【感想・ネタバレ】家族のレビュー

あらすじ

「家族って、なんだと思います?」

「現実の世界では、すんなり完全犯罪を
達成できてしまうこともあるんだって学んだんです」

2011年11月3日、裸の女性が交番に駆け込み、「事件」が発覚した。奥平美乃(おくだいら・みの)と名乗るその女性は、半年と少し前、「妹夫婦がおかしな女にお金をとられている」と交番に相談に来ていたが、「民事不介入」を理由に事件化を断られていた。
奥平美乃の保護を契機として、表に出た「死」「死」「死」…… 彼女を監禁していた「おかしな女」こと夜戸瑠璃子(やべ・るりこ)は、自らのまわりに疑似家族を作り出し、その中で「躾け」と称して監禁、暴行を主導。何十年も警察に尻尾をつかまれることなく、結果的に十三人もの変死に関わっていた。
出会ってはならない女と出会い、運命の糸に絡めとられて命を落としていく人々。 瑠璃子にとって「家族」とはなんだったのか。そして、「愛」とは。
「民事不介入」に潜む欠陥を日本中に突きつけた「尼崎連続変死事件」をモチーフとした、戦慄のクライムエンターテイメント!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

きっと周りから見ているだけではわからない。他人を「支配」できてしまう人間と関わったことがない限り、支配される側を弱い者だと見なすかもしれない。また、彼らはただの共犯、そして本人たちが望む家族の形であると思ってしまうのかもしれない。

支配って難しい言葉だなと思う。リーダーとして集団を率いたり、まとめたりする人間と何がどう違うのか。知らないうちに支配されることなんてあるだろうし、誰かを信じることで簡単に支配されるのかもしれない。ただ、誰かを信じてついていくことは必ずしも関係性に支配というものを生むわけではない。他人を支配したいという欲求があり、さらに他人をもののように扱い、自分の都合よく動かすことが簡単にできてしまう人間、すなわち共感力が乏しく、自分の望むままに動く他人のみを欲する人間が存在するからこそ生まれるのではないか。

本作品では、支配者に傾倒する者は家族となり、そうでない者はもののように扱われ、躾けられる。暴力によって心が壊れてしまい、大切な人を傷つけても自分の命だけは守ろうとしてしまう人間の姿に支配の恐ろしさを感じた。
単なる一つの出会いが、ある人生を沈ませ、そして死に追いやる。自分には関係ないことのようで、案外近くに潜んでいるのかもしれないと感じた。
登場人物が多く、時系列も様々だが、非常に読みやすく、引きつけられ、一気に読んだ。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こんなにも読後、重たく暗い感情が残る本をひさしぶりに読みました。
もちろんこのお話はフィクションですが、実際起きてしまった事件がモチーフである以上すごく陰鬱な気持ちです。
警察はなぜこんなにも動かないのか、なぜ、なぜと。すごく考え込んでしまいます。
私は正直、実際に起きた凄惨な事件を題材とする作品を読むのが苦手です。けれど、この2012年に発覚した実際の事件。もう13年も経ってしまい記憶の風化は進んでしてしまう。忘れてしまいたい人もいるかもしれない。けれど皆が忘れてしまったとき、また同じ事件が起こるかもしれない。そう考えると誰かが覚えておかなくてはならないとも思う。そのきっかけになるような作品だと思いました。
「家族」ってなんだろうか。血のつながり?相手への思いやり?思いやりってなに?家族のために死ななければならない?それは家族なの?
そう考えさせられます。

0
2025年10月29日

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