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Posted by ブクログ
いい年をした男の引きこもりの気持ちなんてまったくわからないな、と思っていた。結局甘えてるだけなんじゃないの?とも思っていた。ところがこの本に登場する草鹿秀郎の気持ちは、そうそう分かるよ、と思ってしまったし、自分との共通点だっていくつも見つかってしまった。もしかしたらたったひとつのきっかけで、僕だってこうなっているのかもしれないと考えたら、この物語もまったくの他人事とはとても思えなかった。
自らの過去に負い目を持つ刑事の奥貫綾乃。フラワーさんの事件を追う過程で、事件に纏わる登場人物たちの境遇に共感を深めていく描写が本当に素晴らしい。中年の引きこもりの心情描写も本当に素晴らしい。クライマックスは、孤独を抱えた2人が感情をぶつけ合う取調室の一幕。なんというか、ただただ圧倒されました。
あの大傑作「絶叫」にも通じる深い『共感』の物語だと思いました。読んで良かった。
Posted by ブクログ
おもしろかったー。社会派ミステリーって読むまでに気合いが必要だけど、読むとおもしろいんだよね。
その時代の出来事も添えながらストーリーが進行していくから、当時を感じながら読めたのが良かった。
しかも油断して読んでいたら、真犯人がまさかの人で!!
真犯人の気持ちと、草鹿秀郎の父の気持ちが一番共感できたな。
好きな登場人物は梅田とマリエル。
それにしても引きこもりね。
実際どうなんだろう。甘えだよと言い切るつもりはないけど、引きこもれる環境があるからできることだっていうのは事実よね。
学生時代であれ、社会人になってからでも、傷ついても困っても引きこもる場のない人だっているし。
草鹿秀郎の場合なんて、あんなに包み込んで見守ってくれる両親がいるのに、承認欲求が満たされないなんて高望みじゃないかと思う。
男らしさレースでも自分らしさレースの塔でも、別にトップじゃなくたっていいのにね。
しかも、結局いろんな罪を重ねて余計人生ハードモードになりそうだけど大丈夫なんだろうか?
Posted by ブクログ
200年ほど前の『ショーペンハウアー 幸福論』では、失うものを持たない人、あるいは失うことを恐れない人は、幸福に近い人でした。
けれど、現代ではどうでしょう。
失うものがない人間は、むしろ危険だとされます。
ロスジェネ時代の絶望感を 1974年生まれ、18年間引きこもってきた男性の過去と心情をベースに描かれていきます。
そこに高度成長期を生きた親世代から現在に至るまでの社会情勢を重ね、社会から阻害された同世代の人たちの苦しさも積み上げます。
それぞれ幾多の理由で社会から外れてしまった、あるいは阻害されてしまったと思い、閉ざしてしまった子どもたち。そして、その子どもを支えよう、理解しようとする親世代の苦しさも、計り知れないものでした。
親に殺されそうになる場面や、子どもを預かってくれる組織に引き渡す場面も出てきます。一見すると、親が子どもを手放すようにも見えますが、「自分ではもう支えきれない。それでも、この子には生きていてほしい」という愛情がありました。
ロスジェネという時代も、これからまた何年か過ぎたら、一つの「災害」に近いものとして語られる日が来るのかもしれません。
この小説は「鼓動」というタイトルへ帰着します。
すべてを失い、社会から切り離されたように見える人間にも そこからもう一度、生きる そんな小さな始まりがあるように思えました。
同じ時代を生きてきた作者から、同世代へ向けられた、かすかな希望なのかもしれません。
Posted by ブクログ
氷河期世代、8050の引きこもり問題、ネグレクトや高齢化社会などを背景に起きる殺人事件を捜査する中年男女の刑事コンビ。震災、コロナも含めてここ何十年かの世相全部盛り。この2人の味わい深いやり取りもありテンポよく進む。前に読んだ「ひきこもり家族」よりよっぽどリアリティがあり、考えさせられた。時代と言ってしまえばそれまでだけど、引きこもりやその家族の苦しみが本当に重い。話の中にも何度か出てくるけど、やっぱ豊かなんだろうなぁ、なんだかんだ言っても。生命や生活の危機がある社会で引きこもりなんてたぶんいないだろうし。食べること、生きることに必死でなりふり構ってられないだろうから。甘さとかゆるさで済ますのは簡単だけど。資本主義、豊かさの反動なのか…物語のラストが少しだけ明るいのが救いだけど、現実には解決の糸口が見えない状況なんだろうなと。世界を揺るがす大きな事象が次々と起きる昨今、家の中という小さな閉鎖空間で延々と続く誰にも相談できない社会問題の深刻さと根深さが痛々しい。
Posted by ブクログ
一気に読めたが、ずっしりきた。
草鹿秀郎はどうすれば引きこもりから抜け出ることができたのか。いや、1人じゃなかった。親の愛情もちゃんと理解していたし受けていた。草鹿が殺したと主張した老女のホームレスは、自身の身分も年金と共に無くしていた。それは、娘を引きこもりから救うため。引きこもりビジネスの闇、8050問題、ネグレクトと、重い社会問題満載。わかってもらいたい、認めてもらいたい、その願いが崩れた時、生きるために引きこもるのかもしれない。(だから「鼓動」?)そんなふうに思った。
願いを立て直すための小さなきっかけは、多分身近にある。自分の孤独は自分のもの。光はきっと自分の中にある。エピローグの描写はちょっと癒された。
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