葉真中顕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作者の作品を読むのは、本書が初めて。
なので、ほかの作品がどうかはわからないけど、いい意味で「思ってたんと違う!」。
カバー裏表紙のあらすじを読んで、買ってみることにしたけど、大体どの本も「王道ミステリー」「人間関係ドロドロ」「女性の感情を切り取る」など、意識的にではないにしても、どんな作品か、予想をたてる。それで言うと、本作品は現実世界と小説世界がリンクしたミステリー、だと思って読んだが、違った。
予想よりも、感情の描写が繊細で、展開には容赦がなく、現実よりも現実的だった。自分の隣で、家の中で起こることではないか、という、そら恐ろしさがある。
作中の小説もうまく生かされ、あれがここに効いてくるのか!?という、構成の緻密さにも驚かされた。
本作を通して、語り手は編集者の梨帆であり、作中の小説の作者・志村多恵は、登場シーンが限られ、セリフも少ない。それなのに、圧倒的に気になる存在だ。多恵のことが知りたくて、多恵に起こることが知りたくて、作中の小説に引き込まれ、本作にも引き込まれる。
『ロング・アフタヌーン』というタイトルもいい。長い午後を過ごす女。これほど多恵にぴったりくる表現はない。
終わり方も多恵の小説風で、心をつかまれた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ綾崎隼さんが将棋のアンソロジーに寄稿してると聞いては読まないわけにはいかない!
今回の綾崎さんの作品は、「僕らに嘘が一つだけ」の2人と同世代の朱莉さんが主人公。もう一度僕らに〜も読み返した上で、こちらも読み返したいな。
一話目は青山さんのお話らしく、前向きな気持ちになる門出の話。
葉真中さんは初読み。ただただ少年の手腕に鳥肌。
弟子にしたかった少年を冤罪から救うという白井さんの話にはびっくり。そういう将棋との絡め方もあるのか。
橋本さんも初読み。この一戦を勝てば夢が叶うという相手への対応って悩ましい。そこで手を抜かれて夢を叶えること、本気で相手してもらって破れること。
芦沢さんは気になっていた単行本の表題作?思いがけず読めて嬉しい。本気で目指していて、応援もしてもらって、でもそれを辞めたい時の気持ちを思うと胸が締め付けられた。 -
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葉真中顕『ロング・アフタヌーン』中公文庫。
変わった構成のイヤミスであった。作家を目指す主婦が執筆した『犬を飼う』という小説とタイトルの『ロング・アフタヌーン』を日本語にした『長い午後』という2つの小説を軸にストーリーが展開していくのだ。
男女平等社会、ジェンダーギャップなどという言葉が世に出て久しいが、まだまだ女性の扱いは男性に比べると低いように思う。しかし、企業などでは上に立とうとする女性が少ないことも事実であるし、専業主婦という生き方を選択した女性はなおさら男性よりも上に立つ機会など皆無に等しいだろう。
個人的には男性には男性の役割や得意分野があり、女性には女性の役割や得意分野があるのだから、それぞれが不足を補ってこそ、男女平等社会と言えるのではないかと思う。
志村多恵という作家を目指す50歳の主婦による『犬を飼う』というフェミニズムを全面に押し出した近未来ディストピアSF小説で幕開けする。
その『犬を飼う』という小説は公募型の新人賞に送られた小説で最終選考の6作まで残ったのだが、惜しくも落選してしまった。
7年前、『犬を飼う』を強く推していた書籍編集者の葛城梨帆には志村多恵は記憶に残る女性であった。『犬を飼う』から7年後、梨帆の元に再び志村多恵から『長い午後』というタイトルの小説が送られてくる。
『長い午後』は、志村多恵自身をモデルにしたと思われる自殺を決意した女性が偶然、学生時代の友人の女性と再会する場面から始まり、男性に対する不満や軽蔑のエネルギーが『犬を飼う』を執筆させたことが描かれていた。やがて、主人公の女性と学生時代の友人との会話はすれ違い、それは殺意へと変貌する。
そして、主人公の心で渦巻く男性に対する不満や軽蔑の念は……
本体価格860円
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平成15年に起こった『青梅一家惨殺事件』。
最有力容疑者・次女・篠原夏希は薬物の過剰摂取により事件後に浴室で死亡。
共犯者の存在が疑われたものの、事件は被疑者死亡で解決…
平成31年に起こった『多摩ニュータウン男女殺害事件』。
2つの事件にはつながりが…
死亡した夏希には『ブルー』と呼ばれる無戸籍の息子が。
『ブルー』の足取りを追うことで、無戸籍児童、児童虐待、格差社会、貧困家庭、外国人労働者… 社会問題が明らかになってくる…
平成の始まりに生まれ、平成の終わりに生命を落とした『ブルー』。彼の人生は壮絶だった。
親の都合で無戸籍に…
親の愛情に飢え、夏希に愛されたいと思うばかりに、言いなりに…
まだ幼かった従兄弟・優斗を殺害してしまったことに…
結局、格差社会から貧困家庭、無戸籍児童、児童虐待…繋がっていく。
連鎖から抜け出せなくなる…
養子縁組ができた翼や渚はまだいいほうで。
ひとつ、ボタンをかけ間違えると、負の連鎖が起こる。
本当に親の責任は大きい。
安倍政権が産み出した格差社会。
格差社会が産み出した問題の真相がこんなにも根深いとは…
家族でホームレスなんて…
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「将棋」をテーマにしたアンソロジー。
大好きな伊奈めぐみさんの装画が可愛すぎるし。
大好きな青山美智子さんから始まるのだけど、初っ端から泣きそうになった。
「授かり物」
天才棋士と偶然同じ生年月日の息子が、唐突に漫画家になると言い出すお話。
普通の人生って何なんだろう。
分からないのに、「才能」みたいなものを必要とされる職業に就くことに、不安を感じる。
将棋は、「王」を取るゲームではなく、「玉」を取るゲームだったかもしれない、という解釈も、ストーリーに合っていて良い。
他にも、ちょっと怖い話や、奨励会員をめぐるキリキリする話など、豊かで面白かった。
将棋に関する小説が増えてきたような気がする。