【感想・ネタバレ】コクーンのレビュー

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Posted by ブクログ

 絶望の世界の物語なのに、なぜか神々しい世界へ連れて行かされる。今まで経験のしたことがない物語体験でした。

 カルト教団、診療報酬、自殺サイト、震災、戦争、性的虐待……、

 『ロストケア』『絶叫』と同様に今回も葉真中さんは社会の闇、人間の闇に容赦なく光を当てます。

 各章に登場するそれぞれの登場人物たちが見る闇と地獄。そして幕間に登場するある女性の壮絶な人生。葉真中さんの筆力はますます乗ってきているというか、光無き世界とその運命に翻弄される人物たちを、容赦なく描きます。どれもシリアスで暗い話ばかりですが、ついつい引き込まれます。

 そして、第4章を読み始めたとき「ん?」と思う人もいるのではないかと思います。 なんとも意味深な夢から始まり、そして4章の語り手の幼少時代も、人によっては「ん?」と勘ぐる人もいるかもしれません。

 そしてその意味は最後に明らかになります。そして4章以外にもところどころで描かれていた、引っかかりたちにも、途方もない意味があったことが分かるのです。矛盾を最後に意味を持たせるということに置いては、これはミステリーなのかもしれません。しかし、そこから導き出される世界の真実は、ミステリという概念を大きく飛び越えてしまうのです。

 介護、貧困……自分の世界も運命も、ふとしたきっかけで容易に反転しうることを、これまで読んできた葉真中作品では描いてきたように思います。それは個人ではどうしようもない、社会がそして世界が個人の上に乗っかり、押さえつけているからのようにも感じます。

 しかし、その社会や世界を相対化するような光景を葉真中さんは用意します。それはある意味このどうしようもない世界の、一つの究極の真理なのかもしれません。

 多分この種明かしに納得できない人もいると思います。ただこの物語の到達点は、おそらくそんじょそこらの作品では、決して描ききれないものだと僕は強く思うのです。

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2019年09月30日

Posted by ブクログ

1匹の黄金蝶が導く、数多の人たちの過去、そして現在。
全ての人の運命は、1995年にカルト教団「シンラ智慧の会」が起こした銃乱射事件で繋がっている。
それぞれの人が各々の考えで行動し、生きていると思うことは当然なのか、それともこの世界の全ては巨大な装置に牛耳られ決まったルートをあたかも運命かのように選ばされているだけなのか…。

さすが葉真中顕さん、今回もめちゃくちゃ深かったです。
本書のキーワードであるバタフライ効果の着地点、なるほど!面白い!
「社会小説」「ミステリー」だけでは到底表現し尽くせない緻密さに酔いしれる作品でした。

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2019年09月24日

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1995年の事件を主軸に過去と現在が行ったり来たりのバタフライエフェクトもの 登場人物が多い はじめはそんなに多いと思ってなくて、年代的に合わないからだれの話だろうと混乱するけど、読み進めていくと緻密によくできていて凄いなあと感心する

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2023年07月03日

Posted by ブクログ

カルト教団「シンラ智慧の会」
その教祖、教祖の母親、信者、信者の家族、教団が起こした事件の被害者とその家族。

いろんな面から見る世界。

複雑に絡み合う出逢い。

あの時、この道を選んでいなければ幸せだったのか。

運命というものを考えさせられる。

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2023年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

葉真中作品にしては評価が低かったのでイマイチなのかな…?と思いながら読み始めたけど、あれよあれよとイッキ読みでした。
最後まで読んでパズルのピースがピタッとハマったけど、、バタフライ・エフェクト、、なんか怖いなぁっと思った。
でもその後、何気なくページを捲っていたら、続きのようなものががあって、、、うわぁぁぁ、、、やめて、、、ってなりました。。
彼女達のことは唯一の希望って感じだったのに、、、負の連鎖はどこまで続くの……?
当分の間、、ちょうちょ、、怖いかも。。

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2022年08月15日

購入済み

蝶を視点に物語が動くので神秘的な印象がある。時代や登場人物がコロコロ変わり、それぞれに繋がりがあるのでついていくのが大変だった。繭子のエピソードが一番こわかった。

#ダーク

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2022年08月10日

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ネタバレ

広義でのバタフライ・エフェクトを狭義に落とし込んだような作品。

ロスト•ケアを読んですぐに読み始めた。
こちらも現実の事件と少し絡めて物語が進む。
中心にいるはずの教祖のことは深く掘り下げられず、周囲の人々の人生を描かれている。

単行本と文庫本では掌編の順序が逆なようなので、個人的には文庫で読んだほうが楽しめそう。

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2022年06月03日

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『ロスト・ケア』から派生した、行き場のない人々の姿が、こちらでも描かれているように思う。ロスト〜ではぎこちなかった文体や物語性は、強く確かな骨格を持って、鍛えられた鋼のようだ。
余談だが、こちらを読んだ方は、ぜひ、中村文則『教団X』も読んで欲しい。

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2020年12月25日

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ネタバレ

「オウム真理教」を彷彿させる「シンラ智慧の会」が引き起こした無差別銃乱射事件、その教祖である天堂光翅を中心に、彼の関係者達の繋がりを描いた作品。

そこに共通し登場するのが金色に光る翅を持つ✨蝶✨

人生の分岐点とも言うべき分かれ道に差し掛かった時にどこからともなく現れ、「こっちだよ」と言わんばかりに導いていく。

もちろん、違った選択をしていればどんな未来が待ち受けていたのかは誰にもわからない。

どこか幻想的な雰囲気を醸し出していたが、時間を跨ぎ、登場人物の視点がコロコロと代わる為、私には読み辛い作品でした。


内容(「BOOK」データベースより)
一九九五年三月二十日、丸の内で起こった無差別乱射事件。カルト教団『シンラ智慧の会』による凶行の首謀者は、忌まわしき過去を背負う教祖、天堂光翅であった。彼や教団に関わった者たちの前に現れる一匹の煌めく蝶。金色の翅が導くのは地獄か、それとも…。平成を揺るがすテロ事件が生み落とした絶望とかすかな希望を、幻想的かつスリリングに物語る衝撃作!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
葉真中/顕
1976年東京都生まれ。2013年、『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー。第2作『絶叫』は第36回吉川英治文学新人賞、第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)の候補となり、大きな話題を呼ぶ。’19年、『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2023年04月13日

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テロを起こした教祖と、その事件に人生を狂わされた人たち、教祖を産んだ母、関わりになった人たちの物語がつぐまれている。
生きることって苦しいよね、でも意味があるよねということなんだろうけど、複雑で割り切れるものでもなし。
文章は上手いし、話も複雑に絡み合っている構成も上手い。
面白いけど。難しい。

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2023年02月03日

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こことここが繋がってるんだ、あーだからか、、的な繋がりは多数だけれど、どんでん返し的な驚きはない。

読んでて辛くなる描写が多かった。救われない。
カルト的宗教団体、格差社会、生活保護の搾取、集団自殺、、等々、実際の社会問題や震災など、リアルなものが盛り込まれている。

読み終わってモヤモヤっとする

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2022年04月30日

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個人の選択の違いで少しずつ分岐し存在するかもしれないパラレルワールドでも、歴史の大きな流れは変わらないとしたら。。
主人公の、カルト宗教団体の教祖としてテロを起こした息子が、生まれてない世界の方がより大きなテロ事件も原発事故も起こってたら、わたしと息子の存在にも意味があったのだ…という着地は主人公の救いにしかならないけれど、主人公にとっては唯一の救いだろうな。
丸の内で銃乱射事件を起こす《シンラ智慧の会》も東日本大震災も、ハルピンの描写も生々しい。群像劇で連作短編集なので前の話に出てきていた人物がこの人だったんだ…というつながりが恐ろしいです。“沼”はこれから天堂光翅みたいになるんだろうか?
「原因と結果は、常に強力な因果律で結びついているのだ」。だとすると、今起こっている事も因果応報なのだろうか。思いの外落ち込みます。

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2022年03月09日

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結果として
一気に読む手が止められず
引き込まれる作品だった。

読み進める程にしんどくなり、
どんどん気持ちが落ちて行く。

実在した事件や災害を背景に
新興宗教にのめり込み、犯罪に手を汚す者たち、
信仰の教えに陶酔する事で救われる者、
裏切られる者に関わる家族。

無信仰の者には到底理解できない
信じる者も信じない者も救われない結末。

勿論フィクションだけど、
実際にあった事件の背景を生々しく
解明するようなリアルさに
まんまとやられた。


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2021年04月02日

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1995年3月20日、丸の内で起こった無差別乱射事件。カルト教団『シンラ智慧の会』による凶行の首謀者は、忌まわしき過去を背負う教祖・天堂光翅だった…。平成を揺るがすテロ事件が生み落とした絶望とかすかな希望を、幻想的かつスリリングに物語る衝撃作。
美しい蝶も、一匹ならのどかな平和を感じる。数えきれない大量の蝶が翔んでいると幻想的だが恐怖も感じる。美しさに潜む悪の影ほど、掴みきれない想いがある。

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2020年11月15日

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カルト教団による無差別乱射事件が起こった。
ある二人の女性の人生を主軸に、テロに関連した様々な人々が「蝶夢」の形で視点を切り替えながら進む。
何故悲劇が起こったのか?を少しずつ掘り進めながら探っていく群像劇。

悲劇的な人生を送っている人物ばかりで全体的に鬱々とした空気が漂っているが、読み終わった時は個々の人物ではなく、一つの大きな流れの歴史を鑑賞した気分になった。群像劇だがギリギリのところでまとめが成り立っている。異色の作品だと思う。
実在の事件をモチーフにした社会小説。

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2020年10月26日

Posted by ブクログ

ある新興宗教団体が銀座で銃乱射事件を起こす。乱射事件で息子が犠牲になった母親、教祖の幼なじみ、事件の加害者など、その集団や教祖に関わりのある人たちが事件とは関係ない部分を語ることで事件の根本をあぶり出す。

オウム事件を元にしているのは明らか。でも事件に焦点当てているわけではなく、それに直接的、間接的に関わる人たちのエピソードで事件を形作っている。
最後の章の真意はなんとも言えないが、起こったことは全て必然だったと言っているのか?
あらすじも感想もなんだかすごく書きづらい。

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2020年05月04日

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これまで読んできた葉真中作品とはかなり異なる癖玉だ。とある新興宗教が起こしたテロ、その被害者と加害者、教祖とその母親などが、黄金の翅をもつ蝶によって繋がれていく。キーワードは“バタフライ・エフェクト”。一見、無関係に見える人や出来事が絡み合い作られる世界はパラレル・ワールドだ。かなり実験的な作品で、賛否両論あるかもしれないが、ぼくには楽しめた。

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2020年04月21日

Posted by ブクログ

長編作品と思いきや連作短編集。題材は新興宗教に東日本大震災。解説にもある通り、確かに著者の集大成的なイメージはある。描かれるのは図らずも宗教団体に巻き込まれた家族たちのその後。重苦しい題材だが、短編に落とし込まれている為、割と読み易く仕上がっている。その反面、シンラの会は紋切り型のカルト教団に収まっているし、社会問題を色々盛り込み過ぎて物語の奥行きが狭い印象も残る。綺麗にまとまっているのだが、前二作の衝撃に比べると満足度は決して高くはない。総括のエピローグは実に包容的だが、あまりにも救いがないとも言える。

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2019年11月10日

Posted by ブクログ

オウム事件を下敷きにしながら並行世界を描いた、連作短編集のような異色ミステリー。戦中〜現在までの世相を絡めながら、バタフライ・エフェクトで話が繋がっていく。巻末(単行本ではカバー裏?)の衝撃的なオマケ「コクーン 2016」が作者らしいサービス。本編中でも、ある主要人物の来歴が……。他にも気付いていない仕掛けや暗喩がありそうで、モヤモヤ感が残った。

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2019年07月31日

Posted by ブクログ

カルト教団のテロってことで阿鼻叫喚が展開されると思いきや、その周辺のお話。生々しい地獄ではなく緩やかにじわじわ染み込む地獄。

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2019年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み応えはあるのに、なぜかとてもモヤモヤします。

新興宗教団体によるテロ事件に何らかの形で関わりのある登場人物の昔と今、ふたつの時代。モヤモヤの原因はおそらく最終章。事件を起こした教祖の母親がわが子を出産したことを悔やみつつ、自分がこの子を産まなかった場合、わが子の上を行く外道が出てきてさらなる大惨事が起きたであろうパラレルワールドを想像します。自分の息子が起こしたテロのほうがまだマシだったと考えることにモヤモヤ。

フィクションであっても、被害者や加害者の遺族のいつまでも癒えない思いや、その思いを抱えたまま暮らす様子には触れることができた気はします。事件を起こした犯人の思いはわからないから、とてつもなく不気味。

新興宗教のみならず、満州、行路病院(=生活保護を受ける患者を「転がす」病院)、東日本大震災のことまで盛り込まれてややこしく、誰が誰やらわかりにくい点と、性的に嫌な話が多いのと、それに目をつむったとしても陰惨すぎるのでめげます。それでも読み応えはあったから、他作品も読んでみたい作家。

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2019年07月17日

Posted by ブクログ

葉真中顕、これまでの作品すごく好き。いつも社会問題を扱って、倫理とは問うてくる感じが好き。さらに、だいたい物語の後半でどんでん返しがあって「あああ、あなただったの〜」って展開が快感だったんだけど、この作品ではどんでん返しはなかったというか、弱かったというか。私が期待しすぎたのか。
この作品は今までの作品より詰まっている要素が多いかなと思う。登場人物も多く、視点もコロコロ変わる。いろんな関係のない人が、いろんなところで関係していて、自分より大きなものに影響される人生に、「もしこうだったら」と空想することがある種の救いであり、とらわれる対象でもある。
おもしろくて買って3時間で読んでしまったが、これまでの作品の方が好きだったかな。

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2019年05月17日

Posted by ブクログ

なかなか面白かった。ただ、登場人物が多く、最後につながるんだろうなと思いつつ、名前と状況を憶えるのが大変だった。私がうといのか?

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2019年05月08日

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