葉真中顕のレビュー一覧

  • コクーン

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    結果として
    一気に読む手が止められず
    引き込まれる作品だった。

    読み進める程にしんどくなり、
    どんどん気持ちが落ちて行く。

    実在した事件や災害を背景に
    新興宗教にのめり込み、犯罪に手を汚す者たち、
    信仰の教えに陶酔する事で救われる者、
    裏切られる者に関わる家族。

    無信仰の者には到底理解できない。
    信じる者も信じない者も救われない結末。

    勿論フィクションだけど、
    実際にあった事件の背景を生々しく
    解明するようなリアルさに
    まんまとやられた。


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    2021年04月02日
  • 政治的に正しい警察小説

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    ポリティカル・コレクトネスをコンセプトにした警察小説の依頼を受けた作家のハマナコが、超大作を書き上げ…。表題作はじめ全6編を収録したブラックユーモア・ミステリー集。

    長編作家と勝手に思っていた葉真中顕だけれど、ブラックユーモアにあふれた短編も書けるのかと驚いた。最後に収録の表題作はかつての往年の筒井康隆のような狂気にあふれる作品だった。
    (Ⅽ)

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    2021年03月28日
  • 凍てつく太陽

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    特高警察官として、戦時中の不用意な言動を取り締まる主人公は、身に覚えのない罪に問われ投獄される。
    他民族としての差別、圧倒的不利な戦況を批判する事も許されず、身の潔白を主張する事も許されない、この物語は理不尽さに溢れている。
    後半からのテーマは、主人公が如何に自分の使命を果たすか、でありそれは何の為に生きるか
    という問いでもあると感じた。

    重厚な長編小説であり、途中で読む側が息切れしてしまった感があり、星三つ。

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    2020年12月22日
  • コクーン

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    1995年3月20日、丸の内で起こった無差別乱射事件。カルト教団『シンラ智慧の会』による凶行の首謀者は、忌まわしき過去を背負う教祖・天堂光翅だった…。平成を揺るがすテロ事件が生み落とした絶望とかすかな希望を、幻想的かつスリリングに物語る衝撃作。
    美しい蝶も、一匹ならのどかな平和を感じる。数えきれない大量の蝶が翔んでいると幻想的だが恐怖も感じる。美しさに潜む悪の影ほど、掴みきれない想いがある。

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    2020年11月15日
  • コクーン

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    カルト教団による無差別乱射事件が起こった。
    ある二人の女性の人生を主軸に、テロに関連した様々な人々が「蝶夢」の形で視点を切り替えながら進む。
    何故悲劇が起こったのか?を少しずつ掘り進めながら探っていく群像劇。

    悲劇的な人生を送っている人物ばかりで全体的に鬱々とした空気が漂っているが、読み終わった時は個々の人物ではなく、一つの大きな流れの歴史を鑑賞した気分になった。群像劇だがギリギリのところでまとめが成り立っている。異色の作品だと思う。
    実在の事件をモチーフにした社会小説。

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    2020年10月26日
  • 凍てつく太陽

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    終戦間際の北海道を舞台に特高警察、民族問題に軍需産業、大脱獄劇にサバイバルなど、様々な要素がテンコ盛りのエンタメ大作。舞台設定のスケールが壮大な上に情報量も膨大なので、大味でリアリティに欠けるプロットではあるが、伏線をきっちり回収し、収まるべき所に収まる作品構成は秀逸で、希望の灯が宿るエピローグも実に感動的。圧倒的不利な戦況下で思考を停止し、国民に対し虚偽の戦況を伝達していた皇国日本を隠蔽体質の現政権に擬え、現代日本に警鐘を鳴らしている様にも感じられた。終戦記念日前、このタイミングでの文庫化に意義がある。

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    2020年08月15日
  • 政治的に正しい警察小説

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    『W県警の悲劇』は連作だったが、本書は収録された6編が完全に独立した短編集だ。タイトルから『W県警』のような作品を想像していたので意表を突かれた。収録作品はブラック・ユーモアだったり、スプラッターだったり、バラエティに富んでいてどれもおもしろかったが、中でも「リビング・ウィル」は興味深かった。ぼくが読んだ浜名湖安芸……じゃなかった、葉真中顕名義の単著としてはこれが最後となる。早く新作が読みたい!

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    2020年06月04日
  • 夜更けのおつまみ

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    ポプラ社のPR誌「Astra」掲載の‘おつまみ’をテーマにしたアンソロジー。大作家の随筆をワンテーマであちこちから抜いて集めたシリーズもバラバラぶりがよいけど、お題のために書かれた、わりと若めの作家さんのエッセイはブレてなくて、おいしそうでいいなあ。おつまみ作って飲みたくなるなあ。夜中にw

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    2020年05月25日
  • コクーン

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    ある新興宗教団体が銀座で銃乱射事件を起こす。乱射事件で息子が犠牲になった母親、教祖の幼なじみ、事件の加害者など、その集団や教祖に関わりのある人たちが事件とは関係ない部分を語ることで事件の根本をあぶり出す。

    オウム事件を元にしているのは明らか。でも事件に焦点当てているわけではなく、それに直接的、間接的に関わる人たちのエピソードで事件を形作っている。
    最後の章の真意はなんとも言えないが、起こったことは全て必然だったと言っているのか?
    あらすじも感想もなんだかすごく書きづらい。

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    2020年05月04日
  • コクーン

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    これまで読んできた葉真中作品とはかなり異なる癖玉だ。とある新興宗教が起こしたテロ、その被害者と加害者、教祖とその母親などが、黄金の翅をもつ蝶によって繋がれていく。キーワードは“バタフライ・エフェクト”。一見、無関係に見える人や出来事が絡み合い作られる世界はパラレル・ワールドだ。かなり実験的な作品で、賛否両論あるかもしれないが、ぼくには楽しめた。

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    2020年04月21日
  • ブラック・ドッグ

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    遺伝子操作で作られた巨大な犬が、人間と動物の間に種の差別をするなという主張のテロ組織に封鎖されたスタジアム内で人を殺しまくる。
    主人公?とか主要メンバーが、どんどん、あっさり死んでいく、こいつは最後まで生き残るだろうっていうのがすべて裏切られるなかなかないパターン。そして最後はテロ組織のリーダーがまんまと脱出する。悪者が勝ち逃げするのがムカつくので後味悪い。犯人に正義があって逃げ延びるストーリーはいいが、この小説では主義はあっても結局テロの主犯でしかない。関係ない者を無差別に殺すのやつは最後に鉄槌をくらわなければスカッとしない。

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    2020年04月15日
  • 政治的に正しい警察小説

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    児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死、お袋の味、言葉狩りと、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。
    ほどよい加減の毒がクセになりそうな短編集。特に表題作は破綻寸前のヤバい作品だが、筒井康隆の名作『残像に口紅を』を彷彿させる問題作。

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    2020年04月13日
  • 夜更けのおつまみ

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    お酒もおつまみも、好みがそれぞれなのが面白い。
    酒ではなくつまみがテーマなのに、つまみを美味しく食べるために飲むのではなく、酒を美味しく飲むために食べているのですよ!と開き直っている執筆者がチラホラ混じっているのが微笑ましくてよい。
    オイルサーディンは美味しい。

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    2020年03月14日
  • 政治的に正しい警察小説

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    ⑧児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマ六篇を収録するブラックユーモア・ミステリー集。
    「カレーの女神様」そして「リビング・ウィル」、表題も良かった。小松左京風かな。

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    2020年01月25日
  • コクーン

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    長編作品と思いきや連作短編集。題材は新興宗教に東日本大震災。解説にもある通り、確かに著者の集大成的なイメージはある。描かれるのは図らずも宗教団体に巻き込まれた家族たちのその後。重苦しい題材だが、短編に落とし込まれている為、割と読み易く仕上がっている。その反面、シンラの会は紋切り型のカルト教団に収まっているし、社会問題を色々盛り込み過ぎて物語の奥行きが狭い印象も残る。綺麗にまとまっているのだが、前二作の衝撃に比べると満足度は決して高くはない。総括のエピローグは実に包容的だが、あまりにも救いがないとも言える。

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    2019年11月10日
  • 政治的に正しい警察小説

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    シリアスな長編とはひと味異なる短編集。テーマは様々で、いずれも筒井康隆風のブラックジョークが楽しめます。大御所に比べるとまだまだ毒は足りないですが…。

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    2019年09月30日
  • コクーン

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    オウム事件を下敷きにしながら並行世界を描いた、連作短編集のような異色ミステリー。戦中〜現在までの世相を絡めながら、バタフライ・エフェクトで話が繋がっていく。巻末(単行本ではカバー裏?)の衝撃的なオマケ「コクーン 2016」が作者らしいサービス。本編中でも、ある主要人物の来歴が……。他にも気付いていない仕掛けや暗喩がありそうで、モヤモヤ感が残った。

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    2019年07月31日
  • コクーン

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    カルト教団のテロってことで阿鼻叫喚が展開されると思いきや、その周辺のお話。生々しい地獄ではなく緩やかにじわじわ染み込む地獄。

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    2019年07月22日
  • コクーン

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    ネタバレ

    読み応えはあるのに、なぜかとてもモヤモヤします。

    新興宗教団体によるテロ事件に何らかの形で関わりのある登場人物の昔と今、ふたつの時代。モヤモヤの原因はおそらく最終章。事件を起こした教祖の母親がわが子を出産したことを悔やみつつ、自分がこの子を産まなかった場合、わが子の上を行く外道が出てきてさらなる大惨事が起きたであろうパラレルワールドを想像します。自分の息子が起こしたテロのほうがまだマシだったと考えることにモヤモヤ。

    フィクションであっても、被害者や加害者の遺族のいつまでも癒えない思いや、その思いを抱えたまま暮らす様子には触れることができた気はします。事件を起こした犯人の思いはわからないから

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    2019年07月17日
  • コクーン

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    葉真中顕、これまでの作品すごく好き。いつも社会問題を扱って、倫理とは問うてくる感じが好き。さらに、だいたい物語の後半でどんでん返しがあって「あああ、あなただったの〜」って展開が快感だったんだけど、この作品ではどんでん返しはなかったというか、弱かったというか。私が期待しすぎたのか。
    この作品は今までの作品より詰まっている要素が多いかなと思う。登場人物も多く、視点もコロコロ変わる。いろんな関係のない人が、いろんなところで関係していて、自分より大きなものに影響される人生に、「もしこうだったら」と空想することがある種の救いであり、とらわれる対象でもある。
    おもしろくて買って3時間で読んでしまったが、こ

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    2019年05月17日