東山彰良のレビュー一覧
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三代にわたる大河小説みたいな物語になっているが、ミステリ小説の緊張感や時に出てくるユーモア、それから狐火のような神秘的な要素をもうまく織り交ぜていて最後まで興味津々であった。登場人物と事件をリアルに作り上げる筆力がすごいと感じた。
台湾という国の近代史を表面的にしか知らなかったが、そこに住む人の目で描き上げた面々がとても面白かった。直面してきた社会現象が我々と似ていながらもそれらを消化していく方式が違っている気もした:理念の対立、同族戦争、離散家族、独裁体制、軍隊文化、それから教育現場の様子。
虐殺の歴史と向き合って和解を図るとの物語から、時間の威力がどんなにすごいのか再び感じさせられた。 -
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ネタバレ中央公論文芸賞受賞作
直木賞受賞の『流』が面白かったので読みました。こちらも長いロードノベルですが、西暦2173年の小惑星衝突後の世界を未来の作家が描ているという斬新な設定で前作に劣らない傑作でした。
小惑星衝突により近未来の文明が終焉した時、動植物が失われ、食べ物が底をつき、生きるためには食人になることを迫られる。
絶望と恐怖の中で、いかにして人は救世主を創り上げ、罪悪感から逃れて自らを正当化していくのか、SF小説だと笑ってはいられないリアルなテーマに居心地の悪さを感じながらも最後まで惹きつけられました。
どんな過程で血も涙もない食人鬼になっていくのかが知りたいのに、読み進めるほどにナサニエル・ヘイレンが純粋なただの人間であることを思い知り、不憫な境遇に胸が痛くなりました。
最先端のVB義眼手術によって得られる能力、代償など未来に起こるかもしれない設定に興味津々で楽しく読めました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2015年、アメリカ。少年ばかりを狙って惨殺する連続殺人鬼<サックマン>が逮捕された。
彼の弁護を担当することになった国際弁護士の「わたし」は、30年前台湾で過ごしていた少年時代を思い出す。「わたし」は<サックマン>のことを確かに知っていた。
1984年の台湾と2015年のアメリカを舞台に、家庭的な不幸に振り回される少年たちの姿を描いた青春ミステリ。
解説が小川洋子さんだったので手に取った初読の作家さんの本だったのですが、とても良かったです。
1984年の台湾、当時13歳中学1年生だった3人の少年の物語。喧嘩や万引きなどをしつつも、ブレイクダンスの練習に興じ、困ったときには助け合ってきた3人の関係は、それぞれの家庭の問題によって崩れていきます。
1人は兄の死によって母親が精神を病み、1人は継父から日常的に凄惨な暴行を受け、1人は母が浮気相手と出奔したことにより家庭が崩壊し……。追い詰められた3人が選んだ選択が、結果的に後のアメリカの連続殺人事件へ繋がる事に。
ほんの13歳という子どもが選んだ選択肢を考えると、少年らしい頑なさと残酷さに眩暈がします。彼らには、周囲の大人に頼れる人間がいなかったと考えるとさらに。
「誰」が「誰」を殺し、殺されたのか。物語中盤で明らかになるシーンは淡々としていながらもパッと風景が変わるようで印象的です。
台湾での少年時代とは全く変わってしまった関係ですが、それでも少年時代の思い出は痛々しくきらめいています。死者の思い出に生者が敵わないように、死んでしまった思い出にしか放てない輝きがあるようでした。
ヘビが物語上重要なアイテムとして登場するので、物語の構成もありウロボロスを連想しました。自らの尾を食むヘビは円環となり、死と再生や永続性の象徴でもあります。物語の終末は冒頭へ還り、痛ましくも楽しかった少年時代へともどっていく……というのをイメージしているのかな、と。考えすぎかもしれませんが。