田、そして戦後史上最多の殺人を犯した〈彼〉。
〈彼〉はもう逮捕され起訴され、法廷で判決を言い渡されるところから始まる。犯行の描写も第一章にて早々にある。今作のゴールはどこにあるのか、果たしてこの〈彼〉は誰か。
しっかりミスリードされるので安心してください。
これはミステリとしてかなり楽しめた。
その一方で社会問題としても考えさせられる。
少子高齢化問題は今や日本にとって深刻な問題のひとつ。老老介護やヤングケアラー、事件も耳にする。
祖母の介護に疲れて帰ってくる母を見ると、自分は耐えられるだろうかと不安になる。誰もがする側、される側になるからこそ考えなければならない。
〈彼〉の言うとおり「救われた」、と思ってしまう環境があまりにも痛かった。
確かに人口推移と将来予測は大きな変動やズレはないはず。分かっていた、みんながこうなることを。なのに、、
読んだみなさんが置かれた立場それぞれのリアルな考えがあると思います。
ロスト・ケア、どう考えますか。
Posted by ブクログ
星★5!
フォーカスしたい部分がありすぎて。。。
・ミステリー本として
葉真中顕さんは一文一文が短くて読み易い。そして時々出てくる比喩や象徴的な表現が素晴らしい!今後の展開をそれとなく匂わせる使い方、ブラボー(*´꒳`*ノノ゙パチパチ
今回もしっかりミスリード
させられてました╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ!
・主たる題材の介護について
長らく介護現場の看護師をしております。在宅事業所における介護保険のグレーゾーンなんぞも中々にリアルを書かれていて見事です!どこまでどうやって調べて書くんだろうってくらい。
そして“彼”の信念は痛い程よくわかる。もうね、わかりすぎるくらい。あたしが“彼”の弁護士やりたいくらいよ。
・犯人の深淵
365~366ページ、“彼”の善性に触れる事ができて爆泣き。
他にも感想山ほどあるけど長くなりますのでこの辺で。。( ・ω・ )ノ
10年以上も前の作品なんですね〜もっと早く出会いたかった!!
これは広く人に知られてほしい作品でした。
Posted by ブクログ
専門職であるはずの私が、家族の前で無力だった〜『ロスト・ケア』を読む〜
介護保険制度が創設されてから、確かに改善されたことは多い。
「介護の社会化」は進み、家族だけで抱え込まなくてよい仕組みが整った。
少なくとも、そう教えられてきた。
ただ、私は介護保険制度が始まった後に社会福祉士になった世代。
制度ができる前と後の違いを、実感として知っているわけではない。
養成課程で「昔より良くなった」と学び、どこかで「そういうものなのだろう」と受け止めてきたに過ぎない。
では、今の日本は本当に安心して老後を迎えられる社会になっているのだろうか。
家族の負担は、軽くなっているのだろうか。
私と妻の祖母はいずれも介護状態にある。
それを支えている両親たちは、認知症が進み、身体が弱っていく祖母を前に、不安や悲しさ、時には怒りを抱えながら日々を過ごしている。
介護は制度で支えられているはずなのに、その感情の多くは、今も家族で引き受けられているように見えるし、実際のところ私自身も頼りにしてしまっている。
社会福祉士として、私はこれまで多くの高齢者と、その家族に向き合ってきた。
支援をしてきたつもりではある。
けれど、ふと立ち止まると、本当に力になれているのだろうかという問いが胸に浮かぶ。
ましてや自分たちの祖母のこととなると、なおさらだ。
専門職であるはずの自分が、十分に関われていない。力になれていない。
その事実が、無力感として残っている。
『ロスト・ケア』の中で描かれる介護現場の姿は、決して誇張ではなく、あまりにも現実に近い。
人手不足、余裕のなさ、理念と現実の乖離。
読んでいて胸をえぐられるような感覚があった。
社会福祉士として働いている私にとっては、痛いところを突かれているという表現が、しっくりくる。
同じ現場で働くソーシャルワーカーや介護職であれば、きっと似た感情を抱くのではないだろうか。
目を背けたくなる。
でも同時に、目を背けてはいけない問題だとも感じる。
この作品は、介護や支援の現場にある見ないふりをしてきた問いを、容赦なくこちらに差し出してくる。
だからこそ、読み終えたあとも考え続けてしまう。
そして、考え続けること自体が、私たち支援者に求められている姿勢なのかもしれない。
Posted by ブクログ
湊かなえさんの新刊を読む前に読みたいな、と読みたいリストから手に取った。
戦後最多の大量殺人事件を起こした犯人に死刑判決が下された。事件の被害者にはある共通点があった。犯人の真の目的とはー…?
物語の構成に序盤から引き込まれた。
誰しもが逃れられない、他人事ではいられない、「介護」。
認知症患者の介護の過酷さ、悲惨さ、介護業界に携わる人たちの苦悩…分かっているようで、分かっていなかった。
自分が当事者にならない限りは、本当の意味で分かることはできないのだろう。
10年以上前に執筆された作品だが、今の日本に重なる部分がたくさんあって興味深かったし、怖くも感じた。
超高齢化社会どころか、超超超!高齢化社会になっていく日本。
実際、私が住んでいる地域は周りが高齢者ばっかりで、私たち世代の人も少ないし、子どもが本当にいない…!
既にこういう状況なのに、私が高齢者になる頃には日本の人口の40%以上が高齢者という計算になる。
その頃の日本は一体どうなっているのだろう?
犯人の言葉の一つ一つがすごく胸に響いた。
「人殺しは決してしてはいけない」という自分の中の概念が揺らいでしまいそうになった。
「やるべきことをやる」、「分かっていたはずだった」という言葉が胸に重たくのしかかってくるようだった。
「分かっていたはずだった」と、将来絶望することにならないように、私たちが「やるべきこと」とは?
問いかけてくるような作品だった。
Posted by ブクログ
日本社会の闇に迫っている。
認知症が進んだ親や義理の親を介護せざるを得ない人たちが、人間の尊厳すら保つことができす、苦しみながら生きなければならない現実をつきつけられた。
私は姑に結婚以来10年以上いびられ、実家の家族までも蔑まれている。湧き上がる憎悪に蓋をして、自分を騙し騙し生きている。この上、認知症になり、介護が必要になり、私が面倒を見ることになったとき、持ち堪える自信がない。こうなるとロストケアが本当に罪なのか、わからなくなる。ロストケアなど不必要な社会をつくらねばならない。
政治家は、介護を必要とする人と介護する人を仲介するとき中抜きする事実を洗い出し、まずこの悪事を正すべき。そして、我々もこの社会の闇に関心をもつべき。
Posted by ブクログ
すっげー!葉真中さんの小説を読むのは、ロングアフタヌーンに続き2作目なんですが、ロングアフタヌーンは期待値が高い割にそこまで好みではなかったのでこちらはそこまで期待してなかったんですが、すっげかったです。私の好きな社会派の部分と、ミステリーとしてのエンタメ性がしっかり融合していて、この2つがどっちも兼ね備えられてる作品って意外と少ないと思うんです。おもしろくて、葉真中さんもっと掘ってみよう!と思い絶叫も購入して積読になりました。家族、も気になるのでいつか読んでみたいです。
介護、というテーマも、私自身まだ20代、親も40代と50代でまだまだ介護に親近感というか、自分の身として関わることはあまりなかったけれど、やっぱり思ってるより大変なんだろうな、自分も親を介護するときになったときのことを考えて不安になりました。絶対嫌だな。単純にめんどくさいから、とか感謝もされないし報酬もないのにそんなことしたくない、とかも少しはあるけど、それよりも生まれたときから一番近かった人間で、しかも上の立場だった人間がどんどん弱っておかしくなったり苦しんでるのを見るのは絶対に辛いな、と思う。あとは自分は子どもを持たない予定だから、自分が介護を必要なときのことを考えても不安になった。
Posted by ブクログ
犯人が誰なのかと言うよりも、介護の実態がリアルに描かれていて恐ろしい気持ちが勝った。
日本人の総人口に対する65歳以上の割合は20パーセントと言う表記があったが、自分の中では案外少ないななんて思い、今の割合を調べて見たらほぼ30パーセントになっていた。
少子高齢化が騒がれてからもう何年も経つのに、作中にある「わかっていたのに」がその通りだと思えた。
こういう小説の犯人は大体が誰かから頼まれたりという形で罪を犯すような表記が多いが、犯人が独断で救ってあげようと勝手に考えて実行するというのは珍しいし、自分の思い込みだった場合はなかったのかなと思ったが、介護する側が「この人が限界だな」と思うくらいなんだから本当に限界なんだろうなとも思う。
20年経っても今は、介護の仕事は優遇されてると思えないし、もう少し国は介護を職としてる人の話を聞いた方がいいなと思ったし、実際いる訳では無いけど、こんな殺人鬼に「救われた」なんて思う人がいなくなるといいと思った。
Posted by ブクログ
高齢化社会、老老介護、ヤングケアラー、それと介護福祉の穴等、着々と増え続けているであろう諸々の問題について、究極の対策が「ロストケア」だと思い込んでしまった事で連続殺人が始まった。
自分が介護する立場、あるいは介護される立場になった場合の事を考えさせられる。いや、作者は考えて欲しいからこの作品を書いたのかと思う。
この小説をミステリー作品と言っているが、社会派の非常に重厚感のある作品だとも思う。
最後にドンデン返しがあるが、そこまで意外性はなかったかと感じたので⭐︎4にしました。
読んで良かった小説です。
Posted by ブクログ
介護と正義をめぐる重たいテーマを扱いながら、一人称の切り替えで迷わず読める構成が印象的で、深く考えさせられる一冊でした。
職場の読書友達から紹介してもらった一冊。扱っているテーマの重さを思うと「面白い」と言うのはためらわれるのですが、読み進めるほどに考えることが増えていく作品でした。映画化のダブルカバーを眺めながら読み始めたものの、長澤まさみさんがどの役なのか気になってキャストを検索してしまい、うっかりネタバレを踏んだのは完全に自分のミス。ただ、結果的には謎解きよりも作品が扱うテーマにしっかり向き合うことができて、ある意味では怪我の功名だったのかもしれません。
物語は複数の一人称が明確に切り替わりながら進むので、内容の重さに対して構成がとても読みやすい。むしろこの分かりやすさが、じっくり向き合うために必要だったのではないかと感じました。
検察官と“彼”が対峙する場面で語られる「それを犯罪と言えるのは安全地帯にいるからだ」という言葉は、読んでいて胸に刺さるものがありました。安楽死や尊厳死を扱った作品は他にも読んだことがありますが、超高齢社会・人口減少社会の今の日本では、介護と尊厳の問題は何より優先して向き合うべき課題なのだと改めて実感。
ちょうど先日、日本の人口が40数年ぶりに1億2千万人を下回ったというニュースを聞いたばかりで、読後の余韻がより深く残りました。
Posted by ブクログ
冒頭の介護描写があまりにも
リアルな生々しさで目を背けたくなるような気持ちになりつつ、気づいたらどっぷり。
社会問題に切り込んでいるリアルと、
大量殺人の犯人のミステリーと、
えげつないバランスで読ませる作品だと思った。
そして、物語の可能性を感じた。
目を背けるわけにはいかない、という気持ちにさせられた。
Posted by ブクログ
そう遠く無い将来、自分にも降りかかるであろうテーマ「介護」。自分が介護をする立場になっても、介護をされる立場になっても、この小説に出てくるようなことになって欲しくないなとつくづく思った。この本には様々な正義が出てくるが、あるべきは大友のような正義なのかもしれないが、やはり偽善だと思えてきてしまう。面白いというか、とても興味深い作品で考えさせられた。
Posted by ブクログ
「彼」はなぜ43人もの人を殺したのか。
人を殺めることに正当性があるわけがない。
そう言った価値観が揺さぶられる社会派ミステリー。
冒頭の「彼」の書き方が、ちょっとずるいなーと思った。
Posted by ブクログ
読み終えた後に心に残ったのは、犯人への怒りよりも「この社会の中で、自分に何ができるのだろう」というやるせなさだった。
序盤は介護問題を題材にした社会派ミステリーという印象だが、読み進めるうちに「人を救うとは何か」「善意はどこまで許されるのか」といった、簡単には答えの出ない問いを突きつけられる。
介護疲れや老老介護の末に起きる痛ましい事件やニュースを見るたびに、「他に選択肢はなかったのだろうか」と感じることがある。しかし本作を読んで、それをどこか他人事として捉えていた自分にも気づかされた。
正しさだけでは救えない現実と、社会が抱える深い問題を描いた重厚な作品。読後もさまざまなことを考えさせられる一冊だった。
Posted by ブクログ
お初の作家さん。
一応元医療従事者なのでこういう介護の現場が物凄く悲惨なのはよくわかる。「社会には穴が開いている」どころか穴だらけだわ…
「殺人」という点においては肯定しちゃいけないことだけど、だからって犯人のことを真っ向から否定する気にはならないな…
Posted by ブクログ
犯人斯波は、介護していた父親からの嘱託殺人で父親を救済したと考え、介護職員になり、介護者と被介護者を介護·救済すると次々に43人もの殺人を犯す。
題名「ロストケア」は犯人が「喪失の介護」と語る通り、介護者を喪失することでケアを行い得ると考える。
一方、独自捜査で犯人を捕えた検事大友は聖書の1節「人にしてもらいたいと思うことを人にもしなさい」と犯人の行為をなぞらえ、また、斯波から「(死刑の求刑を求める)あなたも人殺しで罪悪感に蓋をしている。蓋をしてでも殺人をすべき時があるのは同じだと」指摘され、心が粟立つ。
人の本質は善であり、検察の役目はその善に訴え、罪の重さを認識させ、悔い改めさせることであると考える検事大友にとって罪の意識も全く感じない犯人に死刑求刑をただ求めることに戸惑いを感じる。
安楽死は認められず、尊厳死は黙認される現実、介護地獄にもがく介護者と被介護者、法律では裁けるも解決しない社会問題にどんな解決策があり得るのか、それが見えない現実を認めることしか想いが浮かびません。
Posted by ブクログ
ロスト・ケア(喪失の介護)だと その殺人犯は言う。42人もの身体が不自由で、生活に助けを必要とするお年寄りを殺した男は。
物語は
「彼」ー殺人犯
“シングルマザー”ー認知症の母を自宅で介護
“介護施設で働く若者”ーかって父を介護
“検察官”ー父を高級介護施設に入居させている
“介護企業の営業部長”ー検察官の古くからの友人
の 五人の立場から 終始語られていく。
これからの日本 多くの高齢者が社会にあふれ出す日本。子供は少なく 介護する者は限られてくる。考えなくても 介護の現場は疲弊必至だ。
綺麗事では すまない 介護の実態。
しかし その当事者にならなければ その大変さ!は 先ず理解出来ないと思う。
そんなこれからの介護社会を あらためて考えさせられる一冊だと思う。
Posted by ブクログ
介護する人の大変さがよくわかるので、殺してしまいたくなる気持ちもわかるだけに、小説で描かれたそれぞれの気持ちが痛いほどわかる。そして勝手にこの人が犯人だろう~って読んでいたら、え?と思わせる展開で驚かされた。
やはり安楽死をやるべきでは・・と思ってしまうね。
Posted by ブクログ
読みたい作品ではあったけど今の自分にはリアルすぎて敬遠してました。
ロスト・ケア…喪失の介護
たぶんもう内容はみなさんご存知ですね。
まずは介護に携わっているみなさんに
「ありがとうございます」と伝えたいm(_ _)m
私ごとですが
義母が認知症になったのが約10年前
義父との二人で暮らすいわゆる老々介護でした
義父から血便で救急車を呼ぶから至急家に来て欲しいと連絡が…この怒涛の1日から生活が一変。
義父は入院し義母はケアマネージャーの勧めで診療内科に入院。旦那52歳仕事もバリバリ忙しい。
両方の病院をハシゴしながら今後を考える。
猶予はない!義父は退院したら同居が暗黙の了解です。その上認知症の義母…診療内科の先生ははっきり言いました。「退院したらどうします?介護は無理だと思いますよ」
わたしが走り回り手続きもしていたら結婚して初めてと言っていいくらいに旦那さんからありがとうと言われました笑
特別養護老人ホーム…特養になら年金で入れるけど気の遠くなるような順番待ち。そして認知症を受け入れてくれる所はさらに少ない。
複数申し込んだうちの特養に入れたことは本当に運が良かったと思うしこの10年という長い時間を考えると感謝しかないm(_ _)m
高額な施設にしか入れなかったらどうなっていた?
今10年だけど後何年?
さぁ次は自分の両親です……
あ…義父との5年?の同居の話もいつか聞いてくださいね_(┐「ε:)_
この作品はみなさんどう受け止めるのかなぁ
置かれた立場で色々考える作品です。
でもリアルな感情に圧倒されたし読んでよかった。
Posted by ブクログ
久々にしっかりとした社会派ミステリー堪能した
。勢いで鑑賞した映画もまた違った切り口で楽しめたのだが。主役の有名俳優2人ありきな映画になってしまっていて、原作にある物語の吸引力がぶち壊し。原作をもっと大切にして欲しい。
Posted by ブクログ
絶叫を尾野真千子さんが演じている見て、衝撃を受け葉真中さんの作品を文庫で読みたくなりました。
僕はかつて自分がだれかにしてほしかったことをしたんです。と彼は主張していた。
日本が抱えている介護の問題を根底にした社会派ミステリーだと感じた。真面目すぎると息詰まりを感じて長く働けない…なんか妙に納得してしまう。
主人公の検察官である大友が、事件を解決していくが、どんな流れで犯人を捕まえようとする手順が少しだけ理解できた。憧れだった佐久間に父の有料老人ホームを紹介してくれたのに、転落していく人生と、犯人が明らかになっていく後半とで引き込まれた。
Posted by ブクログ
先に映画を観ていた
自分のレビュー評価がまあまあ良かったので
本の方がもっと面白いはずと思って読んだ
その期待値のせいか、いたって普通であった
いや
思い返すと中盤まではスピード感があって
サクサク読んだ
でも後半シラけたんだ
なるほど
映画と全く同じ印象だ
後半の展開が想像の範囲を超えず
ふーん。だったからかな
ともかく後半失速する本