東山彰良のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
次回の読書会課題図書。
未だ混沌の中にある1970年代後半の台湾。蒋介石の死の翌月、当時17歳だった主人公、葉秋生の祖父が殺害されたところから物語は流れだす。
なんて饒舌で壮大でちっぽけな物語なんだろう。
中国近代史を背景に感じさせながら、
葉秋生の視点から現在と過去、近未来を自在に語り、ときに壮麗なレトリックをふんだんに織り込んで400頁もの長編小説でありながら、一瞬たりとも飽きさせないエンタメ作品に仕上がっている。
これは直木賞受賞も頷ける…。
物語の軸は祖父の死の謎を追うこと、
彼の何気なくも特別な青春の日々だ。
70年代後半の、雑多で暴力的で秩序も清潔さもない、だけど根拠不明の抱擁力からくる不思議なあたたかさについ惹かれてしまうカオスな台湾は、そのまま主人公の祖父に、そしてそのルーツにある中国大陸へと印象が重なる。
読んでいる間、それこそいろんな感情がめまぐるしく湧いてきて、気がつけば眉をひそめていたり、ちょっと吹き出したり、自分でも全然思いがけないところで涙腺が緩んだり。
テンションが高いわけではないのに、明快かつパワフルな文章で物語にグイグイひっぱられる。
こんなにいろいろと読んでいる最中の読者の表情を変えてしまう本も珍しい。
いろんな人生哲学も勝手に読み取ったんだが、これを読んで思ったのは、人間が生きていく中で、ズバっと指標になる簡単なフレーズなんてないんだなということ。流れていく時間の中で、その都度出会った大事な言葉を、拾っては捨てて、そうやって過ごしていくんだろう。
わりと長編なのに休めるところがないし、顔も頭もめちゃくちゃ疲れたけど、没頭させられる快感には変えがたい。
めーっちゃ面白かった。
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Posted by ブクログ
チャプターズ書店のYouTubeで知った一冊。
2015年冬、アメリカを震撼させた連続殺人鬼”サックマン”が逮捕される。
彼の担当弁護士は、30年前の台湾でともに少年時代を過ごしていた。
私はカタカナを覚えるのが苦手で、
登場人物がを覚えきれない時があるので、
本書も不安でしたが、今回は大丈夫でした!
舞台は1984~1985年で、
ちょうど私が生まれた年だったので、
そこも含めて、こんな世界だったのかと読み進めました。
本書のほとんどは、
台湾で過ごした少年時代が描かれるのですが、
暑くて湿度が高く、
緑やアスファルトなど
不衛生なものも含めて、
独特なにおいが立ち上って来る。
今の季節にぴったりでした。
途中で差し込まれる現在(2015年)は、
冬の寂れた街で、色もなく、
吹きすさぶ風と、時折舞い散る雪が対照的で。
少年時代のユンとアガンとジェイ。
彼らはそれぞれに家庭に問題を抱えている。
13歳の彼らだけでは、どうしようもない現実。
個人的に驚いたのは、
何かあると解決策として仲間同士で喧嘩して
殴り合いして、そのあと友達に戻れること。
すごいなあと。
喧嘩、窃盗、煙草、
夜の植物園でブレイクダンスを踊る。
時代という言葉で片づけたくないけど、
何もかもが混沌としていて、
自身のコミュニティでは限られた情報しかなく、
世界はそこにしかない。
抜け出す術もないなら、消すしかない。
終盤に向かい、どこに着地するのか、救いはあるのか、
何故そんな犯行を犯してしまったのか、
明らかになっていきます。
読後は…何度か戻ってページをめくり、読み返しました。
必至に生き抜いた少年時代から、再会するまで。
思い返せば思い返すほど言葉もなくただ切なかったです。
この夏に読めて良かったと思える一冊でした。 -
Posted by ブクログ
1975年以降の台湾を舞台にした若者の青春小説であり、祖父を殺した犯人を巡るミステリでもある
以下、公式のあらすじ
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一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾 に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。選考委員満場一致、「二十年に一度の傑作」(選考委員の北方謙三氏)に言わしめた直木賞受賞作。
一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。選考委員満場一致、「二十年に一度の傑作」(選考委員の北方謙三氏)と言わしめた直木賞受賞作。
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冒頭、台湾出身の主人公が中国の山東省で、祖父が村人50人以上を惨殺したという石碑を訪れる場面が描かれる
昔から父に、その土地を訪れたら殺されると脅されていた
そんな折、村人から「あいつの息子か?」と尋ねられる
果たして、じいちゃんは一体何をしたのか?
時代は遡って、物語のメインは1970年代の台湾を主な舞台にした時代小説
1975年 蒋介石が亡くなった年
主人公 葉 秋生(イエ チョウシェン)の祖父が自分のお店 布屋で殺される
じいちゃんは昔から破天荒な人だった
日中戦争、中国側では抗日戦争のときには、人を殺しまくり
日本人のスパイとして動いていた中国人の家族を殺したり
報復合戦のようになっていた中、義兄弟の家で助かった息子を自分の子として育てたりという義理堅さ 義侠心を持ち合わせていた
また、孫の自分には優しかった
そんな、生き方だったので人の恨みを買っている可能性はあるが、それでもこの場所でこのタイミングで殺された謎
そんな祖父を殺した犯人を見つけようと躍起になる若者の話
だけど、物語の大部分は無軌道な若者の馬鹿な所業が描かれる
幼馴染みのチンピラ趙戦雄ととつるんだり、喧嘩したり
小遣い稼ぎに替え玉受験したらバレて学校を中退したり、軍隊に入ってしごかれたり、また、2個年上の幼馴染の毛毛と恋仲になったり、ヤクザと揉めたり、
当時の台湾の情景が見えるよう
政治的な背景など詳しいともっと面白く読めるのかも知れない
土着の内省人、大陸からやってきた国民党の外省人
共に、中国共産党の動きに神経を尖らせる社会情勢
当時の台湾の空気のを知らない自分でもまるでその世界を知っていたように、それほどまでによく書けている
あと、文章を読んでいて猥雑な匂いを感じる
食べ物の描写もそうだし、街の描写もゴチャゴチャとした雰囲気が伝わってくる
その分、暴力的な描写や家に大量発生するあの虫の描写があるので、そっち系が苦手な人は注意
マジでアレのエピソードは読んでいて気持ち悪い
でも、一応本筋に関係のあるヒントが隠されていたりするので、読み飛ばしてはいけないジレンマ
葉秋生視点で語られているけど
それは未来の自分が過去を振り返っているため、作中の時点より少し未来の事について言及されていたりする
なので、物語のその後にどうなるのかというのを、読者は途中で知ってしまっているわけで
あの終わり方、それはそれで面白い味を出している
著者の東山彰良さん
台湾に生まれ、9歳で日本に移りむ
そして日本に帰化せず、中華民国の国籍を保持しているらしい
祖父は中国山東省出身の抗日戦士
筆名の「東山」は祖父の出身地である中国山東省からとっている
父親も作中と同じく教師みたいだし、この作品に自身を重ね合わせている面が多いのではなかろうか?
あと、小説全般に言える事だけど、外国作品は名前が覚えにくい問題
漢字だったら大丈夫かというわけではないようだ
字面だけで読んでいけばそんなに変わらないのかも知れないけど
脳内でもちゃんと本来の読み方で読もうとしたので、今作も名前は覚えにくかったですねぇ