東山彰良のレビュー一覧
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ネタバレ大学生の日常に起こるさまざまな出来事をとても生々しく描いた作品。この作品のおもしろさは、登場人物たちの名前が「その人物が持つ特徴+ちゃん・くん・先輩」であること。主人公たちは有象くん・無象くん。イケメン君や医学部のエース君、女王ちゃん、ダンベル先輩、本命ちゃんや二番手くん、引き立て役ちゃん、俺様くん、都合良男先輩、勘違い先輩、束縛君、ビッチちゃん、抜け目なっちゃん、十年一日くん、十把一絡げくん…。おもしろかった。
p.137 一方、無象くんは質入れしたクロムハーツのことが頭から離れなかった。そして、なぜあんなものがあんなに気になるのかを考えた。欲しくて欲しくて、大骨折って手に入れたわけではない。有象のやつがあんなにも夢中になるブランドだったから、ギャンブルで買ったあぶく銭でなんとなく買ってみただけの話。なのに店員におだてられてそれを首にかけた途端、有象の欲望が自分の中にどっと流れ込んできた。その激しさときたら、軽いめまいを覚えたほどだった。すると、そのペンダントが突如無象君のずっと欲しかったものに変わった。持っていて当たり前のものになった。有象が持っていないものを俺は持っている。ショップの鏡に映る胸のダガーペンダントをうっとりと見つめながら、無象君は有象君より少しだけ立派な人間になれたような気がした。多分、人間というのは他人の欲望を真似るようにできているのだ。走りながら、そんなことを考えてそんなことを思った。だとすれば、他人の欲望はまるで俺になり変わろうとする影法師みたいだな。 -
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ネタバレうさぎを主人公にしたハードボイルド小説。モフモフ。
ジョニー・ラビットは兎一匹復讐を遂げるぜ…といいつつも、どうやら動物好きっぽい宿敵ラッキーボーイ・ボビーに懐きたい気持ちを抑えられない。ジョニーは兎だけどマフィオーソに飼われてたこともあって人間の言葉がわかるけど、人間は兎語がわからないので会話(?)が噛み合ってないのも良いです。兎語がわかれば、ジョニーはかなり重要なこと言ってるんだけどなぁ。。
「ふざけやがって!」「ぶっ殺してやる!」って言いつつ、脚トントンさせてたりしてるのはグレーのちっちゃい兎…と思ったら力が抜けます。兎の生態がちゃんとしてて、東山さん兎に詳しいな?ブルースを歌う犬とのシーンは素敵で、病院のシーンと中華街と思われるところについての考察に笑いました。人間の友達は一番が犬、二番が猫、三番が金魚、その次くらいが兎と鸚鵡で、兎は五分五分でペットと食料…と思ってたけど犬も食べるなら兎なんて勿論。。と。家鴨を標的にするKKK団。
うさぎなので少しマイルドになっている気がするけどマフィアの復讐と仲間割れものなのでかなりハードでシビア。原発の煙突を『再会の樹』と崇める狂信的なうさぎもいるし……でもラストは好きです。たぶんジョニーはボンネットで。。そしてホンコンがここでくるとは。鮮やか。 -
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以下ネタバレ含みます、注意。
こういう、暴力や猥雑なものに塗れて少年期を過ごしました、という筋書きは、本当は苦手なのだけど。
親兄弟と離れ、一人いろんな感情を噛み締めながら生きるユンと、彼が描き、愛した虚構のヒーロー・冷星の物語は、とても魅力的だった。
少年たちの冒険は、いつか終わりを告げるものなんだろうか。
そして、大人になることは、本当にヒーローを放棄することなんだろうか。
アガンとジェイという三人組で、破茶滅茶をやってのけたユンの本心は、いつも、どこにあったのだろう。
連続殺人鬼サックマンの正体が繋がったとき、ふと思ったことだった。
クライマックス、状況を打開することを半ば諦め、自暴自棄になったジェイを迎えたのは、世界の「優しさ」という一面だった。
それは、一面でしかない。もっと多くの、どうしようもない面を、私たちは日々見せられている。
けれど、その一面に、どうしようもなく、仕方なく、笑いたくなるように、救われるものなんだろう。 -
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コロナ本がたくさん出てきたが、今まで読んだ中で1番コロナ禍という感じだった。
2度見をした。すごいなぁこのママ。
パパがいるのに彼氏がいるの?え?
で、彼のところに行くために
夕ご飯と明日のお弁当を作って、夕方さっさと出かけていく。
SNS上でケンカする友達のお父さんとお母さん。
イーイーさんの友達のお父さんがコロナで死んでお葬式も普通にできなかった。
日本に来んなよって外国人差別をされる。
ママの彼がコロナ陽性になって、ママは濃厚接触者でPCR検査。
で、とりあえず学校休んでと娘に言うママ。
日曜日はバスケの大会なのに。
よその男と遊んで濃厚接触したママのせいで全部ぶち壊される私の気持ちは?
なのにママは、「これは私の恋愛のせいではない。コロナのせい」と言い切る。単に確率の問題だと。
ママにぶつけた感情が、投げた言葉が的確で、娘はすごい中学生だと思った。
ママに理解してもらえないのは、心が半分焼け焦げたみたいな感じ。でもそう思うのはママが好きだからだと思う。
こういう金原ひとみさんの表現好き。
結局、国のガイドラインに従い2週間も学校を休んだ娘は、ママとは和解し、ラストは和やか。
面白かった。
尾崎世界観さんの話も好き。
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どうやら大学というところは、男子が女子のことに悶々とする場所らしいぞ。
どんなところだろう(私立理系大学卒、34才独身男性談)。
さて、有象無象が女の子に振り回される話といえば、森見登美彦の作が好きだけど、本作は女の子が狙いを持って男を振り回しにかかる。
そんな女の子たちに振り回されてはフラれる有象くんと無象くん。
本命のあの娘を落とすためのデートなのに、引き立て役ちゃんの豹変が。
普段温厚な先生の突然の激怒は、宮沢賢治に面と向かって「ファック・ユー」と言われたようなものである。
女王様のお目にかなうため、ひたすら筋トレにいそしむダンベル先輩。
かつて昭和の最後に学園内に蔓延した賭博の徒が復活していた。
ビッチちゃんは俺と付き合ってるんたい!そう主張する男たち6人の悲しき慰め合い。
女子アナを目指す抜目なっちゃんの野望一直線の生き方。
有象くんと無象くん視点で描かれる、男女交際の短編集。 -
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四篇からなる短編集。ジャケットがとても素敵で買ってしまった。
「猿を焼く」がこの中では圧倒的に好きだった。脱サラして都会から田舎へ移住しオシャレ農業を始めた一家の息子がその地元の不良たちと出会い、いわゆる"アバズレ"に恋をする話なのだけど、この田舎の閉塞感に身に覚えがありすぎて息が苦しくなった。田舎にいながらにしてできる刺激的なことは喧嘩かセックスかしかなくて、独特のヒエラルキーがあって、その中で起こる出来事は全て地元じゅうで筒抜けで、ここで順応するのは本当に大変だ。そうした環境に問われて溺れそうになりながらも何とか保っていた自我が崩壊していくラスト、救いがあるようで無くて、かなり重たい読後感。
「恋は鳩のように」も面白かった。LGBTQへの理解が進む世界にあって、同性愛者であるということ、それをカムアウトできないということが本人のアイデンティティや恋人同士の結びつきを強くしていたかもしれない、という視点はLGBTQを取り上げる作品の中では珍しいのではないか。新鮮だった。
「猿を焼く」★★
「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
「恋は鳩のように」★
「無垢と無情」 -
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ネタバレ文庫で再読しました。
1984年の台湾と、2015年のアメリカ。
アメリカで連続殺人を起こした〈サックマン〉は、台湾の少年たちの誰なのか。そして弁護士も誰か。。
台湾での少年時代が鮮やかに描かれ、そしてどんどん後戻りできなくなる転落で、彼らが決定的に変わってしまったという悲しみがありました。3人(ダーダーも重要だけど、だいたいユンとジェイとアガンだったな…)がとても生き生きと描かれていて切なくなります。
周りの大人たちの影響で否応なしに歪み、そんな状況をなんとか打破しようとして更に悪くなる、という悪循環がつらいです。
アガンもジェイも、ユンの弁護を依頼したり担当したりして、少年時代をきちんと終わらせていくのかなと思いました。
2度目でも泣いてしまいます。しみじみ、良かったです。 -
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宗教が生まれるまでの過程をフィクションで描く小説。フィクションでありながら、キリスト教など
納得できる部分も多くある。
何かを得るには犠牲と代償がいる。口走ればそれが呪いとして取り憑く。ナサニエルが変容していく過程をエピソードを交えて丁寧に描いている。
そして、私が最も魅力を感じたのはレヴンワース夫妻ことダニー・レヴンワース。彼の言葉、行動はナサニエルの行動として誤解され、ナサニエルの神格化へと繋がっていく。頭のネジのハズレたサイコパスだが、彼の存在が物語を面白くしている。
「人間というものは、罪悪感を覚えたときには、すでにその罪悪感を受け入れている。」このフレーズが妙に心に残った。買ってはいけないけど欲しいと思ったら、もうそれを買うまで忘れられない。