葉真中顕のレビュー一覧
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2012年尼崎で発覚した角田美代子を主犯とする連続殺人事件、いわゆる「尼崎事件」を小説化したものだ。小説であっても事実に基づいて書かれたものなので、これが本当に起こったことなのかと、読むのも躊躇するほど悲惨な事件だ。角田と義妹、そして息子の3人は決して自ら手を汚さない。他人の家に入り込み、好き放題振る舞った挙句に自分の陣地に連れて帰り、監禁し、全財産を奪い、完全に支配下に置いて、「しつけ」と称し、お互いに殴り合いをさせる。子が親を、夫が妻を痛めつけ、最後には殺させてしまう。自分たちは家族だと謳っているので、逃亡者が警察に駆け込んでも「民事介入」はできないと追い返される。全て角田が思うように事が
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「犬を飼う」という作中作から始まる『ロング・アフタヌーン』。
そのSFチックで衝撃的な短編の秀逸さにまず掴まれます。わずか40ページほどの物語ですが、全編にシスターフッドの気配を孕み、“もっと読ませてほしい”と思わせる魅力がありました。
そして、次の作中作「長い午後」は、数十年後、同じ作者により再び立ち上がる物語。
作中作を組み込みという事は、現実と虚構の境目をわざと曖昧にし、気を抜くと、自分がどちらの世界にいるのか分からなくさせるということ。
曖昧な登場人物、曖昧な記憶、曖昧なミステリー。その“揺らぎ”こそが本作の魅力であり、不穏な読後感をもたらすもの。 -
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2011年に表面化した尼崎連続変死事件をモチーフにしたファクションであるが、事件を想起させる。
この事件を知ったときは衝撃を受け、現実なこととして受けとめるのは無理だと思った。
八王子を舞台にし、ピンクババアこと夜戸瑠璃子が関わる人に喰いつき、その家族をぼろぼろにして財産を奪い気にいらない奴に制裁を下す。
逃げても追い、痛めつけては服従させての繰り返しで、幾つの家族を悲惨な目にしてきたのだろう。
人物相関図を見ても、最早どういう繋がりで家族としてきたのだろうかがわからない。
もしかすると亡くなった人はもっといるのかもしれないが、瑠璃子が死んだことにより何もわからない。
「民事不介入」を盾 -
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読み終えて、疲れたの一言かな。
尼崎連続変死事件がモデルとなっている小説で、
"家族"を盾に虐待、軟禁、殺人…あらゆる犯罪のオンパレードで救いもない。
家族という泥沼に引き込まれていくストーリー。
主犯と思われるピンクババアこと夜戸瑠璃子は獄中自殺をしたけど、義理妹の朱鷺子のが裏で操っている感じがして怖い気がした。また、なぞの男(あばた面の男)も行方不明で生きているし、別の新たな"家族"が形成されていきそうな終わりかただった。
家族は聖域。
警察も民事不介入。
愛による支配こそが家族の本質。
ピンクババア、ラスボス…
夜戸瑠璃子のイメージがラスボ -
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ネタバレマンションで孤独死した女の謎を追う女刑事と、その女の転落人生とでもいうべき生い立ちが交差し、やがて一つの大きな事件へと繋がっていく。リーダビリティは非常に高く、一気に読み切ってしまった。ジャンルとしてはイヤミスながら社会派ミステリの要素も盛り込んでおり、陽子の人生に襲いくる悲劇は毒親に始まり、既婚者との不倫、夫の浮気、保険金の枕営業、風俗とテンプレートな現代社会の闇という感じでありながら、実話系雑誌にありがちなテンプレだけに想像もしやすく、結末が孤独死と分かっているからこそ一見救済に見えた事柄でも一皮捲れば現実はそう甘くないことを読者に突きつけてくる。転じてそれは社会情勢の変化の中で、結婚を選
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孤独死体で発見された鈴木陽子の人生と、NPO法人の代表の殺人事件を描いたミステリー。
平凡な家庭に生まれたはずが、父親の失踪から始まり、暗い闇の方へ落ちていく様に、どこで選択を間違えてしまったんだろう?と考えてしまう。
陽子の事件を調べる刑事綾乃も、離婚して復職したが、ひとたび間違えば陽子のようになっていたのだろうか?
綾乃のように強い意志があれば、陽子は幸せになれたんだろうか?
一度落ちてしまうと、そこから抜け出すのは難しい。
それなのに、自分が落ちる時に巻き込んでいく人や、強奪していく人はたくさんいる。
世の中の仕組みを知って賢く立ち回らないと、搾取され続けてしまうだろう。
文庫本 -
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警官をテーマに、七人の作家が競演する書き下ろし警察短編集
「上級国民」葉真中顕
葉真中さんらしい、人間の陰をえぐる短編。
現代社会の問題を踏まえながら、「下級国民」の強かでしなやかな生息を描きます。
「許されざる者」中山七里
刑事犬養隼人シリーズのスピンオフ的短編。
コロナ禍の東京オリンピックを背景に、不祥事の数々を折り込みます。
「Vに捧げる行進」呉勝浩
あのコロナ禍当初の、息苦しい近隣・職場・日本、そして世界。
「死を捨て街に出る」その衝動を描きます。
「クローゼット」深町秋生
性的嗜好を隠して生きる“クローゼット”。
レイプ事件の被害者と加害者、それぞれの告白を前に、刑事は自らの