【感想・ネタバレ】家族のレビュー

あらすじ

「家族って、なんだと思います?」

「現実の世界では、すんなり完全犯罪を
達成できてしまうこともあるんだって学んだんです」

2011年11月3日、裸の女性が交番に駆け込み、「事件」が発覚した。奥平美乃(おくだいら・みの)と名乗るその女性は、半年と少し前、「妹夫婦がおかしな女にお金をとられている」と交番に相談に来ていたが、「民事不介入」を理由に事件化を断られていた。
奥平美乃の保護を契機として、表に出た「死」「死」「死」…… 彼女を監禁していた「おかしな女」こと夜戸瑠璃子(やべ・るりこ)は、自らのまわりに疑似家族を作り出し、その中で「躾け」と称して監禁、暴行を主導。何十年も警察に尻尾をつかまれることなく、結果的に十三人もの変死に関わっていた。
出会ってはならない女と出会い、運命の糸に絡めとられて命を落としていく人々。 瑠璃子にとって「家族」とはなんだったのか。そして、「愛」とは。
「民事不介入」に潜む欠陥を日本中に突きつけた「尼崎連続変死事件」をモチーフとした、戦慄のクライムエンターテイメント!

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Posted by ブクログ

執着と洗脳の怖さを知れる小説。

読み終わるまで眠れない・・・
帯に記載されているように、読んだら内容が気になって止まれない魅力のある小説でした。

内容はなかなかエグい洗脳小説です。
人はこうやって洗脳されるのだと感じるし、家族の愛に飢える執着心やそれを巻き込む力に恐怖を感じました。

2011年の尼崎連続変死事件をモチーフにしているらしいですが、本当にこのようなことがあると思うと人間に恐怖すら感じました。

人に流されない強固な心があっても立ち向かえるのか?
力の暴力も怖く感じる・・・
どうしたらよかったのか同じ立場で考えることも大切な気がしました。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

・実際の事件を題材にした作品というだけあってリアリティがあった。
・最近「情報量が多すぎる」「そこまで全部書かなくても」「行間がないな」と感じる小説が多かったけど、今作はちょうどいいバランスで快適に読めた。
・暴力や虐待のシーンが多いけど、辛くて読めなくなるほどではなかった。
・作者の「葉真中顕」さんは東京生まれ、東京学芸大学教育学部除籍。ちょっと親近感。

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

読んでいて、辛くなる小説でした
実際に起きた事件をモチーフに描かれているとの事ですが、この様な事件が実際に起きたとなると
ひどいなと思いました
自分の立場ならどうやって守ろうかと思ったり
色々考えた作品でした
途中目を背けたくなる描写があったので
そこは少し斜め読みしてしまいました

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 この本を読んでいくと、フィクションの小説なのにノンフィクションの事件のルポを読んでいるような気がして、衝撃が半端なく大きかったです。今までの本は読み終わった後に「イヤミス」とか「後味が悪い作品」っていうのは何冊かは読んできましたが、これは読んでる途中でも、「イヤミス」や「後味が悪くなっていく」といった感情がありました。「この小説を読み終えて感想を書こう」と思ってもすぐにはさらっとは書けませんでした。(放心状態がしばらく続いたので)
 この小説って「尼崎連続変死事件」をもとに書いた小説っていうのを知って、ちょっと調べました。確かに似ていますね。「自己の親族らとともに他人の家族に寄生して疑似家族的な共同体を形成し、相手家族らを虐待・搾取していた特異な事件として報道され、一般の関心を集めた事件」と書いてありますが、まさにその通りだと思います。
 ある一人の女性が、周りの人を洗脳させて「家族」というものを作り出し、自分の思い通りに周りの人を動かして、自分に反対する人がいたら、その人を「躾け」と称して、「自分に従ってくれる人」で反対する人を虐待したり自殺に追い込む、要は自分の手を汚さずに相手を痛めつけるっていうことだと自分では理解しています。この女は自分のことを「教祖」だと思い、一種の新興宗教団体を作ろうとしていたのではないかと思いました。
 この小説を読み進めていくうちに、「家族とはなにか」を改めて考えさせられます。愛があったら血縁関係のない人でも家族だ、とかいろいろ書いてましたね。自分でも「家族」っていう意味を辞書などで調べたりしました。
 「民事不介入」っていう言葉がこの小説ではよく出てきました。この女は、警察が一般家庭のトラブルには「民事不介入」を理由に関われないことを巧みに利用していました。この「民事不介入」という言葉を読んで、真っ先に思い出したのが「桶川ストーカー殺人事件」です。これも警察が「民事不介入」を理由にストーカー被害者に対して適切な対応を取らなかったために被害者は殺されてしまった、という事件です。これも衝撃でした。「警察は事件が起きてから動くんだよ」という警察側の意見を聞いて警察への不信感が高まった事件でした。また、弱者の弱みに付け込んで、最後にはその人を殺害してしまう事件として「大宰府主婦暴行死事件」も思い出しました。これは事件のルポを読みました。これも事件の内容がひどかったですし、途中の警察の対応が不適切と思いました。
 などなど、この小説を読んで最初に怖いという感情があって、そのあとにいろいろと考えさせらることが多かったです。人間って他人を支配していくことで優越感を得たい欲深い生き物だな、とこの本を読んで改めて思いました。この小説に出会えて良かったと思っています。

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2025年12月11日

Posted by ブクログ

題材になった事件が事件なだけに、かなりこちらの心も削られそうな内容。
読み終わったあと、どんな事件かWikipediaで調べてしまい、余計ぐったり。
こういう暴力で洗脳された人を、なぜ逃げないのかという人もいるけれど、なかなか難しいよね。思考を放棄してしまった方が楽なのは分かる。
暴力描写がそこまで酷いものではなかったところは救いか。
主犯格に唆され、脅され、親や子を死に至らしめた人は今、何を思うのか。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

★5 なぜ犯罪に手を染めたのか、なぜ巻き込まれてしまったのか、なぜ早く解決できなかったのか #家族

■あらすじ
11月のある朝方、八王子の交番に勤務する警官が外に出ると、全裸の女性がふらふらと歩いていた。助けをもとめる彼女は以前から警察に相談をしていたものの、面倒な案件に巻き込まれたくない警察は、民事不介入を理由に事件化をせずにいたのだ。その後警察が捜査を開始すると、背後には多くの犠牲者がいることが浮き彫りになり…

■きっと読みたくなるレビュー
★5 家族… たった二文字、シンプルかつ強烈なタイトルですね。もはや予想はしていていたのですが、され以上に鬱々たる気分にしてくれる作品でした。

本作は2012年に実際にあった事件、尼崎事件をモチーフにした社会派ミステリー。血縁関係がないのに疑似的な家族関係を築き上げ、その共同生活の中で様々な犯罪行為を行ったという事件。正直、そんな事件あったなーという程度の記憶でして、本作を読んでしっかりと思い出すことができました。

まず言いたいこと、「力作」だということ。

これまでも葉真中顕先生は様々な社会問題をテーマに物語を描いてきましたが、本作も鬼エグですよ。間違いなく事件を詳細まで取材されているし、その中で憤り、悲しみ、悔しさなど、魂が抉られるような想いをしたに違いないんです。物語を紡ぐ時も、どうすればこの事件とその内面を表現できるのかを考えたはずなんです。先生の情熱をしっかりと体感させてもらいました。

一番の読みどころは「人間」です。

日本人は優しく穏やかで、何事にも冷静な聡明でな人が多いと思います。しかし本作においては、愚かな人間、奪われる人間、悪魔のような人間など、悲劇的な人間ばかりが出てくるのです。

なぜこんな犯罪をするのか、なぜ巻き込まれてしまったのか、なぜもっと早く解決できなかったのか。読んでる最中、これらをずっと頭の中で問いかけるのですが、答えが導き出せずに苦しくなる。彼らの倫理観の違いに愕然とし、ただただ茫然と読み進めるしかないのです。私も奪われる側の人間だったら、同じ行動しかできないかもしれません。

本作のテクニックが光る部分として「分かりづらい」点をあげたい。

物語の中心には主犯格の女性がいるのですが、彼女の視点で語られることは少ない。周りにいるたくさんの人物からの目線で物語が進行するから、人間関係が複雑なんです。また時系列も前後するので、どの時代の話なのかも把握しづらい。複雑に見せることによって、事件が解決に至らなかった難解さを表現してるように思うんです。

主犯格の女性は「愛」があれば家族になれるといった。

でも彼女は愛を与えるのではなく、奪い取るだけだ。子どもの頃の愛情不足ってのは、後にこういった悲劇をもたらすと思うと、本当に本当に親の責任ってのを考えさせられますね… そして警察の判断もひどいものです。色んな事情あるんでしょうが、市民を守る正義の味方であることを忘れずにいてほしいです。

■ぜっさん推しポイント
暴力の恐ろしさを知ってますか? 被害に遭った人たちは、畏れ逃げ惑うしかできず、従わざるを得ない状況になる。選択肢など与えず、自由を完全に奪ってしまうところが罪深いのです。

私はこの力でねじ伏せるという非人道的な行為は絶対に許せません、大嫌いです。あらためて自分の価値観を思い出させてくれた、厳然たる作品でした。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

とにかくヤバい。しばらく立ち上がれなくなる。実際の事件はもっと凄惨だったかもしれない。人の心を殺す作品。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

警察の「民事不介入」って便利な言葉よね……作品読んでても普通に怖かったけど、読んだあとに元になった事件をネットで見たら、ホント、ヤバいやつで、ひたすら恐怖を覚える作品でした

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

重い、重過ぎる。家族は愛による支配なんだよ、って怖過ぎるけど、でも若干だけどそうなのかも?そういう一面も確かにあるのかも…って思っちゃうんだよね。
極限まで追い詰められた人間の恐ろしさ、弱さなんかがありありと描かれていた作品。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

感想
実際の事件をモチーフにしているところが怖い。

家族という言葉を食い物にして、他の家族を飲み込み、食い散らかす。最後は家族に裏切る?られて絶望し、死ぬ。こんな人が近くにいると本当に恐ろしい!


あらすじ
八王子にあるマンション、ラ・ファミール。そこにピンクババアこと夜戸瑠璃子が、血のつながらないものと家族として住んでいる。瑠璃子は、民事でのゆすりたかりで八王子署から煙たく思われていたが、そこから逃げ出した女性への暴行で逮捕される。そこから芋づる式には瑠璃子の犯罪が明らかになる。

やがて瑠璃子の周辺にいた家族の朱鷺子から瑠璃子が犯した犯罪について語られる。家族と呼ばれた人たちは瑠璃子が子供の頃から面倒を見てきた者たちだった。片腕のない葉一は瑠璃子から愛情を注がれ、女をあてがわれ、結婚もさせてもらえた。その恩返しをするために保険金のために事故を装い自殺する。瑠璃子は周囲を洗脳していたのだった。

やがて瑠璃子の魔の手は、有馬家へ伸びる。幸せな家族が金をたかられ、家を売り、躾という虐待があり、地獄の生活が始まる。

朱鷺子の証言で、瑠璃子は次々と色々な家族に寄生し、気に入らないものを殺していったことが語られる。朱鷺子の証言にショックを受けた瑠璃子は留置所で自殺する。

そして、事件が発覚するまで。

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

2011年の尼崎事件が下地になっている。
発覚当時、なんておぞましい、信じられない事件と世間を驚かせた。
どこまでフィクションなのかノンフィクションなのかが分からないが、警察の「民事不介入」が事件を長引かせていたのが事実だとしたらそれも悲劇である。
善良な罪のない人々がなぜ、こんな怪物のような人間に地獄を見せられたのか?
人間性を損なうような事をさせられたのか?
マインドコントロールの恐ろしさは宗教でも戦時下でも起こりうる事であり、自分がいつの間にか嵌められないように気をつけなければいけない。

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

 血のつながりのない仲間たちと『家族』と称するコミュニティを形成し、様々なトラブルを起こすことから、地元警察には要注意人物として知られながらも、民事不介入を理由に警察が手出しをすることはなかった女性が逮捕された。女性の名前は、夜戸瑠璃子。瑠璃子のもとを逃げ出してきた裸の女の告白とともに、瑠璃子の罪は露見し、当初は小悪党どもの女ボス程度にしか思われていなかった彼女が作りあげた異常とも言える環境が浮き彫りになっていく。

 安易な共感を拒んで、いつまでも溶けない氷像のようにそびえ立つ本書は、世間的にも有名なとある実在の事件をモチーフにした一冊です。『家族』と称しながらも関係のないものを無理やり繋ぎ合わせたかのような彼らの関係を暗示するかのように、現在、過去、大過去が時系列通りにではなく、行ったり来たりしながら進んでいく構成が印象的な作品です。

 どこまでも長く真っ暗な道を、ただひとり不安を抱えながら歩くような小説ではあるのですが、その構成だからこそ描けるラストに、かすかな、ほんのかすかな光を見つけて、救われたような気持ちになるひとも多いのではないでしょうか。扱われる内容に比して、残酷な描写は控え目な印象があって、最初は意外にも感じたのですが、改めて思えば、そのほうがリアルで不気味なのかもしれないな、とも思いました。

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

周囲の警察からピンクババアと呼ばれている夜戸瑠璃子は、13人もの人を殺していた。他人を家族として取り込み、財産を没収し、保険をかけて殺す。お金を没収して、躾と称して他の誰かに殺させる。義妹の夫に買わせた多世帯用のマンションで、その巨大な「家族」と共同生活を送りながら、飲み込み殺し肥大化する。
女衒として何度も瑠璃子は逮捕されていたが、そんな殺人事件が起こっているとは警察も思っていなかったので、被害者たちが何度訴えても「民事不介入」と門前払いされるなか、ようやく半年前に門前払いを食らった被害者が裸で交番に駆け込むことで、世に事件が認知されたのだった。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この作品は、実際にあった「尼崎連続変死事件」をモチーフにしていて、囚われ餌食にされていく側の視点で描かれていることもあって、まさに自分自身がその立場に追い込まれているようで恐ろしかった。

が、目を背けたくなる気持ちと裏腹にページを捲る手は止まらない。
途中で何度も「そんな馬鹿な…」と呟いていた。
助けを求めているのに、まるで冒頭に出てくる沼の描写、粘土の高い流砂に引きずり込まれるように。

この小説が突きつける本質的な問題は、安全なはずの「家族」という名の密室で行われる虐待や監禁、そしてそれを許容する「民事不介入」の司法・社会制度の欠陥だけにとどまらない。
むしろ、「巻き込まれた男」が自ら疑似家族への加入を選択していたという自覚、そして、物語終盤の「トー横」の少女の章が示すように、形を変えながら増殖する歪な共同体の存在こそが、核心である。
その根底にあるのは、血縁があっても既に崩壊している「核家族」という土壌であり、この「家族の空洞化」こそが、新たな闇の共同体を生み出す真の要因と言えるだろうと思う。

重たい小説だった。暴力による支配が、人を愛する気持ちさえもなんて…

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

愛と恐怖で"家族"を懐柔させる夜戸瑠璃子という怪物。自身は一切手を加えず次々と躾と称して人を殺していく。その残忍で狡猾な手口は悪い意味で天性のものだと思う。
仲の良かった家族が切り裂かれそこに侵食していく、家族同士による苛烈な暴力から目を背けたくなるが、これが現代日本で実際に起きた事件であることの意味を考えなければならない。これほどの犠牲者が出てしまった最悪の事件を、この小説を通して決して忘れてはならないと思った。

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2025年12月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

尼崎で起きた衝撃的な事件がモチーフ。どういうやり口で洗脳したのか、なぜ被害者は洗脳されたのか…当時から疑問に思っていたことが少しわかったような。自分なら洗脳されないと思っていたが、家族を巻き込み、心身共にボロボロになって追い込まれたら自分もそうなるのかもと思ったり。瑠璃子が作る料理が甘いのはいったいなんだったのか…。
澄と宗太はどうなったのか…。薬物は使われていたのか…。疑問は残るけど面白かった

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

家族とは何かという感想は沢山あるので省きます。
この作品で感じたのは、人というのは窮地に陥った時に何かに縋りたくなってしまうのだと。あるいは、自分の命が危ないと例え大切は人でも見ず知らぬの相手でも裏切りったり、傷つけたりできてしまう。自分ならどうだろうと考えさせられました。

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2025年12月04日

Posted by ブクログ

2011年11月、裸の女性が交番に助けを求めて駆け込んだことから事件は発覚した。足掛け25年にわたって複数の家族が監禁、虐待され、死者、行方不明者は10人以上に及ぶという実際にあった事件「尼崎連続変死事件」をモチーフにしたフィクション。

事件そのものは本当に陰惨。ターゲットの家族に入り込み罵声と暴力で脅迫、恐怖による支配で思考停止に追い込み、家族を分断し、家族間で“躾”という名の虐待を促す。恐るべきマインドコントロールに身が竦む。
命からがら駆け込んだ警察には「民事不介入」を理由に介入を断られ、連れ戻された先ではさらに過酷な拷問が待ち受ける。この世の地獄だ。

複数のノンフィクション作品が出ているこの事件を今、フィクションで描くことの意味を考えた。
小説では未だ正体が判明していない“あばた面の男”が手を差し伸べているトー横の子供たち。
家庭に居場所がなく、家族に愛されない子供たちに手を差し伸べ、擬似家族となる。その“家族”が再び尼崎のような事件に発展しないと誰が断言できようか。
愛を与えられず、愛を求めた犯人が作った“家族”の事件。機能不全家族が蔓延した今、事件の萌芽はそこらじゅうにあるではないかとうすら寒い思いになった。

ノンフィクションの方も読んでみます。

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2025年12月04日

Posted by ブクログ

尼崎連続変○事件を元に描いた小説ということで、読んでみました。
当時はかなりニュースになっていましたよね。この地名が一気に知られた事件、と言ってもいいのではないでしょうか。残虐だった記憶はあるものの細部までは覚えていなかったので、その確認も兼ねて読み進めました。

実際に読んでみると、北九州連続○人事件と手口が非常に似ていると感じました。
まったく関係のない第三者が一つの家族に入り込み、暴力で洗脳し、家族同士を殴る・蹴るといった折檻へと追い込み、ついには身内を○害させる――。しかも被害は一つの家族にとどまらず、何家族も犠牲になっていく恐ろしさ。

こういううさん臭い集団にはどう巻き込まれるのか。読んでいる途中、思わず“防御策”まで考えてしまいました。

興味深かったのは、事件に関わる人物一人ひとりのバックグラウンドが丁寧に描かれている点です。
そもそも人間は生まれながらにして悪なのか――そんな問いを読者に投げかけてきます。

主人公・瑠璃子をはじめ、登場人物たちはどこか“親の人生を子がそのまま生きている”ように見えるのですが、その中でも特に考えさせられた人物がいます。光山家の鉄です。

鉄は複雑な家庭で育ち、母親と父親(養父)が覚醒剤で捕まったため、養父の姉夫婦である有間家に引き取られたという背景を持つ人物。
彼は自分の家族を“こちら側”、有間家を“あちら側”と呼び、まるで異なる世界を行き来するような感覚で生きているのです。その物事の解釈が、とにかく歪んでいる。

血のつながらない鉄を我が子同然に扱う有間家に対して、鉄はこう感じてしまう。

“叔母夫婦は直接血がつながっているわけでもない鉄に優しかった。なに不自由ない暮らしをさせてもらった。だが、惨めだった。鉄は敏感に感じ取っていた。“あちら側”の人々に特有の“こちら側”の人間への憐れみを。”

自分が惨めになる方向にばかり意識が向いてしまい、何かしてもらっても感謝に辿りつかない。
“こちら側”の生活が標準になってしまっているから、“あちら側”の当たり前の優しさに違和感や居心地の悪さを覚えてしまうのだろうなと感じました。

人から善意で何かしてもらったら、お礼を言うのは当たり前のはずなのに、それに嫌悪感を抱いてしまう――。
そこに人間性の歪みがあり、その歪みは育ってきた環境によって容易につくられてしまうものなんだと、胸が痛くなります。

それにしても、ここまでの異常事態が起きていても、警察は本当に頼りにならないとは……。
“自分の身は自分で守るしかない”という思いが、読めば読むほど強くなってしまいました。

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2025年11月25日

Posted by ブクログ

怖い話だった。現実の大量変死事件をモチーフにしたという怖い話。でも全てが解決されてなくて、発見されてない人もいるし、え?タクシーに乗っただけでこんなことになるの?詳しくわからないこともあるし、最後のページをめくった時人物相関図が出て来たときは、えー?これで終わり?だった。
警察での「民事不介入」も今はそんな時代じゃなくなってるのか?
洗脳の先「支配と服従」て想像を超えると思った。これが結構近いところにあるのかも?とも。
「尼崎連続変死事件」とか読むか?
いや、少し離れよう。洗脳されてしまうし。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

こんな事件、現実に起こったことが信じられない。
それでも、読んでくうちにあり得るかもしれないと思えた。どうしたら自分の家族を、守れるか考えたけどこんなふうに入り込まれたら無理かもしれないと思った。

簡単に人を憐れんでもいけないんだと思った。何かをあげることも声をかけることもできなくなる。
可哀想だなって思うことが誰かを傷つけることもあるんだ…

サクサク読み進められるし、思ったほど残酷描写は多くなかったけど、内容的にオススメする相手を選ぶ。
登場人物は多いけど、背景や思いがしっかりか描かれているので読み分けられる。

それにしてもどこに逃げても見つけてくる瑠璃子たちどうやって見つけてるの?すごすぎ。

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

身体的暴力の描写がつらい。朱鷺子の自供は追いつめられた自供には思えない。瑠璃子よりも真の支配者に見える。
回収されない、言及されないことがあって引っかかるし消化不良〜。

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2025年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

尼崎変死事件をモチーフにした話。うしじまくんで有名な北九州事件と似たような洗脳系。

八王子の団地で遊郭の女として生まれた瑠璃子は多分アメリカ人の子供でガキ大将。腹違いの妹ができるも義父からレイプされて二度堕胎して子宮無くす。家族とは一緒にご飯を食べる人。
その女がボスとなり、どんどん他の人や家族を侵略して強奪して殺していく。

まあ、胸糞悪い。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

そんじょそこらのホラーより恐ろしい。
一度会ってしまったら、死ぬまで辛い出来事の連続。
読んだらわかる、この怖さ。
恐ろしいー。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

読み進めるのがしんどいシーンもありましたがなんとか読めました。今ある家族の何気ない日常を愛しく思えました。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

尼崎連続変死事件をモチーフにした小説。

どんな話かはノンフィクションで読んでいたなーと思ってたら、そっちは北九州連続殺人事件の方だった。記憶は曖昧だけど、構造は似てる気がした。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

2012年尼崎で発覚した角田美代子を主犯とする連続殺人事件、いわゆる「尼崎事件」を小説化したものだ。小説であっても事実に基づいて書かれたものなので、これが本当に起こったことなのかと、読むのも躊躇するほど悲惨な事件だ。角田と義妹、そして息子の3人は決して自ら手を汚さない。他人の家に入り込み、好き放題振る舞った挙句に自分の陣地に連れて帰り、監禁し、全財産を奪い、完全に支配下に置いて、「しつけ」と称し、お互いに殴り合いをさせる。子が親を、夫が妻を痛めつけ、最後には殺させてしまう。自分たちは家族だと謳っているので、逃亡者が警察に駆け込んでも「民事介入」はできないと追い返される。全て角田が思うように事が運び、こんな恐ろしい事件が13年もの間野放しにされ、10人以上もの人が亡くなったのだ。
わからないのはこの小説内での雪の心理。家族とはいえ、というか家族であるが故に許せない事のひとつやふたつはあるでしょう。でも悪魔の手先になって父母や姉を貶め、死に至らせるような言動は取らないでしょう。ましてや彼女はこちら側の(普通の平和な家族の)人間。良心の呵責はなかったのか。
案外わからなくもないのは雪の姉、澄と結婚した宗太の心情。脅され、澄を殴っているうちにだんだん本当に憎くなっていくのだ。「この子をぼくが守る」と心に誓ったはずなのに、心が麻痺していく。そうでもないととてもまともな気持ちで殴れない、心の防衛反応かもしれない。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

家族の絆の恐ろしさ。絆とは本来、馬・犬・たか等をつなぎとめる綱。恐怖でつなぎ止められた家族。
読んでいてぞっとした。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

とにかくしんどい。一回中断したらまた読み始めるのに気が重すぎてやめたくなったくらい。でもいざ読み始めたら一気読みしてしまった。しかし、とにかくしんどい…

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

14年前、当時ニュースでよく目にした主犯と見られる女のことは今でも覚えている。全容解明がなされないまま終わったあの衝撃的な事件について、社会的弱者の生き様を描き出すことが得意な葉真中さんなりの〝解釈〟が繰り広げられるフィクション。実際の事件を知るだけに読み進めるのが辛く、ラストもそこに救いを求めるしかないのか…と暗澹たる気持ちになる。簡単に乗っ取られてしまう「家族」というものの不確実性、優しさと表裏一体の残酷さに慄き、「民事不介入」という言葉の冷たさを改めて思い知らされた。

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2025年11月18日

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