あらすじ
社会派ミステリー作家が放つ問題作。
“ポリティカル・コレクトネス”をコンセプトにした警察小説の依頼を受けた、新人作家・ハマナコがたどり着く境地とは……!? 表題作「政治的に正しい警察小説」ほか、偶然通りかかったカレーショップで、生き別れた母の思い出の味に再会した大学生の僕とその“隠し味”をめぐる「カレーの女神様」、25歳の若さで亡くなった“史上最強の棋士”紅藤清司郎の没後20年にあたり、彼の軌跡を取材したライターがたどりつく真相を描く「神を殺した男」など。驚愕と感嘆にあふれた全6編を収録。『ロスト・ケア』『絶叫』など社会派ミステリーの新鋭が放つ、ブラックユーモアミステリー集が文庫オリジナルで登場。
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Posted by ブクログ
2017年10月に文庫オリジナルで刊行されていた、葉真中顕さんの短編集である。『W県警の悲劇』ではブラックな作風が垣間見えたが、本作はそのものずばり、ブラックユーモアに特化した作品集となっている。
「秘密の海」。虐待を受けて育った2人が結ばれ、子宝も授かった。ところが運命は酷だった…。テーマ的に重い描写は避けられないが、本作中唯一、温かい気持ちになる1編。虐待は連鎖するとよく聞く。どうか乗り越えてほしい。
「神を殺した男」。史上最強棋士がライバルによって惨殺され、犯人もその場で命を絶った。その真相は…。あまりにも身勝手な理屈だが、彼なりに筋が通っているのか。羽生善治や藤井聡太は、選ばれし者なのは間違いない。
「推定冤罪」。かつてのホラーバッシングを想起させる。エログロもまた表現の自由には違いないが、こういう無理筋な逮捕があってもおかしくはない気がする。社会派作品という側面はあるが、結末は予想の斜め上だったとさ。
「リビング・ウィル」。自分も、寝たきりや脳死になったら、延命せずに尊厳死させてくれと思う。医師や家族の思惑が絡み合い、至った結論は…。いい話だと思わせておいて、何だこの結末は。なるべく健康で長生きしたいものである。
「カレーの女神様」。母が失踪した経験を持つ青年。彼が偶然たどり着いたカレー店に入ってみると…。色々な意味で安直な、大変わかりやすいブラックユーモアとだけ書いておきましょう。一応伏線になっているのが何ともはや。
最後の表題作「政治的に正しい警察小説」に、全部持っていかれた気がする。売れっ子作家がフリーの編集者に罵倒され続け、遂に至った境地とは…。もちろん差別はいけないが、この言葉に雁字搦めになるのも違うだろう。
葉真中顕という作家の本質が、ますますわからなくなってきた。笑える面もないことはないが、ブラックユーモアは日本人にはハードルが高いかな。読者にとっても作者にとっても。
Posted by ブクログ
相葉英雄「震える牛」を読み終え、社会派の警察物の面白さを体感し、その熱のまま手にしたのが本書。
いやぁ、騙されました。
表題からして警察物だと、しかも著者は葉真中先生とくれば私のイメージはまさに社会派。
本書は6作からなる短編集、しかも表題作が私にはあわない(TT)
確かに社会派とミステリー作品の融合でした。
「秘密の海」「神を殺した男」「推定冤罪」「リビング・ウィル」まではそれなりに楽しめました。
特に「リビング・ウィル」は感銘を受けた「ロスト・ケア」にも通じるものもあり、これぞ葉真中作品と思いきや...
1話ごとの設定は面白いのですが、なかなか評価もわかれる作品かと思います。
説明
内容紹介
社会派ミステリー作家が放つ問題作
“ポリティカル・コレクトネス”をコンセプトにした警察小説の依頼を受けた、新人作家・ハマナコがたどり着く境地とは……!? 表題作「政治的に正しい警察小説」ほか、偶然通りかかったカレーショップで、生き別れた母の思い出の味に再会した大学生の僕とその“隠し味”をめぐる「カレーの女神様」、25歳の若さで亡くなった“史上最強の棋士”紅藤清司郎の没後20年にあたり、彼の軌跡を取材したライターがたどりつく真相を描く「神を殺した男」など。驚愕と感嘆にあふれた全6編を収録。『ロスト・ケア』『絶叫』など社会派ミステリーの新鋭が放つ、ブラックユーモアミステリー集が文庫オリジナルで登場。
【編集担当からのおすすめ情報】
著者の企みに満ちた、スリリングな展開のミステリー6編を収録しています。驚きの逆転劇をお楽しみください。
内容(「BOOK」データベースより)
飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭作家・浜名湖安芸は、「ポリティカル・コレクトネス」をコンセプトにした警察小説という“意識高い”依頼を受けた。パワフルでエキセントリックな編集者を相手に、ハマナコは超大作を書き上げる!?(「政治的に正しい警察小説」)大学生の僕は、偶然通りかかったカレー店で思い出の味に再会した。幼いころに生き別れた母の味だ。女店主にその「秘密の隠し味」を訊ねると…。(「カレーの女神様」)そのほか、児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。著者初の文庫オリジナル作!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
葉真中/顕
1976年東京都生まれ。2012年、介護問題をテーマとした『ロスト・ケア』で第一六回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、ミステリー作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)