東山彰良のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
このサイトで著者を見ると勘違いする人もいると思うが、これは、おつまみについていろんな作家さんが書いたアンソロジーである。
どれも私にぴったりで、最後まで楽しく読めたし、つまみの参考にもなった。
あまり手の込んだものつまみは出てこず、なかにはコンビニつまみランキングなるものもあり、かなり参考になった。また、各作家さんの酒との距離感、そして、つまみのポジションが明確で、スッキリ読める。
人それぞれ、酒とつまみの位置付けは様々だが、押し付けがましくなく、自分の日常を赤裸々(?)に語っているのが最高。
さらに、一編ずつが短いのもポイント。
ネックは、つまみを食べたくなり、酒を飲みたくなることだけです〰️ -
購入済み
蘇る昭和の世界、味わいある七編
東京オリンピックを背景に、著名なミステリー作家七人によるアンソロジー。あの頃は今よりもみんなが前向きで、街にも活気があふれていたような気がする。初めて読む作家もいて、それぞれの持ち味が楽しめてよかった。個人的には月村さんが面白かったかな。
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Posted by ブクログ
大沢在昌、藤田宜永、堂場瞬一、井上夢人 今野敏、月村了衛、東山彰良『激動 東京五輪 1964』講談社文庫。
昭和39年。東京オリンピック開催に沸く東京を舞台にした7人の作家によるミステリー・アンソロジー。古き善き時代の香りの中に描かれる様々な形のミステリーとピカレスクはいずれも秀逸。
2020年の東京オリンピック開催を記念しての刊行かと思うが、新型コロナウイルス感染拡大の非常事態により東京オリンピックは2021年に延期されてしまった。延期ならまだしも、2021年に開催できるかどうかすら怪しい状況である。自分は中止になると見ているが……『アンダーコントロール』『復興五輪』という日本の総理大臣の大嘘に、さすがに閻魔大王も黙ってはいられなかったのだろう。
大沢在昌『不適切な排除』。昭和39年東京オリンピック開催の年に8ミリフィルムの技術者が交通事故を装いCIAに殺された……何十年か後にアメリカのライターを名乗る男が事件の調査のために来日する。スッキリせず、違和感が残る結末は計算なのか。
藤田宜永『あなたについてゆく』。酒場とブルース……古い時代の日本を感じる短編。かつては犯罪者もヤクザも素人も悪さの加減を知っていた。現代では素人さえその加減を知らない。
堂場瞬一『号外』。草加次郎事件の犯人とおぼしき人物の単独インタビューという特ダネを手にした記者は何とか1面トップを狙うが、東京オリンピックの開会式とが重なり、号外発行で妥協するのだが……人生はなかなかサヨナラ満塁ホームランとはいかないのだ。
井上夢人『予行演習(リハーサル)』。東京オリンピックの行進の予行演習の最中に友人から聞いた工事現場の幽霊屋敷の死体騒動。オチがあるとは思わなんだ。
今野敏『アリバイ』。まさかのSFミステリー。ブルーインパルスが空に描いた五輪の輪が四つしかなかった。パラレルワールドから来た被告の死刑求刑は一転して無罪に……
月村了衛『連環』。黒澤明が降りたオリンピック記録映画を狙い、ヤクザが一攫千金を企てる。あの花形敬も登場するピカレスク。なかなか味のある小気味の良い短編。
東山彰良『陽のあたる場所』。東京オリンピックで沸く華やいだ街の片隅で死の淵に立つ男。ジャズと酒と暴力と女が渦巻く、時代を感じるピカレスク。
本体価格680円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
ネタバレ生と死の後に立つもの、不安と恐怖と絶望の後ろにあるもの、全てを越えたとき、彼は罪をも越えて、救世主・黒騎士伝説になった。
2173年、6月16日、小惑星がNASAの予測どおり、地球に向かってきた。核ミサイルで粉砕した余波で、世界は飛来した惑星のかけらで燃え、ビルは倒れ、灰が降り積もり、北米を中心に世界は崩壊した。
残った一部はキャンディー線と呼ばれる塀で囲い込まれ、そこはまだ残っている世界の物資で擁護され生き残っていた。外に住む人たちは残った物資や食料を奪い合い、それも尽きかけていた。
彼(ナサニエル・ヘイレン)は双子の弟に生まれた。母のピア・ヘイレンは田舎では稀に見る美人で、ニューヨークに出て女優になることを夢見た。だがヒッチハイクの途中で運転手に襲われ妊娠する。
ナサニエルは自転車の後ろに障害のある兄を乗せ、鉄くずを拾って暮らしていた。ピアは最先端のVB義眼手術をナサニエルに受けさせたかった。コンピュータが義眼を通して脳に繋がれ、その威力で彼の身が守れると思ったからである。母が保険金のために弟を梁に吊り上げているところに、帰り合わせたナサニエルは母を刺殺したが、瀕死の兄はもう希望がなく、彼はその死を手伝った。裁かれてシンシン刑務所に入った。そのときナイチンゲールと名づけられた惑星が地球に接近し世界は灰に埋もれた。
刑務所から逃げ出したナサニエルは、刑務所で助けたダニーと屑鉄屋の飼い犬カールハインツ連れて旅立つ。冷えこんだ地球、生きるために飢えた人々は人肉食というタブーにも慣れてきていた。彼を崇拝するダニーはそれを「罪を罪で浄化する」といった。しかし飢えを感じないかの様なナサニエルは食べ物を人々に分け与え、避難所で休息する間、人の心を平穏に導いた。いつか彼は黒騎士と呼ばれ、伝説が生まれ始めた。
白聖書派はイエスの教えから生まれた。食人行為は決して許されない。ヒットマンが放たれ、ダニーの追跡を始めた。そしてついにナサニエルもヒットマンのノートに名前が付け加えられた。
ナサニエルは食人にはかかわらなかったが、それを罪とは認めなかった。罪にさいなまれる人々はその言葉に救われた。そしてニューメキシコを越えた荒野で、深い岩盤の亀裂の下に泉が湧いているのを知った。そのころにはナサニエルに従う人々も増えていた。深い谷底にある泉まで1571段の階段を作った。水を得て花が咲き作物が実り地熱を利用して酒も造った。人々は彼を囲んで踊った。そしてナサニエルは伝説と共にヒットマンの銃に倒れた。
彼は自分が求めることは何も望まなかった、何も持たず望まず、全ての絶望を昇華した生の限りを生きた。
彼を追い詰めたネイサン・バラードによって20年後に書かれたという、ナサニエル・ヘイレンの物語は、聖なる伝説というものがどのようにして生まれ語り継がれているかを考えさせられる。まだナサニエルに関わった人たちは生きていた。
ナサニエルはただ生きつづけることだけだった、死を超えたところで何が罪か何に価値があるのか、問いを残して死んだ。
若い彼が執着した唯一のぼろオートバイそれに彼は未来の夢を描いていた。80キロの道のりを自転車に弟を載せた籠をつけてエンジンを求めて走った、帰る途中で手に入れた喜びも夢も粉々に打ち砕かれた、人間の悪意に彼の心が砕けた。
最大の山場をいくつも越えて物語を十分楽しんだ。
作者は背景も人物造形も読者をひきつける技に優れていて面白く読み応えがあった。
「ザ・ロード」には救いがあった。だがこの物語は、まるで異界のような終末の地球で黒い意志から生まれた伝説と、おぞましくも悲しく短いナサニエルを巡る生涯を描いていた。 -
購入済み
刀の行方
五人の作家のリレー小説。
それぞれの持ち味が存分に出ていて、読み応えがあります。
こんな風な小説は時にあらぬ方向へと流れたりする事もありますが、最初と最後がきちんとつながります。 -
Posted by ブクログ
ぐっときた要素はみっつ。
1.ポストアポカリプスの描写。
小惑星の墜落による局地的な壊滅と、都市部の囲い込み→それ以外の無法地帯化。
2.伝説的人物の成り立ち。
はっきりとイエスになぞらえられるが、食人をせねばならない状況を赦してくれる人物を待ちわびていた、人々の思いこそが、黒騎士という伝説を生む。
3.偉大さとは対照的な、少年っぽさ。
オートバイを直したら、みんな幸せな場所に行けるんだ。
もちろんそこには兄も母も連れて行きたい。→彼なりの罪悪感はずっと続いている。
常に兄を内面に感じているからこそ、飢えている人を目の前にして、食べ物をあげてしまう。
「まったく俺ときたら、常に誰かの腹具合を気にしてやってるんだもんなっ」という少年時代の生き方を、ずっと続けるのは、素朴だが貴いことだ。
そして犬。
あとは小説の技法にもつながるが、時系列そのまんま、にはあえてしない作りも、つまずきつつ立体的に物語を把握する読者の認知に寄り添っている。
神の視点からナサニエルを描くのではなく、ナサニエルを追っていたスカウトマンのわたしが、十数年後に自己治療も目的にして書いている、という設定。
だからこそ、わたしの私生活、わたしが取材した相手の語り、わたしがナサニエルの主観を想像しながら書いた一人称的記述、が混在していく。願望とも改竄とも。
「ブラックライダー」では少しこういう技法があった。「流」はこの技法が推し進められていた。本作はさらに進んでいる。
カメラの置き所が多様になっている、ともいえるし、語り手やカメラが寄り添う相手を敢えてすっきりさせない、ともいえるか。
視点の置き所が、ダマになって、こんがらがった玉留め(裁縫の)のようになって、読者に渡される。
読者はちょっとだけ解きほぐすのに難渋しながら、それをも読書の楽しみにできるのだ。よき技巧派。 -
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ネタバレ読みづらいという声も多いらしいが、サービス精神満点の大娯楽作だった。
登場人物の多さに辟易しないためには、バード、レイン兄弟、ジョアン周りの数名だけ把握してすいすい読めばよい。
私はモブであってもネーミングが面白くて、全員メモを取りながらゆっくり読むことを楽しんだ。
Ⅰではレイン兄弟を追うバードを通じて、荒廃した世界観を味わう。
「明日に向って撃て!」でブッチとキャシディが荒野を延々追われる場面があるが、その舞台を世界荒廃後の荒野に置いた。
人肉食がまだまだ廃れていないという背景もぐっとくる。
Ⅱは打って変わって牛腹と蔑まれたマルコが、蟲の流行から逃れつつ調査する中で、いわば救世主と見做されていく過程。
人間ではないので人生観も異なり、よい意味で冷酷。
蟲の流行した村は焼く。それがⅢへ。
Ⅰでは人生観にまつわるカッコイイ台詞が頻発していたが、Ⅱではカッコイイだけでなく宗教の発生といえるような深い思索が。
またアビアーダ村の移動とともにマジックリアリズムのテイストが入ってくる。ここも面白い。
Ⅲはいってみれば戦争。
ロストテクノロジーも活用して攻め込む討伐隊と、ゲリラ的に応戦する村およびインディアン。
みながみな荒くれでどうしようもない男どもだが、こうしか生きられなかった悲哀、といったものが戦場に美しく散る。容赦なく。
ここにおいて発生する抒情こそが、読書を通じて私が欲しているものだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読みづらいという声も多いらしいが、サービス精神満点の大娯楽作だった。
登場人物の多さに辟易しないためには、バード、レイン兄弟、ジョアン周りの数名だけ把握してすいすい読めばよい。
私はモブであってもネーミングが面白くて、全員メモを取りながらゆっくり読むことを楽しんだ。
Ⅰではレイン兄弟を追うバードを通じて、荒廃した世界観を味わう。
「明日に向って撃て!」でブッチとキャシディが荒野を延々追われる場面があるが、その舞台を世界荒廃後の荒野に置いた。
人肉食がまだまだ廃れていないという背景もぐっとくる。
Ⅱは打って変わって牛腹と蔑まれたマルコが、蟲の流行から逃れつつ調査する中で、いわば救世主と見做されていく過程。
人間ではないので人生観も異なり、よい意味で冷酷。
蟲の流行した村は焼く。それがⅢへ。
Ⅰでは人生観にまつわるカッコイイ台詞が頻発していたが、Ⅱではカッコイイだけでなく宗教の発生といえるような深い思索が。
またアビアーダ村の移動とともにマジックリアリズムのテイストが入ってくる。ここも面白い。
Ⅲはいってみれば戦争。
ロストテクノロジーも活用して攻め込む討伐隊と、ゲリラ的に応戦する村およびインディアン。
みながみな荒くれでどうしようもない男どもだが、こうしか生きられなかった悲哀、といったものが戦場に美しく散る。容赦なく。
ここにおいて発生する抒情こそが、読書を通じて私が欲しているものだ。 -
Posted by ブクログ
この作品は何が良いかっていうと、サスケの一人称小説なんです。
主人公「オレ」なんです。読み始めてすぐこれがツボにはまった。
漫画本編において、サスケがトビからイタチの真実を聞いてから、波打つ岩の上で涙を流し木ノ葉殲滅を宣言するまでの間の物語。
特にそこの間が空白だとは思っていなかったから、そこにエピソードを入れ込むのかとちょっと驚きではありました。
トビから手渡されたイタチの遺品は薬の注文票だった。イタチの病気のことが何かわかるかもしれないと、その注文票を頼りにサスケは中立里・狼哭の里へと向かう。
狼哭の里に住むレイシ・キナ兄弟に自分やイタチを重ね合わせるサスケに切なさを感じました。
朝餉のシーン、にぎりめし、デコピンに何ともいえない感情が起こりましたね。
サスケ視点で、しかも小説だから漫画よりもサスケの心情描写が細かい。
意外とナルトのことを引き合いに考えるからちょっと驚いた。
サスケとキナのやりとりがすごくよかったです。お兄ちゃんのサスケはなんだか新鮮で。ちょっと不器用なところがサスケらしくてイイネ!←
この話が挟まれると、漫画本編にある岩の上でのサスケの涙はちょっと意味が変わってくるんじゃないかなとも思うのですが、なぜ「鷹」と名を改めたのか、ということはこれで繋がりますね。(実はずっと気になっていた…)
リアルタイムでは(コミックス派です)もう穢土転生の部分は終わっているし、トビの思惑の部分も読んでいるからそれと合わせて考えて読むとまた深まりますねぇ…。
良い話だったと思います。『ド根性忍伝』が個人的にイマイチだったので心配しながら読んだのですが、これは想像以上によかった。
サスケファンの私にとってとっても美味しい一冊でした。主人公のナルトサイドにとっては敵になるわけだし複雑だけど、やっぱりサスケはカッコ良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレストーリーは、兄の遺品である目薬を手がかりに薬屋のある里を訊ねたサスケが、里から迫害される薬師の兄弟を救うというシンプルな構成です。
この小説のもうひとりの主人公はイタチ兄です。
登場しないもうひとりの主人公。
とにかく思ったのは、サスケはやっぱりトビの言うことを鵜呑みにして利用されてる自覚はあったんだな。
それでも怒りの持って行き場がなくて、それこそダンゾウの言うとおり手当たりしだいに八つ当たりしてるだけってのも自覚してる。
自分が欲しかったのはこんな終わり方じゃない、この兄弟のような生き方を求めていたのにとはっきり自覚する辺りも悲しかった。
ド根性忍伝の時もだったけど、悲しいくらいに平和と言うものを説いてくる。
作中で語られる平和は、マダラや長門の掲げるそれとは違って、もっと漠然としてるけど。
尾獣に分類されない化け物・狼嚥を赤ん坊のころ両親に封印されたキナの真実と、里に迫害されてきたレイシたちの一族の真実を聞いたり、「あなたは間違っている」と指摘されてレイシにイタチ兄の姿を重ねるサスケも切なかった。
ドチンピラたちが押し入ってきた時、レイシは自分だけ汚名をひっかぶってキナに成敗されたことにすればキナだけは助かる、
だからキナに化けて自分をやっつけてくれと頼むけど、そんなのサスケが承諾するわけない。
親も一族も間違ってなかったというのになんで兄弟が不幸にならなきゃいけないんだよと当然サスケは思うよね。
サスケの協力で狼嚥は封印できたしキナも助かったけど、レイシは助からなかった。
ド根性忍伝もブラプリも、ぱきっとしたカタルシスより切ない読後感の方が強いと思う…
謎なのは、サスケは使えないはずの月読をドチンピラの親玉にかけたとか。
精神崩壊してなかったから普通の幻術だったと思うけど72時間って言ってたし。
あと、墓地でサスケが拾ったものってなに?
読解力がなさすぎるので、分かったら追記します。
最後、キナが別れ際に言った言葉でサスケはとても救われたと思う。
ここでサスケは、鷹として動き出す前に一度答えを出してしまってるけど、原作に矛盾はないと思う。
兄への愛は深まって、木ノ葉への憎しみも強まったという。
以上です。 -
Posted by ブクログ
サイコー!!
確実にこの本は、あたしの人生のスゴ本だ。
あまりこういったことは好きではないが、あまりに感動したのでいくつか、
この作家の素晴らしき世界を引用しよう。
なぜかというとこの作家のすごさは、その圧倒的な表現力にあるからだ。
ストーリーを説明するのはすごく難しい。
あるいはすごくカンタンだ。
4人のろくでなしどもがつるんで馬鹿やって、しくってボコられて、
死にかけて逃げてでもまたつるむ。
チャラくてもてて、でも人を愛したり誰かを信じることができずに、
つながりを断ち切りたくて腐る、ろくでなしの智也。
「世界はいつだって俺とそれ以外だ。みじめな負け犬どもを見るにつけても、狂っているのはおまえのほうなんだと、世界中の人間に後指を指されているような気になる。そう、少なくともこの街では、狂ってるのはおれのほう。」
智也とヤッたばかりのシャブ中の女とケッコンし、
愛しく思っていた娘をそのビッチに殺され、抗うつ剤を飲みまくるハービー。
「男と逃げたお袋、俺をぶん殴る親父、その親父を鉄アレイで割った兄貴、娘を殺した女房、
金を持ち逃げしたダチ。責めを負うべき人間は、いつだって俺以外の誰かだった。
だけど、それは真実じゃない。
ゲームを塗りつぶしたのは俺じゃない。俺じゃないけれど、もしかしたらほかのだれかでもないのかもしれない。
元々そういうゲームだったのかもしれない。
だれもそれに気づかずに、そうじゃなければ気づかないふりをして、なんとか新しいゲームをはじめようとしていただけだったんだ。それでなにもかもよくなると信じて。なによりもまず自分が変わらなければ、その新しいゲームもすぐ真っ黒になってしまうというのに。」
ハービーとトイトイペア、少し距離を置く智也、このろくでなし3人に、
若干振り回されつつも良心的なのが(といってもぶっ飛び気味)、デブの警官、柴尾。
「ぼくの欠点は、自分で決定を下せないこと。
そういう人間にとって、物事はいつだって唐突に襲いかかってくる。で、いいことも、悪いことも、出会いも、別れも、こっちが気づく前に全部終わっている。
いまできることは、起こってしまったことにじたばたせず、終わってしまったことをちゃんと受け入れることだけ。」
不思議なことに主人公の1人でもあるトイトイにはなぜか、独白が許されていない。
それは彼が、柴尾の曰く「禁治産者レベルの阿呆」だからなのかもしれない。
シャブ中になってホモの客を取らされたり鼻くそ入りの酒を飲まされたり、
彼の扱いだけは異色にひどいが、そこがまたこのストーリーの、いい抜けになっている。
漢字の使い方、行間、構成、全部がぎゅんぎゅん音を立てて疾走するストーリーの、
どこまでが計算でどこまでが勢いなんだろう?
この人の心臓を取り出したらきっと、常人の数十倍はどくどくいっているはず。
なんだろうこのビート感?
けれんみだらけの小説は、素敵な小悪党のこんなセリフでしまってゆく。
「どうせこの星はおれの思惑なんかおかまいなしにまわる。善意も悪意も、嘘も真実も、ホモもダライ・ラマも、みんなごたまぜにして。そんな血も涙もない世界を出し抜くなんて、どだい無理な相談だ。だったら、せいぜい自分を出し抜いてゆくしかない。
どこまでもつづいてゆく、どこへもいき着かない道。無理にでもどこかへむかっていると思い込まなきゃ、どんなやつでもめげちまう。」
才能にべた惚れしてるのは、きっとあたしだけじゃないはずだ。
東山彰良、サイコー!
ちなみに改題前は「愛が噛みつく悪い星」だ、そうで。
そのほうがずっとずっと、それっぽいのに。 -
Posted by ブクログ
大好きな、東山ワールド!
なんなんだろう?
上品でもない、けどすごくやりすぎな下品感もない。
解説で「落ちこぼれのはずの主人公が文学的素養がありすぎる、
作家が作品の表に現れすぎたのでは」などと書いてあったが、
あたしには気にならなかった。
工業高校卒業のマコトが、IWGPでクラシックのうんちくを語ったりするのに慣れているせいか?
自堕落な毎日の中で焦るでもなく、お互いを頼らずにでも、
なんとなく相手を思いやってみたり気にしてみたりする、
絶妙な距離感とクールな文体が最高。
この人の文章にはふっとい骨と、しなやかな伸びがある。
読みながらぐぐっと踏ん張れる、強さが心地よい。