あらすじ
日本からはるばる海を渡ってきた比嘉勇と現地で育った移民二世の南雲トキオ。ブラジルの入植地で彼らは出会い、親友となった。そして迎えた終戦。祖国大勝利を信じる「勝ち組」と敗北を知る「負け組」の間で巻き起こった抗争が、二人を引き裂いた。分断、憎悪。遠き異国で日本人が同胞に向ける銃口。ふたりの青年の運命が交わったとき。絶賛を浴び、渡辺淳一文学賞に輝いた、圧巻の群像劇。(解説・杉江松恋)
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Posted by ブクログ
途中から勇くんに早く気が付け、早く改心しろと思いながら読んでいました。やっぱり日本人って救いようの無いないバカ。敗戦を勝ったと思い込んで詐欺師に金を巻き上げらるなんて笑うしかありません。自分から信じたい、信じたいって、集団でアホみたいに騙される。80年過ぎた今も全く同じ。また外国人を追い出せとか始まっていますが、そのうちバカな戦争を起こしてまたコテンパンに負けて、今度こそ天皇制と日本語を廃止させられるのではないでしょうか。ヒトラーを担いだドイツ人、プーチンに乗って侵略戦争を支持するロシア人、トランプを2回も大統領にしたレベルの低いアメリカ人も同じです。小説としてはさすが葉真中さんの著作で最後まで予想を裏切る展開、とても面白かったです。
Posted by ブクログ
日系ブラジル人の話。
明治、大正、昭和の時代、日本は爆発的に人口が増え食料が不足していた。
そのため、日本政府は国策として、日本人を海外に放出することを考え、その送り先がハワイやアメリカ西海岸、またブラジルなどの南米であった。
沖縄は食料が不足し、日本の本土に移住した沖縄人が多かったが、本土人による差別に苦しんだ。
そこで、沖縄人の多くは、差別されない場所を求めて、はるか地球の反対側のブラジルに移住を決意した。
移住者は錦の旗を飾って日本に帰ることを夢見て、ブラジルの奥地で奴隷同然の状況にも関わらず、必死に農業に従事した。
そこはあまりに日本から遠く離れていたため、日本からの情報が乏しかった。
そんな状況下での太平洋戦争と敗戦。
直接戦場となることはなかったにも関わらず、はるか地球の反対側で繰り広げられた、日系ブラジル人同士の闘争、後に「勝ち組」、「負け組」と呼ばれることになる。
Posted by ブクログ
誰もが持っているような、ちょっとした嫉妬心、猜疑心、優越感のようなものが細やかに表現されていて、人間の弱さ、醜さのような部分をひしひしと感じた。
また当時、ブラジルでこんな事件があったとは全然知らなかったので、そこも興味深かった。
終盤に近づくにつれ、驚くような展開が続き、ページをめくる手が止まらなくなった。
Posted by ブクログ
葉真中顕『灼熱』新潮文庫。
最近では珍しく、先月の新潮文庫から読みたい本が4作も刊行された。うち3作はかなりのボリュームがあり、本作はその中でも一番のボリュームだ。
本作は、戦前から戦後までのブラジルを舞台にした800ページに及ぶ読み応えのある渡辺淳一文学賞受賞作の長編小説である。
幕間に描かれる呪術師の老婆の独白は物語とどう関わってくるのか。そして、老婆の正体とは。
最近は自然災害が起きる度にSNSで噂やデマが飛び交い、さらには誹謗中傷の嵐が巻き起こる。本作に描かれる日本の戦争も勝利を信じる勝ち組が様々な噂やデマを飛ばし、やがて悲劇を生み出すのと何ら変わりはない。
その裏で勝ち組を動かす人物が私服を肥やすという構図も最近の日本の状況と何ら変わりがない。東日本大震災の時には津波で被災した大槌町を食い物にしたNPO団体が居たし、新型コロナ感染禍の時にも給付金詐欺を働く奴等が大勢居た。
一見親切そうで純粋な日本人も一皮剥けば皆腐っているのかも知れない。
12歳の比嘉勇は家族と共に日本から海を渡り、ブラジルに入植する。比嘉家が入植した弥栄村は退役軍人の渡辺少佐が地主を務め、比嘉家も渡辺少佐から土地を借り受ける。渡辺少佐にはかなりの歳下の志津という妻が居た。勇は弥栄村で一番の農園を営む南雲家のトキオと親友になる。
その後、弥栄村に志津の兄という瀬良悟郎が移住して来て、勇とトキオたちに柔道を教える。2人は切磋琢磨しながら、逞しく成長していく。
日本で戦争が始まると弥栄村の住人たちにも動揺が走り、敵性産業撲滅運動が起こり、トキオの南雲家の農園で栽培している薄荷が問題視される。南雲家は農園を諦め、サンパウロに移住する。
そして、迎えた終戦。弥栄村では瀬良が扇動し、祖国の大勝利を信じて行動を起こすが、サンパウロのトキオたちは日本が敗北した事実を受け入れていた。やがて、勝ち組と負け組とで日本人移民を二分する悲惨な抗争が巻き起こる。
本体価格1,150円
★★★★