葉真中顕のレビュー一覧
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『絶叫』は単なる猟奇的な犯罪小説ではなく、現代社会の病巣を解剖する鋭いメスである。作者は冷徹な筆致で「孤独死」の表層を剥ぎ取り、体制、家庭、そして資本の搾取に苦しむ底辺層の女性の絶望的な状況を暴き出している。
鈴木陽子の転落は、社会のセーフティネットが完全に崩壊していることの縮図だ。彼女の妥協の一つ一つが、社会の偽善と冷酷さを浮き彫りにする。生存する権利すら奪い尽くされた時、悪鬼と化すことこそが彼女に残された唯一の抵抗であった。本書は、我々が生きるこの社会に対する最も痛切な問いかけである。一体誰が、彼女を後戻りできない深淵へと突き落としたのか? -
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いずれ来たる親の介護。
“家族”という名の絆で結ばれた宿命。
これまで育ててくれた恩返しとして、親が老いる時は子供が介護を行うことは自然の摂理とさえも感じる。しかし、子育て・仕事とライフステージが進む中で、認知症や寝たっきりの看病などで介護者も疲弊していく。そこには暴力や放棄などが伺え、資金力がない家庭は自分一人で全てをこなす必要がある。
介護での財力の差。社会サービスでは埋めきれない大きな溝を考えさせられた一冊。
犯罪を肯定するわけにはいかないが、犯罪に手を染めてしまう、背景や社会的障壁、葛藤など、自分に置き換えた時に、どうするかが問われる。
これまで育ててくれた分、親には親孝行したいし、手を上げることなんて一切考えてはいないものの、実際その立場にたったら自分の言動に保証ができるか?と問われる。
是非お勧めしたい一冊。 -
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メチャクチャ考えさせられる一冊です。
43人の老人を殺した「彼」の正義と、法律と世間の倫理がぶつかる話です。
高齢者介護に苦しむ家族を解放するために、殺人を犯すわけですが、実際に家族は自分の親を殺せないし、かといって終わりがわからない介護を何年も続けないといけない絶望感が、とんでもなくリアルに感じました。
老人も、寝たきりや認知症で自分自身すら理解できない人が死なないだけで生き続けるのは辛いだろうという見解も、誘導されてる感はありますが納得させられてしまいました。
家族も本人も救うという意味で、その代行殺人を行う正義は、果たして悪なのかと問われたら、答えは出ないと思いました。
重たい内容ですが、かなりのめり込んで読むことができました。 -
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ブラジル移民になるには、ひと家族に12歳以上3人の働き手が必要だった。勇は父の従兄夫妻とブラジルに船で渡る。入植地の弥栄村でトキオと出会って親友になった。やがて柔道の全伯大会に二人で出場する。
全伯大会では勇が決勝でトキオを下して優勝した。しかし勝ちを譲られた気がして馬鹿にされたような気分になってしまう。その後勇は里子がブラジル人たちに襲われているところを助けた。そして結婚する。トキオはいたたまれない。その日真珠湾攻撃が起こる。
ブラジルは連合国側についたため、日本とは行き来がなくなった。都市部では日本人の資産は凍結されたが、農村部では日本人が農業から手を引いてしまうとたち行かないので、何も生活は変わらなかった。勇と里子に女の子が産まれて栄と名づける。トキオはあっさり別の女性と結婚した。
が、トキオの家が薄荷油生産を続けていることで国賊だと言われるようになり、縁談を断られた。村中で襲う計画も持ち上がっている。
トキオは弥栄村から引越してサンパウロの樋口一家の営むヒグチというバルで働く。敗戦を迎えてようやく受け入れるが、一方弥栄村では、みんなが戦争に勝ったと思い込んでいた。
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葉真中顕さんの小説は読んだことがなく、最新刊の『家族』で知った。
この『Blue』は、葉真中さんの全てを読んだわけではないものの、私には一番だった。
構成がよいこと、
平成記として読めること(出てくる事象は本物の名称を使っているのでよりリアル)、
社会問題をしっかり扱っていること。
『Blue』のあと、『絶叫』『ロスト・ケア』を、出版年を巻き戻すように読んでいる。
どれもミステリーやエンタメとして読めるのに、社会の構造の問題に広く言及している。
葉真中さんの生まれた世代に近く、昭和後期〜平成〜令和を生きている私には身につまされることばかりだ。
特に今の政権下で読むと、あまりにも罪深い政府のやり方、政治家・官僚・役人の詐欺っぷり、棄民政策のツケを国民が払わされているのを認識する。
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第七十二回日本推理作家協会賞。
第二十一回大藪春彦賞。
ダブル受賞作。
Super8さんに葉真中顕さんならこの作品とお勧めしていただきました。
8さんありがとうございます。
とても面白かったです。
昭和二十年、終戦間際の北海道・室蘭。逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密をめぐり、軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事日崎八尋は「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影らとともに捜査に加わるが、事件の背後で暗躍する者たちに翻弄されていくー。真の「国賊」は誰なのか?かつてない「戦中」警察小説!
ー以上文庫うらすじより引用
太平洋戦争中の日本の北海道は室蘭であったアイヌと朝鮮人の方々の差別の話なのかと思って読み始めましたが、千街晶之さんの解説を読むと歴史小説にして警察小説にして冒険小説にして本格ミステリだそうです。
日本の戦争の歴史、当時の特高刑事たち、羆との闘い、ミステリ部分はネタバレになるので書けませんが。
私はそしてまた、主人公の日崎八尋と三影(は嫌いでしたが)朝鮮人のヨンチュン、京子、などの多数のキャラクターたちが大変魅力的に描かれていると思いました。
最近読んだ著者の『家族』は救いようのない話でしたが、この作品はラストシーンも特に秀逸に感じられました。長さも660ページあり大変読んだ感のある読書でした。
追記
ところで先日のレビューに書いた私が以前に通っていた「山形小説家・ライター講座」の2026年度の講師の先生と日程が発表になっています。
偶然ですがこの本の著者の葉真中顕さんも9月の講座に講師としていらっしゃいます。
ご興味のある方はお手数ですが「山形小説家・ライター講座2026年度」でご検索ください。
ホームページアドレスでとぶと、まだ2025年度の概要が出てきてしまうんです。
ちなみに私は5月の歌人の穂村弘さんの講座にブク友さんと3名で対面参加、2名の方がオンライン参加します。他にも穂村弘さんの講座に出たい方がいらしたらご一緒しますのでお知らせください。
もし、他の先生方に参加されたい方がいらしたらお気軽にコメントいただければ嬉しいです。
講座情報、山形情報お知らせしますので。 -
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こんなにも序章を読み返す本は初めてだった。
登場人物に動きがある度に戻り考察した。
介護企業・フォレストに務める佐久間、有料老人ホームへ入居した父をもつ検察官の大友、介護を職とする斬波、介護疲れに追い込まれた羽田、そして戦後史上最多の殺人を犯した〈彼〉。
〈彼〉はもう逮捕され起訴され、法廷で判決を言い渡されるところから始まる。犯行の描写も第一章にて早々にある。今作のゴールはどこにあるのか、果たしてこの〈彼〉は誰か。
しっかりミスリードされるので安心してください。
これはミステリとしてかなり楽しめた。
その一方で社会問題としても考えさせられる。
少子高齢化問題は今や日本にとって深刻な問題のひとつ。老老介護やヤングケアラー、事件も耳にする。
祖母の介護に疲れて帰ってくる母を見ると、自分は耐えられるだろうかと不安になる。誰もがする側、される側になるからこそ考えなければならない。
〈彼〉の言うとおり「救われた」、と思ってしまう環境があまりにも痛かった。
確かに人口推移と将来予測は大きな変動やズレはないはず。分かっていた、みんながこうなることを。なのに、、
読んだみなさんが置かれた立場それぞれのリアルな考えがあると思います。
ロスト・ケア、どう考えますか。 -
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ネタバレいやー、面白かった。
今まで無知と言っていいほどだった、ブラジル日本移民の歴史を知ることもでき勉強になった。
ブラジルに出稼ぎにいった移民たち。大金を手にし帰国することを夢みてブラジルに渡ったが、大金を稼ぐとはほど遠く、帰国船に乗ることもできず取り残されてしまった。
そんな中、終戦を迎え、情報が乏しいなか、日本が勝利したと信じる勝ち組と、負けを認識している負け組との間で紛争が起こる。
正義の反対は、正義なのかもしれない。
そんな風に感じてしまった。
勝利を信じるものは、愛国心はもちろんのこと、自分の中の核たる信念を真っ直ぐに貫いた故であり、その人にとってはそれが正義であったんだろうなと。
フィクションではあるが史実をモチーフにしている。こんな出来事はもう起きてほしくない。
フィクションならではの、ドラマチックなラストも良かった。