【感想・ネタバレ】政治的に正しい警察小説のレビュー

あらすじ

社会派ミステリー作家が放つ問題作。

“ポリティカル・コレクトネス”をコンセプトにした警察小説の依頼を受けた、新人作家・ハマナコがたどり着く境地とは……!? 表題作「政治的に正しい警察小説」ほか、偶然通りかかったカレーショップで、生き別れた母の思い出の味に再会した大学生の僕とその“隠し味”をめぐる「カレーの女神様」、25歳の若さで亡くなった“史上最強の棋士”紅藤清司郎の没後20年にあたり、彼の軌跡を取材したライターがたどりつく真相を描く「神を殺した男」など。驚愕と感嘆にあふれた全6編を収録。『ロスト・ケア』『絶叫』など社会派ミステリーの新鋭が放つ、ブラックユーモアミステリー集が文庫オリジナルで登場。

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Posted by ブクログ

葉真中作品2作品目。前回の『ロスト・ケア』の本格長編とは異なるブラックユーモア短編集。

タイトルの「政治的に正しい警察小説」は内容がどうというよりも本作品のコンセプトにぴったりの社会への皮肉たっぷりの作品。少し星新一テイストも感じる。ポリティカルコネクティスを突き詰めていくと何も書けなくなるというのは非常に理解できる。直接的な批判ではなく、苛烈な価値観が破綻をもたらすことを、ユーモアに表せるのが小説の魅力だと改めて思った。

また4作目の『リヴィング・ウィル』は安楽死をテーマにしており、『ロスト・ケア』と同じく高齢化社会における社会問題に切り込む作者らしい作品だと思った。『ロスト・ケア』とは違う軽いテイストだが、脳死状態の人の感情はその時にしか分からないという非常に難しい問題を上手く捉えれていると思った。

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2020年11月14日

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葉真中顕さんにしては珍しい独立した短編集。どれもイヤミス全開。『秘密の海』..1番釈然としない。『神を殺した男』..1番読み物として面白い。『推定冤罪』..1番気持ち悪い。『リビング・ウィル』..1番どうでもいい。『カレーの女神様』..1番よく出来ている。『政治的に正しい警察小説』..1番ナンセンス。カッコウ女史は喪黒福造で脳内再生。お気に入りは『神を~』と『カレー』。ハマさんは長編の方が面白いと思うが、こういう切りのいい短編集も移動時間に読むのにちょうど良かった。

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2020年11月07日

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ネタバレ

 2017年10月に文庫オリジナルで刊行されていた、葉真中顕さんの短編集である。『W県警の悲劇』ではブラックな作風が垣間見えたが、本作はそのものずばり、ブラックユーモアに特化した作品集となっている。

 「秘密の海」。虐待を受けて育った2人が結ばれ、子宝も授かった。ところが運命は酷だった…。テーマ的に重い描写は避けられないが、本作中唯一、温かい気持ちになる1編。虐待は連鎖するとよく聞く。どうか乗り越えてほしい。

 「神を殺した男」。史上最強棋士がライバルによって惨殺され、犯人もその場で命を絶った。その真相は…。あまりにも身勝手な理屈だが、彼なりに筋が通っているのか。羽生善治や藤井聡太は、選ばれし者なのは間違いない。

 「推定冤罪」。かつてのホラーバッシングを想起させる。エログロもまた表現の自由には違いないが、こういう無理筋な逮捕があってもおかしくはない気がする。社会派作品という側面はあるが、結末は予想の斜め上だったとさ。

 「リビング・ウィル」。自分も、寝たきりや脳死になったら、延命せずに尊厳死させてくれと思う。医師や家族の思惑が絡み合い、至った結論は…。いい話だと思わせておいて、何だこの結末は。なるべく健康で長生きしたいものである。

 「カレーの女神様」。母が失踪した経験を持つ青年。彼が偶然たどり着いたカレー店に入ってみると…。色々な意味で安直な、大変わかりやすいブラックユーモアとだけ書いておきましょう。一応伏線になっているのが何ともはや。

 最後の表題作「政治的に正しい警察小説」に、全部持っていかれた気がする。売れっ子作家がフリーの編集者に罵倒され続け、遂に至った境地とは…。もちろん差別はいけないが、この言葉に雁字搦めになるのも違うだろう。

 葉真中顕という作家の本質が、ますますわからなくなってきた。笑える面もないことはないが、ブラックユーモアは日本人にはハードルが高いかな。読者にとっても作者にとっても。

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2020年07月31日

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表題の「政治的に正しい警察小説」は「小説家」というイメージが思い切り出てる。
段々とのめり込み周りが見えなくなり執筆に没頭する。昔からの「これぞ小説家!」が世間から逸れ、落ちていく姿が描かれていると思います。
全部で6話ありますが「カレーの女神様」が一番おもしろかった。読後気分悪くなるけど……(^^;

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2020年07月14日

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社会派小説を得意とする葉真中顕さんの短編集。
六編からなる作品は、どれもアイロニーが効いたブラックユーモアミステリー。
どのストーリーもテンポよく進み、こちらが予想する終着点をことごとく裏切る驚愕のラスト。さすが葉真中顕さん、短編も面白いです!

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2019年09月13日

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6編の短編集。切ない「秘密の海」サスペンスチックな「神を殺した男」ミステリーホラー「推定冤罪」考えさせられる「リビング・ウィル」ブラックユーモア炸裂「カレーの女神様」痛烈な皮肉たっぷりの表題作。
私の知ってる「ほっこり」となんか違う・・・。

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2019年03月17日

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<内容紹介より>
飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭作家・浜名湖安芸は、「ポリティカル・コレクトネス」をコンセプトにした警察小説という”意識高い”依頼を受けた。パワフルでエキセントリックな編集者を相手に、ハマナコは超大作を書き上げる⁉(「政治的に正しい警察小説」)
大学生の僕は、偶然通りかかったカレー店で思い出の味に再会した。幼いころに生き別れた母の味だ。女店主にその「秘密の隠し味」を訊ねると……。(「カレーの女神様」)
そのほか、児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。著者初の文庫オリジナル作!

――――
ミステリ作品として、どんでん返しがしっかりと書かれていましたし、テーマ設定も斬新で、エンターテインメントとして完成されているように思います。
「ブラックユーモア」と題されているだけあって、決して後味が良い作品集ではないので、好みはわかれるかと思います。
……教育的によろしい、というタイプの本ではありませんが、”どんより”というか”ねっとり”というか、そういった印象の読後感が嫌いでは無ければ、楽しめると思います。少なくとも、「腑に落ちない」という印象をもった作品はありませんでした。

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2018年01月18日

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葉真中顕『政治的に正しい警察小説』小学館文庫。

ブラックユーモア・ミステリー短編集。6編を収録。随分と奇妙なタイトルの作品だなと思ったが、確かにブラックでユーモラスな一面のあるミステリーばかりだった。全体的に出来は並程度だろう。

『秘密の海』。哀しくも、これからの未来に光を感じる家族の物語とミステリーとが巧く融合された短編。

『神を殺した男』。将棋の世界を舞台にした短編。うーん。

『推定冤罪』。有名法廷ミステリーのパロディーのようなタイトルとは裏腹にひたひたと迫り来る恐怖を感じるミステリー。

『リビング・ウィル』。なるほど。そういう展開にオチなのか。

『カレーの女神様』。なんという展開だろう。まさかこんなストーリーだとは。

『政治的に正しい警察小説』。表題作。警察小説かと誤解しそうなタイトルのユーモアたっぷりの短編。まあ、こんなものなのか。

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2017年10月15日

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表題作のテンションの高さ!!その前のカレーの女神もなかなか!どうかお店でカレーを食べるときに思いだしませんように。

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2025年09月28日

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ブラックユーモアミステリー短編集。どの話も最後ゾワッとする。カレーの女神様とか当分忘れられやんゾワゾワ。警察小説と思ってたけど全然警察小説じゃなかってちょっと笑った。タイトルに踊らされた(笑)

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2023年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

相葉英雄「震える牛」を読み終え、社会派の警察物の面白さを体感し、その熱のまま手にしたのが本書。

いやぁ、騙されました。

表題からして警察物だと、しかも著者は葉真中先生とくれば私のイメージはまさに社会派。

本書は6作からなる短編集、しかも表題作が私にはあわない(TT)

確かに社会派とミステリー作品の融合でした。

「秘密の海」「神を殺した男」「推定冤罪」「リビング・ウィル」まではそれなりに楽しめました。

特に「リビング・ウィル」は感銘を受けた「ロスト・ケア」にも通じるものもあり、これぞ葉真中作品と思いきや...

1話ごとの設定は面白いのですが、なかなか評価もわかれる作品かと思います。

説明
内容紹介
社会派ミステリー作家が放つ問題作

“ポリティカル・コレクトネス”をコンセプトにした警察小説の依頼を受けた、新人作家・ハマナコがたどり着く境地とは……!? 表題作「政治的に正しい警察小説」ほか、偶然通りかかったカレーショップで、生き別れた母の思い出の味に再会した大学生の僕とその“隠し味”をめぐる「カレーの女神様」、25歳の若さで亡くなった“史上最強の棋士”紅藤清司郎の没後20年にあたり、彼の軌跡を取材したライターがたどりつく真相を描く「神を殺した男」など。驚愕と感嘆にあふれた全6編を収録。『ロスト・ケア』『絶叫』など社会派ミステリーの新鋭が放つ、ブラックユーモアミステリー集が文庫オリジナルで登場。

【編集担当からのおすすめ情報】
著者の企みに満ちた、スリリングな展開のミステリー6編を収録しています。驚きの逆転劇をお楽しみください。
内容(「BOOK」データベースより)
飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭作家・浜名湖安芸は、「ポリティカル・コレクトネス」をコンセプトにした警察小説という“意識高い”依頼を受けた。パワフルでエキセントリックな編集者を相手に、ハマナコは超大作を書き上げる!?(「政治的に正しい警察小説」)大学生の僕は、偶然通りかかったカレー店で思い出の味に再会した。幼いころに生き別れた母の味だ。女店主にその「秘密の隠し味」を訊ねると…。(「カレーの女神様」)そのほか、児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。著者初の文庫オリジナル作!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
葉真中/顕
1976年東京都生まれ。2012年、介護問題をテーマとした『ロスト・ケア』で第一六回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、ミステリー作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2022年11月05日

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ポリティカル・コレクトネスをコンセプトにした警察小説の依頼を受けた作家のハマナコが、超大作を書き上げ…。表題作はじめ全6編を収録したブラックユーモア・ミステリー集。

長編作家と勝手に思っていた葉真中顕だけれど、ブラックユーモアにあふれた短編も書けるのかと驚いた。最後に収録の表題作はかつての往年の筒井康隆のような狂気にあふれる作品だった。
(Ⅽ)

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2021年03月28日

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『W県警の悲劇』は連作だったが、本書は収録された6編が完全に独立した短編集だ。タイトルから『W県警』のような作品を想像していたので意表を突かれた。収録作品はブラック・ユーモアだったり、スプラッターだったり、バラエティに富んでいてどれもおもしろかったが、中でも「リビング・ウィル」は興味深かった。ぼくが読んだ浜名湖安芸……じゃなかった、葉真中顕名義の単著としてはこれが最後となる。早く新作が読みたい!

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2020年06月04日

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児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死、お袋の味、言葉狩りと、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。
ほどよい加減の毒がクセになりそうな短編集。特に表題作は破綻寸前のヤバい作品だが、筒井康隆の名作『残像に口紅を』を彷彿させる問題作。

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2020年04月13日

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⑧児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマ六篇を収録するブラックユーモア・ミステリー集。
「カレーの女神様」そして「リビング・ウィル」、表題も良かった。小松左京風かな。

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2020年01月25日

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シリアスな長編とはひと味異なる短編集。テーマは様々で、いずれも筒井康隆風のブラックジョークが楽しめます。大御所に比べるとまだまだ毒は足りないですが…。

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2019年09月30日

Posted by ブクログ

長編に対して、かなりコミカルな短編集で少し意外。
何も書かないことが一番のポリティカルコレクトネスとは。
「神を殺した男」と「リビングウィル」が面白かった。動けないけど意識のみあるという状況で尊厳死ってつらいだろうなー。

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2018年11月03日

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裏表紙のあらすじに興味を惹かれ購入。収録順序は必ずしも発表順ではなく、巻末へ向かうに従いブラックなエピソードになっていくのは意図的?作品毎にテーマが盛り込まれ、それが上手に消化されており圧巻。まさか、表題作が一番エキセントリックだとは…。

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2018年06月20日

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ストーリーテラーなのは間違いないと思うのだ。当初の印象とは裏腹に、思わぬ方向へ進み出す展開はとても魅力的だ。
ただ、その内容と表現が少々エキセントリックに感じてしまう。何もそこまで、、、、と思ってしまうところがしばしば。
6つの短編で構成された本作品。「推定免罪」「神を殺した男」はとても好き。「リビングウィル」「カレーの女神様」はうーん、、、。「秘密の海」はそっかなるほどね。「政治的に正しい警察小説」はあまりのぶっ飛び具合に苦笑い。
って感じでした。

また次作に期待します。

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2018年05月12日

Posted by ブクログ

「ロスト・ケア」「絶叫」と衝撃的な社会派作品を描いた作家さんの書き下ろし「ブラック・ユーモア」短編集。
何の情報もなく、タイトルだけで手に取ったので、警察小説だと思い込んでいたが、警察が出てくる気配は全くない。そしてタイトルに使われた「政治的に正しい警察小説」にも警察は出て来ない…完全に自分の勘違いだった…
長編でも先が読めない展開が武器の作家さんだけど、今作に納めれたいずれの作品も、読み終わった後に「え?どういうこと?」と思うことがあり、「ブラック・ユーモア」と言うより、「イヤミス」感もある感じ。残酷な話が苦手人は読まない方がいいかも。

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2018年02月03日

Posted by ブクログ

著者あとがきがないので何とも言えないが、筒井康隆にインスパイアされたような短編集だ。「秘密の海」での児童虐待でブラックな雰囲気を感じた。「リビング・ウイル」は筒井作品「生きている脳」を彷彿とさせ、そのあとの表題作を含む短編2作は正常から狂気へと進む様が懐かしさを感じる。

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2018年01月12日

Posted by ブクログ

介護現場から、現代の喫緊の問題を投げかけた『ロスト・ケア』を著した著者の、その作品とは異なるブラックユーモア・ミステリー集。
どんな警察小説かと、思わず手に取ってしまう表題作の『政治的に正しい警察小説』。パワフルでエキセントリックなこの短編は、まるで筒井康隆の世界。警察小説を期待したファンは、見事に裏切られる。
『カレーの女神様』は、何とも言えない味わいの恐怖小説の類か。
『リビング・ウィル』のオチは、星新一を思わせる。
その他、児童虐待、将棋、冤罪と、それぞれ多彩なテーマで、それなりに楽しめる。

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2017年11月07日

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