東山彰良のレビュー一覧
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子どものころからの不良仲間が、長じてそれぞれにしょうもない成長を遂げた。
反社組織に入ったやつ、薬や女に溺れたやつ、はたまた警察官になったやつ。
それでも、いまだにいつもつるんでいる。
で、やっぱりしょうもない人生があちこちで詰んできて、
どうしようもない破滅へ、ものすごいスピードで突き進んでいく。
相変わらずのロックンロールな文体、リズム。
ストーリーはきっちりあるのに、
いちばんの読みどころは、それぞれの独白の醜悪さだ。
暗い気持ちになるのか、しょうもない気持ちになるのか、カタルシスがあるのか、
まったくわからない。それなのに、あっという間に読み切ってしまう。
ある意味、これも名作。
光文社文庫、311ページ -
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東山彰良の台湾に棲む僕の話。なんか東山さんの話は底抜けに明るい。内容はすごく悲惨だったりするのに、僕の性格が明るいのか、もう最初から明るい気分になれてしまうのだ。澤田瞳子さんが旅に出ているようだと評しているけど、それは賛成。
第1話 ニン姐さんはよくうちの食堂に食べに来てくれる彫り師で、フィギュアショップの2階に店がある。一見さんはお断り。ニン姐さんは黒猫の白猫という名の猫を飼っていた。女の子がニン姐さんを探している。
第2話 孤独さんは探偵だ。孤独さんの部屋には本がいっぱいある。孤独さんは野良犬を呼ぶ。ある土地公廟のご本尊が家出した。
第3話 フオ先生は郷土教学の先生だ。クラブのステージでフオ先生は歌っていた。フオ先生は原住民族出身でラップをやっている。いつも歌詞を忘れないように何か書き込んでいた。
第4話 レオの父親は大酒飲みだった。跳ばなきゃいけない時には跳べと何度も言われた。刺青も彫った。だけどそうじゃないと言われる。
第5話 游小波に毛ジラミをうつされた阿華は探偵に調査を依頼して、3人も他に男がいたことがわかった。だけど阿華は他の女性にも手を出しているらしい。アワビの兄気分が組の抗争で殺された。僕は路地裏で男に殴られている游小波を見つけた。
第6話 ぼくとアランとペイルンは、頭で考えうるすべての楽しいことを架空の壺に押し込めようとしていた。何を入れるかで僕らは揉めた。初めての喧嘩だ。 -
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今まで読んだ本で1、2を争うくらい良かった。大切な作品。
中国や台湾が舞台になっている作品はほぼ読んだことがなかったので最初は登場人物を覚えるのが大変だったけど、色や匂いまで鮮やかに浮かんでくるような文章にすぐ夢中になった。
読み終わったときは自分が台湾の青年として半生を終えたような感覚があり、これが読書の醍醐味だ!と久しぶりに思った。
おそらく誰にでもあるであろう「高校生くらいの多感な時期の、特に人生において重要なことが起きたわけでもないのになぜかはっきりと覚えているワンシーン」みたいなものがすごく鮮やかにうまく書き表されている、そんな感覚。 -
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小説家が自ら創り出した虚構の世界と現実との境目が不分明になり、虚構世界の側に取り込まれてしまう、という自己言及的展開自体はそれほど珍しいわけではない。しかし、本書の眼目は、それが冷戦期=1950年代末から60年代初めの日本と台湾と中国の歴史の暗部とかかわっている点にある。語りが焦点化する作家・柏山康平(台湾名は王立仁)は、自ら命を絶った叔父の王康平の体験をもとにしながら、「怪物」という小説を書いた。その物語は、叔父が台湾空軍のスパイ中隊のパイロットだったとき、任務中に人民解放軍によって撃墜されたものの一命を取り留め、中国の農村に潜伏して台湾に逃げ戻ってくる、というものだった。柏山はその小説の改稿にあたって、なぜ叔父は自殺したのか、叔父の語りをてがかりにした自分の小説にはまだ書き込めていないことがあったのではないか、という思いにさいなまれ、そこから虚構と現実が二重写しになり始める。
日本の「白団」と台湾空軍との秘かなつながりや、毛沢東による「大躍進政策」がもたらした圧倒的な飢餓の問題など、興味深い細部がいくつも書き込まれている。解説の大矢博子が的確に指摘したように、村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』を想起させる内容だが、日本と満洲・モンゴルとの間での加害/被害を扱った村上の小説より、複数の権力が織りなす歴史の力に翻弄された個人の生を描いたという点で、こちらの方がスケールは大きいと思う。 -
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今年の初めに初めて台湾を訪れて、台北市内を観光した。その名残もあったのか、普段はあまり手に取らない台湾に関連したジャンルの本を手に取ってみたのだと思う。最初の方はストーリーに入っていけず、人物名が少々覚えづらくもどかしかったところがある。しかし、ゴキブリや幽霊などの馴染みのある表現に助けられて、大陸と袂を分った台湾の空気感を表現する本作品を一気に読み切ることができた。台湾はスピリチュアルを感じる国だと思う。どこか昭和レトロで、で同時に最先端の技術を併せ持つこの国は興味深い。本来台湾に住んでいた台湾人が、国民党に対して抱く感情を理解するのに役立つ一冊であったと感じる。実際に国民党が国家樹立後に、どれだけの人が台湾に流れて来て、文化や制度に変化を起こしたのか気になるポイントであり、個人的にもっと調べてみたいと思った。
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いわた書店の1万円選書でチョイスされた本。
端的に言うと、連続殺人鬼・サックマンは誰なのかを軸にしつつ、台北の廣州街に住む3人の少年たちが、ままならない人生に痛めつけられながらも友情を育み、そして壊れていくさまを描いた物語。
ただ、登場人物たちの関係はやや複雑で、友情だけでは言い表せない複雑な感情がにじんでいて、終盤に向かうほど、できごとの意味が変わって見えてくる構成がみごと。なかでも、最後に近い場面で交わされるやり取りは、失われた時間への痛みと、なお残るつながりの温かさが感じられて、とても胸に残りました。
いろいろと分かってくるp296以降まではやや前置きが長く退屈に感じるかも知れません。ただ、文章自体は読みやすいですし、p296以降は非常に面白いので一度手に取ってみて欲しい一冊だと思いました。おススメです☆
p330
「憶えてるか、**?」「なにをだ、**?」「ぼくたちがはじめて会ったときのことさ」「そんなの、憶えてないよ」「そうだな、ずいぶんむかしのことだもんな」**はうなずき、やさしく目を細めた。そして、懐かしい声がわたしの耳に届く。「でも、ぼくはよく憶えてるよ」これから彼といっしょに、長い長い螺旋階段を降りていくことになる。楽園に辿り着けるとは思わない。ただ、いっしょに歩いていく。やがて彼がこの世界から欠けてしまうところまで。 -
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最も印象に残ったのは、戦後台湾の社会が生き生きと描かれていること。
主人公・葉秋生の青春とミステリーが物語の軸になっているが、それ以上に、戦後の激動する台湾の空気そのものが大きな魅力だ。
日本統治の記憶、中国大陸との関係、国民党政権の影響など、あまり知らなかった台湾の歴史が興味深かった。台湾の人々が日本をどのように見ていたのかが具体的に描かれ、新鮮な発見も多かった。
登場人物たちは皆どこか不器用で、人間味にあふれている。ユーモアと哀しみが入り交じる語り口も心地よく、読み進めるほど物語の世界に引き込まれた。歴史小説、青春小説、ミステリーの面白さを併せ持った作品であり、台湾という土地と人々への理解を深めてくれる一冊だった。 -
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1975年、蒋介石が亡くなった1ヶ月後、祖父の葉尊麟が殺された。祖父は迪化街で布屋をやっていた。祖父は手足を縛られて浴槽に沈んでいた。
新学校にいた秋生は替え玉受験に手を貸したため退学させられ、急遽別の高校に入る。
大学受験に本腰を入れ始めた頃、女の子の幽霊をみる。その後助けてという幻聴を聞くようになる。幽霊を見かけた場所に行って見たら、秋生は暴れ出し、そして白骨を見つけた。
受験に失敗して、陸軍軍官学校に入ったが半年で辞めてしまった。家から追い出された。最終的には頭を下げて家に戻る。大学を再受験するつもりだったが、ヤクザを敵に回してしまい、兵役に行くことになった。 -
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台湾での子供時代がいきいきと語られていて、その分つらい。面白かった。
アガンのお母さんは働かない夫アホンを横目に見ながら、アガンとダーダー、そして隣のうちの子である私ユンの面倒を見てくれていたが、夫に見切りをつけて離婚することにした。アホンの弁護士はユンの父だったが、アホンの素行が悪すぎてどうにもならない。
アホンは床屋の奥さんに言い寄っていたが、床屋さんにとっちめられる。兄を亡くした母は過干渉になった。ユンは家から出るのがとても大変に。ジェイは継父に殴られて入院した。ユンはジェイの継父を毒蛇で殺すことにした。しかし間違って毒蛇が殺したのはアガンの父のアホンだった。
サックマンと呼ばれる少年連続殺人犯の弁護をすべく私はやってきた。6人も殺していた。 -
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素晴らしい! 素晴らしすぎる!
上巻の家族の大河ドラマから、一転、主人公の地獄巡りから、地上に死魂の溢れ出す幻想的な物語に。一気にエンタメ小説に転じる。なのに、読みながら何度涙したことか。まず、文章がいい。少し古風な地の文の味わいといい、登場人物の台詞や独白の口調といい、実に手練れ。そして返魂、返魂鬼というアイデア、おもしろすぎる! それにしても雨龍の性根の、魂の、なんともまっすぐなことよ! そして物語の行き着く先。エンタメでありながら、途轍もなく透徹した深い洞察に至る。果たして自分、ちゃんとこの物語に込められたメッセージをつかみ取れたのか。これは再読三読しなければならない。
東山彰良、最も好きな作家のひとりになった。 -
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第13回山中賞の作品ということで、読んでみました。
拾い子の佟雨龍が養父によって愛情深く育てられ成長します。上巻では村幹部を殺した罪で銃殺されるまでが描かれていますが、下巻では佟雨龍がこの世に舞い戻って三毒を討伐する物語になるとのことです。三毒の象徴みたいな悪役の田冲は殺されたので、どんな冒険になるのでしょうか。
上巻では佟継漢の生い立ちから、家族の貧しくも明るい暮らしを「革命的再生産」などのエピソードを交えてコミカルに描いています。犬の皮蛋や、養母や姉、ライバルの大宝・小宝など生き生きとしたキャラクターたちが登場し、テンポよく楽しく読み進められました。たくましい李平は特に印象に残った登場人物です。
舞台は中国共産党が全権を握る中国。理不尽が蔓延っている時代に「怒りに体を明け渡すな」と息子に教育した養父の佟継漢が素晴らしい。しかし田冲がその父を殺し、姉を弄んだことで佟雨龍は怒りに支配されてしまいます。
どんなに努力しても、悪意に押しつぶされてしまうやるせなさを感じるラストでしたが、佟雨龍が復活するという希望が前提が救いであり、下巻が楽しみです。